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世紀の番狂わせはあるか? 2022KONAアイアンマン世界選プレビュー

投稿日:2022年10月3日 更新日:


山村 勇騎

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3年ぶり開催のKONA、ロング世界最高峰の闘いで台風の目となることは間違いないノルウェー勢(左・ブルンメンフェルト、右・イデン)©Ryan Bethke/IRONMAN

歴代王者の面目躍如か
ルーキーの大金星か

いよいよ大会開催まで1週間を切ったアイアンマン世界選手権(以下、KONA)。ハワイでの開催は、2019年以来、3年ぶりとなり、この間、積もってきたスロットの影響で、初の2日間開催となり、総勢5000人近いアスリートたちが参戦する。

初日10月6日(木曜日)にプロ女子、土曜日(同8日=いずれも現地時間)にプロ男子で、エイジグルーパーは、2日間に振り分けられることになる。

前回2019年のKONAでは、新鋭の台頭を抑え、ヤン・フロデノ(中央)、セバスチャン・キーンル(右)、ティム・オドネル(左)のベテラン3選手が表彰台を占めたが、3年ぶりの開催となる2022大会はどうなるか?©Kenta Onoguchi

予測不可能なレース

KONAのレースは、他のレースに比べてとても予測が難しいレースだ。セントジョージ(※今年5月に米・ユタ州へ会場を移してスライド開催された2021年度の世界選手権)のように、ほかにも難易度が高いコースはあるが、KONAのレースと単純に比べることはできない。

その一番の理由は、変則的な天候と風だ。

緩やかな上りと下りを繰り返すバイクコースに加え、やはりKONA特有のトロピカルな気温と湿度が、アスリートたちのフィジカル、そしてメンタル面での脅威となる。

2週間前のPTO米国オープンレース(USオープン)では、灼熱の暑さの中、KONAのプレレースとして多くのトップ選手が出場したが、そこでは意外な選手が上位に上がるなど、今回のKONAも優勝候補の予想がある程度できても、レース当日、予想外の展開が起こることは十分ありうる。

特に今回は初出場の若手選手が多く、新旧世界王者やベテランレーサーら、経験を積んでいる選手もいる中、世代交代を感じさせるレース展開になるのかに注目したい。

2022KONA注目選手

プロ男子

©PTO/Canadian Open

Kristian Blummenfelt
クリスティアン・ブルンメンフェルト

■出身:ノルウェー
■年齢:28歳
■キャリア:東京五輪金メダル、2021年アイアンマン世界選手権(セントジョージ)優勝

東京五輪とアイアンマン世界選セントジョージ、両メジャーレースを1年間のうちに制覇する快挙を成し遂げた。ショートでのスピードを十分に生かし、ロングでもその速さを証明し、「マルチディスタンスアスリート」として前人未踏の領域で活躍している。

従来のトライアスリートの細身体型の概念も壊し、強靭な肉体をもち、あのタフなセントジョージのコースで、ラン(42.2㎞)2時間38分というタイムを弾き出した。

他のレースで、何度か痙攣に悩まされるシーンもあり、今回初挑戦となるKONAで、天候がどう影響するかが疑問だが、5月の世界選のような完璧な走りができれば、コースレコード達成と、オリンピック&2×IM世界選のトリプル制覇(三冠)も間違いない。

©PTO/Collins Cup 2022

Gustav Iden
グスタフ・イデン

■出身:ノルウェー
■年齢:26歳
■キャリア:アイアンマン70.3世界王者(2019・2021年)、2021年アイアンマン・フロリダ優勝、東京五輪8位

2度の70.3世界王者に輝き、東京五輪にも出場。同郷のトレーニングパートナーであるブルンメンフェルトと同様に、ショートからロングまで幅広く活躍し、今回がKONA初出場。

これまでどの70.3レースでも王者らしい強さを見せ、負けなしのパフォーマンスで他を圧倒している。

スイムで少し出遅れるが、バイクとランの強さは、誰にも負けない。問題となるのが、ブルメンフェルトと同様に、天候がどう影響するかだが、バイクをうまく先頭集団でフィニッシュすることができれば、ラン勝負に持ち込み、優勝に近づくだろう。

©PTO/Collins Cup 2022

Patrik Lange
パトリック・ランゲ

■出身:ドイツ
■年齢:36歳
■キャリア:2017・2018年アイアンマン世界王者

KONAの地で、初めて8時間の壁を破った元世界王者。ここ数年は、2019年に世界王者へと返り咲いた同郷のフロデノに、大きな注目が集まる中、存在自体が少し薄れ始めていた。

今年は、ケガや病気などに悩まされてきたが、チャレンジロートやPTOコリンズカップでは、優勝を逃すものの、そのランスピードとポーカーフェイスぶりは、今も健在だ。これまで培ってきた経験とタフなメンタリティーを見せ、うまくラン勝負へ持ち込むことができれば、王座への返り咲きもあるだろう。

©Darren Wheeler/PTO/Collins Cup 2022

Lionel Sanders
ライオネル・サンダース

■出身:カナダ
■年齢:34歳
■キャリア:2021年アイアンマン世界選2位、アイアンマン70.3セントジョージ優勝(2018・2021年)

ウーバーバイカー(※バイク強者を指す)のひとりで、セントジョージ世界選2位のランナーアップ。スイムでのロスを、バイクの強さで埋め、攻めのランを見せる。

これまで多くのレースで勝ち星を増やしてきたが、世界選手権では、優勝まで届かず、これまで何度も表彰に上がるも、2位が最高位。2週間前のPTOレースでは、意外にも暑さに負けてしまし、うまく上位へ上がることができなかった。

KONAでは、しっかりと調整し、常に課題の暑さと補給対策をクリアできていれば、今年、優勝に近づけるだろう。

©PTO/Collins Cup 2022

Magnus Ditrev
マグナス・ディトレブ

■出身:デンマーク
■年齢:24歳

今年KONAでの世界選初出場となる注目の若手選手。ここ2年間で、ウーバーバイカーとして実力を示し始め、2019年のKONA王者ヤン・フロデノに引けを取らない存在感を示してきた。

今年のアイアンマン・テキサスでデビューし、パンクに悩まされたものの、ランでも優勝争いに絡む走りを見せた。

プロサイクリストで現バイクコースレコードをもつキャメロン・ワーフとのバイク対決に注目が集まる。2週間前のPTOダラス大会では、灼熱のレースで、さらに成長した強さを見せたので、KONAでも要注目選手のひとりだ。

©World Triathlon

Collin Chartier
コリン・シャーティエ

■出身:アメリカ
■年齢:29歳
■キャリア:2022年PTO USオープン優勝、2022年アイアンマン・モントトレンブラン優勝

今回KONA初出場ながら要注目のダークホースだ。3週間前のPTO USオープンでは、大方の予想を覆して、ベテラン勢をランで次々と抜かし、初金星を上げている。

現在、サンダースと同じノルウェー出身コーチ(ミカル・イデン:グスタフの兄)について、トレーニングパートナーとしてお互いを高め合っている。

スイムからトップ集団で上がり、バイクでも粘り強い走りを見せ、得意のランで、他の高速ランナーたちとともに、どこまで走れるかに注目。KONAでも、再度、大番狂わせとなる優勝の可能性を秘めている。

プロ女子

©Ryan Bethke/IRONMAN

Daneila Ryf
ダニエラ・リフ

■出身:スイス
■年齢:35歳
■キャリア:アイアンマン世界選5勝(2015・2016・2017・2018・2021年)、アイアンマン70.3世界選5勝(2014・2015・2017・2018・2019年)、五輪出場(2008年北京、2012年ロンドン)

2013年のロング転向以降、ロング界の絶対王者として常に君臨していたが、大きなスランプを迎えた2021年は、70.3世界選で優勝を逃し、どのレースでもいつものリフを見せられずにいた。

誰もが世界王座への返り咲きは難しいかと思われていた中、ふたたび力強いパフォーマンスを見せ、セントジョージ世界選で復活優勝、5度目の世界王者となった。

圧倒的なバイクパフォーマンスで、どれだけ差を広げられるかが、リフの優勝の分かれ目となる。今年のKONAで優勝することができれば、同郷のレジェンド、ナターシャ・バドマンに並ぶ6勝目となる。

©PTO/Collins Cup 2022

Anne Haug
アンネ・ハウグ

■出身:ドイツ
■年齢:39歳
■キャリア:元アイアンマン世界王者(2019年)、五輪出場(2012年ロンドン、2016年リオ)

ITUサーキットで長年活躍し続け、2016年のリオ五輪出場後、ロングへ転向。すぐに頭角を表し始め、2018年アイアンマン世界選3位入賞し、2019年には世界王者に。小柄な体型ながらも、力強いランフォームで、常にアイアンマンでは2時間50分代で激走する。セントジョージの世界選は、ランで追い上げるも3位に。今年のレースでは、優勝を逃している傾向だが、KONAとの相性が良く、常に上位入賞している。スイムとバイクでうまく先頭集団に近づき、得意のランで優勝を狙う。

©Donald Mirralle/IRONMAN

Lucy Charles-Barcley
ルーシー・チャールズバークレイ

■出身:イギリス
■年齢:29歳
■キャリア:2021年70.3世界王者、2×アイアンマン世界選2位入賞

5月のセントジョージ世界選前に、選手生命を揺るがすケガに見舞われた。しかし、リハビリなどを重ねて、1カ月前のロンングコース世界選手権で復帰し、見事に優勝。

その後に出場したPTO USオープンでは、スイムをトップで上がったものの、暑さが大きく影響し、3位入賞。KONA戦線での人気は絶大なスター選手で、彼女が復活すればKONAのレース全体が大いに盛り上がりそうだが、

本来のパフォーマンスを取り戻していれば、優勝も狙える実力者であることは言うまでもない。

©PTO/Collins Cup 2022

Laura Phillip
ローラ・フィリップ

■出身:ドイツ
■年齢:35歳
■キャリア:2019年アイアンマン世界選手権4位、2021年アイアンマン・オーストリア&スウェーデン優勝

ここ数年間で最も著しい成長を見せている新星。昨年から数々のアイアンマンレースで優勝を重ね、今年の70.3ドバイでは、リフを抑えての勝ち星を上げている。

好調に練習を進めていたセントジョージ世界選では、コロナにかかり欠場を余儀なくされる。その1カ月後に出場したアイアンマン・ハンブルクでは、コースレコードを更新して優勝。そのレースでは、4時間31分のバイクタイムと2時間45分というランラップで、その強さを証明した。

スイムが弱点ながらも、バイクとランで追いつける速さをもっているので、ハンブルクと同じようなランタイムで走れるようなら、優勝は確実と言ってもいいだろう。

©PTO

Skye Moench
スカイ・モンチ

■出身:アメリカ
■年齢:34歳
■キャリア:2021年アイアンマン・チャタヌーガ優勝、2019年アイアンマン・フランクフルト優勝

エイジ上がりで、2016年にプロへ転向。数年かけて探りながら、徐々にパフォーマンスを上げていき、2019年のアイアンマン・ヨーロッパ選手権優勝で、ブレークスルー。セントジョージの世界選では、スイムで出遅れるものの、バイクで好位置を維持し、ランでも粘り強い走りを見せ4位入賞を果たしている。

今回、唯一注目のアメリカ代表トップ選手として、歴代世界王者らを相手に、一矢報いることができるか、最後まで見逃してはいけない存在だ。

2022KONA
優勝者予想

プロ男子
1 グスタフ・イデン
2 マグナス・ディトレブ
3 コリン・シャーティエ

プロ女子
1 ダニエラ・リフ
2 ローラ・フィリップ
3 アンネ・ハウグ

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■著者プロフィール
山村勇騎(やまむら・ゆうき)
アメリカ在住のトライアスリート・ジャーナリスト。アイアンマンのオフィシャルレースメカニックとして、全米のレースを飛び回りつつ、WEBメディア「TriWorldJapan.com」を創設。英語圏で流通する世界のトライアスロン情報を、日本のトライアスリート向けに発信している。アイアンマン・シリーズ戦などでメカニックとしても活躍しており、9月のPTO USオープンでは移動メカニックとしてルーシー・チャールズ・バークレーの窮地を救った。

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