連載「アイアンマンいどみました。」
「下から目線」でお届けする、アイアンマン初挑戦・完走への道⑤
アイアンマンは、ミドルまでのトライアスロンとは別物。何が違うのか? レース「準備」編
前回(レース選定編)に引き続き、ミドルまでのトライアスロンとアイアンマンの違いの話、レース準備編です。
★本番までのトレーニングをマネジメントするのが難しい。
アイアンマンのためのトレーニング。量がケタ違いに多いだろうなというのは想像がつくと思うのですが、では一体どのくらいの量? 強度は? 時期は? 身体を壊さない手前でトレーニングをストップできる? いつからテーパリング? そのマネジメントも、慣れないうちは格段に難しいです。
51.5やミドルだったら、情報収集すればするほど、概ね自分が遂行すべきトレーニングプランが見えてきます。でもアイアンマンになると、情報の発信元によってトレーニング量や強度等に大幅な差があることがあります。10時間で完走する想定と、16時間で完走する想定とでは、同じアイアンマンでも次元が違い過ぎるからです。
だったら自分の完走予想タイムに近いアドバイスや情報を参考にすればいいのでは? と思うのですが、その予想タイムがまったく的外れの可能性があるのが、やっかいなところ。最終的には自分の信念に基づいて臨めるかどうかという話になってきます。
★準備の重みがまったく違う。
レース1~2週間前の準備。51.5の想定でいると、思った以上にバタバタするはずです。用意すべきアイテムが多いからです。特に補給食の量が大幅に違ってきます。
さらには、レース前々日から説明会、バイクセッティング、トランジションセッティング・・・やることが多いです。また、自宅近くで偶然アイアンマンレースが開催されていない限りは、レース日に帰宅はできず、必ず3泊以上の遠征の準備が必要になります。
つまり、レースウィークにこなすべきタスク量がハンパないのと同時に、イージーミスですべて台無しになってしまうのがアイアンマンです。「ウェットスーツをホテルに忘れてきたためDNS」と言ってしまうには、アイアンマンは重すぎますよね。51.5に比べてアイアンマンは、無事にスタートできることが、最初の大きなゴールと言えます。
★直前に何かしら変更になった時の重みが違う。
わたくしの場合、洞爺湖ではバイクコースが変更になり、ケアンズでは水温が高いためウェットスーツ不可になるかもという話がありました。
51.5なら些細に感じることでも、アイアンマンの場合、レースプランの根底にかかわる可能性があります。そもそも、当日が暑い日なのか寒い日なのかで、レースがまったくの別物になります。
★仲間の心強さが違いすぎる。
アイアンマンはメンタルスポーツ。分からない情報があるときや、現地で何かトラブルがあった場合、仲間と参加しているかそうでないかで、心強さが雲泥の違いです。
わたくしはひとりが気楽というタイプなのですが、そんなことは言っていられないほどのプレッシャーがありました。特に海外アイアンマンのデビュー戦は、仲間と行ったり、現地で気の合いそうな参加者と仲良くなることを強くオススメします。ツアー参加だと仲良くなるキッカケをつかみやすいですよ。
次回(レース本番編)はいよいよ、レース中の違いの話をします!
■著者プロフィール
野中秋世(のなか・あきよ)
2001年オープンの老舗ネットショップ店長。三児の父。20歳から35歳まで無運動状態。2010年にトレーニング開始。2011年に独学でオリンピックディスタンス完走。マラソンやOWSを含めて33レース目でアイアンマン完走。タイムは14時間24分。著作に、運動オンチの素人がトライアスリートになるまでを描いた『トライアスロンはじめました。』と、ミドルディスタンス・海外デビュー編の『トライアスロンはまりました。』(共に誠文堂新光社)がある。