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【2024 NICE】ローラ・フィリップス ランレースレコードで新女王へ

投稿日:2024年9月24日 更新日:


山村 勇騎

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©Bartłomiej Zborowski/Activ Images for IRONMAN

2024年アイアンマン世界選手権ニース・プロ女子

文=山村勇騎

ローラ・フィリップス(ドイツ)
アイアンマン世界選手権ニース初の新王者に輝く

女子のアイアンマン世界選手権として、初めてフランス・ニースでの開催となった今年。KONAとは全く違ったコースレイアウトや気候に選手たちのトレーニング、ギア、戦略も変わってくる。

例年とは一味違った、そのレース展開に注目が集まった。

元世界王者のアンネ・ハウグ(ドイツ)やチェルシー・ソダーロ(アメリカ)が名を連ねる中で、現世界王者のルーシー・チャールズ・バークレー(イギリス)が、ケガのためレース前日に突如の欠場というビッグニュースでレース当日を迎えた。

前日レースキャンセルを発表したディフェンディングチャンピオンのルーシー・チャールズ・バークレー ©Nils Nilsen

スイム
SWIM

フェネラ・ラングリッジが
高速でスイムアップ

水温の関係でウエットスーツ着用義務での実施が発表され、スイムが苦手な選手にとっては大きなアドバンテージとなった。スタート直後から、マータ・サンチェス(スペイン)が、10人以上の大きなパックをリードし始める。

そのすぐ足元には、スイムを得意とするレベッカ・クラーク(ニュージーランド)、ローレン・ブランドン(アメリカ)、フェネラ・ラングリッジ(イギリス)らが連なり、お互い競い始めた。

©Jan Hetfleisch/Getty Images

スイムを強化してきた優勝候補のチェルシー・ソダーロ(アメリカ)やカトリーナ・マシューズ(イギリス)も、先頭パック後方で食い下がる。

スイムの後半に入るとラングリッジが先頭に立ち、さらにプレシャーをかけ始めた。海面の波がうねる中で、49分13秒という高速スイムで最初にスイムフィニッシュアーチをくぐる。

30秒遅れて、ソダーロやマシューズが好ポジションで追ラングリッジを追う。そして、フィリップスは苦手なパートながらも3分半差で抑え、バイクパートへと向かった。

アイアンマン・世界選手権 NICE

2019年アイアンマン世界選で優勝したアンネ・ハウグはバイクメカトラブルでリタイアとなった(写真・左)©Bartłomiej Zborowski

バイク
BIKE

ハードなバイクレグは
フィリップスとマシューズの駆け引きに

優勝の分かれ道となる難関なバイクパートでは、このコースを熟知している地元フランス代表マジェリーン・ピエールが、先頭パックからひとり飛び出し、3分ほどのリードを始める。

地元フランス代表のマジェリーン・ピエールが、先頭パックからひとり飛び出す ©Jan Hetfleisch/Getty Images for IRONMAN

このフィールドで一番バイクを得意とするフィリップスは、スイムでの遅れを取り戻すように徐々に前との差を縮めていく。2022年世界王者ソダーロは、先頭パックから遅れを見せすぐに引き離される。

スイムで出遅れた元世界王者のハウグは不運にもバイクスタート直後にパンクし、タイヤの穴が大き過ぎたため修復することができずに、残念ながらそのままリタイアした。

ニースの最大の特徴で難関なのハードな山岳バイクコース ©Pablo Blazquez Dominguez/Getty Images for IRONMAN

最初の難関ポイントのエクル峠の登り始めでフィリップスが3位まで順位を上げ、その後、前を走る2位のマシューズにすぐに追いつく。そのまま勢いを落とすことなく抜き去り、マシューズを引き離してリードを続ける先頭のピエールに1分差まで詰める。

アイアンマン・世界選手権 NICE

©Bartlomiej Zborowski

バイクパートの残り半分のところで、フィリップスとマシューズのふたりが先頭へ。しかし、前半で脚を消耗してしまったピエールは、そのスピードについていくことができず、バイク後半戦はフィリップスとマシューズの駆け引きが見物に。

フィリップスが最後の長い下りで40秒ほど差を広げたものの、マシューズがそれに食らいつき、さらにフィリップスを引き離しにかかるが成功せず、白熱の展開となる。

山岳コースでカトリーナ・マシューズと白熱の駆け引きを繰り広げたローラ・フィリップス ©Jan Hetfleisch/Getty Images for IRONMAN

最終的には、ふたりのキャニオンのスポンサーライダーのフィリップスとマシューズが同時にバイクフィニッシュ。その後、6分43秒差でピエール、9分48秒遅れでソダーロと続々とバイクを終える。5位以降の選手たちと先頭のふたりとの差は10分以上も開いていた。

2022年KONAで初優勝して話題を呼んだチェルシー・ソダーロはバイクを4位で終え、ランへ ©Jan Hetfleisch/Getty Images for IRONMAN

ラン
RUN

2時間44分59秒のランコースレコードで
ローラ・フィリップスでNICE初の女王に

マシューズが勢い良くランコースへ飛び出したが、フィリップスも遅れることなく、その後ろ姿を追う。

先頭のふたりは過去のレースでも何度もランで競い合った経験があり、どちらが最後まで高速ペースを耐え抜くのかに注目が集まった。

過去何度も対戦したきたフィリップスとマシューズがNICE初の世界戦王者をかけてランへ ©Pablo Blazquez Dominguez/Getty Images for IRONMAN

ランを得意とするソダーロも追いかけるが、ふたりのハイペースに差を詰めることができない。

アイアンマン・オーストリアで2時間44分のランレコードをもつフィリップスは、3周コースの2周目でマシューズを引き離しにかかる。一方、痙攣に悩まされたマシューズは途中で何度も歩く場面があったものの、沿道の声援を受け2位を維持するために力強く走り始める。

ランを得意とするソダーロが追い上げるもふたりには追い付けず ©Pablo Blazquez Dominguez/Getty Images for IRONMAN

3周目に入るところで、フィリップスとマシューズの差は、4分まで開く。

その高速ランペースを落とすことなく、ドイツ代表37歳のローラ・フィリップスが、2時間44分59秒のアイアンマン世界選手権ランコースレコードを塗り替え、総合タイム8時間45分15秒で世界選手権での初優勝を飾る。

ランコースレコードで勝利を勝ち取ったフィリップス © Jan Hetfleisch/Getty Images for IRONMAN

最終的に2位のマシューズに8分差、そして3位には元世界王者のソダーロが19分差でフィニッシュし、フィリップスがランでその強さを見せる結果となった。

2012年に酒井(旧姓塩野)絵美選手が、世界選手権プロカテゴリーで出場して以来、12年ぶりに日本代表として4×オリンピアンでアイアンマンカテゴリーに転向した上田藍が出場し、29位でレースを終えた。

優勝フィリップス(写真・中央)、2位マシューズ(同・左)、3位のソダーロ(同・右)©Pablo Blazquez Dominguez/Getty Images for IRONMAN

【Result】
1. ローラ・フィリップス(ドイツ)8:45:15(00:53:16/05:02:25/02:44:59)
2. キャット・マシューズ(イギリス)8:53:20(00:49:43/05:05:46/02:53:06)
3. チェルシー・ソダーロ (アメリカ)9:04:38(00:49:58/05:15:14/02:54:25)
4. マジョレーン・ピエール(フランス)9:09:34(00:49:56/05:12:27/03:02:30)
5. ニッキィ・バーレット(ドイツ)9:15:47(00:55:30/05:17:42/02:57:24)
29. 上田 藍(日本)10:16:25(00:57:39/05:58:13/3:15:43)

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