
地形を生かし蔵王連峰の壮大な風景の中を駆け抜けるバイクコース。谷に架かる橋を往復する時はパッと視界が開けて絶景
おもてなし山形トライアスロン in ZAO
ハードな新規大会発動。
花、緑、紅葉、樹氷……。
感動的なまでの大自然の風景が広がる中にある日本屈指の古湯「蔵王温泉」を舞台に、
2025年新たなトライアスロンンレースが誕生する。
9月開催に向けて作家でトライアスリートの謝孝浩さんが現地へ飛んでその魅力をレポート。
文=謝 孝浩
Text by Takahiro Sha
写真=小野口健太
Photographs by Kenta Onoguchi
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この透明度。もちろん水質は申し分ない。高所の淡水スイムなので安全対策も万全。コースから岸までが近いのも安心感に繋がる
>>Race
山形のおもてなしが随所に
蔵王といえば、真っ青な空に林立する真っ白な樹氷の雪景色を思い起こす人も多いだろう。山形県と宮城県の県境にある蔵王連峰周辺は、冬だけでなく春には新緑、夏にはトレッキングや登山、秋には紅葉狩りと四季折々、大自然を満喫できる魅惑のスポットだ。
その蔵王で今年の9月トライアスロンの新規大会がお目見えする。その名は「おもてなし山形トライアスロンinZAO」だ。
「山形は首都圏からも関西からも、そんなに簡単に来ることができる場所ではないと思います。しかしもし足を運んでくれるのなら、最大限におもてなしをさせてもらいたい。山形牛や庄内の魚、地元の伝統的なグルメ芋煮などの食、地酒、効能たっぷりの温泉、そして人の温かさなど、山形には多くの魅力があります。

山形といえば、芋煮も欠かせない
大会名に『おもてなし』と銘打っているので、その期待を超えるおもてなしで選手を迎えたいと思っています」
トライアスリートで海外のアイアンマンにも参戦している船橋吾一大会実行委員長は目を細める。
蔵王の麓に住み、小学生のときはスキー競技で蔵王スキー場に通っていた船橋さんは、当時の賑わいを今に繋げ、活性化したいという思いが長年あった。7年前からはじめたトライアスロンは、その思いの実現に向けての発想を生み出した。

トライアスリートである船橋実行委員長は、自らの地元の人脈を生かし、新鮮な発想で、山形ならではの仕掛け作りをしている
大好きなトライアスロンの大会を、この場所でできないか。経営者として長年育んできたさまざまな人脈の協力を得て、今回、大会開催へと導いたというわけだ。
おもてなしの仕掛けは、随所にある。まず大会開催日が土曜日ということ。スタンダード(SD)は11時から、スプリント(SP)は13時からスタートだ。
前日入りが理想だが、東京始発の新幹線に乗れば、下車駅にシャトルバスが待機していて、大会会場に直行運転。SPならば余裕で参加できる。SDは時間的にはギリギリだが、当日入りの選手には、バイクセッティングの手伝いもしてくれるとか。
また蔵王温泉周辺の宿泊施設の協力で、宿泊キャンペーンを実施。宿泊費が大幅に割引される。コロナ禍以後、なくなる大会が多くなったアワードパーティも開催。レース後に山形の味をたっぷり堪能できる。
「大会が終わったら、バラバラと解散するのではなく、選手たちみんなで語り合い、山形の食や温泉を満喫してもらいたいですね」と船橋大会実行委員長。
日本屈指の難コース
蔵王の地形を生かしたコースも高低差があり刺激的だ。
「SDのコース設定は、制限時間、運動量も含め、SDの1.5倍のミドルをイメージしています」と加藤豊大会技術代表は語る。

透明度バツグンの盃湖を泳ぐ
スイムは、標高880m地点にある盃湖。大会のときだけ泳ぐことが許可されたので、透明度も高く水質もピュア。1周500mの周回をSDは3周、SPは1周。流れの影響は少なく、波もほとんどないため泳ぎやすい環境だが、9月とはいえ水温は18〜20℃と低めだし、酸素の薄い高所の淡水スイムのため十分なアップと呼吸の安定が重要になる。

T1からT2の間に最大の勾配の13%の坂が待ち構えている。最大の頑張りどころで、家族も参加できる応援エイドも設置
バイクは、1周9.2㎞の周回をSDは4周、SPは2周。周回後T2までさらに上り、獲得標高はSD約1000m、SPは約500m。コースは上りと下りの切り替えが多いコース設計で、休みどころがない。上り勾配は5〜7%が中心。
一瞬だが13%の急坂もある。一方下りは7〜8%で安全のためにDHポジション禁止。ラフな路面の部分もあるので、太めのタイヤで空気圧を低くしたロードバイクがいいだろう。TTバイクはあまりおすすめできない。

スキー場のゲレンデを上りトレースして下った後、今度はジャンプ台の隣の坂をアップダウン。何周回できるか!?
ランは、1周2.4㎞の周回をSD4周、SP2周。周回後、フィニッシュまでさらに上り、獲得標高SD約350m、SP約170m。スキー場のゲレンデやジャンプ台横の急坂などアップダウンが激しく、舗装されていない不整地が半分あるため、厚底などのクッション性の高いシューズがおすすめ。
バイクで削られた脚にはかなりハードで、ダブルパンチを喰らわされる感じだ。闇雲にハードなだけはない。3種目とも徹底した安全対策のための準備をしているし、なるべく選手にフィニッシュしてもらうためにスキップ制度もある。また多くの参加者に参加してもらうためにリレータイプもある。

ゲレンデが舞台のため、広々したコースが魅力
「13%の一番の急坂をぜひ上ってもらいたいとコース設定しました。そこには応援者でいっぱいにする予定です」と加藤大会技術代表は微笑む。
既成概念にとらわれない発想が何か大きな新しい原動力を生み出している感じがする。蔵王にしかない唯一無二の大会になりそうな予感がある。
熱い地元の思いが詰まった大会。その歴史の1ページに選手として名を刻んでみてはいかがだろう。
>>観光
名湯・美食で極上の癒しを。
山形の美味いものがふんだんに振る舞われるアワードパーティ。アスリートを大歓迎してくれる宿に泊まり、あちこちで湧き出る温泉を満喫。おもてなしがレース後にも目白押し。観光や周辺のオススメを紹介。
蔵王温泉は、開湯は1900年も前というから驚き。強酸性の硫黄泉のため血行を良くして美肌効果もある。温泉街には3つの共同浴場、3つの足湯、5つの日帰り温泉施設がある。日帰り温泉のひとつの源七露天の湯。豊富な湯量が自慢。入浴料600円。
河原湯共同浴場では浴槽の底から自噴する温泉が楽しめる。温泉街には、この河原湯に加え、上湯、下湯の3つがある。入浴料300円。
昼夜の寒暖差が大きく、夏暑く冬寒い風土で肥育された黒毛和種の山形牛は、肉のキメが細かく深い味わいとまろやかな脂質が魅力。部位ごとに、さまざまな味が楽しめる。このブランド牛をアワード大会で堪能できる。
蔵王の懐にある「ぐっと山形」は、銘菓や銘酒、漬物、肉や魚の加工品など山形ならではの選りすぐった名産品が揃っているので、お土産を探すのにもってこい。
山に抱かれた山形は、名水の宝庫。その水を利用して、さまざまな酒蔵が点在していて、生まれる地酒もバラエティ豊か。アワードパーティでも、たっぷり味わえる。
鍋を囲んで河原で芋煮会をするのは秋の風物詩。醤油ベースで牛肉と里芋、ネギを入れるのが山形流。山形の食文化の真髄のような地元グルメもアワードパーティで楽しめる。
レース参加者のために、蔵王温泉の10以上の宿泊施設が割引価格で宿泊できるキャンペーンに参加している。アワードパーティ参加の特典付き。地元みんなでトライアスリートを歓迎したいという思いが伝わってくる。
※選手には無料で立ち寄り湯を利用できる利用チケットを配布予定
おもてなし山形トライアスロン in ZAO
開催日:9月20日(土)
開催場所:山形県蔵王温泉・盃湖周辺道路
カテゴリー:スタンダード、スプリント、
スタンダードリレー
申込締切:7月31日(木)
《アクセス》
東京
↓(JR新幹線「つばさ」約2時間半)
かみのやま温泉(会場最寄り)
※シャトルバスで会場まで送迎あり。
>>現在申し込み受付中!

謝孝浩Takahiro Sha
1962年長野県生まれ。アラ還の寅年男。トライアスロン歴20年を超えたにもかかわらず、あいかわらずバイクが大の苦手。極度に身体が硬い、腰痛持ち、おっちょこちょい。最近は膝痛も。四重苦を抱えながらも、トライアスロンライフをこよなく愛す。旅烏のコミュニティサイト(練習日誌公開中。チーム員も随時募集中!)http://www.triathlontrip.com/