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ただのディスク化じゃない。KONA5連覇中CANYON Speedmax 待望のモデルチェンジに見る本気度

投稿日:2020年11月17日 更新日:


大塚修孝

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待望のリニューアルを果たしたSpeedmax。フラッグシップモデルCFR(完成車価格106万9000円~ 税・送料別)のほか、完成車価格39万9000円~(同)のCFまで3モデルがリリースされた ©Kei Tsuji

アイアンマンシーンでヤン・フロデノ、パトリック・ランゲ、ライオネル・サンダースらが乗り、KONA(アイアンマン世界選手権)5連覇など数々の勝利を上げているCANYON(キャニオン)の トライアスロンバイク「Speedmax(スピードマックス)」が待望のモデルチェンジ。

11月17日19時に、キャニオン公式ストアhttps://www.canyon.com/ja-jp/)で、世界同時発売された。

ディスクブレーキモデルとなっただけでなく、純正トライアスロンバイクとして注目の進化を遂げたこの注目モデルの概要速報と、その背景としてのブランドストーリーなどを、トライアスロン“モノ”ジャーナリスト大塚修孝さんが語る。

文/大塚修孝(Triathlon GERONIMO)

トライアスロンではビッグブランドとなった「キャニオン」

ブランドとしては2002年創業のドイツブランドで、ジロ・デ・イタリアでの総合優勝や今年のツール・ド・フランスでも2チームをサポートするなどメジャーとなったお馴染みのバイクだ。上品でクールなデザインも好まれ、人気が出ている。

そして、今やトライアスロンにおいてはビッグブランドとなった。その理由は明白。2015年から昨年まで、KONA5連覇中の「無敗」のトライアスロンバイクとなった上、さらにアイアンマンワールドレコードを更新し、パーフェクトなこの上ないブランドとなったからだ。

KONAでドイツ勢としては初の3勝(2015・2016・2019年)を上げているヤン・フロデノの数々の勝利を支えてきたSpeedmax(写真はKONAコース記録を更新して復活Vを遂げた2019年大会)©Canyon Bicycles

アイアンマンでのシェアでも「5強」入り

前作である「第3世代」のSpeedmaxは、2015年のKONAで「フロデノ仕様」のプロトタイプとしてお披露目(展示)され、同年フロデノによるデビューウィンで脚光を浴びることになる。そして、前述の通り、現在に至るまでKONA無敗を誇っている。

そして、最も気になる「KONAでの使用率」だが、これも2015年から動きが出てきた。前年の24台から倍増の51台でシェアを12位まで伸ばし、翌16年も12位、17年からは100台オーバーで一気に6位にランクインしている。

そして、昨年は、前年比136.4%(Triathlon GERONIMO Count)の5位180台となり「5強」の一角を占めるなど、大きな飛躍を遂げているのだ。

※大塚さん自身が手がけるKONA現地でのバイク全台調査

フロデノが勝利を逃した2017・2018年KONAでは同じくドイツ勢でキャニオン・ライダーのパトリック・ランゲがやはりSpeedmaxを駆って連覇。写真はニューモデルでの風洞実験に臨むランゲ ©Canyon Bicycles

New Speedmax  CFR
トライアスロンモデルとしての本気度

待望のモデルチェンジを果たしたSpeedmax CFRは、ロードのUltimate CFRに次いで、次世代モデル「CFR」のラインアップに位置付けられ、

UCI(国際自転車競技連合)ルールに準拠させない、より本気度の高い「トライアスロン専用モデル」となっている。

ディスクブレーキ化のタイミングもあるが、それはひとつのきっかけに過ぎないだろう。より速いバイクを造るために何をしたのか。まず第一印象として感じたのは、比較的シンプルなデザインであったことだが、満を持してのディスクブレーキ化リニューアルとなっただけあって、細部まで他ブランドを研究した上で開発されたことを感じる。

開発にあたっては異形()も含めた形状を検討したようだが、総合的に「スタンダード」を選択している。

※異形=サーヴェロやVENTUM、DIMOND BIKESのトライアスロンモデルようなフレームの三角形を構成する一本をなくす等でエアロ効果の最大化を狙ったモデルを指す総称

フラッグシップモデルSpeedmax DISC CFR(写真)、シマノ・アルテグラDi2(スラム・フォースeTap)グレードのCF SLXには、全モデルにパワーメーターが標準装備される ©Canyon Bicycles

エアロダイナミクスが優れているだけでは、トライアスロンでは使用できないが、効果の大きなフロント周りはボリューミーで、特にフロントフォークが際立つ。

真横から見ると偏平でボリュームのあるフロントフォークは厚さが薄く、左右に広がる形状によりエアロと軽量化、強度の並立を図っている ©Kei Tsuji

シートステー、チェーンステーはトライアスロンバイクのスタンダードでもある低いデザインとなっている。

そして、このバイクは、前述のとおりただディスクブレーキ化を果たしただけではなく、随所に新たな提案が盛り込まれていた。

以下、今回のモデルチェンジの概要を、トライアスリート目線で注目すべきポイントごとに見ていこう。

■Speed & Control
低重心化と横風対策で直進安定性を高め、45km/h巡航で9~10Wの抵抗削減

まず、トライアスロンバイクとして、絶対条件となるエアロダイナミクス。そこへの注力は宿命であり、究極のバイク開発とも言える重要な作業となる。

現在、キャニオンはSwissSide社を2017年からパートナーとして、エアロダイナミクスの向上に取り組んでいる。SwissSide社による最高レベルのCFD(数値流体力学)解析は450回を超え、そこから導き出された形状により、100回近い風洞実験を実施。その結果、前世代モデルと比較して、プロ使用で9~10Wの軽減(時速45km巡航に要する出力を抑制)が確認されている。

スーパーコンピューターを用いた456回にわたるCFD解析テストランから導き出されたフレーム形状を、97回の風洞実験テストランで検証。このプロセスにより新型Speedmaxが産み出された

重要なポイントとなったのは、重量剛性比をキープしながらのエアロダイナミクス。ハイドレーションやストレージ、そして、ディスクブレーキなどの現実的な機能とともにその最適化を図っていった。

また、「ライディングダイナミクス」を究めるべく、軽量化はもちろん、重量配分への対策を重点的に行い、より低重心に仕上がっている。

さらに、横風への対策としてハイドレーションやストレージの一体化(フレーム内蔵化)が、ステアリングの安定性を高め、それらによってトライアスロンバイク走行の基本となる「直進安定性」を向上させている。

給水用のハイドレーションやストレージなどの内蔵化を表すX線イメージ画像 ©Canyon Bicycles

■Integration
補充しやすい内蔵型ハイドレーションの「完成形」

これこそが他社を研究し尽くした「New Standard」モデルとしての真骨頂だろう。前述の通り、エアロダイナミクスへ大きく関係したのがハイドレーションシステムやストレージなどの「一体化」だった。

特に内蔵型のハイドレーションは、ここ10年他社からも3例ほど出ていて、ほかにも搭載予定のブランドがあったが、ここでひとつの「完成形」をみたと言える。注目すべきは「補充しやすさ」にもこだわっている点だ。

内蔵されているハイドレーションバッグは逆流防止弁や形を維持するフレームなどにより補充しやすさを確保。随所にHydrapak社のノウハウが生かされている ©Kei Tsuji

20数年前が原点となる「補充型ボトル」は、「ロングTT」となるトライアスロンにおいて補給しやすさを提案するとともに、ハンドル周りのボリュームを抑え、エアロダイナミクスを高められるのだが、

Speedmax CFRの内蔵型ハイドレーションは、トレイルランナーやトライアスリートにはおなじみのハイドレーションギアブランドHydrapak(ハイドラパック)社との共同開発で、開口部などに補充しやすい工夫が施されており、エアロポジションを崩さなくても補充できる仕様に進化している。

ハイドレーションの開口部は、ボトルで押し込むことで弁が開き水を補充できるようになっている©Kei Tsuji

トップチューブの内蔵ストレージには補給食などが収納できる©Kei Tsuji

BB上の内蔵ストレージにはCO2ボンベや予備チューブが収まる専用アダプターが付属。ダウンチューブに収まる電動変速機バッテリーにはここからアクセスできる©Kei Tsuji

■Fit & Comfort
きめ細かな調節が可能なDHバーまわり

DHバーはサドル以上にシビアなパーツだ。この部分をどこまで調整でき、また長時間使用するトライアスロンでの「快適性」をどこまで高められるのか。これは、サドルに万人向けがないのと同じように「永遠のテーマ」。だからこそ開発は続けられ、より調節個所を増やし、そのフィット性をより良く改善していこうとする取り組みが各所で続いている。

今回リリースされたSpeedmax CFRは、パッドの前後左右、エクステンションバーの長さ・角度が細かくアジャストできるほか、エクステンション先端のグリップ部が可動し、角度調節できるようになっている。

エクステンションバーの長さや先端のグリップの角度・幅など、いわゆるコックピットまわりの調節個所が多く、比較的簡単に扱える ©Canyon Bicycles

また、前作から採用されているERGON社の上質なグリップやパッドがより高い快適性を生み出す。

クランク長などもGebiomized社の協力を得て、短くするなど、細部に渡るまで「最適化」を施している。

素手でも滑りにくく、バーテープいらずのERGONグリップ。ガーミンやwahooなどのサイクルコンピューターマウントも細かな前後位置調節ができる仕様 ©Kei Tsuji

■バイクポジション
ピンポイントな最適DHポジションを出しやすくする工夫

最も小さいXSサイズには「650Bホイールサイズ」を採用していることが興味深い。ちなみにラインアップが減ってしまった「650C」ではない。650Bは、グラベルなどタイヤサイズによる乗り心地や用途への対応として使われているが、標準サイズの700Cと比べ直径で40mm近く小さくなり、設計上ハンドル高などを抑えられることに着目している点が面白い。具体的にはスタック長が435mmに抑えられている。

前述のDHバーのフィット性とともに、さらに根本的とも言えるフレームサイズやジオメトリーの設定で、「ピンポイントポジション」と言えるDHポジションを出しやすくする工夫が施されている。

■開発パートナー「フロデノ&ランゲ」

2015年の前作デビュー以来アイアンマンで「完璧な結果」を出しているドイツブランド、キャニオン。そこには完璧な自国の選手たちとのパートナーシップがあった。少なくとも20数年以上、アイアンマンのバイクパートにおける「ドイツ人」のパフォーマンスは高い。そこからフィードバックされるデータは開発にも大きく貢献しているだろう。

「プロ・アームレスト・アップグレード・キット」は、まさに分かりやすい、その具現化だった。昨年のKONAでフロデノが使用していたワンオフのアームレストが有料オプションとして市販化されるのだ。このキットには、ランゲが好んで使用している’Quattro’アームレスト+Ergon社製プレミアムパッドも含まれる。

また、エクステンション先端グリップ(標準装備)の可動は、こだわりのモノ選び(モノおたく?)で知られるランゲのお気に入りでもあるという。

Pro armpadアップグレードキット(別売り299ユーロ)に含まれるPro armpadsを装着したSpeedmaxのコクピットは、2019年にフロデノのために開発されたプロトタイプをベースにしている ©Canyon Bicycles

Speedmax DISC CFR
サイズ:XS、S、M、L、XL
価格(税・送料別):
シマノ デュラエースDi2完成車 106万9,000円
スラム RED eTap完成車 128万9,000円

Speedmax SLX
サイズ:XS、S、M、L、XL
価格(税・送料別):
シマノ アルテグラDi2完成車 83万9,000円
スラムForce eTap完成車 94万9,000円

■リーズナブル
価格を抑えたCFでもKONAチャンピオンバイク以上の空力性能

トライアスロンバイクが実際多くのユーザーに使われる人気モデルとなるには、「リーズナブル」であることが大切。フラッグシップ1モデルでは、多くの人が乗ることができない。もっと具体的に言うなら価格を抑えた「廉価版」が必要だ。

もちろん、性能を同じにすることはできないが、基本方針を同じくし、可能な限りフラッグシップモデルに近づける――そうしたはからいがモデル、グレードの少ないトライアスロンバイクには求められる。

そして、今回登場したのが「Speedmax CF」。最大のメリットはエアロダイナミクスで、アイアンマン5連覇の前作よりも、その効果が高くなっている点だろう。

トップチューブ内にCO2ボンベなどを収納するための細長いバッグや、BB上のストレージBOXなども使い勝手が良さそうだ。

Speedmax CF
価格(税・送料別):
シマノ105完成車 39万9,000円
シマノアルテグラ完成車 44万9,000円
シマノ アルテグラDi2完成車(※)61万9,000円
スラムForce eTap完成車(※)69万9,000円
※パワーメーター付き

CFのX線イメージ画像。トップチューブ部分にCO2ボンベなどが収納できるのがわかる©Canyon Bicycles

トップチューブ内にカートリッジアダプター、CO2カートリッジ2個、タイヤレバーのセットなどを収納できるバッグが付属

>>購入・詳細スペックは、キャニオン公式ストアで
https://www.canyon.com/ja-jp/

Event Info
11/18~東京・稲城のCROSS COFFEEに新型Speedmaxを展示

世界同時発表の翌日11月18日より、尾根幹、多摩川サイクリングロードを走るトライアスリート、サイクリストの拠点にもなっている「CROSS COFFEE」(東京・稲城)に新型Speedmaxの実車が展示される。注目モデルを国内で一番早くチェックできるチャンス!

CROSS COFFEE -chocolate & sandwiches-
https://www.cross.coffee/
東京都稲城市矢野口227-1 グランツドルフ1F
営業時間 7:00 – 18:00
※バイクを見る場合はカフェの利用を。

■著者プロフィール
大塚修孝(おおつか・のぶたか)
本誌連載などでおなじみのトライ アスロン「モノ」ジャーナリスト。トライアスロンに関わり29 年。特に、アイアンマン世界選手権は、96年から四半世紀にわたり取材を続けているライフワークとなっている。レース出場者のバイク全台を自ら撮影して調査する「GERONIMO COUNT」など圧倒的なデータ収集力と緻密なデータ分析には定評がある。

Triathlon GERONIMO
www.triathlon-geronimo.com

プロトライアスリート篠崎友>>速報レビュー
「前世代Speedmax よりも低重心化してコントロールしやすくなった」

Speedmax DISC CFRを国内最速試乗した篠崎選手。乗り味はもちろん、ハイドレーションなどの使い勝手、組み立てやハンドルまわりなど細部の扱いやすさについてもチェックしてもらった ©Kei Tsuji

Speedmax DISC CFRで試走してみて、まず印象に残ったのはディスク化、ストレージ内蔵化によって低重心になり、バイクコントロールが簡単になった点。扱いやすく、ハイエンドモデルに敷居の高さを感じている人も安心して乗れるバイクだと思います。

ダンシングやコーナーリングなどで自転車を倒す動作のときだけでなく巡航速度での直進においても低重心化されたことで、より少ない力で自転車を安定させることができました。自転車のブレを感じる向かい風や横風のときにペダリングに集中できることは大きなメリットだと思います。

ハイドレーションに水を入れた状態での試走でも高い安定感を感じることができ、ハンドル上やハンドル周りにハイドレーションシステムがある場合に比べ(内蔵化によるエアロ性能アップ以外にも)大きなアドバンテージがあると思います(篠崎)

>>篠崎友による選手&メカニック目線でのSpeedmax DISC CFR実走レビュー詳細版は近日公開予定。乞うご期待!

篠崎 友
Yu Shinozaki
ミドル~ロングディスタンスを主戦場に活躍するトップトライアスリート。自らの選手活動を応援してくれるトライアスリートらをメンバーとするチームコミュニティ「モンスタートライアスロンクラブ」(MTC)の代表として、練習会や合宿イベントを主催しているほか、インドアバイク練習会「ローラーズ」などを通じて、一般アスリートへの指導も手がけている。

★篠崎選手がスタッフとして勤務するプロショップ「BIKE&HIKE」でもキャニオン・バイクのオーバーホールなどを受け付けている。

BIKE&HIKE
東京都世田谷区深沢5-2-9 ニューライフ等々力1F
https://bikehike.jp/

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