Zwift Academy Tri 2022
間もなくスタートする2022年度版の「Zwift Academy Tri」。強豪チーム「TEAM Y」のリーダーにしてZwift中心のトレーニングライフを送る大西雅之さんが語る、その活用メリットとは?
写真=小野口健太
Photographs by Kenta Onoguchi
撮影協力=5A Sports LAB
スピニング練習会から
ZWIFTへのスイッチ
――バイクトレーニングは、ほとんどがZwiftだそうですが、そのきっかけは、やはりコロナ禍ですか?
大西雅之さん(以下同) そうですね。コロナ以前からZwiftはやっていましたが、ほかの多くの方たちと同じく、行う頻度が増えたのは2020年の春以降。私にとって、コ
ロナ禍で一番つらかったのは、仲間とのインドア練習会ができなくなったことでした。
チームYでは、昔から、仲間と定期的に集まって、多い時は15~16人くらいで、スピニングの練習会を実施していました。主にハートレイトを指標にしつつ、みんなで声をかけ合いながら、スピニングをこぐのがチームYの練習スタイルでした。
練習拠点のスタジオは、そのときどきで移りながらも、チームジャージを着て集まって、みんなで2時間なり、3時間の練習をやっていました。ところがコロナ禍で、そのスタジオも使えなくなってしまった。
そこでその代わりとして1~2時間のZwiftミートアップを始めたのが2020年の夏ころ。Zoomでもつないで、ほかのみんなが頑張っている姿を見て、コミュニケーションもと
りながら――というスタイルは、リアルのスピニング練習会の延長というイメージでした。
ZwiftはZoomでつながなかったとしても、チャットもできるし、実走と違って、「まとまる」機能を使えば、レベルや目標が違う仲間とも一緒に頑張れる。これはスタジオで行っていたスピニング練習会に近い良さがありましたね。
みんなもその良さに気が付いて、パワーメーターやスマートトレーナーを持っているメンバーが、Zwiftに集まり始めました。始めてみると、チリに赴任しているメンバーでも気軽に参加できたり、オンラインならではのいいところがいろいろと見つかりました。
ワークアウト履歴を簡単に・視覚的にもわかりやすく振り返れるのがZwiftの便利なところ。同じワークアウトをやろうとするときに、前回の自分超えをモチベーションにできる
過去のアカデミーなど
数限りないワークアウトが魅力
その後、ルミナで「Triathlon Zwifters」(下記詳細あり)が始まって、それと連動するような感じで、チーム内だけでなく、誰でも参加できる定期的なイベントとして始めたのが、ちょうど1年前。
ZwiftアカデミーTRI(以下ZATRI)の過去のワークアウトとか、FTP向上のプログラムとか、Zwiftのワークアウトは数限りなくある。
過去のものもファイリングされていますし、新しいワークアウトもどんどん追加されるので、選ぶのが大変なくらいですが、一応、一通り中身を見て、トライアスロンの練習に適しているものをピックアップして、組み合わせています。
大人のトレーニングには
Zwiftがちょうどいい
――チームYといえば大井ふ頭などでの練習会が有名でしたが、大西さん自身は今、外で乗ることはめっきり減ったそうですね。
最近では週末、山へ乗りに行っている仲間もいて、誘われたりもしますが、集合場所まで自走で移動して、疲れ果てた後、また自走で帰ってくるというのは、事故のリスクも避けられないですし、Zwiftで自分の狙いにあったワークアウトを集中してこなして、そのほかの時間を有効活用できるのに慣れてしまうと、なかなか足が向かなくなって。
自分の場合、山へ乗りに行くにしても、(都心の自宅から)集合場所へ行くまでが遠く、片道40㎞くらいを自走で行くことになる。その後、メインで100㎞乗るとトータル180㎞、アイアンマンの距離になってしまいますし、週末の河川敷サイクリングロードなど、疲れ果てている練習会の帰りが一番危なくて、そのタイミングで事故に遭う例も見てきているので。
もちろん実走のメリットもよくわかっているので、行きたい気持ちもあるのですが、そうしたリスクを踏まえると、リスクゼロで効率良くトレーニングメニューがこなせて、短時間でも集中して良い練習が積めるZwiftのほうが中心になってきました。
たとえば、ZWIFTの30 分のワークアウトというのもすごく秀逸で、短時間でかなり追い込めるようになっている。そういうメニューをいくつかストックしておいて、時間のないときなどには活用しています。
この時期、来季に向けたオフトレとしては12週間でFTPを上げていくワークアウトも気に入っています。
一目瞭然。ワークアウト履歴を
モチベーションに変える
昔、海外のオンラインコーチングを受けていたときは、まだパワーメーターが普及していなくて、心拍数を基準にトレーニングメニューが組まれていました。
今でも心拍数は第2の指標として活用していますが、年齢が上がって、MAXの心拍数が下がってくると、つい昔のトレーニングゾーンでやろうとして、追い込み過ぎてしまいがち。
その点、パワーを指標にして練習するとドンピシャなんですよね。自分が今現在どれくらいのパワーを出しているかは一目瞭然で、衰えていたら出力も上げられないし、一つひとつ積み上げていったら、また戻ってくる。
その進捗もよくわかる。変に昔の自分に引っ張られることがないんです。
その現状を踏まえてFTP向上ワークアウトなどに取り組むんですが、Zwiftが便利なのは、過去にやった同じワークアウトの履歴がすぐにチェックできること。その履歴に、たとえば昨年は★が10あるうち8つは達成できたとか、そういうのもわかる。
1年後の今日はどこまでいけるか。昨年の自分と、今年の自分の差・違いを可視化できるんですよね。今年は★10のワークアウトのうち9個達成できた!
といった具合に、努力目標、モチベーションになります。もっと言えば、昨年は同じワークアウトに取り組んで、どこをスキップした(できなかった)なんていう履歴もわかるわけです。
いちいち過去のトレーニング日誌をひも解いて、1年前の自分と比べるのは面倒でやらないかもしれませんが、Zwiftならパッと可視化してくれるので、マメにチェックできるのがありがたいですね。
ZwiftカデミーTRI
日本人エイジ的活用メリット
――今年も10月24日から「ZwiftアカデミーTRI」が始まります。大西さんから見た、この一連のワークアウトの「良さ」は?
ZATRIは、リアルタイムで取り組んだ以外にも、過去のワークアウトをやってきたので、ほとんどのワークアウトはやったことがあると思います。特に直近の2021年版は、すべてのワークアウトが1時間で終わるようになっているので、平日の夜などに取り組むのにも、ちょうどいい。
よくできていますよね。これからZwiftを始めるトライアスリートに、数あるワークアウトの中で、何から取り組み始めればいいかと聞かれたら、この2021年度版がオススメですね。
ZATRIは10月から始まるので最初は、何でトライアスロンのレースシーズンが終わる、この時期に始まるのかな? と、ちょっと不思議に思っていたのですが、実際、リアルタイムで取り組んでみると、僕みたいに夏に一旦メインのレースイベントが終わって、もう1回リセットして、来季に向けて、ちゃんと自分と向き合ってワークアウトをやってみよう、という人に向けているのかなと、感じました。
これはあくまで私の推測ですが、まずリアルタイムで1カ月(前回までは2カ月)一連のワークアウトをこなしてベースラインを上げていって、そこからZwiftのワークアウトを続けて、さらに強くなっていってね~という感じで、(次のシーズンへの強化の)導入編、もしくはリカバリーから、アダプテーションのときに、やるようにできているのかなと。
日本のレースシーズンに当てはめると、佐渡大会など9月のレースで出し切った人が、1カ月くらい休んで、10 月から始めるのには、ちょうどいいプログラムだと思います。
TEAM Y
チームメンバー(非公開のFBグループ登録メンバー)は105人。かつてIRONMANが展開した世界のチームコミュニティー・ランキングでは、日本勢最上位、アジアパシフィックで3位に入った強豪チーム。
スイム&ランとの組み合わせは?
大西 Zwiftでの練習は週4回1時間ずつ。できれば毎日やりたいのですが、今は2回Zwiftワークアウトをこなすごとに1日休まないと回復しないので(苦笑)、月曜日が休みとして、火・水曜日とZwiftワークアウトを頑張ったら、木曜日はスイム中心の日に。金・土曜とまたZwiftを頑張って、日曜日は長く・ゆっくりランニングする日――というふうに実践しています。
無理なくコンプリートできて
達成感も味わえる
1カ月のうちに前後のTTのほか、5つくらいのワークアウトで構成されると思うので、1時間のワークアウトを1週間にひとつ+αであれば、それほど無理をしなくてもこなせると思いますし、コンプリートすると、達成感も得られると思います。
もちろん、この期間、世界中から参加するトライアスリートと一緒にワークアウトに参加するのも楽しいですし、気の合う仲間と一緒に取り組んで、「みんなでコンプリートしようぜ!」というのもトレーニングのモチベーションになっていいと思います。
私だったら、この期間、毎週チームでワークアウトを実施する日を決めて、「参加できなかったら、次回までにやっておきなさい!」という感じで、チームイベントにするかな(笑)。
前回までは、テンポ系というかエンデュランス系のワークアウトから始まって、段々ピークを上のほうへという流れになっていましたね。
今年は設定されている期間が1カ月に圧縮されているので、テンポ良く、5~6種類のワークアウトをこなせるような組み立てになっているんじゃないでしょうか。
苦手も含めバランス良く
パッケージされている
自分のトレーニングに、ZATRIのワークアウトを入れていくとき、扱いやすいのは、エンデュランス系のメニューなんですが、自分の好きなワークアウトばかりやっていると、僕らの年代になると、強いパワーを出すメニューは、つい遠ざけてしまいがち。
最近話題の50歳を超えてから強くなるというテーマの本(『50を過ぎても速く! FAST AFTER50』ジョー・フリール著/篠原美穂・訳/OVERLANDER刊)を読んでいても、「嫌な練習ほど、遠ざけるな」という点が繰り返し強調されます。つまりはVO2MAXとかヒルスプリントとか、そういう練習をやらなくなって、エンデュランス系ばっかりになってしまうと、パワーが出ない脚になるから強制的に嫌な練習を目の前にもってくるんだと。
逆に若い時は、高強度の練習のほうばかりやりたがって、エンデュランス系のメニューは退屈に感じがち。だから、ZATRIのように、高強度もエンデュランス系もバランス良くパッケージされているというのは、ありがたいことだと思います。
大西雅之 Masayuki Onishi
トライアスロン歴30年。自身9×KONA(アイアンマン世界選手権)Finisherの実力派トライアスリートであるとともに、日本を代表するチームコミュニティー「TEAM Y」のリーダー&メンター的な役割を担い、多くの後進をKONAへ導いてきた。
Zwift Academy Tri 2022
2022年版は10/24スタート!
Zwiftには多種多様なワークアウトやレースが用意されているが、さらに数カ月の開催期間の中で所定のワークアウトやレース(タイムトライアル)に挑戦する「Academy」と呼ばれる企画も展開されている。このうちトライアスロンに特化した企画が「Zwift Academy Tri」。バイク&ラン各5つのワークアウト、同ふたつのレース(TT)にはZwiftユーザーなら誰でも参加できる。最新の2022年度版のワークアウト詳細は下記をチェック!
■開催期間:2022年10月24日~11月20日
最新情報・詳細は公式サイトへ
【BIKE WORKOUT】
Bike Workout 1
LOW CADENCE INTERVALS
ローケイデンスインターバル
▼開催期間:10月24日~10月30日
▼所要時間 :60分
多くのプロトライアスリートも取り入れているトレーニング。低ケイデンスでのトレーニングは、高テンポでのトレーニングよりも大きなパワー効果が得られることが研究により示されている。このセッションは、心肺に過度な負担をかけずに筋力をつけることが目的。
Bike Workout 2
FULL-DISTANCE BUILD
フルディスタンスビルド
▼開催期間:10月31日~11月6日
▼所要時間:55分
有酸素性閾値を向上させ、ロングのトライアスロンレースを想定したトレーニングのため、きちんと補給・給水を準備して臨むこと。
Bike Workout 3
FTP GAINS
FTPゲイン
▼開催期間:11月7日~11月13日
▼所要時間:60分
FTPを効果的に高めるために、高強度(110%FTP)の時間帯と、中程度の強度(78%FTP)での回復を行うトレーニング。これにより、乳酸を燃料として使用する方法を学び、長時間のライドをより速く行うことができるようになる。
Finish Line Ride
5 MINUTE POWER TEST
5分間パワーテスト
▼開催期間:11月7日~11月21日
▼所要時間:55分
疲労時に5分間パワーを測定することで、V02最大パワーを把握して、長時間のエクササイズをより管理しやすくなる。水分補給を忘れずに。
【RUN WORKOUT】
Run Workout 1
STRENGTH AND RESILIENCY
体力と回復力
▼開催期間:10月24日~10月30日
▼所要時間:ロング45分+ショート30分
上り坂を走ることは、速い歩幅で脚筋力を向上させるなど、トライアスロン上達のために多くの利点がある。このセッションでは、ランニングエコノミーを向上させることで、有酸素性閾値を高めることを目的としている。
Run Workout 2
TEMPO
テンポ走
▼10月31日~11月6日
▼所要時間:ロング45分+ショート25分
テンポ走は、ランニングエコノミーを微調整するのに最適な方法。また、疲労が蓄積したときに、正しいフォームを維持するための練習にもなる。。このインターバルセッションは、全体のペースを上げるのに役立ち、速いペースで走るのが簡単に感じられるようになる。6 分から始まり、4 分、2 分と下降し、最後に 1 分間、よりきついペースで行う。ペースは、現在の閾値の85%から96%まで上がる。
Run Workout 3
OVER UNDER INTERVALS
高強度インターバル
▼開催期間:11月7日~11月13日
▼所要時間:ロング45分+ショート30分
このセッションは、10のうち7または8程度の高い強度で行われる。まず、現在の閾値ペースより2分低い6分間のインターバルを2回行い、ギアチェンジの感覚を学ぶ。次に、閾値より2分高い6分間のインターバルを2回、さらに閾値より低い6分間のインターバルを2回行う。さらに、スピードインターバルをすることで、全体の閾値ペースを上げることができる。
Finish Line Run – SHORT
15 MIN TEST
15分テスト
▼開催期間:11月7日~11月21日
▼所要時間:ショート15分
2022年Zwift Academy Triプログラムの最終イベント。ゴールは15分または30分のどちらかを全力で走る。ZAトライチームへの参加を狙う場合は、30分走を行う必要がある。
Academy Triのトレーニングメニューをやります!
2021年にスタートしたルミナのZwiftチーム・コミュニティー「Triathlon Zwifters by Lumina」では、毎週水曜日朝、トライアスリート向けのミートUPを開催中。ほかのコミュニティーが主催するトライアスリートにもオススメのミートUPイベント情報なども随時共有していますので、Facebookグループへのご参加、お待ちしています!
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