COLUMN HOW TO

トライアスリートのBIKEフィッティング導入メリット

投稿日:


ルミナ編集部

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トライアスリートにこそ効く
パーソナル・フィッティング
導入ガイド

速く・快適に、そして長く乗りたいトライアスリートの新たな常識、パーソナル・バイクフィッティング導入のメリットとは?

トライアスリートへのアドバイス経験も豊富な「三ツ星フィットサービス」の渡邉勇大さんに訊いた。

取材・文=光石達哉
写真=小野口健太

※本記事は雑誌『Lumina』2024年7月号掲載記事を一部改変・再掲したものです。

指導
渡邉勇大さん
Yudai Watanabe
フィッティングからコーチングまで一人ひとり異なるニーズに応えられる「三ツ星フィットサービス」代表。元MTB選手で、スペシャライズド直営店で店長も務めた。自らバイクサイズや身体の痛みに悩みを抱えていたとき、スペシャライズドのBGfitに出会って感銘を受け、フィッターのライセンスを取得。10年間で五輪代表選手など1,000件以上のフィッティングを担当。自転車コーチとしても豊富な経験をもつ。

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購入時の「サイジング」と
フィッティングの違い

ショップでバイクを買うときは股下の長さを測ったり、サドルにまたがってハンドルに手をかけたりして、身体に合ったサイズのものを選んだ人がほとんどだろう。これらのプロセスも広い意味ではフィッティングと呼ばれるが、三ツ星フィットサービス代表の渡邉勇大さんによると一般的な店舗で担えるのは「サイジング」、つまりサイズ選びまでであることが多いという。

「バイクを買った後のフィッティングこそ、もっと活用してほしいですね。ライディング中に身体の痛みが出たり、フラつかないように安全にバイクをコントロールしたい、もっと速く走りたいといった個々の悩みを解決するフィッティングこそ重要だと思います」

渡邉さんはスポーツショップやスペシャライズド直営店などで店長を務め、常にサービスのアップデートが行われているで1,000件以上のフィッティングを手がけてきたが、スペシャライズドオーナーを対象とした統計では、スポーツバイク所有者のうちフィッティングを受けたことがあるのは10%ほどだったという。

「フィッティングが身近にあるスペシャライズドのお客様でも受けていない現状があり、今後の普及には可能性しかありません。あらためてフィッティングの説明を受けた後の質問では6~7割が『受けてみたい』と答え、興味はうかがえるのですが、フィッターと話せる機会も少なく、多くの人が実際、受けるまでには至っていないんです」

個々のニーズに応じて
フィッティングをアレンジ

フィッティングの最初の目的は、安全に楽しくバイクに乗れる自転車のポジションを作ることだ。

「バイクを買っても快適なポジションで乗れないと、怖い思いをしてケガする場合もある。それで乗るのを辞めてしまうのは悲しいですよね。スイムやラン、ゴルフにしても大人が楽しむスポーツにはたいていコーチがいるけど、自転車はともすれば命に関わる趣味なのに、教える人が少ない。だからこそ、私はフィッターとしてライダーに寄り添い安全に長く楽しめるお手伝いをしていきたいんです」

渡邉さんのフィッティングは、「カウンセリング」「フィッティング」、「コーチング」の3本柱に分けられ「安全に楽しめるポジションづくり」を提唱している。詳しいプロセスは後述するが、フィッティングで最初に目指すのが「ニュートラルポジション」、いわゆる基準となるポジションだ。

ここから先が、個々に合わせてアレンジしていくパーソナル・フィッティングとなる。
「ライダーさんからより速く走りたいという要望があれば速く走れるフォームに、ストレスを改善したいと言われれば快適に乗れるフォームを作っていきます。色んな楽しみ方を作れるのが、パーソナル・フィッティングの醍醐味だと思います」

さらに渡邉さんは長年ショップ店長を務めた経験から商品知識も豊富で、メカニックとしての技術ももっている。フィッターとしての実績に加え、ライディングスクールを開催するコーチでもあり、4役こなせる強みがある。

「例えばショップ店員さんは速く走りたいというお客さんにバイクやパーツをお薦めできるけど、走り方は教えられない。コーチはこういうフォームがいいという指導はできても、バイクのポジションはいじれない。でも、ここならその人に合うポジションが作れますし、近くのサイクリングロードで一緒に走って教えることもできる。バイクの買い替えに伴うパーツ選び、フレームサイズもアドバイスできます」

なぜトライアスリートこそ
フィッティングの恩恵が大きいのか?

同じスポーツバイクを嗜む市民アスリートの中でも、トライアスリートのほうが、フィッティングの恩恵は大きいと渡邉さんは強調する。

「ロード乗りはレース志向からグルメライド派まで志向が様々ですが、トライアスリートはレースに出て結果を出すという明確な目標がある。だからこそ、学ぼうとする意識が高い。実際にポジションやフォームに悩んでいる人、どういう練習したらいいかわからない人も多いですね。サドルや首、肩周りに痛みを抱えている人も少なくないです。だからフィッティングを行っても、トライアスリートのみなさんは真剣に向き合ってくれます」

加えて、スイム、バイク、ラン3種目あるトライアスリートならではの悩みにも応えられるという。

「3種目とも練習しないといけないので、時間的な効率も必要ですよね。ひとりでフォームに試行錯誤したり、高価なパーツをいろいろ試したりするより、一度フィッティングを受けることのほうが遠回りせずにすむはずです」

そして、レース(競技)を楽しむことを共通の目的とするトライアスリートのフィッティングでも、人それぞれ目指すところや競技スタイル、年齢・レベルによって、ニーズは異なるとも。

「私がこれまで聞いてきた中でも、より速く・強くなりたいというパフォーマンスUPの方向で課題や悩みを抱えているトライアスリートも、もちろん多いですが、一方で、故障や事故のリスクを抑え・安全性を確保して、長くトライアスロンを続けていきたいというモチベーションのほうが大きい方も多くいらっしゃいました。その場合、より空気抵抗が少なく・大きなパワーを発揮できるポジションではなく、むしろ逆のアプローチ、例えばDHポジションをとることを諦めるという提案をすることもあります。結果的にそのほうがメリットが大きいですからね」

このあたりもひとり一人の事情都合、志向に応じて、より最適解に近い提案をしてもらえるのが、パーソナル・フィッティングの最大のメリットだろう。

パーソナル・フィッティング
プロセスを体験

本企画ではコナチャレ2期生で、2024年にはアイアンマン世界選手権(ニース)にも出場した太田成美さんが渡邉さんのフィッティングを体験した。

スイムコーチの顔ももつ太田さんは、もちろんスイムは速く、身体的なポテンシャルも高いので、国内のレースでは好成績を収めているが、バイクは乗り始めて数年。まだまだ経験不足と本人も実感している。

また、ニース挑戦前にロードバイクを新たに購入したが、ポジションがしっくりきていないのか、以前よりもバイクとの一体感がなく歯がゆい思いをしていた。

カウンセリングで
過去の棚卸し

先述のとおり渡邉さんはスペシャライズドのメソッドと測定機材をフル活用したフィッティングを行っている。

最初のステップは「カウンセリング」。いきなりローラー台にセットしたバイクにまたがるのではなく、事前に答えてもらったアンケートをもとに対話する中で、受け手の本当のニーズを引き出し、それに応じた解決策を提案していくというスタイルだ。

「最初は、アイスブレークも兼ねて、長めに話をします。過去のライドでどういう良い思いと嫌な思いをして。今後どうなりたいのか、ポジションを変えることに何を期待しているのか、過去の棚卸しと目指すべき方向性を聞き出します」

続いて、約項目からなる身体評価を行う。柔軟性や筋肉量なども見極め、バイク練習以外で必要なストレッチや筋トレなども示唆していく。

カウンセリング❶
経験・課題の〈棚卸し〉

カウンセリングは、事前のアンケートをもとにライダー本人へのインタビューから始まる。身体に痛みやストレスを感じるところ、過去のケガの履歴などを聞き、その人のライディングを「棚卸し」していく作業になる。

体験モデルの太田さんの場合は、何よりも「バイクとの一体感がない。こいでいてもバラバラな感じがする」という不安があった。さらにニースを数カ月後に控えているため目標は「もちろん、速くなりたい」。これらの話をもとにフィッティングの方向性を考えていく。

カウンセリング❷
身体特性を徹底チェック

続いて、専用の計測器具などを使い、座骨幅、前屈など約20項目の身体評価を行う。この中で太田さんに自覚はなかったが、右足がやや外反気味だったことが判明。「右コーナーが苦手ですよね」という渡邉さんの指摘に「なんでわかるんですか?」と目を丸くしていた。これを踏まえて右シューズに3㎜のウェッジを入れてみることに。

コーチングも織り交ぜ
パフォーマンスUPを探る

ここからいよいよ、第2段階の「フィッティング」を行う。あらゆるバイポジションを再現できるRETULのフィッティングマシンMUVE(ムーブ)と3Dモーションキャプチャーを使用していく。

ハーネスを身体にセットした状態でペダリングを行うと、足首、ヒザ、ヒジ、肩などに貼り付けた測定マーカー16カ所より全身の動的データがモニターに表示され、適正レンジに収まっているのかが一目瞭然となる。

渡邉さんは個々の身体的特性や目指す走り方に合わせて、たとえ適正レンジを多少外れたところでも、本人に最適なフォームを探っていく。これも経験豊富なフィッターだからこそできる技だ。その過程で、効率的にパワーが出るペダリングの仕方や身体の使い方を伝える「コーチング」の要素も入ってくる。今回はSTRAVA上で太田さんの過去のレースのデータを見て、走りの傾向を探る場面もあった。

フィッティング後は、渡邉さんと一緒に実走しながら作り出したフォームを維持できるかチェックしたり、さらに改善点を探していくこともある。

フィッティング
ペダリングやフォームを解析

太田さんの現在のバイクのポジションを計測して、あらゆるポジションを再現できるサイジングバイクMUVEで再現。ハーネスに接続されたマーカーを肩、ヒジ、手首、ヒザ、足首など各関節に貼りつけ、ペダリングをしながら、専用のカメラを使って3Dキャプチャーで計測。ペダリングやライディングフォームを解析していく。

フィッティング+コーチング❶
ポジション調整とフォーム&ペダリング指導

クリート位置や、ハンドルのセッティングを微調整して握り方も変更。安定感が増し、パワーも上がるフォームをアドバイスしていく。実際に太田さんは低いエアロフォ ームを作ることができ、横から肩を押してもグラつかなくなった。さらにペダルを回しながらカカトの高さや足首の角度を修正し、よりパワーの出るペダリングを探る。

フィッティング+コーチング❷
フォーム改善策の提案

苦手だったDHポジションも、S字型のエルゴタイプのバーに交換し、角度も変えながら試してみた。ここでもバーに体重を預けるようなポジションを探り、太田さん自身にとっても違和感のないフォームを作ることができた。

「太田さんはスイマーなので身体の柔軟性がとても高く、深いエアロフォームもとれてしまう。本人の中で大丈夫なポジションでも、それが本当に力が入るポイントなのかどうかを探るのに、経験が必要なところでした」(渡邉)

新たなフォームを体験した太田さんは「乗っていて安心感はあるし、楽です。ワット(出力)も安定した感じです」と手ごたえを感じていた

パフォーマンスUPを究める
バイクフィッティング
森川雅樹さんの場合

強豪エイジグルーパーの森川さんは、渡邉さんのフィッティング受けて3年目。最近の依頼は「とにかくワット(出力)を上げたい」ということ。

新たにエアロコーチの一体型DHバーをつけられたんですが、ポジションが『ほどけない』ようにしたいということ。つまり、右がいいと左がズレるというふうに、ならないようにしたい。フォームがまとまったカタチで、力を込めてこげるか調べてほしいということでした。そこで、腕周りの最適なポジションを再構築しました」(渡邉さん)

「フィッティングしたら終わりではなく事後のフォローアップもしてくれることにすごく助けられてます!」(森川さん)

より安全に・長くを優先して
DHバーを付けない提案
巽朱央さんの場合

コナチャレ第1期メンバーでもある巽さんは体調を崩し、しばらくバイクから離れていたが、再び乗るために三ツ星フィットサービスの門を叩いた。

「久しぶりのライドで恐怖心もあるし、安全に乗りたい、フォームを基本から作り直したいというオーダーでした。そこで、DHバーは潔く辞めてもいいんじゃないですかとアドバイスしました。さらに、腕の外側を使えるようなフォームにすることで、快適性を上げるようにしています。最近は年齢を重ねて柔軟性が下がっても、安全に楽しく乗れるフォームを再構築したいという人も増えてきています」(渡邉さん)

バイク最適化セッション
by 三ツ星フィットサービス

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