「トライアスロン・ラン」への適応を究めて
HOKA ONE ONEシューズに行き着いた
マシュマロのよう、とも表現されるやさしいクッション性、スムーズな体重移動をもたらすメタロッカー形状。特にレース中、バイクまでのダメージを負った状況でランニングを行うトライアスリートにとって、HOKA ONE ONEのシューズに搭載されている機能は大きな助けになる。
実際、2018年のKONA(アイアンマン世界選手権)では、ランニングシューズのシェアNo.1に輝くなど、トライアスリートにとっては人気・定番ブランドとしてのポジションを確たるものにしている。
今回、HOKA ONE ONEを愛用するTK(竹谷賢二さん)が、オンラインセミナーを開催。このシューズを選んだ経緯をあらためて語り、数多くあるラインアップの中から自分に合ったモデルを選ぶポイントや、そのシューズ選びの前提となる「トライアスロン・ラン最適化」についてレクチャーした。
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文=今 雄飛
写真=小野口健太
関節への負荷が大きい「ラン」の練習量を抑えていきたい
TK トライアスロンを日々楽しんでいる中で、50歳を過ぎて加齢による衰えも感じているところです。やはり大きく衰えを感じるのは、関節が中心になります。足首、ヒザ、股関節、そして関節とは違いますが、足底などは痛みが出ることもあり、なるべく負担を減らしていきたいと思っています。
それを考えると、トレーニングの目標としては、これらの部分に負担が大きいランニングを減らすことを考えています。最近はランの練習を減らしたうえで最高のパフォーマンスを出すことを目的としています。
とはいえ、まったく走らないわけにもいかないので、ランニングをトレーニングする場合は、近くに陸上のトラックがあるので、そこを選んで走ることをしています。サーフェスが柔らかいですし、脚には確実に優しい。グルグル同じ場所を走ることにはなりますが、そんな場所を選んでいます。
さらに身体への負担を減らすために気を付けているのが、HOKA ONE ONEのシューズを選ぶことです。
いろいろとモデルがラインアップされていますが、違いこそあれ、全モデルが柔らかいトラックを走っているような感触で走ることができます。
これはレース中も同じです。バイクの後は股関節周り、腰に疲労がたまった状態です。そんな疲れた身体に心地良い。優しいはき心地はレース中の身体への負担を減らしてくれます。
疲労がたまった状態でのランに最適な「メタロッカー構造」
HOKA ONE ONEといえば、この優しいはき心地をもたらしてくれる「厚底・軽量マキシマムクッション」の衝撃吸収性のイメージが強いかもしれないが、TKはゆりかごや車輪のように着地から蹴り出しまでスムーズなローリング運動を導く「メタロッカー構造」も、トライアスロン・ランに最適な重要なポイントである点を、あらためて強調する。
TK つま先側、カカト側と前後を削った丸いタイヤのようなソール形状がメタロッカー構造です。前足部でもカカトでも、どこで着地してもコロンと回転してスムーズに走ることができます。
バイクの疲労感があるなか、なかなか前傾姿勢でグイグイ走ることは難しいのですが、この構造のおかげでは前傾姿勢にもっていきやすくなります。
故障しにくく、疲労した中でも走りやすい。トライアスリートのためにあるようなこれらの機能・構造が、「トライアスロン・ラン」を究めていこうとしているTK自身がHOKA ONE ONEを選んだ理由だという。
「どんなレースを、どんなペース・走り方で走るのか?」
自分に合ったモデル選びはそこから
では、数多くのラインアップの中から、自分に最適な一足を選ぶポイントはどこにあるのだろうか?
TK 今回お伝えするのは「トライアスロンのレースで、パフォーマンスを高めるためのシューズ」を意識した選び方についてですが、まずは自分自身がレース中、どんなランニングをしているかを思い出してみてください。
トライアスロンという競技の特性上、ランニングパートではフレッシュな「さら脚」とはまったく違った状態で走っていると思います。
どんなにバイクをスムーズに乗ったとしても、ロングだと180㎞超のバイクパートをこなした後です。左右のバランスが崩れたり、股関節の前側の疲労があったり、普段のランニングとはまったく違った状態になっているはず。
フレッシュな状態の走りのレベルアップも大切ですが、常にレースでの状態をイメージして、その状態を改善するのがトライアスロン・ランのポイントです。練習でいくら速くても、本番でスローダウンしてしまったら意味がないですからね。
では、みなさんのレース中のペース・走り方はどうなっていますでしょうか? オリンピックディスタンス、ミドル、アイアンマンのそれぞれでイメージしてみてください。
それぞれの距離に対応するペース(スピード)を、感覚的・便宜的にわけてみると、大体以下ような6段階になるのかな、と思っています。
▼歩き
▼早歩き
▼ジョグ = ロング
▼ゆったりラン = ミドル、マラソン
▼速いラン = オリンピックディスタンス、ハーフマラソン
「歩き」と「走り」、定義的に何が違うのかというと、「歩き」は左右いずれかの足が接地している状態で、「走り」は両足が浮く瞬間がある、という違いになるかと思います。
この分け方で考えると、ロングのレースなどでは「歩き」「早歩き」になってしまう場合もあるかと思いますが、一気に遅くなってしまうので、私はできれば「ジョグ」の範疇までで収めたいと考えて練習しています。
具体的な数値(スピード)は各自で異なると思いますが、私自身(TK)を例にすると以下のような速度になりますね。
▼歩き 時速6km(キロ10分)
▼早歩き 時速10㎞(キロ6分)
▼ジョグ 時速12.6㎞(キロ4分45秒)
▼ゆったりラン 時速14㎞(キロ4分17秒)
▼速いラン 時速15㎞(キロ4分)
▼ダッシュ 時速16㎞(キロ3分45秒)
どうでしょうか? 自分のレースでのペースは分かりましたか?
それぞれのペース(スピード)で、走り方も変わってきますよね。
身体の傾き(前傾)と脚運びだけで移動する「歩き」から「走り」、「ダッシュ」へとスピードが上がるにつれて、足が浮く瞬間が長くなり、跳ねるような動作が少しずつ増えてきます。
ひとくちに「トライアスロンのラン」と言っても、ショートなのか、ミドル、ロングなのか、その距離をどんなスピードで走れるのかによって、選ぶべきシューズも、変わってくるわけです。
自分に合ったシューズを選ぶ上では、自分がどんなペースで、どんな走り方で走るのか(走れるのか)を理解しておくことが前提。
HOKA ONE ONEには、それぞれのペース・走り方に対応するようなシューズがラインアップされていますので、この前提を踏まえた上で、モデル別の特徴や選び方を紹介していきましょう。
トライアスリート目線で解説する
おすすめ最新ラインアップ
今回は特にトライアスリートにオススメのHOKA ONE ONEシューズ6モデルをTKが独自のチャートに落とし込み、それぞれの特徴を解説した。
チャートの縦軸の安定感とは「ソール(接地面積)の広さ」「アッパーのホールド感」で、横軸の走行感は「反発性の高さ」や「軽さ」などで判定している。
クリフトン7
【Men’s】サイズ25.0cm~30.0cm
【Women’s】サイズ22.0cm – 25.0cm
TK クリフトン7はHOKA ONE ONEの中で一番ニュートラルなモデル。クッション、安定感、軽さなどの機能から見てチャートの真ん中に位置します。一般的に軽量といわれているシューズからすると、少し重量がありますが、はいて走っているときに「重さ」を感じることはないですね。
カカト周りのサポート感が高く、またミッドソールの幅が広いため、左右のブレだけではなく、前後の体重移動にもスムーズに導いてくれます。
基本モデルなので、もしHOKA ONE ONEのシューズをはいたことがないなら、このシューズからはいてもらうと他のモデルと比べやすくなりますね。
(最近のアップデートで)私が気に入ってるところは、この尖ったカカト部分(=上の写真参照)。アキレス腱周りを保護するんですが、ここを持つと靴ベラいらずではきやすい。これはショートやスプリントのレースなら、トランジションの短縮にもつながりますよね。
走りやすさはもちろんですが、歩きやすくて普段ばきにもかなり使っているくらいです。
ボンダイ7
【Men’s】サイズ25.0cm~30.0cm
【Women’s】サイズ22.0cm~25.0cm
TK ボンダイはこのラインアップの中で、もっとも安定感が高くてクッションが分厚いモデルです。もし過去に足に何らかのトラブルがあった人は、足あたりの柔らかさがあるので、ボンダイはすごくいいと思います。
機能としてはソールやアッパーなどクリフトンのすべてをボリュームアップした「全部のせモデル」といってもいいでしょう。
ソールのクッションに関しては見た目通り言うまでもないですが、足が入る内部のクッションも厚くて気持ちいい! 上質なソファのようなラグジュアリー感があって、すごく足あたりがいいんです。
またコロコロ転がっていくメタロッカー感を体感しやすいので、それを使いながら前傾の練習をするのはボンダイが最適かもしれないですね。
リンコン2
【Men’s】サイズ25.0cm~30.0cm
【Women’s】サイズ22.0cm~25.0cm
TK イメージとしては「軽くなったクリフトン」といった感じです。クッションやアッパー部分の軽量化を進めることで重量減を実現したモデルですね。
アッパーはクリフトンよりもメッシュ部分が増えて、より通気性も良くなっている印象があります。
また、ミッドソールのサイド部分には削って軽量化したようなスリットがあり、ソールの厚さ自体はクリフトンとあまり変わらないようなのですが、やわらかいクッション感は少ないような気がします。
ただその構造のせいなのか、弾むような反発感は強く感じられるので、ポンポンとピッチが上がっていくような走り方ができると思います。
マッハ4
【Men’s】サイズ25.0cm~30.0cm
【Women’s】サイズ22.0cm~25.0cm
TK 今回紹介するラインアップの中でもっとも新しいのがこのマッハ4です。ミッドソールにHOKA ONE ONE最新の柔らかい素材、地面に接する部分に硬めの素材を使用することで、独特の柔らかさと反発感のあるシューズに仕上がっています。
反発感が強いモデルは、一般的に硬さも同時に感じることが多いのですが、これはすごく足あたりが良い! 反発とクッションのバランスが取れています。
また前足部のクッション性もかなり高くて、足のどの部分で着地しても柔らかさを感じることができます。
アッパーもしっかりしていますが、一方でリンコンに近い薄さと軽さがあり、カカトあたりにはクリフトンの安定感もある。
歩いても走っても気持ちいいので、トライアスロンにはすごく向いているかもしれない。「走るのが楽しくなる」、私自身、最近トレーニングでは、このマッハ4ばかりはいっているというくらい、今、イチオシのシューズです!
見た目の造形的には、ソールのツインテール形状や幅広感などが「カーボンX2」に似ていて、カーボンプレートなしがマッハ4、プレート入りがカーボンX2といった印象も受けます。
カーボンX 2
【Men’s】サイズ25.0cm~30.0cm
【Women’s】サイズ22.0cm~25.0cm
TK 飛び出したカカトのソールが「ツインテール」になっているカーボンプレート搭載モデルです。内部のカーボンはかなり硬くて、しなる感じはほぼないですね。
これは私の解釈ですが、そのカーボンプレートと強めのメタロッカー形状によって、前足部に乗り込んだときに身体の傾き(前傾)が生まれやすく、「疑似的な下り坂」を作り出してくれる。これによって大きな走りができるシューズになっていますね。
同時に下り坂なのでピッチが稼ぎやすくなり、ランの後半など、疲労などで大きな走りができなくてもピッチが保ちやすいので、そういう意味では、走るスピードに関わらずトライアスリート全般にオススメのモデルです。
前モデルのカーボンXと比べると、カカト周りの安定感が高まり、左右の安定感が高まったのもかなりいいですね。
クッションについてもソールの素材が変わったので、柔らかいだけじゃない。前のカーボンXはゴムまりの上に乗って跳ねるような着地感があったんですが、カーボンX 2は、サスペンションがきいたような着地ができて安定感も高まっています。
アイアンマンなどロングのレースシューズとして選ぶなら、自分としてはカーボンX2が一番しっくりくるところですね。
ロケットX
サイズ23.0cm~29.0cm
TK カーボンX 2と比べると分かるのですが、ソールの大きさはかなり小さくて、安定感の代わりにスピードに特化したシューズです。もし私がレースではくとするなら・・・10㎞のタイムトライアルなど、ラン単体ならこれが最高にいいと思います。
全体の設計を見てみると、アッパーの素材やソールの厚さなど減らせるもは減らしているという印象ですが、クッションはかなりきいているので、足あたりはすごくいいですね。
あくまでも私見ですが、脚がフレッシュな状態の走り=「ちゃんとした走り」がキープできるときには、バツグンに良いシューズだと思います。
TKが考える、トレーニング用と、レース用の最適な組み合わせ例
自分としてはレース用にカーボンX 2、練習にはマッハ4を選びたいところですが、速さを優先する人はレースにロケットX、練習にリンコン2という組み合わせでもいいでしょう。
レースでのランがジョグペースまたは歩きに近い感じになる人は、トレーニング・レースともボンダイという選択もアリかもしれないですね。
Q シューズのサイズ感について。同じブランドでも、モデルによってベストサイズが異なる場合がありますが、HOKA ONE ONEはどうでしょう?
TK 私はどのモデルも同じサイズではいています。アッパーの締め付け具合やフィーリングの部分ではそれぞれのモデルのサイズ感は大きく違ってくるので、一時はモデルによってワンサイズ下(小さいサイズのもの)をはいてみたこともありましたが、走ってみると、全部同じサイズでも違和感はないですね。
HOKA ONE ONEのシューズは、自分のレースペース、走り方に応じて最適なラインナップが揃っています。本番を見据えながら、どんなトレーニングをしていくかで、おのずと最適なシューズは決まってきますので、レースシーズンが始まる前に、ぜひ自分に最適な一足を探してみてください!
竹谷賢二(TK) Kenji Takeya
マウンテンバイク競技(XC)のオリンピアンで、 現役引退後はトライアスリートとしてKONA(アイアンマン世界選手権)に8年連続出場・完走。数多くのトライアスリートの指導を手がけるとともに、自らもKONAでの年代別入賞(表彰台)を目標に掲げ、トレーニングとレベルアップのための試行錯誤・自問自答を繰り返す日々。HOKA ONE ONEアンバサダーとして、日々、自らのトレーニングやレースを通じて、各モデルの特徴や使い分けを吟味している。
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