
男子プロの表彰台。写真中央が優勝したバンサン・ルイ。2位にグスタフ・イデン(同左)、3位には現役医学生のプロトライアスリート、マシュー・マーカート(同右)が入った
《プロ男子》
オリンピック戦線のスター
ルイがコナ初出場で初V
写真=小野口健太
コナ王座を狙うアイアンマン・シリーズの強豪たちや、オリンピック戦線でしのぎを削ってきたショートからの転向組など、そうそうたる顔ぶれのスター選手がスタートリストに名を連ねたアイアンマン世界選手権プロカテゴリー男子。
2026年のアイアンマン世界一決定戦を制するのは、ニースやセントジョージでこそ世界王者になっているものの「コナでの勝利」の栄冠はいまだ手にしていない歴代王者サム・レイドロウかクリスティアン・ブルンメンフェルトか。
それともグスタフ・イデンやパトリック・ランゲら、コナでの勝ち方を知っている歴代王者か?
戦前の大方の予想を覆し、レースを制したのはフランスのバンサン・ルイ。スイム、バイクからのアグレッシブな戦闘スタイルで、日本でもおなじみのスピードスターが、フランス人選手としては史上初のコナ世界王者となった。

バイク終盤トップに立ち、レースの主導権を握ったマグナス・ディトレフ
7年ぶりの男女同日開催となった、2026年コナの幕開けとなった男子プロのレースは、スイムで25~30人の選手が先頭集団を形成。オリンピアンやウィリアム・ヒルシュらOWSの泳力に勝るスイマーらが先頭を引くローテーションが機能して全体のペースが上がる。
ヨナス・ションバーグ、ジェイミー・リドル、マルテン・ヴァン・リールら、事前にスイムでの共闘を計画していたというスイム得意の選手らが先行する中、レイドロウやランゲらコナ歴代もこの先頭集団につくことに成功、悲願のコナ初勝利を狙うブルンメンフェルトらも良い位置につけ、バイクレグへと移る。
バイク序盤、先頭でペースを握ったのはションバーグ。ハヴィを折り返した時点では、2位マシュー・マーカートに約1分の差をつけ先行したが、100㎞過ぎの地点でケイレンにより後退。
代わってレースの主権を握ったのは、レイドロウとともにアイアンマン・シリーズの次世代をけん引する選手と期待されるデンマークの実力者、マグナス・ディトレフ。
グレゴリー・バーナビーと協調し、先頭をキープした後、抜け出し、最終的にバイクをトップで終え、ランへ。レイドロウ、マーカートがこれに続く展開に。
9月の70.3世界選でハーフマラソン1時間5分台という驚異のランで2位まで追い上げたブルメンフェルトは、約6分遅れで先頭を追う。
連覇を狙うイデンがバイクでのドラフティング・ペナルティ(3分)、レイドロウがラン序盤で失速し歩き始めるなど、コナらしい波乱が続く中、ディトレフは着実にリードを広げ、折り返し地点で後続に約4分半の差をつけ、栄光のフィニッシュラインへと歩を進めていく。

コナでの勝ち方を知っているイデンがバイクで3分のペナルティを喫し、連覇に黄色信号が灯る
ランでの逆転が期待されたブルメンフェルトは一時、2位に浮上するも、その後、思うようにペースを上げられず、前後してペースをつくっていたバンサン・ルイが代わって2位に立つ。

バイクで2位につけたレイドロウ(写真左)はラン序盤で失速。これをかわして悲願のコナ初勝利に向けて進んだブルンメンフェルト(同右)だったが・・・
アイアンマンの次世代スターと目されているディトレフが満を持してコナ王者に就き、このレースを最後にプロとしての現役引退を表明していたルイが、コナデビュー戦にして大健闘の2位入賞――そんな表彰台のイメージが醸成されつつある中、レースが動いたのは、やはりレース終盤。
30km地点に差し掛かったディトレフが苦しみ、歩き始める。ブルンメンフェルトに代わって2位に上がっていたルイは、34km地点付近でついに先頭に立つと、ベテランアスリートらしい冷静なペーシングで崩れることなく、そのままフィニッシュラインへ。
コナデビュー戦にして、トライアスリートとしては百戦錬磨のスター選手が、あまりにも華々しいカタチでプロとしての現役生活にピリオドを打った。

ラン34㎞過ぎ、レース終盤でトップに立ったルイ。百戦錬磨のベテラントライアスリートらしく、あわてず冷静なレース運びでビッグタイトルを手にした
連覇を狙ったイデンもさらなる逆転を予感させる勢いでルイに迫ったが、バイクでのペナルティが響き、わずか44秒差で優勝ラインには届かなかった。
「トライアスロンの世界には金メダルとコナのタイトルのふたつしかない。今日そのひとつを手に入れた」
バンサン・ルイ
「クレイジーな1日だった。ここ3カ月の準備期間は本当に調子が良かったし、レースのためにこれほどハードに取り組まなければならないのは、これが最後だと思った。レースの最後の3~4kmは特に辛かったけれど、100%その価値があった。これから数晩、人生をどうするか決めるつもり。
私はオリンピックのメダルを獲得するために人生を捧げてきた。トライアスロンの世界にはオリンピックの金メダルとコナのタイトルのふたつしかないと思うが、そのうちのひとつを今日、手に入れた。残りは本棚に飾っておくのがいいかもね」

プロとして最後のレースでビッグタイトルを手にしたルイ。スイムを10位、バイク8位、ラン2位と各種目で安定した強さを発揮した
男子プロ上位リザルト























