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《KONA2025速報》ノルウェーの新星ロブセットが生き残り、大金星

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ルミナ編集部

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2025年のアイアンマン世界選手権コナ(10月11日開催)を制した、コナルーキー、ソールバイ・ロブセット(ノルウェー)

取材・文=東海林美佳
写真=小野口健太

3人の世界女王vs 若き実力者たち

ここまで予測不能なコナがかつてあっただろうか。

今年のアイアンマン世界選手権は、先頭を走るふたりの優勝候補が次々にリタイアとなる波乱の展開となった。最後の最後まで誰が勝つかわからないなかで栄冠をつかみ取ったのは、26歳のコナ・ルーキーでパリ五輪ノルウェー代表のソールバイ・ロブセットだった。

女子オンリーのアイアンマン選手権最後の年となった今年は、プロ60人を含む女子選手約1700人がコナに集結した。

3人の世界女王、チェルシー・ソダーロ(2022コナ)、ルーシー・チャールズ・バークレー(2023コナ)、ローラ・フィリップ(2024ニース)とプロシリーズ首位キャット・マシューズ、さらには期待の若手テイラー・ニブといった強豪が勢揃い。

また、うねる海、後半向かい風と戦い続けることとなったバイク、そして高い湿度と暑さの中でのランと、近年でも非常にタフなコンディションのなか、予想外の事態が立て続けに起きることとなった。

今回もレースのオープニングはこの人が主役。得意のスイム(3.8㎞)を49分台で上がり、他を圧倒したルーシー・チャールズ・バークレー

SWIM
ルーシー・チャールズ・バークレーが本領発揮

レースはチャールズ・バークレーが誰も寄せ付けない泳ぎから始まった。ズバ抜けたスイム力を武器に2023年に成功を収めた彼女ならではの戦い方を今回も展開する。

ニブ、ソダーロらは後続集団で体力を温存しながら追うも、チャールズ・バークレーが1分半近くの差をつけてスイムアップ。マシューズ、ロブセット、フィリップらには6分以上の差をつけた。

スイムで得たアドバンテージを生かし、バイク序盤はチャールズ・バークレーが独走。後続を引き離しにかかった

BIKE
ニブがトップに立ち
サバイバルレースの幕が開く

序盤はチャールズ・バークレーが先頭で飛ばすもニブが2番手集団からすぐに抜け出す形となる。

ハヴィの折り返しで追いついてチャールズ・バークレーにプレッシャーをかけ、110km地点で首位交代。抜かれたチャールズ・バークレーは130km過ぎで抜き返すも、ボトルをゾーン外で落としてしまったことでその後に1分のペナルティをくらってしまう。

首位でT2一番乗りを果たしたのはニブ。だがチャールズ・バークレーも1分半遅れとまだ挽回のチャンスは大いにある位置でバイクフィニッシュ。ロブセットは単独走ながら差を詰めて、4時間31分53秒のバイクトップタイムを叩き出した。

チャールズ・バークレーとニブによる激闘の後ろで、バイクラップを獲り、虎視眈々と勝利へと近づいていったロブセット

スイムで6分の負債を背負ったフィリップとマシューズは後方集団から順位を上げるも、先頭とのタイム差は最終的に14分以上。ここから得意のランでどこまで追えるかがキーとなった。

RUN
トップ1・2が暑熱に倒れ
コナルーキーが大金星

序盤はチャールズ・バークレーが先頭のニブを猛烈な勢い追い、10km過ぎで追いつく展開に。その後快調に先頭を走っていて、コナ2連覇は堅いと思われたが、やはり一筋縄ではいかないのがコナ。20km付近からエイドで歩く姿を見せるようになる。

バイクで先行を許したニブをラン序盤でとらえて、再びトップに立ったルーシー・チャールズ・バークレーだが、その後、大きな落とし穴が待っていた

水をかけたり、氷をウエアに入れたりと、明らかにオーバーヒートした模様。ランとウォークを繰り返しながら粘っていたものの、やがて蛇行気味になり、30km手前、エナジーラボでコーチであり夫のリース氏が止めに入って涙のDNFとなった。

ルーシー・チャールズ・バークレーがレースを去った後、トップに立ち、ついに悲願のコナ初優勝をつかみ取ったかに見えたニブだったが……

ほどなくして首位のニブにも異変が起きる。走りのペースが落ちてきて37 km過ぎのエイドで歩き始めると、彼女も大きく蛇行し始め、コース上座り込んでしまう。四つん這いで進もうとするも身体が動かず、後ろから来たロブセットを見送った後にリタイアとなってしまった。

前を走っていたふたりがいなくなり、突如トップに立ったのがコナ・デビュタントのロブセットは、初コナとは思えないペーシングの妙を見せ、ランスタートから変わらない力強い走りで歩を進めていく。

それを後方からハイペースで追い上げるのがマシューズ。終盤マシューズは全身全霊の走りで差を詰めていくが35秒届かず、ロブセットが8時間28分27秒でコナ初出場、初優勝に輝いた。

2位にマシューズ、そしてディフェンディングチャンピオンのフィリップは我慢のレースで3位をものにした。

左から3位のローラ・フィリップ、初優勝を果たしたロブセット、2位に入ったキャット・マシューズ

4位にはスイム、バイク、ランとオールラウンドに実力を発揮したハナ・ベリーが、そしてロブセット同様オリンピックディスタンス出身でコナ・ルーキーのリーザ・ペルテラーが5位に食い込んだ。

優勝 ソールバイ・ロブセット
「不思議な力が勝たせてくれたとしか思えない」

数時間経った今も不思議な気持ちです。もちろん嬉しいんですが、こういう結果になるとは思いもしなかったから。表彰台を目標にしていたので、ずっと3位で走っていて「このまましっかり走り切れば目標達成」と思っていたら突然ルーシー(チャールズ・バークレー)がいなくなって2位になって、そのすぐ後に今度はテイラー(ニブ)が止まってしまって1位になってしまった。

普段はあまり「目に見えない不思議な力」みたいなものは信じないようにしているんですが、今回はそういう力が私を勝たせてくれたとしか思えません。

2位 キャット・マシューズ
「アイアンマンの厳しさを思い知った一日」

アイアンマンという競技の厳しさを思い知った日でもあります。バイクでは前を追っているつもりなのにどんどんタイム差が開いて前と15分差がついた時は「致命的だな」と思いましたが、それでも自分自身のベストを尽くしていると思えたので、その気持ちを軸に走り続けました。

このコースで出せるすべては出し切りました。今日の自分のパフォーマンスを誇りに思っています。

3位 ローラ・フィリップ
「夢が遠のいても、走り続けられるかが試された」

スイムまでは楽しめていて、良いスタートを切れたと思っていました。バイクもキャット(マシューズ)と一緒に上がっていけると思っていたんですが、そこからが大変でした。私が夢描いていた1日ではなかったですね。

今日は「夢が遠のいたと知っても、走り続けられるかどうか」を試される日だったんだと思います。その試練に自分が耐え、表彰台に立てたことを誇りに思います。

アイアンマン世界選手権@コナ
プロ女子TOP5リザルト

■開催日:2025年10月11日(土)
■開催地:米・ハワイ島カイルアコナ

順位/名前・国
総合タイム(SWIM/BIKE/RUN)

1. ソールバイ・ロブセット(ノルウェー)
8:28:27(S55:40/B4:31:53/R2:55:47)

2. キャット・マシューズ (イギリス)
8:29:02(S55:43/B4:40:08/R2:47:23)

3. ローラ・フィリップ (ドイツ)
8:37:28(S55:50/B4:40:26/R2:55:53)

4. ハナ・ベリー (ニュージーランド)
8:46:25(S52:02/B4:44:37/R3:04:32)

5, リーザ・ペルテラー (オーストリア)
8:48:08(S55:41/B4:40:50/R3:06:03)

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