
©Kenta Onoguchi
トライアスリートが
今、スントを選ぶ理由とは?
心拍計やGPSなどの機能を備えた、いわゆるマルチスポーツウォッチ・ブランドの老舗として、トライアスリートにもおなじみのSUUNTO(スント)。
近年はガーミンをはじめとする後発、競合ブランドのシェアが高まり、国内のトライアスロン界では存在感が薄くなってしまった感は否めないが、その製品群は「余計な機能はいらない。シンプル、スタイリッシュに必要な機能を究める」というブランドの哲学とともに進化を続け、国内でも取扱元が変わりつつ脈々と展開されている。
ではトライアスリート的に、今、スントを選ぶメリットは何だろうか?
現在(2025年8月時点)ラインアップされている製品の中でも、比較的新しく・買いやすい価格帯の軽量スポーツウォッチ「Suunto Run」と、
スント・アプリやウォッチと連動した機能が使える骨伝導ヘッドホン「Suunto Aqua」、「Suunto Wing」を試しながら、この点について考えてみた。
トライアスリート目線のメリットは後述するとして、まず、スントのマルチスポーツウォッチと、競合各社のそれとを比較した際、選ぶメリットとして一般的に挙げられるのは、主に以下4つのポイントだろう。
❷バッテリーのもちと耐久性
❸シンプルな機能性、直感的に操作できる扱いやすさ
❹北欧デザインの妙
❶について言うと、このSuunto Runは国内販売価格43,890円(税込・以下同※8月時点の公式ECサイト価格)で、機能・グレード的に競合製品と目されるガーミンのForerunner 265(62,800円)より2万円近く安い。
❷のバッテリー寿命に言うと、Forerunner 265がトレーニングモード(マルチGNSSマルチバンドモード)で約14時間なのに対し、Suunto Runはトレーニングモードで最大約20時間。約1時間でフル充電できる。
機能の多彩さではガーミンに分があり、事故検出時のスマートフォン通知などガーミンにしかない機能やデータ項目も多いが、これをデメリットととるか、❸でいうシンプルかつミニマム(必要十分)な機能というメリットととるかは、個人の使い方・好みによるだろう。
価格43,890円
重量:36g
バッテリー寿命:
日常使用(スマートウォッチモード)最大12日
トレーニング(全衛星GNSSモード+マルチバンド)最大20時間
防水性能:50 m
スントが考える「必要十分」な機能とは?
かつてスント本社の開発担当者が来日した際、Luminaの取材に対して語っていたのは、「スントは本当に必要で、日常的に活用できる機能にフォーカスして製品を開発している」というポリシーだったが、そのポリシーは脈々と受け継がれているようだ。
確かに、マルチスポーツが多機能化を極め、モニタリングできるデータ項目や表示できる指標の数が増え続けている中、すべての機能を完璧に理解して使いこなすハードルの高さは上がっていく一方。
ガジェット使いやアプリ活用が苦手な人ならずとも、その超多機能を使いこなすことを、かえって煩わしく感じる向きも多く、すべての機能を使いこなしているトライアスリートはごくわずかではないだろうか。
スントのマルチスポーツウォッチは、日常のトレーニングに必要十分な機能が使えて、一般アスリートに読み解ける基本的なトレーニング指標(データ)をわかりやすく把握できればそれでいいーーというミニマリストには、うってつけだろう。
何をもって「必要十分」ととらえるかは人それぞれだが、その名のとおり「ランナー向けの設計」とされているこのSuunto Runンモードを備えており、レースでの使用も問題ない。
各トレーニング(アクティビティ)モードでは、心拍関連の諸指標をはじめとする基本的なデータから、「平均接地時間の左右バランス」「NP(ノーマライズドパワー)」(以上ランニングモード)、「脂肪の消費」「炭水化物の摂取量」、「TSS(トレーニングストレススコア)」まで、トレーニング(レース)ごとにわかりやすく可視化してくれる。
マニュアルを読み込まなくても、ある程度、直感的に操作できる扱いやすさもスントウォッチの特徴で、Suunto Runも上位モデルのSuunto Raceなどと同様に、時計本体の右側面にあるふたつのボタンと、リューズひとつ、タッチパネルだけでほぼすべての操作が完結する。

時計本体右側面のふたつのボタンと、リューズ、タッチパネルだけで、ほぼすべての操作ができるSuunto Run。軽量なナイロン製ストラップは装着感も柔らか
軽いこと=ストレスフリーを体感できる、36グラム。
さらにSuunto Runに関して選ぶメリットを挙げるとしたら「軽さ」だろう。
ステンレススチールのベゼルと「ガラスファイバー強化ポリアミド」という金属よりも軽い高剛性素材でつくられたスリムな時計本体部分と、ナイロン繊維のストラップの組み合わせで実現した36gという軽さはブランド最軽量で、先のガーミンForerunner 265(47g)よりも10g以上軽い。
数十グラムほどの軽量化に、どれほどの違いがあるものか――あらためて比べてみないと実感しにくいかもしれないが、ランをはじめとしたトレーニングに、日常使いに、長い時間着ければ着けるほど、そのストレスの少なさを実感できる。
決して大げさではなく、着けているのを忘れてしまうようなストレスフリー。

©Kenta Onoguchi
最近のマルチスポーツウォッチならではの有用な使い方のひとつ「睡眠トラッキング」機能を活用するべく、就寝中に着けていることも多くなったが、その点でも、この軽さとナイロンテキスタイルのベルトの柔らかな着け心地はありがたい。
トライアスロンのレースシーンで使うとしても、ミドル、ロングディスタンスなど、競技時間の長い戦いになればなるほど、この小さなストレス抑制の積み重ねは、大きなメリットとなりそうだ。
バイクも楽しい。
スイム対応骨伝導ヘッドホン
Suunto Runに限らず、スントのマルチスポーツウォッチと合わせて、トライアスリートにこそ使ってもらいたいのが「Suunto Aqua」だ。
スントがアウトドアスポーツ向けに特化して設計しているオープンイヤー骨伝導ヘッドホンの中でも最新のモデルで、その名のとおりスイム(OWS&プールスイム)に対応している。
「スイム対応・骨伝導」というからには当然、泳いでいる間にも音楽を聴けるという機能が一番のストロングポイントで、32GBのストレージに入れた音楽をオフライン再生することができる。
もちろん普通の骨伝導ヘッドホンと同様、ブルートゥースでスマホやSuunto Runなどのウォッチと同期させて音楽やポッドキャストを聞くこともできるが、いかに骨伝導といえど、水中はこのオフライン再生機能がないと、途絶えることなく音を聴くことはできない。
しかし、そもそも泳ぎながら音楽を聴くことに、メリットはあるのか?
正直、当初はそう思っていたが、いつもの朝スイムで試しに使ってみると思いのほか、楽しい。特にいつもは、ほぼ無音の水中で聞こえる音が思いのほかクリアで、いつものプールがちょっとラグジュアリー感UP。
メニューに対する集中力も増すし、オープンイヤータイプなので、コーチからの指導やアドバイスも遮られることなく聞き取れる。ドリルの時間帯など、よりコーチのコメントをしっかり聞きたいタイミングでは、ヘッドホンの横にあるマルチファンクションボタンひと押しで音楽を停止すればいい。
ひとりで長く、ダラダラ泳ぐときの暇つぶしくらいかと思っていたが、これは意外な発見だった。
さらに、Suunto Aquaのスゴいところは、パフォーマンス向上にも直接的に役立つ、動作解析(モーション検知)機能がついているところ。
着けて泳ぐ間にログをとると、ストローク姿勢、ヘッドピッチ(頭の)角度、呼吸頻度、グライド時間などを識別して、泳ぎの動作・技術の良し悪しを分析してくれるのだ。
アプリにトレーニングデータをアップロードすると、呼吸角、入水角などが算出され、それらが適正範囲に収まっているかチェックできるほか、「息継ぎ中の頭の回転角度が大き過ぎて、不必要なエネルギー消費につながっている」「水中で前進するときに頭を後ろに傾け過ぎて、抵抗が増している」等々のアドバイスコメントも表示される。

Suunto Aquaでスイム・トレーニングのログをとると、モーション検知機能でのモニタリングに基づくアドバイスをスントアプリで確認できる
このモーション検知機能はスイム(水泳)だけでなく、首の可動性や筋肉の疲労のモニタリングにも活用できる。
スントアプリと連動させて頭を動かして首の可動性を評価するテストや、同じようにアプリの指示に沿って、その場でジャンプして下半身の強度や神経筋疲労を評価するテストが実施できるが、
意外に便利なのが「頸部疲労アラート」。アプリでこのモードをオンにすると、バイクライド中などに同じ姿勢を長く続けてストレスやケガのリスクが高まるタイミングを警告音で伝えてくれる。

こちらは頸部可動性評価テストモード(左)とその評価結果(右)。左側に頭を倒すときの頸椎の可動性に難ありという評価が・・・
ただ水の中でクリアな音楽を楽しめるだけでも、新たな発見ともいえる十分なメリットを体感できるのに、加えて、着けているだけで日々の動作解析・評価までできてしまう。
ウォッチと合わせてアプリと連携させてトレーニングライフを豊かにしてくれる、Suunto Aquaの存在は、トライアスリートが今あえてスントを選ぶ理由のひとつたりうる。
トライアスリートこそフル活用したいSUUNTOウォッチ×骨伝導ヘッドホン
今回はこのAquaと併せて、先行して発売されていた「Suunto Wing」もバイク、ランで試用してみたが、こちらも風切り音対策が奏功して、走っている間の音質も実にクリア。
スントの骨伝導ヘッドホンは、Suunto Run(ウォッチ)、スントアプリと同期させると「音声フィードバック」を受けることができ、ベーストレーニングやインターバルなど、設定したターゲットゾーン内で確実にトレーニングしたいとき、「Come on!」(設定ゾーンを下回っている)、「Keep it!」(設定ゾーン内)、「Slow down…」(設定ゾーンを超過)といった音声アラートが使えるのだが、
音楽や(安全確保にはマストの)周囲の音を聞きながらでも、この音声アラートが聞き取りやすい。
Suunto Wingは、最新モデルが近日中にリリースされるとのことなので、詳しくはその発表とともにまた紹介したいが、スポーツ専用に設計されたスントのウォッチと骨伝導ヘッドホンの組み合わせによる相乗効果を最大化できるのは、日々走って・乗って・泳ぐ、トライアスリートかもしれない。
©Kenta Onoguchi
そしてこだわりのデザイン性
冒頭でメリットの4つ目に挙げていたデザイン性の高さについては、スントのウォッチをはじめとする製品群が長年強みとしてきたところだが、今や実物を手に取って・使ってみないと、その違いを実感しにくいかもしれない。
以前は北欧ブランドならではのデザイン性の高さが際立っていたが、近年は、ガーミンはじめ競合ブランドのデザインも洗練されてきているため、かつてほどその差は大きくない。
ただ、細部の質感やデザイン性の高さについては、やはり明確にスントらしいこだわりが感じられ、個人の好みにもよるが、モノとしての所有欲をより高いレベルで満たしてくれるという点では、他ブランドに勝るものがある。
今回はブランド最軽量ウォッチのSuunto Runと、スントがスポーツ専用に設計した骨伝導ヘッドホンの両モデルを合わせて試し、トライアスリートが今、スントを選ぶ理由は何かをあらためて考えてみたが、
このこだわりのデザイン性も含め、シンプルかつスタイリッシュに、ただ機能的なだけじゃないトライアスロンライフを楽しみたい人に――。スントは、今もなお魅力的な選択肢であり続けていることが体感できた。
SUUNTO日本版公式サイト
https://apac.suunto.com/ja-jp