ブリティッシュトライアスロンナショナルチームと語る、
メンタル&フィジカル・トレーニング
世界トップクラスのトライアスリートを輩出し続け、今年で40周年を迎えるブリティッシュトライアスロンナショナルチーム。
パリ戦線でも、世界にその層の厚さを見せつけているブリティッシュトライアスロンナショナルチーム(以下イギリス代表チーム)をサポートしているデサントでは、ワールドトライアスロンシリーズ(以下WTCS)横浜に参戦するため来日した選手とコーチを、東京・渋谷の旗艦店「DESCENTE TOKYO」に招き、一般トライアスリートと交流できるプレミアムイベントを開催。
多くのメダリストや世界チャンピオンを輩出し続ける、その強さの秘密を明かしてもらいつつ、日々のトレーニングやレースで役立つアドバイスを語ってもらった。
▼Guest Athletes
ケイト・ウォー
Kate Waugh
(WTCS横浜女子5位)
ジャック・ウィリス
Jack Willis
(WTCS横浜男子43位)
オスカー・ケリー
Oscar Kelly
(WTPS横浜ブラインドDNF)
マイク・カヴェンディッシュ コーチ
Mike Cavendish
東京五輪ミックスリレー金メダル獲得の影の立役者と言われるブリティッシュトライアスロンナショナルチームのパフォーマンスディレクター。運動生理学のバックグラウンドをもち、コーチ、科学・医学者、運営スタッフからなる大規模なパフォーマンスチームを率い、グローバルな舞台で成功できるエリートトライアスリートの育成にあたっている。
Q イギリス代表チームが強い選手を輩出し続ける背景を教えてください。どのような育成システムがあるのでしょうか?
マイク・カヴェンディッシュ コーチ(以下、M) 私たちは今、リーズとラフバラーの2カ所にトレーニング拠点を置いています。これらの拠点には最新のスポーツ科学やスポーツ医学に基づいた設備があって、多くのトップ選手が一緒にトレーニングをして切磋琢磨しています。
2拠点あることで、お互いの間に健全なライバル意識が生まれているのも、功奏していると思います。
そして、リーズでも、ラフバラーでも、若い選手が実績のある選手から多くのことを学んでいます。
例えばここにいるケイトはオリンピックメダリストのジョージア・テイラー・ブラウンやヴィッキー・ホランド、ワールドチャンピオンのノン・スタンフォードから、そしてジャックはブラウンリー兄弟から、またオスカーとジェイミーは先輩パラトライアスリートたちから多くのことを吸収して成長しています。
Q 昨日のWTCS横浜は雨のレースでしたが、雨で気を付けることを教えてください。
ケイト・ウォー(以下、K) レース前にできることは、タイヤの空気圧を少し下げておくことです。あとはレース中、あまりリスキーな動きをしないことですね。
直線ではあまりパワーをかけないこと、それとコーナーに入る時は早めにブレーキをかけることも大事。
それから横断歩道など白線は滑るのでできるだけ避けたいんだけど、昨日の横浜のコースのように白線が多いところは、なかなか避けきれないんですよね。
ジャック・ウィリス(以下、J) 僕も(昨日のような雨の日のレースでは)タイヤの空気圧は60psiに下げています。あとはコーナーではおかしな軌道をとらないこと。急なコース取り変更は危険です。
オスカー・ケリー(以下、O) 僕らの場合はタンデムバイクなので、少し事情が違います。
ふたりの体重が乗るので、あまり空気圧は下げられないんです。
また、タンデムバイクの場合はコーナリングの技術でタイムを稼ぐ部分もあるので、雨の日は相当難しいレースになります。ある程度リスクをとらないとタイムが出せない。昨日のレースでは、失敗してクラッシュしてしまいましたが……。
Q バイクの集団の中では、どんな風に先頭交代を行っているのですか?
K 私たちはいつも同じメンバーで転戦しているので、誰がバイクが強いかはわかってレースしています。重要なのは、誰が引くのが一番効率が良いのか。
昨日の場合だったら、私がいた先頭集団は、後ろの集団を引き離したかった。その場合は強い選手に引いてもらわないといけません。昨日だったらテイラー・ニブ選手ですね。
とにかく集団内でのコミュニケーションが大事です。
J 男子は女子とはちょっと事情が違って、そんなにフレンドリーな状況ではないことが多い。
ただ、考え方は同じ。昨日のように30人、40人といった大集団なら前のほうにいるのがいいけど、みんな先頭にはなりたくない。その位置取りが熾烈です。ずっと後ろに止まってラクしている選手がいたら、苦情を言われます(笑)。
Q 日々のトレーニングの中でのモチベーションの保ち方を教えてください。
K トライアスロンはエンデュランススポーツなので、日々の継続したトレーングが重要です。トレーニング時間も長い。だから、毎回やる気満々でトレーニングに臨むことはそもそも難しいと思うんです。
大事なのは自分に厳しく日々やるべきことをやること。やる気が出ても出なくても。継続は力なりです。そのためにも、トレーニングプログラムは重要です。
J トレーニング仲間を作ることが大きな助けになります。同じ目標を持った人たちと会って話をしたり、一緒にトレーニングすることでモチベーションは上がります。
それと、忘れて欲しくないのは、スポーツは楽しむためにやるものだということ。僕らだってスタートは楽しいからやっていた。それが仕事になっただけで、基本は同じです。
O 僕はインドアでトレーニングすることが多いこともあって、モチベーションを保つには意志の強さが必要です。
僕のモチベーションの源は、同じカテゴリーの世界選手権5冠の選手と一緒にトレーニングしていること。彼を超えることが目標です。
インドアトレーナーでの練習は好きじゃないんだけど、良い結果が出た時のことを思い出して気分を上げています。
Q イギリス代表チームは東京五輪でも活躍しましたが、暑さ対策はどのように行ったのでしょうか。
M 暑熱順化に関しては、東京五輪の開催5年前から準備してきました。特に深部体温の下げ方についてはリサーチと試行錯誤を重ね、体温をクールに保つノウハウを蓄積してきました。
まず、暑さの中でのレースで一番やってはいけないのは、水や氷水をかぶったりして体の表面を冷やすことです。効果的なのは、冷たい飲み物を飲んで体の内側を冷やすことだとわかりました。「スラッシー」と呼ばれる半分解けたかき氷状の水を飲むのです(※日本ではアイススラリーの名称で市販されていることが多い、シャーベット状のもの)。これが一番速く深部体温を下げられることがわかりました。パリでもエイドでの補給にスラッシーを使う予定です。
Q レース直前の過ごし方やトレーニングでの注意点を教えてください。
J 1週間前になったらやりすぎないことですね。すべてのトレーニングはもう終わっているはずですから。
キレを保つため、2、3日前に強度の高いトレーニングを少し入れるのも効果的ですが、やりすぎよりはやらなすぎのほうがいい、と覚えておいてください。
O レース前は自分のルーティンを決めて、それに沿った行動をすること。他の人に合わせたりしなくていいんです。レースが終わったらレースで訪れた場所の文化に触れたりして楽しむ。それも大事だと思ってます。
K 私の場合、レースペースでの短い練習を入れています。レースでの感覚を身体が忘れないように。スイムなら、100mをレースペースで何本か泳ぐとか。ただし疲れを残さない程度の量にとどめておくことが大事です。
あとの時間は横になったりしてできるだけ身体を休めています。
あとは、プレーンな炭水化物をしっかり食べるようにしています。
トライアスロン・アイテム展示販売
「デサント」ブランドの旗艦店「DESCENTE TOKYO」(東京・渋谷)で5月31日(水)まで
今回のイベント会場となったショップDESCENTE TOKYO(デサントトウキョウ)では5月31日(水)まで、ブリティッシュトライアスロンナショナルチームデザインのポロシャツやランパン&ランシャツなどを展示販売中。
ブリティッシュトライアスロンナショナルチームのレプリカ商品はもちろん、その他商品でも購入時に「ルミナを見た」とお伝えいただくと、もれなくノベルティグッズのプレゼントがあるので、今季のモチベーションupに、ぜひ!
▼shop info
DESCENTE TOKYO(デサントトウキョウ)
渋谷区神宮前6-19-21