RACE&EVENT

歴代世界王者が激突 NICEで最後の世界選、頂点は誰の手に?

投稿日:


山村 勇騎

text by:

2024年KONA。6年ぶり3度目の勝利を上げたパトリック・ランゲが4勝目を狙う©KentaOnoguchi

2025年アイアンマン世界選手権ニース
プロ男子プレビュー

世界王者が集う激戦レース、制するのは誰だ

アイアンマンの聖地であるアイアンマン・ハワイの男女同時開催が、来年復活することになり、ニースでの世界選手権開催は今年で最後となる。

南フランスの透き通るような美しい海でのスイムの後に続くバイクコースは、1周回の山岳ルート。登りでのパワーと、テクニカルな下りを攻略するスキルが勝敗を大きく左右する、難コースとして知られている。

アイアンマン史上タフなコースのひとつであり、ペース配分を見誤れば、後半のバイクやランパートに大きく影響してくる。そして、テクニカルな下りでは、バイクのハンドリング能力も勝つための重要な要素となる。

ランはフラットで、2時間半切りの可能性もある高速コースだ。直線の周回コースになるので、お互いの順位を確認しつつもペースを上手くキープし、レースに集中できるのか、メンタル面にも影響してくるレイアウトだ。

今年は、過去の世界王者4選手が出場し、今までにないかなり厚い層のスタートリストだ。そして、これから新世代を背負う20代の若手が多く出場し、オリンピック上がりの選手など、新たな世界王者を産む可能性もある注目レースとなるだろう。

文=山村勇騎
写真=小野口健太

IRONMAN世界選(NICE)
注目選手
プロ男子


Patrik Lange
パトリック・ランゲ
出身:ドイツ
年齢:39歳
プロシリーズランキング:41位
キャリア:2017、2018、2024年アイアンマン世界王者

昨年のアイアンマン世界選手権(KONA)で、元世界王者としての存在感が少し薄れる中で、そのネガティブな予想を覆す展開で3度目の世界王者に輝く。今年は、アイアンマン・フランクフルト(7位)とアイアンマン70.3オーシャンサイド(17位)の2レース出場で、あまり露出の多いシーズンではなかった。しかし、ランゲはビッグレースでこそ圧倒的な強さを見せる。2023年の同コースでは弱点とされるバイクで強さを見せ、2位入賞を果たしている。

ニースでは、バイクで先頭との差を5分以内に抑え、得意のランで2時間30分を切るタイムを出せば、これまで培ってきた経験とタフなメンタリティーで優勝の可能性は高い。


Sam Laidlow
サム・レイドロウ
出身:フランス
年齢:26歳
プロシリーズランキング:出場なし
キャリア:2022年世界2位、2023年世界王者(NICE大会)

ロングトライアスロン界新星のひとり。地元での開催となった2023年世界選(NICE)で初優勝を飾る。ジュニア時代からトライアスロンを始め、長年、父親がコーチを務めて二人三脚でアイアンマン王者まで登り詰めた。昨年の世界選手権(KONA)では、自身のもっていたバイクコースレコード(3時間57分)を更新し、驚異的なバイクの強さを証明した。

今シーズンは体調不良のため遅いスタートとなり、パフォーマンスにかなり不安要素を残していた。ただ、昨年まで多かったランレグのリタイアを改善すべく、新たな補給スポンサーを迎えるなどして、今年のチャレンジロートでは優勝。2023年同様に熟知しているローカルコースで得意のスイムとバイクで独走して、ランで逃げ切れれば優勝の可能性も見えてくる。


Magnus Ditrev
マグナス・ディトレフ
出身:デンマーク
年齢:27歳
プロシリーズランキング:18位
キャリア:2023年チャレンジロート優勝、2024年世界2位

昨年は、PTOシリーズレースにフォーカスを当て、著しい成長を見せた。今年は、アイアンマンのプロシリーズに集中し、アイアンマン南アフリカで優勝。今では、ウバーバイカーとして知られ、常に優勝争いに絡む存在となってきている。昨年のチャレンジロートでは、世界ロングコースレコードで2番目に速い7時間24分というタイムでフィニッシュ(世界記録7時間21分ブルンメンフェルト保持)。

前回のニース大会では、山岳コースで、1×60歯数のフロントチェーンリングを使いこなす強脚で、3位に入賞している。年々早くなるスイムとランを強化し、本来のバイクパフォーマンスを発揮したうえで、2時間40分を切るマラソンタイムで走ることができれば優勝に近づけるだろう。


Kristian Blummenfelt
クリスティアン・ブルンメンフェルト
出身:ノルウェー
年齢:31歳
プロシリーズランキング:3位
キャリア:2022年世界選優勝(セントジョージ大会)、東京五輪金メダリスト

東京五輪金メダリストで、2021年ユタ州セントジョージで開催されたIM世界選手権の王者。昨年パリ五輪後には、ロングへ完全転向。今シーズンは完璧なレースを重ね、アイアンマン・テキサスとアイアンマン・フランクフルトの両地区選手権大会で優勝。特にランの進化は止まらず、常にランレグを2時間30分台で走り抜ける脚力をもつ。

初参戦となるニース大会では、バイクで先頭との差を抑え、フラットなランコースを2時間20分台で走り切れば、優勝の可能性は極めて高い。


Mathew Marquardt
マシュー・マーカード
出身:アメリカ
年齢:27歳
プロシリーズランキング:2位
キャリア:アイアンマン・ケアンズオセアニア選手権優勝、2023年ニース世界選手権11位

これから期待のアメリカ代表有力選手。現在オハイオ大学の医学生で、プロトライアスリートとしても活躍する。2022年の世界選手権でエイジ王者になり、2023年にプロデビュー。今年は、ブレイクスルーなシーズンで、アイアンマン・ケアンズとアイアンマン・レイクプラシドで優勝している。

前回のニース大会では、スイムをトップで上がる実力の持ち主。得意とするスイムでは常に先頭でパックを引く実力がある。また、スイムだけではなくバイクの強さも見逃せない。アグレッシブなライディングで常にバイクトップを取れる速さをもつ。今年は、ランも相当強化していて、アイアンマンの2レースで2時間30分台を記録した。

しかし、問題も抱えている。スイムフィニッシュ後に悩まされる原因不明の痙攣だ。痙攣によるタイムロスを克服できていれば、2度目の出場となるニース大会で先頭争いに絡むことになり、入賞は確実だろう。

©WorldTriathlon

Jonas Schomburg
ヨーナス・ショームブルク
出身:ドイツ
年齢:31歳
プロシリーズランキング:23位
キャリア:東京五輪出場、チャレンジロート2位

今までショートディスタンスにキャリアを捧げてきたが、パリ五輪後にロングに転向した期待の新人だ。ショート上がりのスイムスピードで常にトップで上がる実力をもつ。スイムだけではなく、本当の強みはベテランや世界王者に負けない、驚くようなバイクの強さだ。

あのレイドロウも、チャレンジロートで追いつくことができないほど、バイク前半からフルスロットルで走り抜ける。バイクで先頭を引き、ラン次第ではトップ3入りも狙えるポテンシャルがある。これまでアイアンマンでは目立った成績は残せていないが、ダークホースとして見逃せない選手だ。

2025アイアンマン世界選手権
プロ男子 優勝予想

1. クリスティアン・ブルメンフェルト
2. マシュー・マーカード
3. マグナス・ディトレフ

写真左が山村さん

■著者プロフィール
山村勇騎(やまむら・ゆうき)

アメリカ在住のトライアスリート・ジャーナリスト。アイアンマンやT100シリーズのオフィシャルレースメカニックとして、世界のレースを飛び回りつつ、WEBメディア「TriWorldJapan.com」を創設。英語圏で流通する世界のトライアスロン情報を、日本のトライアスリート向けに発信している。

-RACE&EVENT

0 interest


コメント

メールアドレスが公開されることはありません。


スパム対策のため、 日本語が含まれない欧文のみのコメントは投稿できません。


関連記事

【記事】サイドバー上

記事用jQuery

cloud flash記事バナー

アイアンマンの世界に挑むアスリートたちを支えたVAAM
トライアスロン初挑戦や初心者の質問・心配ごとにLuminaスタッフが答えます!