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【実践動画あり】ニナー賢治 進化の秘密「村上式体操」

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ルミナ編集部

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東京&パリ両五輪をともに戦ってきた村上晃史コーチ(宇都宮村上塾代表=写真左)とニナー賢治選手(NTT東日本・NTT西日本所属=同右)。2025年からはロス五輪への挑戦とともにアイアンマン70.3にも参戦する

メダル獲得を視野に入れるまで
実力を高めた「動作改善」アプローチ

取材=東海林美佳
写真=小野口健太

東京&パリと2大会連続でオリンピック日本代表のエースとして活躍し、パリではトラブル含みのレースで思うような結果とはならなかったものの、初めて上位入賞・メダル獲得が現実味をもって期待されるレベルにまで実力をつけたニナー賢治。

課題としてきたスイムで、世界のトップグループで上がれる力をつけ、WTCS横浜8位入賞(日本男子過去最高位)のランを引き出したのが、村上晃史コーチの考案した「村上式体操」だ。

関節を柔軟にして可動域を広げ、理想的な動きを習得しやすくするこの体操は、ラクに速く泳ぎ走れる「強化」の面だけでなく、故障予防にも役立つため、エイジグルーパーにとっても取り組む価値のある、非常に有効なアプローチとなる。

この体操の意義とこれまでの取り組みを、村上コーチとニナー選手、それぞれに聞いた。

ニナー賢治
Kenji Nener

オーストラリア人の父と日本人の母をもつトップトライアスリート。18歳のときにトライアスロンに本格参戦。2018年12月からは日本代表としてワールドカップ、世界シリーズに出場(2021年4月に日本国籍を取得)。東京・パリ2大会連続でオリンピックに出場。2024年のWTCS横浜大会では、並みいる強豪を相手に日本人男子歴代最高位となる7位入賞を果たしている。2028年ロス五輪を目指すとともに2025年シーズンからはIRONMAN 70.3にも本格参戦することを表明し、注目を集めている。1993年、西オーストラリア州・パース生まれ。

基礎戦力UPのカギは
肩・股関節の可動域

村上晃史コーチ
ニナー賢治を指導していく中で、ひとつのキーになっていたのが「動作の改善」でした。

人間の身体というのは、基本的には股関節まわりと肩関節まわりを起点に動いています。トライアスロンの基本的な動作においてもこれらの部位が極めて重要になってきます。

理想の動きができるようにするためには、この部分の可動域を広げることが賢治を指導するうえでのひとつのテーマでした。

賢治はトライアスロン以外にもサッカーやテニス、器械体操などさまざまなスポーツをやってきているので、修正能力は非常に高い。「このへんの動きを少しこう直した方がいいよ」という話をすると、うまく修正していける選手なんですね。ただ、その理想の動作をするための可動域が足りないというのが課題でした。

世界の第1集団でスイムUP
急成長のカギは肩関節ストレッチ

2018年以降、まず取り組んだのがスイムのペアストレッチです。

動作修正とともに可動域を広げるようなストレッチを行ってきました。日本に来た時点での彼のスイムは日本のトップ選手よりも遅かったんです。

でも、この動作修正と可動域を確保するストレッチを取り入れるようになってから彼のスイムは大きく伸びて、今ではWTCSでもアクシデントがない限りは第1集団で上がって来れるレベルになっています。

この取り組みは、賢治のスイムのレベルを大きく引き上げたと言えると思います。


▼実践動画リンクは記事末尾

ランの強化&故障予防にも効く
股関節の可動域カイゼン

その後バイクとランにおいても、東京五輪の頃から動作改善を試みてきました。東京五輪後、特に大きな課題と認識して取り組んだのがランニングの動き改善です。

賢治は関節の可動範囲が非常に狭くて動きが硬く、走る際に脚が上がってこなかった。それを変えるために取り入れたのがランニングのドリルとひとりでやれる股関節のストレッチでした。

これを毎日のようにやり続けて動きを自分の身体に覚え込ませ、筋力など他の要素とも融合してある程度完成したのが2024年2月頃。そこからは結果もしっかり残せるようになって、ワールドカップでの入賞やワールドトライアスロンシリーズでの入賞ができる選手になってきました。


▼実践動画リンクは記事末尾

ただ、まだ最終形とは言えず、もう1ランク、2ランク上げられる余地があると思っています。世界トップに近づくためののびしろがまだあるということです。

スイムもバイクもランも、動き作りは極めて大事な要素です。そのために必要な可動域の確保に取り組むことは、効率よくスピードが出せるようになるだけでなく、故障の防止にもつながります。

そういう意味では、エイジグルーパーにとっても非常に有効なものだと思いますので、ぜひ取り入れていただきたいと思います。

STEP1は関節可動域カイゼン
STEP2はその可動域をどう使うか

ニナー賢治選手
モビリティ改善のトレーニングにはいくつかステップがあります。ステップ1としては、動きに関わる関節の可動域を広げること。これによって動きが大きくなりストライドも広げることができるようになります。

ステップ2は、確保した可動域をどのように使うかを身体に覚えさせること。これは、実際の走りを習得するための重要なステップで、自分のそれまでのクセをリセットするために大事なものです。

こういった取り組みは非常に重要なものですが、長い時間がかかります。しかも、今言ったことは最初のステップでしかありません。

ランのレベルを上げるための動作改善プロジェクトに、村上さんと僕とで取り組み始めたのが東京五輪直後の2021年。僕のランのテクニックをより良くするため、多くの時間を費やして、この課題に取り組んできました。

2024年のWTCS横浜ではラン終盤まで表彰台圏内を走り、沿道を大いに沸かせた

ストロークの良いイメージができ
スタートから身体がよく動く

スイムのほうは、2018年にパトリック(前日本代表監督)と村上さんが、ナショナルチームのスイムをレベルアップするために始めたものでした。

僕の場合は入水直後のキャッチを改善することが必須と判断され、その改善に取り組みました。もちろんキャッチを変えるだけでスイムがいきなり速くなるわけではないのですが、それでも確かに効果はありました。

ふたりで行わなければできないストレッチなので、村上さんと時間が合うときは必ず行う、という頻度ですが、特にレース直前にこのペアストレッチをやると、スイムストロークの良いイメージができ、スタートから身体がよく動くので、必ずやるようにしています。

▶ 動画でチェック&トライ!
【実践編】村上式「動作改善」体操

 

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