
大佐渡山地、標高900m超のドンデン山へと至るヒルクライムコースからの眺望。雲海の向こう、眼下に広がる国中平野は東京23区の約1.4倍の面積を誇る大穀倉地帯。遠くにうっすらと新潟や富山の山々を望む
Triathlon Island SADO #02
presented by SUN FRONTIER
島から始まる地域創成モデルづくりのスペシャリスト、サンフロンティアとともに「トライアスロンアイランド佐渡」の魅力を深掘りする特別企画の第2弾。レース前後の短期滞在だけじゃもったいない、奥深き金島の楽しみ方。
写真=小野口健太
アストロマンの島ぞ、妙なる。
世阿弥も感嘆した
知られざる理想郷を走る
にっぽんのトライアスロン界では、7年連続で人気No1に輝いているビッグレースの舞台として知られる佐渡。
大会を通じて雄大な自然の美しさを知り、豊かな山海の恵みを味わったことのあるトライアスリートはきっと多いはず。いかにも奥深い文化の一端に触れ、いつかゆっくり訪れてみたいと思っている人も、少なからずいるだろう。
佐渡は、トライアスリートが五感と脚を総動員して、四季折々、満喫したい自然と文化に満ち満ちている。

Aタイプのバイクコースとしておなじみの島一周道路(県道45号佐渡一周線)だが、小木半島の突端、沢崎鼻灯台へ向かうあたりなどレースでは走れない美しいルートもある
その意外なまでに美しく、多様性に富んだ佐渡の奥深い魅力をもっとも端的に表しているテキストは、室町時代中期、この島に配流された能の大成者、世阿弥の遺したこの一節かもしれない。
山はおのづから高く
海(かい)はおのづから深し
語り尽くす山雲 海月の心
あら面白や佐渡の海 満月青山
なをおのづから その名を問へば
佐渡といふ金(こがね)の島ぞ妙なる
72歳の最晩年に佐渡へ配流されたという世阿弥翁が、この島で著したとされる小謡集『金島書』の中の一節で、花の都から流れてきた老練の天才が思いがけず出会った理想郷のごとき島の、静謐かつ雄大な自然美に感嘆し、心躍らせる情景が見て取れる。

世阿弥が遺した能が今も息づく佐渡。薪能などの開催スケジュールはサンフロンティア佐渡のWEB「佐渡日和」でも紹介されている
時代も置かれた立場も全く異なれど、ほかの都市圏から、ただレース目的で島を訪れたトライアスリートが、実際に体感する佐渡の自然の大きさと美しさに驚き、感じ入る心の動きとリンクするものがあるかもしれない。

小佐渡内陸にある小倉千枚田を望みつつバイクを走らせる。現在もオーナー制度とボランティア活動で稲作が続く、生ける絶景
世阿弥も意外なほどの高さと存在感の大きさに驚いたと思われる佐渡の山は、最高峰の金北山で標高1,172m。本記事の取材・撮影で訪れた5月初旬には、まだわずかに雪渓が残り、大会が開催される9月とは違う威容を見せてくれる。

5月の佐渡、残雪の彩る山並みは一見、白馬か八ヶ岳かという高原の趣。ダイナミックな自然は四季折々、多彩な顔を見せてくれる
レースでは走れないルートなど
コースバリエーション豊富な小佐渡
トレーニング合宿・旅として佐渡を訪れたら、実戦対策も兼ねてレースコースのおいしい所をバイクで走るのが王道かもしれないが、せっかくなら大佐渡スカイラインやドンデン山のヒルクライムに挑み、その先でしか見られない素晴らしい景色を望むのも一興。
海が近い高地ならではの興味深い植生を見せる山の縦走路でのトレイルランも、トレーニング効果と旅の楽しみに満ちた至福のメニューたりうる。
深くて、青い、海の美しさはトライアスリートもレースを通じてよく知るところだが、島一周道路のうち小佐渡の端には、トライアスロンでは通らないルートもあり、いつもと違う風景の中を走ることもできる。

両津港近くにある「佐渡アウトドアベース」。各アクティビティのガイドやレンタサイクル、メカニックサービスもあって便利。現地トレーニング拠点にも、ちょうどいい
レースではAタイプでしか走れない大佐渡のダイナミックな風景の素晴らしさは言うまでもないが、小佐渡はトレーニングコースのバリエーションもつけやすく、地元・佐渡トライアスロンクラブの面々も普段は(大会メイン会場)佐和田海岸や真野あたりを基点に小佐渡のバイクコースの一部を走ることが多いとか。

撮影に協力してくれた佐渡トライアスロンクラブの皆さん。島外からの参加も大歓迎! Instagramの公式アカウントからDMで問合せを
レースコースをショートカットするように、少し内陸に入れば、千枚田や紅葉山など、山脈然とした大佐渡山地とはまた趣を異にする穏やかな里山の風景や新緑、紅葉を愛でつつ追い込むこともできる。

地域貢献活動をしながらレース活動を行うサイクリングチーム「佐渡ゴールデンアイビス」の重田倫一郎選手。普段のトレーニングでは、やはり小佐渡を走ることが多いという
佐渡を象徴する景色のひとつとして、一度は訪れておきたい宿根木の集落など、世々の廻船や、世阿弥と同じようにこの島に配流されてきた貴人たちによってもたらされた文化が薫る景色の中に身を置くこともできる。

女優・吉永小百合さんのCM(JR大人の休日倶楽部)で一躍有名になった「船の町」宿根木。かつて廻船業で栄えた時代の風が薫る
週末2~3日の滞在だけで参加できるミドル&ロングという、ある種の手軽さは、佐渡トライアスロンの良さのひとつかもしれないが、それだけでは何度訪れても出会うことができない景色が、この島にはある。
大会遠征の滞在を延ばすも良し、四季折々の島を訪ねて合宿を張るも良し。まだ知らないその魅力を愉しむ、トライアスロンアイランドの旅へ、いざ。

佐渡を象徴する鳥、朱鷺(トキ)。2008年からの放鳥が実を結び、現在600羽近くまで増えており、島の各所で出会える確率も高くなった

前述・両津港そばの「佐渡アウトドアベース」では、佐度産リンゴジュースからガッツリ補給できるハンバーガーまで美味しいカフェメニューも充実
鉄人、金島に遊ぶ。
世界文化遺産に登録された金山をはじめ、自然とともにある文化も多様な佐渡。
知的野蛮人たるトライアスリートなら、幾たび訪れても飽くことはない。

宿根木の廻船主の屋敷だった古民家で、佐渡の食材を生かした本格フレンチが愉しめる「お料理 あなぐち」

「お料理 あなぐち」の菊池猛シェフは佐渡の自然と文化に魅せられ東京から移住したひとり

西三川の廃校を再生利用した「学校蔵」は佐渡の5酒蔵のうち「真野鶴」で知られる尾畑酒造が手がけた新機軸のブリュアリー。お酒と発酵メニューが味わえるカフェから、酒造り体験まで様々な体験を提供している

2024年、世界文化遺産に登録された「佐渡の金山」。大佐渡・相川周辺には、特に江戸時代以降栄えた鉱山文化の往時をしのばせる史跡や資料館が点在

坑道内で熟成させた豆で淹れた金箔入りコーヒーなんていうメニューも

全島にわたって温泉が点在する佐渡。公共入浴施設も様々あるが、「SADO RESORT HOTEL AZUMA」のように、海に面した離れの露店温泉や、部屋ごとの露天風呂が付いた宿泊施設もある

京文化の流れをくむ上質な佐渡番茶と佐渡ブランド米の米粉を使用した「佐渡番茶米粉フィナンシェ」など佐渡土産も進化している

HOTEL OOSADO
トライアスロンの島から始める
地域創成のカタチ
佐渡を起点に、その地方ならではの魅力(文化・歴史・自然・食事・温泉等)を生かした地域創成のカタチを構築しているサンフロンティア佐渡。宿泊施設運営・観光資源運営・地域創生の3事業を展開しているおり、宿泊施設では老舗旅館を再生した「HOTEL AZUMA」「HOTEL OOSADO」や、大会会場へのアクセスが良い「たびのホテル佐渡」などを展開する。