91歳のアイアンマン挑戦を可能にする
トライアスロンライフの秘密。
90歳を超えてもトライアスロンを楽しみ、アイアンマンにも挑戦できる――。世界中のトライアスリートが注目し、尊敬する、IRONMAN世界選手権最高齢完走記録保持者、稲田弘さん。前人未到の挑戦を可能にしているトライアスロンライフとは? IM世界選手権11回完走のスポーツ生理学博士(米国Ph.D.)彦井浩孝さんがその秘密を科学的に解き明かす。
文=原 修二
写真=小野口健太
Hiromu Inada
70歳でトライアスロンデビュー。76歳でアイアンマンに初挑戦。80歳でKONA(アイアンマン世界選手権)を初完走し、エイジ優勝。2016年、2018年にもKONAで優勝し、最高齢アイアンマン完走(86歳)の世界記録をもつレジェンド。91歳の今年、アイアンマン世界選手権完走の世界記録更新に挑む。1932年、大阪生まれ。
聞き手/彦井浩孝
Hikoi Hirotaka
オレゴン州立大学で健康人間科学研究科博士課程を修了。運動生理学・運動栄養学Ph.D.。NPO法人チャレンジ・アスリー ト・ファンデーション理事長。アイアンマントライアスロン45回完走(アイアンマン世界選手権11回出場)。1965年、京都生まれ。
老化の先にあるのは
さらなる進化。
落車事故・入院から復活
彦井浩孝(以下彦井) 稲田さんの挑戦は、いろいろなメディアで紹介されていますが、ルミナに登場されるのは昨年の春以来です。まずこの1年間のことを教えていただけますか?
稲田弘(以下稲田) 2023年はニースのアイアンマン(以下IM)世界選手権を目指して、6月ハワイ島で開催されたIM70・3に出場しましたが、ランでミスコースしてしまい、ゴールはしたものの失格。出場権は取れませんでした。その後、2024年にコナで開催されるIM世界選を目指して、12月のバッセルトン(IM西オーストラリア)に向けて練習していたんですが、10月10日にバイクで落車し、頸椎骨折で入院。出場できませんでした。
彦井 頸椎を骨折すると半身不随になりかねませんが、もう回復して、練習を再開されていると伺いました。
稲田 幸い第3頸椎の突起が欠けただけで、頸椎のケガとしてはそれほど重篤なものではなかったんです。ただ、椎間板を損傷して大量出血し、血が鼻のほうへ上がって窒息しそうになった。しかしこれも幸いなことに、病院がすぐ近くにあり、救急車の到着も早かったので命拾いしました。
3週間入院しましたが、少しずつリハビリをして、年内にはトライアスロンの練習を再開できそうなところまで回復。ドクターから「3種目の練習OK」をもらい、今は通常のトレーニングができるようになりました。
週1回のロングライド100㎞もやっていますし、冬の合宿ではいつもどおりバイク自走で合宿地の館山まで(片道約160㎞)往復。担当の医師も回復の速さに驚いているようですが、日頃鍛えていたおかげかなという気がします。
というわけで、現在は6月のIMケアンズでのコナ出場権獲得を目指してトレーニングに励んでいます。
年齢による衰えを
トレーニングでカバー
彦井 私もトライアスロン、アイアンマンをやってきて、継続する大変さを知っていますから、稲田さんが90歳を過ぎても続けられていること、そしてケガをしても素早く復活されていることには驚くばかりです。通常の科学的な知識や経験では計り知れない、生命の可能性を感じます。
稲田 歳を取るのは人間の宿命ですし、私も年齢による衰えを日々実感しています。身体は硬くなりますし、動きは遅くなり、筋肉は衰え、骨ももろくなっている。それをカバーするために、日常的にトレーニングを一生懸命やっているわけです。そして今のところ、練習で身体の衰えをある程度カバーできているのかなと思います。
彦井 私は20年以上、看護学校で教師をしていて、生徒に「一般的に人間は40歳を過ぎると体力が低下する」といった話をしているんですが、稲田さんのお話を聞いていると、そういう常識は必ずしも通用しないというか、そういう一般論に囚われていては見えないものがあるんじゃないかという気がしてきました。
稲田 私も衰えは感じますから、常識は間違いではないと思いますが、私の場合は70歳からトライアスロンを始めて、コナでエイジ優勝したのが80歳。このときは絶好調で、最後までタレずに走り、余裕でゴールすることができました。しかし、そこから体力が落ちて、完走できないこともありました。
80代で何回か完走して、コナの世界最高齢完走記録をクリアすることができましたが、それでも日々体力の衰えは感じています。年齢と共に体力が低下するのはしかたないことです。だからそれをできる限りカバーしようといろいろ工夫する。
使っていない筋肉を
使ってみる
彦井 体力の低下をカバーするための工夫が大事なんですね。
稲田 常に意識しているのは、普段使わない筋肉を使ってみることです。トレーニングで自分が使っている筋肉や骨、骨盤の動きを意識して、そこで使っていない筋肉を使うにはどういう動かし方をすればいいのか考えて、いろいろ試してみる。
もちろんうまくいかないこともありますが、うまくいくとうれしくなり、気持ちが高揚して「明日もやってみよう」という気持ちになります。こういう意欲をもっていろいろと工夫していくことが、老化を食い止めるのに役立っているのではないかと思います。
工夫が喜びになり
発見・進化を生み出す
彦井 素晴らしいですね。エリート選手も含めてすべてのアスリートが実践すべきことをやっていらっしゃる。
稲田 若い頃は普通にできていたことが歳をとるとできなくなります。コーチにも教わりますが、それとは別にスイム・バイク・ランそれぞれに身体の使い方を自分で工夫していくことで、いろいろな発見があるんです。
たとえば筋肉の使い方や動きを工夫したら、バイクで坂を前より楽に上れるようになるといったうれしい変化があって、「自分は進化している」と感じることができる。それがうれしいからもっと工夫したくなる。
彦井 老化は人間にとって避けられないけれども、老化の先に「進化」があり得るというのは初めて耳にする発想です。そこから老化の定義が変わっていくかもしれません。
「歳をとったからできない」ではなく、どうカバーするかを考え、工夫し、発見し、できる中で試していくと、高齢化したからこその進化がある。老化するからこそできる発見があり、新しい進化があるということではないかと思います。非常に勉強になります。
体力低下防止のため
毎日トレーニングする
彦井 疲労の回復が遅くなっているといったことは感じますか?
稲田 10年前と比べると、疲れやすくなっているし、疲れがとれにくくなっています。年齢の割に回復は速いかもしれませんが、日常的にトレーニングをやっていることで、ある程度回復力の低下を抑えられているのかなと思います。
彦井 トレーニングを休むと逆に疲れるといったことがありますか?
稲田 休むとだめですね。量は日によって違いますが、毎日やります。1日サボると体力が目に見えて落ちるのが、次に身体を動かしたときに分かります。だから入院中も早く身体を動かしたくてしかたなかったです。
彦井 3週間の入院は大きいと思います。年齢に関わらず、人は動かないと1日0.5%筋肉が落ちますから、3週間入院すると10%くらい落ちることになります。
稲田 最初の1週間は完全に身体を固定されてトイレにも行けませんでした。2週目からリハビリで、まず歩く練習から始めましたが、最初は歩けず、足の重さに驚きました。筋肉がいかに早く落ちるか実感した。
それでも毎日やっていると1日ごとに楽になっていきました。回復のペースは速かったようで、リハビリの先生もびっくりしていました。
衝撃を与えて
骨の回復を促進
彦井 低下した体力を戻すために、リハビリで工夫したことはありますか?
稲田 ウォーキングでも、骨に衝撃を与えるために、体重でどすんどすんと踏みつけるように負荷をかけました。腰・骨盤にも響くように意識した。
彦井 正しい考え方ですね。骨は刺激を与えないと衰えます。
稲田さんはそういう工夫を自然にしているわけですね。その積み重ねが今のトライアスロンの活躍につながっているんだと思います。
工夫・発見の余地が無限
にあるトライアスロン
稲田 トライアスロンのいいところは3種目で全身が鍛えられることです。それぞれ筋肉の使い方が違いますから、工夫や発見の余地が無限にあり、それが楽しい。
彦井 トライアスロンは気づき・発見のスポーツで、やってみたらできたという発見の連続が楽しい。しかし、マンネリ化して義務になってしまうと、その魅力を見失ってしまいます。
その点、稲田さんは発見・チャレンジをずっと続けている。そこがすごいと思います。
稲田 レースはつらいけど、トレーニングは楽しい。常に考え工夫することは脳にもいいのではないかと思います。工夫して良い結果が出ると、精神的にもポジティブになりますから。
彦井 食の工夫・こだわりはありますか?
稲田 トライアスロンでパフォーマンスを発揮するために、食は一番の基本です。私は70歳でトライアスロンを始めた頃からひとり暮らしですから、この20年くらい自分で食事を作ってきました。
その中で管理栄養士の知り合いに相談しながら、どういう食事がいいのかいろいろ研究して、自分なりの食事をほぼ確立しました。今は毎日その同じ食事をとっています。
彦井 どんなメニューですか?
稲田 朝食は野菜スープがメインです。野菜11種類にキノコやイモ類のほか、タンパク質として豚肉や鶏胸肉を入れ、ゴマや酢なども加えます。量が多くなるので2種類に分けて、味に変化をつけています。糖質・炭水化物は、ライ麦パンに蜂蜜をつけて食べ、その他に果物もあわせて食べます。食べるのに時間をかけるので、そのために早起きする。
昼食は外でトレーニングする途中にコンビニなどで食べますが、栄養を考えて弁当などをチョイスしています。
夕食は焼き魚、特に骨ごと全体を食べられるメザシが多いです。主食は玄米ご飯。納豆にキムチやしらすを入れたりして食べます。梅干しも食べますね。これに野菜や豆腐、ワカメなどを入れた具沢山みそ汁をどんぶり一杯。
彦井 栄養は申し分ないですね。管理栄養士のアドバイスを取り入れているのも素晴らしい。栄養的にバランスがとれているわけですから、毎日ほぼ同じものを食べるというのも理にかなっていると思います。
稲田 少しずつ改良しながら今の食事にたどり着いたんですが、これでレースもトレーニングも問題なくできているので、これでいいのかなと考えています。
何歳からでも
チャレンジはできる
彦井 トレーニング・食事・睡眠の3つがそろって初めて身体はできていますから、稲田さんが実践されていることはアスリートの理想です。
今日うかがったお話はすべて科学的な理論にかなっていますし、とても基本的なことばかりです。それはアスリートだけでなく、一般の人も健康のために実践すべきことでもあると思います。
私は70代の高齢者を対象にした運動教室でも教えていますが、多くの高齢者にとってはその教室に来るだけでもチャレンジです。病気で医師に勧められて参加したという人や、運動はしているけど食事や睡眠に問題がある人なども多い。そういう人たちにも稲田さんのライフスタイルは参考になりますし、それを実践すれば、何歳になっても素晴らしい人生を送れるようになる可能性があると思います。
リカバー系サプリ「ルカンゴールド」
稲田さんが摂って実感した「違い」
彦井 稲田さんは昨年、ルカンゴールドを試されたんでしたね?
稲田 1カ月くらい試しました。感じたのは、目覚めがいいということです。起きたときの感じがスッキリしていて、いいと思いました。
それから、練習後のダメージが比較的早く抜ける気がしましたね。感覚的なものですが、摂らなくなってからはその逆の変化が感じられましたから、単なる気のせいではないと思います。
毎日トレーニングしながら、いろいろなサプリメントを試していますから、続けて摂っていて変化があると分かるんです。その中でこの「ルカンゴールド」の場合は「また摂りたいな」と思いました。だから、佐渡トライアスロン大会に出場した選手の摂取テストの結果は興味がありました。
稲田 今回のテストの結果は、私が「ルカンゴールド」を摂ったときに感じたことにつながっている気がしますね。
彦井 レース後に参加者それぞれ食事やサプリメント、ケアなどが異なる中で、今回スクアレンを摂ったグループとそれ以外のグループに違いがあらわれたのは事実です。稲田さんにもこれから継続して摂っていただき、その結果をまたお話いただきたいですね。
ルカンゴールド
アイザメの肝臓に蓄えられたスクアレンを99%以上の高純度で精製し、ゼラチンのカプセルで包んだ栄養補助食品。1日6~8粒を目安に2~3回に分けて摂る。原材料は、深海鮫精製肝油エキス、ゼラチン、グリセリン。
ルカンゴールド
アスリートパッケージ
(写真左)
30粒入り
価格:2,916円(税込)
内容量:18.6g
(620mg×30粒)
(同右)
200粒入り
価格:12,960円(税込)
内容量:124g
(620mg×200粒)