【トライアスロンLAB限定】トライアスリートに欠かせない免疫力UPとウエイトコントロール法

投稿日:2020年6月2日 更新日:


ルミナ編集部

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©Kenta Onoguchi

座学で強くなる! 栄養学講座

 

免疫力をアップして、もっともっとタフに強く

自宅で過ごす時間がいつもの何倍も長くなっている。 トレーニング以外に気なることは、食事ではないだろうか。毎日必ず必要な3度の食事について、トラ イアスリートらしく見直してみよう。トライアスリートが気を付けるべき食の2大のテーマについて、スポーツ栄養士で予防医学士の佐藤彩香さんに訊いた。


講師:佐藤彩香 Ayaka Sato
管理栄養士・スポーツ管理栄養士・予防医学士。企業・保育園の栄養カウンセリング、献立作成、栄養計算などの活動を経て独立。大学、実業団、プロチームなどの選手や健康志向の人たちに、実践型の栄養サポートを提供。手掛ける競技は球技から陸上まで多岐に渡る。 https://ayaka-familynutrition.com/

免疫力アップには 断然ビタミンD

ピンチをチャンスに変える

今は、目標が立てられない難しい時期だと思います。私がサポートしている選手の中には、この状況が長く続くだろうと見込んで、今できることをやっている人が多く、刺激を受けます。 そういう皆さんは、いつもよりも練習が積めていない中で、いざスタート地点に立ったとき、いつもの状態に戻すまでに時間をかけたくないので、ト レーニングできていた状態をどれだけキープできるかが大事だと言っていました。

何もしないでいると、当然ですが筋量が落ちて、脂肪量が増えてくる、パ ワー系の部分も落ちてくるので、それを元に戻す作業から入ることになると考えると、完全にマイナスからのスタートになります。 今だからこそ、体質改善に取り組んでいる人も多いです。 こういうピンチの状態をどれだけチャンスに変えるかと考えて行動している選手の皆さんは高い技術レベルをキ ープしている人が多い印象です。今は、
ベースを底上げすると考えているようで素敵な考え方だと感じています。

免疫力アップに 欠かせない栄養素

免疫力アップに欠かせない、栄養素のマストは、圧倒的にビタミンDです。2020年に改定された「食事摂取基準」によると、1日の必要量は、8.5㎍(18歳以上)、以前は5.5㎍なのでんと3㎍も上がっています。改定前後でこんなに変わるのは非常に珍 しいことで、それだけ注目されているということです。

また、免疫力の面だけではなく、筋分解が起こったときの筋合成にも大事ですし、骨の強化に欠かせない、カルシウムを運ぶために必要な栄養素でもあります。今のように、運動量が減って、骨に刺激がいかないと機能が低下しやすくなり、ハードなトレーニングに戻ったときに故障の原因になりかねません。 免疫力+筋肉と骨にもアプローチをするために、アスリートには絶対に意識してほしい栄養素です。

ビタミンDの王様は魚

一番のオススメ食材は魚です。きのこ類もビタミンDが豊富ですが、たとえば、100g当たりの含有量を見てみると、しいたけを2個食べても2㎍くらい。乾燥系のきくらげも有名ですが、山盛りは食べられませんよね。鮭(80gカット)=25㎍、鯖(100g)= 11 ㎍でクリアします。 1 日 1 食は魚をメインにすると摂取量がグンと上がります。

ビタミンDは脂溶性ビタミンなので、身体にストックはしやすいのですが、 1 日の上限が100㎍なので、あまり気にする必要はないと思います。 魚は処理がちょっと面倒だな、という人は、鮭、サバ、イワシ、ウナギ、ツナなどの缶詰やしらす、おかかや桜 エビなどの乾物などを利用してみるも のいいと思います。

ご飯にかけたり、サラダに混ぜたり、手間もほとんどか かりません。 缶詰は長持ちしますので、買い物に行けない今のような状況にも重宝します。もちろん、生魚のほうが、余計なものは添加されていなし、含有量は多いので、たとえば、スーパーに行けるタイミングでお刺身があれば、買い出しの日はお刺身曜日にする、というのもいいかもしれません。お刺身ならば、良質の脂や熱に弱い脂も摂ることができます。まずは、ビタミンDを意識して、次は、ビタミン A 、 C 、 E を取り入れましょう。簡単に言うと、色の濃い野菜ですね。ビタミン A 、 C 、 E には、粘膜保護やウイルスのバリア機能がありますので、併せて摂りたい栄養素です。

また、ビタミンDは日光に当たることで合成されます。今は、外での活動量が減っているため、日光に当たる時間も少なくなります。そうなるとより、 食事から摂ることが大事になります。 とはいえ、 1 日 10分〜15分くらいはぜひ日光浴してください。紫外線を浴びる必要があるので、日焼けが気になる人は、顔や身体はガードして、手のひらを太陽に当てるようにすれば OK 。外で散歩できれば理想ですが、それがかなわない場合でも、ベランダでもできますので、ぜひ実践してください。

©Kenta Onoguchi

ウエイトコントロールの第1歩 糖質・脂質の見直し

運動量が減っても太らない ウエイトコントロールのコツ

工夫してトレーニングをしていると はいえ、エネルギー消費量は減っている人もいるかもしれません。 エネルギー源の代表的なものは、食事でいうと、糖質と脂質ですよね。まずは、そのふたつ栄養素の見直しをしてみましょう。 レースの補給食などを考えるときや普段から計算している人も少なくないかもしれませんが、自分にとって、エネルギーがどれだけ必要なのか考えたことがあるでしょうか。 活動期とオフ期の必要推定エネルギーの求め方は、【表1】に当てはめると分かります。

今はオフ期の延長と考えるとトライアスリートの場合は、持久系なので、たとえば、体重が 65 ㎏で 体脂肪率15%の場合は、活動期(通常ならばシーズン中)は4132キロカロリーで、オフ期(現状)は2892 キロカロリーとなります。およそ1200キロカロリーも違いがあります。男女でも差がありますが、トライスリートのようなエンデュランス系のアスリートの場合は、1000キロカロリーくらいを目安に調整する必要があると覚えておいてください。

一般的に1 日のエネルギーのうち、6 割を糖質で摂ることが推奨されてい ます。1000キロカロリー減らさなければならない場合は、600キロカロリーを糖質で減らさなければなりません。だいたい糖質で150gくらい 減らす計算になるので、ご飯でいうと、1 合分くらいになります。 そのため、たとえば、補食として、お菓子を食べている場合は、すぐにポ ンと糖質の量は跳ね上がってしまいますので注意が必要です。

持久系は他のアスリートと比べても、 オン・オフ期で一番差が出るので、脂肪がついたという感覚を覚えやすいかもしれません。 そのあたりを頭にいれておいて、量を気にして摂り過ぎない。そこに、質が伴うとすごく良いと思います。たとえば、砂糖とご飯では同じ糖質量でも、身体に取り込むスピード感が違います。 砂糖のほうが血糖値が上がりやすいですよね。

よくGI 値という言い方をすると思いますけれど、それが低いほうがいい。 それが高いと、身体にすぐに取り込まれるので、過食に走りやすくなってしまうのです。 想像してみてください、チョコレー トやケーキなど砂糖たっぷりの甘い物を食べると、めちゃめちゃ幸せな気分になりますよね。その後、急上昇した血糖値を身体は下げ、低血糖状態に近づきます。そうすると血糖値を上げ、 幸せな気持ちになりたいと身体は反応してしまい、甘い物を食べてしまうのです。

そして、それができないとイライラしたり、憂鬱感が出たり、集中力・思考の低下で「食べたくて仕方ない!」 という悪いスパイラルに入ってしまいます。 その「食べたいという衝動」を起こさないようにするために、糖質だけのもの、たとえば菓子パンだけ食べるようなことは避けるようにしましょう。 補食、おやつの面だけではなく、食事の面でもふりかけご飯だけ、パンとコ ーヒーだけになってしまうと、血糖値はポンッとすぐ上がってしまいます。 せめて納豆や卵をプラスしたり、できれば野菜も入れたりできるといいです ね。

脂の調整は部位のチョイス次第

もうひとつのエネルギー源、脂質に関しても、先ほどの例でいえば、400キロカロリーは脂質で減らす必要があります。たとえば、お肉の部位で言えば、バラ肉だと100gで 40gくらいの脂質が摂れるのに対して、胸肉は2gくらいです。同じ肉でもこれだけ差があるんですよね。 そこでポイントなのは、バラ肉を食べるな、ということではなくて、食べる量や部位を上手に選ぼうということ です。

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アスリートに必要不可欠な たんぱく質

糖質と脂質は必要に応じて減らす必要がありますが、たんぱく質は筋肉維持には絶対に大事ですし、ホルモンの元にもなるのでアスリートにとっては大事な栄養素です。 また、免疫を上げるという面でも、アメリカで発表された研究結果などで、たんぱく質の設定を少し高くしていた例もありますので、このような状況では、より意識する必要もあります。

家で3食食べるとなると、意外とたんぱく質が不足しがちになる傾向にあります。たとえば、お昼ご飯は、焼きそば、パスタ、ラーメンなど麺類になりがちだったり、チャッチャと作れるチャー ハンになったりしていませんか? それらはほぼ糖質です。そこに、どれだけたんぱく質をプラスして摂れるかというのがポイントになります。

簡単な方法としては、卵、納豆、豆腐などを加える、ビタミン D を含む魚系の缶詰を使うのもいいですね。ま た、仕事の合間の補食(おやつ)も、ヨーグルトやチ ーズ、ゆで卵、かまぼこ、ちくわなどがオススメです。今の環境下であれば、 エネルギー源の糖質や脂質は活動レベルが落ちていれば3食で足りる場合もありますので、口さみしいな、というときに、糖ではなくてたんぱく質補給を意識してみましょう。

優秀! ギリシアヨーグルト

ヨーグルトのオススメはギリシアヨーグルトです。たんぱく含有量が一般のヨーグルトの3〜4倍くらいはあります。一般のヨーグルトは3〜 4gですが、ギリシアヨーグルトは 10〜12gくらいです。ボテっとしているので、食べ応えもあり、腹持ちもいいし、そこにキウイやリンゴとなどフルーツを入れれば、甘みも栄養もプラスされます。 甘いものがどうしても食べたいという人もいると思うので、たんぱく含有量が高いヨーグルトにフルーツを入れた、フルーツヨーグルトはいいですね。 補食で糖質だけのものを食べることを避けるために、「たんぱく質のおやつ」のバリエーションをたくさん持っていると飽きないですし、いいと思い ます。

安眠には朝のたんぱく質

運動量が減っていたり、ストレスが溜まっていたりして、夜寝付けないという人もいるかもしれませんが、栄養と同じく睡眠もとても大事です。そこで、朝にたんぱく質を摂ることをオススメします。 朝にトリプトファンというアミノ酸 (たんぱく質)をしっかり摂っておくことで日中は気分良く、安定して活動することができるセロトニンというホルモンに変わり、夜には睡眠の質を高めてくれるメラトニンというホルモンに変わってくるので、この循環を作り ましょう。

だいたい 14 時間後にメラトニンに変わるので、朝にたんぱく質を摂る必要があります。朝食が7時だとしたら21時、8時なら22時です。これが自粛中で朝昼兼用の1日2食になってしまうと、14時間後が夜中になってしまうので、なんだか寝付けないという睡眠の質が下がることにつながってしまいま す。

このトリプトファンというアミノ酸は、たんぱく源、肉、魚、大豆製品と、乳製品、バナナにも含まれます。たとえば、朝食のパンとコーヒーにせめて、卵やチーズをのせるとか、ヨーグルトやバナナをプラスするなど、ちょっとした意識の積み重ねで改善できます。 量としては、たんぱく質は体重 1 ㎏ あたり、1.2~3g必要であり、アスリートは一般の人より多く必要になります。たんぱく質はこまめに摂って吉なので、3~4 回に分けると考えると、朝は20gくらい摂れるといいでしょう。

腸内環境と水分補給

何をやってもダメ……な人は腸内環境の見直しも

もうひとつ見直すべきは、腸内環境です。腸の中に、免疫細胞があるので腸をきれいにすることが、免疫力アップには絶対に大事です。腸で栄養を吸収するので、汚れていると、せっかく100点のご飯を食べたとしても吸収されません。きちんと吸収される身体だと、食事改善の体感が早いということも言えます。 腸内環境が悪いという自己判断としては、まずは便。いわゆる「バナナうんち」がちゃんと出ているかチェック してください。

便は出ても、コロコロしていたり、逆にゆるかったり、また出たとしてもスッキリ感がない場合は、もしかしたら、腸内環境が良くないかもしれません。 そういう場合は、発酵食品を食べる といいでしょう。ヨーグルトやみそ、納豆、キムチ、漬物などです。その他、 良い菌を増やしていくための食物繊維、海藻、きのこ、果物も併せて摂りましょう。一番手っ取り早いのはおみそ汁です。野菜、きのこなどを入れれば栄養満点の 1 品が出来上がりです。あまり欲張り過ぎずに、簡単に手に入って食べられそうなもの、まずは気軽に考えて実践することが大切です。

分不足に気を付けて

家の中にいる今、発汗しないし、のどの渇きもないので、水分を摂る量が減っている人が多いはず。特に今の自粛生活の中ではそれが顕著かもしれません。そして、在宅が多いから、コーヒーの量が増えていませんか?   さらには、オンライン飲み会が流行っていて、お酒の量も増えていませんか?

コーヒーはカフェインなので、飲み過ぎると利尿作用があし、アルコールにも利尿作用があります。それにも関わらず、水分の摂取量も減っているとなると、余計に水分が不足します。 水分量が減ると、血流の量も減るので、酸素の運搬効率も悪くなるし、全体的に代謝も減って、太りやすい身体になってしまいます。太りにくい、疲れにくい身体を作るには、体水分量というのは、ある程度保持しておかなくてはなりません。

だいたい、一般的に 1 日で2〜2.5ℓくらいは外に出るので、食事や飲料からうまく摂っていくならば、飲料 で1.5 〜2ℓくらい飲んでいれば問題ないでしょう。 ローラー台トレーニングなどで家の中でも汗をかいた場合は、3ℓくらいは必要になってくると思いますが、まずは2ℓを目安にしてください。 飲むなら、水や麦茶、炭酸水などがいいですね。もちろん、トレーニングした際はスポーツドリンクなどで調整してください。 盲点かもしれませんが、水分はベー スなので、栄養素を運搬するために必要な水分量を確保しましょう。

★この記事の内容を予習・復習用の教科書としたZoomセミナーが6月6日(土)16:00-17:00に開催されます。セミナースケジュールの確認・申し込みは《トライアスロンLAB》のFacebookページで。

>>>この記事の詳細は6月3日発売のTriathlon Lumina7月号で! さらに、トライアスリートで料理家の高橋善郎さんによる、トライアスリートにオススメの免疫力UP&ウエイトコントロールレシピも掲載しているので、併せてご覧ください。

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