深海鮫の肝油から抽出
「スクアレン」のメリットが見えた!?
2023年秋の佐渡国際トライアスロンで、A・Bタイプの参加選手18人を対象に、約2週間、深海鮫の肝油から抽出した注目成分「スクアレン」(ルカンゴールド)の摂取テストを実施した。佐渡でのテストを監修・分析した彦井浩孝さんに、その結果について訊いた。
文=原 修二
写真=小野口健太
彦井浩孝
Hikoi Hirotaka
オレゴン州立大学で健康人間科学研究科博士課程を修了。運動生理学・運動栄養学Ph.D.。NPO法人チャレンジ・アスリー ト・ファンデーション理事長。アイアンマントライアスロン45回完走(アイアンマン世界選手権11回出場)。1965年、京都生まれ。
佐渡出場者18人で
2週間の摂取テストを実施
彦井 昨年(2023年)の佐渡国際トライアスロンで「スクアレン」(テストには99%純度のスクアレンを配合したサプリ「ルカンゴールド」と、その偽薬=プラセボを使用)の摂取テストを実施しました。まず、そのテストの概要をお話します。
スクアレンの摂取はA・Bタイプの参加選手18人(男子12人・女子6人)を対象に、大会前日・当日と大会から2週間後まで行いました。
参加者のうち半数の9人にはスクアレン、別の9人にはプラセボ(擬似的なサプリ)を配布。参加者たちも私も、誰がどちらを摂ったか分からないようにして、同じ摂取法で毎回4粒ずつ摂ってもらいました。
そして、大会前日・当日・1週間後・2週間後の計4回、主観的コンディションについてのアンケートを実施しました。
スクアレンとは?
スクアレンの化学式
C30H50
不飽和炭化水素と呼ばれる化学物資で、アイザメなど深海鮫の肝油に含まれる成分。サプリメントのほか、化粧品としても活用されている。
レース後の主観的な
コンディションをチェック
このアンケートは「全体的な体調」「寝つき」「睡眠の深さ」「寝起き」「疲れ」「痛み」「食欲」「いらいら」「不安」「意欲」の10項目について、その程度を線に×印をつけることで回答するというもの。VAS(ビジュアル・アナログ・スケール Visual Analogue Scale)法と呼ばれ、医療などのアンケート調査でよく用いられる手法です。
主観的な感覚はアナログなものですから、5段階や10段階で数値化するより、線の位置に印をつけるほうが、被験者が感じたことを示しやすいというメリットがあります。
全体的な体調など
リカバーの面で有意な差
テストの結果をまとめると、全体的な体調・寝つき・睡眠の深さ・寝起き・疲れ・痛み・食欲・意欲の8項目は、レース前日と比較して、レース当日(ゴール後)では低下もしくは悪化する傾向が見られ、レースの1週間後、2週間後は、それらが改善する傾向が見られました。これは被験者が過酷なレースでダメージを負い、1週間後・2週間後と時間の経過によって回復したことを表しています。
この結果に多重比較による統計処理を行ったところ、全体的な体調では、スクアレンを摂ったグループも、プラセボを摂ったグループも、レース前日とレース当日、レース当日と1週間後またはレース2週間後で有意な差が見られましたが、両グループを比較すると、1週間後ではスクアレン摂取グループのほうがプラセボ・グループよりも高い改善が見られました。(グラフの*印)
また、疲れ・痛み・食欲・意欲の改善では、スクアレン摂取グループのみに有意な差が見られました。
テストが示した
スクアレンの可能性
佐渡の過酷なレースで、参加者は当然レース前日より当日のゴール後にダメージを残し、レース後は時間の経過によって回復していくわけですが、このテストの結果は、スクアレンの摂取がそのリカバーに、何らかの影響を及ぼした可能性を示唆していると考えられます。
ただし、今回はあくまで被験者の主観的なコンディションについて検討したもので、客観的にコンディションを示す生理的指標でパフォーマンステストを実施したものではありません。
日々の体調は被験者の生活行動(食事、運動・トレーニング、疲労回復法、仕事などの活動)に大きく影響を受けますし、個人差もあります。
スクアレンの性質をもっとよく知るには、今後これらを考慮した検証・検討が必要になるでしょう。