
ロンドン在住、トライアスロン歴3年目の尾関孝洋さん。トライアスロンとの出会いが人生を大きく動かしたという彼のリアルな日常を、これから少しずつ紹介してもらいます。
T100世界選手権出場についてお書きいただきました。今後も、ロンドンでトライアスロンとともに生きるライフスタイルを、さらに深掘りしていきます。
写真=尾関さん提供

ワールドチャンピオンシップが左、エイジが右のバッグ
T100 World Championship Qatar 参戦記
― 金融の世界と同じく、勝負は準備と環境で決まる ―
T100 World Championship Qatar に出場してきました。
夏にロンドンで行われたT100でエイジ7位に入り、今回のレースにQualify。今回は「一応、日本代表」という立場での出場です。
T100では各国規定ユニフォームの着用が義務付けられており、私も大変お世話になっている日本在住トライアスリートの大先輩にお願いし、ロンドンまで日本代表ユニフォームを送っていただきました。人生で初めて袖を通す日本代表ユニフォーム、自然と背筋が伸びました。
ロンドンからドーハへ ― リスク管理は競技前から始まっている
ロンドン出発は水曜深夜。普段より少し早めに仕事を切り上げさせてもらい、ヒースロー空港へ直行し、翌朝ドーハに到着しました。最近新調したバイクも無事に届き、まずは一安心。
この「まずは一つリスクが潰せた」という感覚は、金融とよく似ています。
ドーハでは、パリ在住時に同じトライアスロンチームで活動していたカタール人の友人に、文字通り何から何までお世話になりました。彼は当時ミリタリーの要職にあり、研修でパリに滞在していました。今回は彼の自宅に泊めてもらうことに。

こちらがマジェラス!
カタールの家族文化とホスピタリティ
カタール人(カタリー)の文化は家族・親族の結びつきが非常に強く、大きな敷地に複数の家が集まって暮らすケースが多いそうです。その中心となる建物が「マジェラス」。
日本でいう客間や迎賓館のような存在で、大きなリビングとゲストルームがあります。私もそのゲストルームに滞在しました(イスラム教のため男性のみ可)。

今回大変お世話になったカタール人の友人と
マジェラスには専属の使用人がおり、掃除やお茶の用意をしてくれます。私の滞在中は、ほぼ“専属執事”状態。バングラデシュ出身のとても穏やかな青年で、異文化の中にあるホスピタリティの本質を感じました。
木曜・金曜は時差ぼけの中、カタール流の大接待を受けつつ調整。なお、プロレースは前日の金曜日に開催されます。カタールでは今も金・土が週末です。
世界トップとの距離感
ロンドンでたまに(もちろん別レーンですが笑)一緒に練習しているリースとも現地で1枚。奥様のレース待ち中でした。彼らはシーズン終了後、バイクすら持たずにそのままバカンスへ行くそうです。

ルーシー・チャールズ・バークレーの夫で、同じくプロトライアスリートであり彼女のコーチも務めていたリース・バークレーと
ちなみにロンドン帰国後の12月23日には、100m×100本を一緒に実施。彼らは10代の頃からクリスマスの恒例練習らしく、ルーシーとリースは1分30秒サークルで淡々と完遂。私はフィン付きフル装備でしたが、世界のトップとの差を改めて実感しました。

ロンドンに戻ったときに参加した、ルーシーたちとのクリスマススイム
レース当日 ― 想定外は必ず起こる
私のレースは土曜6時30分スタート。教科書通り4時起床でしたが、時差ぼけでとにかく眠い。ただ食欲はあり、前日にデリバリーしてもらった朝食をしっかり摂って会場へ向かいました。

スイムは水中からのデッドスタート。経験がなく、ガーミンのスタートを押し忘れるという初歩的ミス。スイムには元々期待していないので時計も見ず、そのままT1へ。
今回は宗教上の理由もあり、着替えはテント内。スイムスキンを脱ぐだけでも個室対応でした。
ペナルティという「外部要因」
お決まりの「自分のバイクが見つからない事件」を経て、ようやくバイクスタート。
コースは20km×4周回、Uターンも多く、スピードコースとは言えません。1周目でまさかのドラフティングペナルティ。「No, this is just traffic!」と一応抗議しましたが、英語が通じないジェスチャーで一蹴され、大人しくペナルティボックスへ。

ペナルティで戦意喪失中……
この瞬間、正直メンタルはかなり削られました。マーケットで想定外のテールリスクに被弾した感覚に近いです。
それでもなんとかバイクを終え、ランへ(バイク2時間2分。ペナルティがなければ2時間切りでした……)。
結果と、その後に残ったもの
ランは6km×3周回。フラットというよりローリング。スタート時点ですでに10時前後で、太陽は絶好調。
普段ロンドンで慢性的に不足しているビタミンDを「今ここで補給している」と自分に言い聞かせながら走り切りました。

結果は 3時間52分、エイジ5位。ペナルティがなければ、もう少し楽に、もう少し速く走れたはず。悔しさの残る結果でした。
プロとの偶然と、中東というマーケット。
レース後はそのままドバイへ移動。空港でバイクを預けているアスリートに「さっきレースして、もう空港はタフですね」と話しかけると、「私たちは昨日だったよ」と一言。……プロでした。
写真を撮らせてもらい、友人に送ったところ Vincent Louis と Georgia Taylor-Brown。

声を掛けると……バンサン・ルイと、ジョージア・テイラー・ブラウンだった!
彼らはドバイ経由でオマーンへバケーションへ行くそうで、「3週間一切トレーニングせず、太りに行く!」とテイラー(笑)。実際にバーガーを3個ほど食べていました。
「プロがそうなら、僕も来年までもう動かないことにします」と言うと、「オフシーズンに太らなきゃ、来年のトレーニングのモチベーションが出ないじゃん!」と。トッププロでも発想は人間的で、少し安心しました。
金融的視点で見る T100 Qatar
T100ドーハはリッツ・カールトンに泊まれて最高だった、とプロに聞きました。
中東マネーは本当に桁が違う。税金なし、電気代・水道代も無料。今回のT100も Visit Qatar(観光庁的組織)がスポンサーです。資源依存からの脱却を目指し、スポーツに国家戦略として投資している。これは金融的視点で見ても非常に分かりやすい構造です。

滞在中に食べた、羊を丸ごとカレー。当分はいいかな
カタールは治安も良く、冬がオンシーズン。「冬もレースをしたい」「環境を変えて自分を試したい」方には、T100 Qatar は本気でおすすめです。

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尾関孝洋 Takahiro Ozeki
外資系投資銀行勤務、ロンドン在住。大学までは体育会サッカー部に所属。仏移住をきっかけにトライアスロンを始め、今年は3年目のシーズン。ロンドンT100でエイジ7位となり、12月の世界選手権(カタール)出場予定。今シーズンはアイアンマンポルトガルに挑戦し9時間21分でエイジ11位。大の苦手なスイムをLucy Charles-Barclayが通うスイミングクラブで特訓中。
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