COLUMN KONA Challenge

トライアスリート的「TTの走り方」by TK

投稿日:


ルミナ編集部

text by:

©Kenichi Nakashima

KONAチャレンジ✕Zwift Academy Tri 2020
TK&メンバーと挑戦した「40㎞TT」に学ぶ!

コロナ禍の2020年、国内トライアスリートの間でも一気に普及が進んだバーチャルサイクリング&ランニングアプリ「Zwift(ズイフト)」

11月~12月にかけて実施されたトライアスリート向けの世界展開イベント「Zwift Academy Tri(ズイフト・アカデミー・トライ)=以下ZA Tri」2020年度版は、国内でも、さらに大きな話題を呼んだ。

まさに方向性を同じくする「KONAチャレンジ」でも、ZA Triと連動した公式イベントやミートアップを開催し、プロジェクトリーダーTK(竹谷賢二さん)やコナチャレメンバーとともにバイクワークアウトに挑んできた。

そして、ZA Tri 2020の最終日(昨年12月23日)には、その〆のイベントであるレース(40㎞タイムトライアル=以下TT)にみんなで臨む公式イベントを開催。

インドア&バーチャル・トレーニングが一般的なものとして定着した2020年の意味を再認識し、総括するようなイベントとなった。

ここでは、ランも含めすべてのワークアウト&レースを実践し、最終的にはZA Tri Teamのメンバー候補に挙がることにもなったTKが本イベントで語った、トライアスリートのための「TTイベントの走り方」そのヒントを紹介しよう。

(写真キャプ)昨年12月23日夜に開催された40㎞TT挑戦イベントにはTK&コナチャレメンバーのほか、多くのトライアスリートが参加した

Zwift Academy Tri とは?

Zwiftにはサイクリング、ランニングの多種多様なワークアウトやレースが用意されているが、さらに数カ月の開催期間の中で所定のワークアウトやレース(タイムトライアル=TT)に挑戦する「Academy」と呼ばれる企画も展開されている。このうちトライアスロンに特化した企画が「Zwift Academy Tri」(2020年度版は同年10月29日~12月23日に開催)。バイク&ラン各5つのワークアウト、同ふたつのレース(TT)にはZwiftユーザーなら誰でも参加できる。

所定のワークアウト&イベントをこなして、アカデミーを修了したユーザーの中から、若干名(2020年版は6人)の精鋭が選抜され「Zwift Academy Tri Team」を結成。世界最高レベルのサポートを受けたチームメンバーは、KONA(アイアンマン世界選手権)でアマチュア最高位や年代別表彰台などのそうそうたる結果を残している。

▶2020年版「Zwift Academy Tri」
各ワークアウトの内容など詳細はKONAチャレ公式サイトでチェック!
https://kona-challenge.com/monthly202010.html

「上り調子」で終えるストーリーを思い描く。

コナチャレメンバーや一般参加者とともに、この40㎞TTに臨むにあたり、事前にZA Tri の20㎞TTを実施していたTK。

ウォーミングアップ時間を利用したブリーフィングでは、その経験も踏まえ、ZwiftでのオンラインTTの「良さ」と、40㎞TTに挑むにあたってのワンポイントアドバイスを語ってくれた。

TK 私は20㎞TTのほうは約30分ほどでコンプリートしているのですが、今回はその倍、約1時間くらいのレース。

レースと言っても、ドラフティングはできないTTバイクの設定になっていますから、あくまでも個人のタイムトライアルですが、ほかの参加者のアバターを実際の選手に重ねて、ライバルがどんな走りをしているか、頑張っているかを見て、テンションを上げて臨むことができると思います。

ペースは最初から上げていってしまうと、後半どんどん落ちてきてしまう。これは(トライアスリートの)レース形式の走りとしてはNG。

リアルのレース同様、ペース配分を十分考えて、2周回のうち、どちらかといえば2周めにペースを上げていくくらいのイメージで走り出すといいでしょう。

©Kenichi Nakashima

ビルドアップ的に徐々にペースを上げていきたいので、最初は少ペースを抑えたところ、5%抑えるくらいで入って、後半に向かって尻上がりにペースを上げていけるほうが、気持ちよく走り続けられます。

「徐々に落ちていく」ストーリーというよりは、「上り調子で終えられる」ストーリーを思い描きながら、ペースを組み立てていってみてください。

アップでは息づかい・呼吸にも刺激を

TTに挑む直前、ある程度、ウォームアップできてきたら、少し重たいギヤに入れて筋肉に負荷をかけてみたり、回転数を上げて、脚の速い動きや、それに応じた息づかい・呼吸にも刺激を入れてみるといいでしょう。

そうした低回転・高回転のアップで、息が少し上がるくらいの負荷をかけて、TTの走り始めが脚にキツくならず、スムーズに走り切れるようにしていきましょう。

自分(TK)の場合、20㎞TTではアベレージ40㎞/hくらいで走り切れればいいかというくらいに考えて臨んだのですが、最初はウォーミングアップをしていなかったので、ほどほどのペースから入りました。

TKが20㎞TTに臨んだ際のデータ。イメージどおり抑えめから入って、上げ過ぎず、でも確実に尻上がりにペースを上げて終わっている

どんどん落ち込んでいくよりは、上げていくほうが時間も短く感じられるでしょうし、やりがいも感じられるかと思います。

レース形式のTTは2週間に1回ペースでも効果的

TKの事前のアドバイスを受けて、40㎞TTに挑んだコナチャレメンバーと一般参加者たち、Zwift上のアバターやZoomでほかの参加者の走りや、ともに奮闘する姿を見つつ、走りに集中できたようだ。

TK オンラインで1時間続けて走るTTとなると、頑張らなければいけない時間が長い分キツいですが、いかがでしたでしょうか?

同じペース(スピード、タイム)で走り切るにしても、よりムダのない・効率の良い動作で走れるようになってくれば、平均心拍がより低く・いわゆる「余裕度」が高くなってきます。

余裕度が高くなれば、より集中して乗ることもできます。疲労感も違うので、(実際のトライアスロンのレースで考えると)その後のランのパフォーマンスも変わってきますよね。

レースやTTとなると、どうしても無駄にブレたり・力んだり・緊張したり・タイミングがずれたり、いろいろなことが起こるので、普段もっている実力が出せなくなってしまいがちなので、こうしたTT形式のワークアウトを普段からより多く経験しておくことは有効です。

今日はバイクのTTだけなので、私も最後はペースを少し上げて終えましたが、レースでは閾値を超えない範囲で走り続け、ランにつなぐのがポイントでしょう。

今回のイベントに参加したコナチャレメンバーたちも、普段のトレーニングではなかなかできないような集中して・追い込んだ走りができた様子。

40㎞TTに参加したコナチャレ・メンバーのひとり田所さん

田所隆之(レギュラーメンバー) 竹谷さんには、すぐに置いていかれましたが(笑)ペース配分はうまくいきました。ある程度、自分で事前に狙ったところでキープできましたね。

ZA Triのレース形式のTTには初めて参加しましたが、まわりに速い人がいると頑張っちゃいますね、やっぱり。日常のトレーニングとしては強度が高すぎる気はしますが、週1回くらいならできそうです。

TK 週1回は多すぎるかもしれないけれど、たとえば通常のリアルの練習やZwiftのワークアウトと組み合わせて、2週間に1回くらい入れるとすごい効果的だと思います。リアルではこんなに追い込めないですからね。

オンライン&バーチャルながら、「レース形式」のイベントでTTに臨むメリットは、走り終えたばかりのほかの参加者からも。

一般参加者 一緒に走っている人がいると、頑張れますね。実はこのZA Triの40㎞TTは2回目で、前回はひとりでやったのですが、そのときよりタイムが良かったです。

トライアスリート的
Zwiftワークアウト活用のヒント

ZA Triのワークアウト(バイク&ラン各5種類)とバイク&ランのTTをすべてコンプリートし、冒頭でも触れたようにZA Tri teamの選抜にも残ったTK。

指導者として活動する現状から、ZA Tri team選抜の先に進むことこそ辞退したものの、トレーニングツールとしてのZwiftワークアウトの有用性は十分感じられたと話す。

TK (ZA Triの)バイクワークアウトのほうは、いろいろなテーマのメニューが、まんべんなく良い感じにちりばめられていたと思います。

ほとんどが60分くらいで終わるメニューなので、たとえば、同じメニューを2ターン=ダブルでやってみたり、ふたつを組み合わせて、2時間のメニューにしてやってみてもいいかと思いました。

そうすることで、かなり多彩なトレーニングのバリエーションがつくれそう。

ランのほうも、トレッドミルで実践してみましたが、「かなりキツい!」というのが正直な感想。

トライアスリート向けのメニューとはいえ、陸上のトラック練習のような強度設定で、かなり速め・速めに走ることで、パフォーマンスを上げていこうという仕立てになっているのが印象的でした。

Zwiftランは、専用のランニングポッドがなくても、Bluetoothでデータを飛ばせるものがあればジムなどのトレッドミルでも十分できますので、ぜひ利用してみてください。

私自身に関して言えば、Zwiftランのおかげで、ランニングのスピード自体が上がってきたという実感はあります。

今回ZA TriのすべてをコンプリートしてみたTK。写真はそのうちのランワークアウトのひとつ(4分✕6本のインターバル)

ワークアウト中の自分を客観的にチェック

TKは昨年の経験も踏まえ、2021年も引き続きリアルとオンライン、インドアとアウトドアをうまく織り交ぜてやっていくハイブリッドなトレーニングスタイルを続けていくことになりそうと語る。

TK 2020年は私自身もそのメリットを実感しました。レースがなかったので、パフォーマンスは下がったかなと思っていたのですが、意外と下がっておらず、局所的には上がっている部分もあるくらい。

今回の40㎞TTくらいの領域でのパフォーマンスも(コロナ禍でレースがなかった割には)うまく保てているとは思います。

(こうしたTTのような走りを)やらないとパフォーマンスは保てないので、たとえレースがなくても、バーチャルでやっておくことは有効かなと。

この機会にインドアトレーニング用にトレッドミルを買いましたし、モニターも新調しちゃいました(笑)。

トレッドミルは、スピード練習がしやすいのと、自分の走りをマメに動画でチェックして、フォームを修正していけるというのがメチャクチャいいと思いました。

バイクのインドアトレーナーでも、トレッドミルでも、スマホなどを活用して自分のフォームを動画で録ってチェック&微調整することは効果的 ©Kenichi Nakashima

皆さんも、インドアトレーナーで練習しているときに(自分のこいでいる姿を)動画で撮っておくと、ワークアウトやTTのどこのタイミングで、力みが出始めて、ブレ始めるかもわかります。

エアロポジションを自分でじっくりチェックしてみるというのもインドアならではですね。

自分を客観視してみるというは大変有意義ですので、ぜひやってみてください。

©Kenichi Nakashima

竹谷賢二(TK) Kenji Takeya
マウンテンバイク競技(XC)のオリンピアンで、 現役引退後はトライアスリートとしてKONA(アイアンマン世界選手権)に8年連続出場・完走。数多くのトライアスリートの指導を手がけるとともに、自らもKONAでの年代別入賞(表彰台)を目標に掲げ、トレーニングとレベルアップのための試行錯誤・自問自答を繰り返す日々。KONAチャレンジ企画ではプロジェクトリーダーを務める。

About
「Zwift」(ズイフト)

アメリカ発、バーチャルサイクリング&ランニングアプリ。美しいグラフィックと、スマートトレーナーとの負荷・傾斜連動、インターネットを介した世界中のユーザーとのつながりなど、リアルとも違った、新しい領域のトレーニングやレースを開拓し、世界中のトライアスリート、サイクリストらのアスリートライフに変革をもたらした。

■Zwift公式サイト
https://www.zwift.com/ja

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