Tokyo2020パラリンピック
日本代表記者会見〈1日目〉
8月24日に開幕する「東京2020パラリンピック」、トライアスロン競技では、第一次選考基準(ITUパラリンピック出場資格ランキング=PQR9位以内)をクリアした5人に加え、バイパルタイト招待枠、追加選出枠で各1人が選出され、計7人が出場を決めている。
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8月16日には、オンラインでの公式記者会見初日に秦由加子、円尾敦子、宇田秀生、米岡聡の4選手が登場。
それぞれの目標と、達成に向けた意欲・プランを語った。
リオの経験生かした直前調整に手ごたえ
PTS2 秦由加子
(キヤノンマーケティングジャパン・マーズフラッグ・ブリヂストン/千葉)
――東京2020パラリンピック出場を決めたときの心境は?
秦 トライアスロンは日本代表内定の最終的な発表がギリギリまでなかったのですが、私自身は出場することを心に決めて、沖縄という今までとはまた違った環境に身を置いてトレーニングを積んでいましたので、
決まったときは「ようやくこれで自国開催のパラリンピックに出場できる」という喜びを感じるとともに、トレーニングに取り組む姿勢もより一層強くなったと思います。
――東京2020本番での目標は?
秦 リオ大会では6位に入りましたが、当時はまだトライアスロンの競技経験も浅く、2013年から始めて数年での出場だったので、世界の選手たちと本当に戦ったという意識はあまりもつことができませんでした。
また、レースの3カ月くらい前から、切断した側の脚の状態がどんどん悪くなっていて、すごく痛くてトレーニングも十分に積めない中での出場となってしまった。
フィニッシュラインで、「次回またパラリンピックに出場できる機会があったら、今度こそ本当に世界の選手たちと競い合って、勝ちたい!」と思ったことが、強く心に残っています。
今は体調万全なので、東京2020では世界の選手たちとしっかり戦って、自分の力を試したいと思います。
――リオの教訓を生かして、直前の過ごし方などで変えた点は?
秦 大腿切断の義足で走ると、ときおり義足と接する部分に痛みが出たり、傷ができてしまうので、あまり長い距離を激しくトレーニングするのが難しいのですが、
リオのときはラン用の義足をつけてトレーニングした期間も短かったので、ちょっと走ると傷ができて・痛みが出て・・・という繰り返しでした。
今は筋力も上がって痛みが出にくくはなったものの、やっぱり最長で10㎞くらいしか走れないので、痛みが出る前にトレーニングをやめる。距離は限られていても、強度や質を上げて、短時間でやるというのを繰り返してランの強化ができてきました。
東京2020のレースを控えた今、痛みが出ていないというのが本当にありがたいです。
「これくらいだったら痛みが出なくてすむ」という境目がどのあたりか、自分の感覚とまわりの皆さんと共有するのがなかなか難しいこともあったんですが、今回は、そうした情報共有がすごくうまくいっているのがよかったと思っています。
――沖縄にトレーニング拠点を移した理由は?
秦 コロナ禍で感染が拡大する前は、(日本が寒くなる年末年始は)暑いタイでほかの選手たちとトレーニングしていたのですが、コロナ禍で海外渡航が難しくなってしまいました。
そこで、東京2020の暑さ対策も踏まえ、昨年の9月から沖縄を練習拠点として、しっかり屋外でのトレーニングを積んできました。
沖縄の練習拠点には低酸素のトレーニングルームがあり、毎日1~2時間、その中で筋トレやローラー台での練習、ストレッチなどを行っており、スイムなどでも脈が上がらないという効果を感じています。
追加選出に感激。
東京後はロング挑戦も視野に
PTVI 円尾敦子
(日本オラクル・グンゼスポーツ/兵庫)
――東京2020出場を決めたときの心境は?
円尾 一次選考の段階で東京2020の代表メンバーには選ばれず、次の目標であるロングのトライアスロン挑戦に向けた準備を始めようかなと、思っていたときに、最後に出場させていただけることが決まりました。
当初は(代表入りできなかったことで)すごく落ち込んで、やせたりとかいったこともあった中で、すごくうれしいニュースをいただいて言葉も出なかったですが、周りの方たちも喜んでくれたので、急いで準備をはじめました。
――東京2020本番での目標は?
円尾 リオでは最後にランで抜かれてしまい9位。その悔しさを糧に東京2020を目指してきたので、出るからにはリオよりひとつでも上の順位を狙っていきたいと思っています。
――東京2020に向けて特に強化してきた点は?
円尾 リオのときは右も左もわからない状態で、自転車に乗るにしてもビンディングシューズで乗ることさえ、まだ習得できていなかったので、東京2020を目指すと決めたときからは「まともなトライアスリートとして出場する」ことを目指してやってきました。
ナショナルチームとしての強化態勢にも助けられ、リオとは全く違った姿を見ていただけると思います。まわりもすごく強くなっているので、勝負になるかわかりませんが、精一杯戦いたいです。
パラリンピックへの挑戦はこの東京が最後ですが、これでトライアスロン自体をやめるわけではなく、次の目標(ロングのトライアスロン)に向かって続けていきたいと思っています。
ガイドの菊池日出子さん(2019年からのパートナー)は、元エリート選手で海外レースの経験も豊富な方なので、この1~2年の間、一緒にレースに出て、海外勢との戦い方などもいろいろ経験させてもらいました。
一番はスイムでの周りとの戦い方。展開や位置取りなど細かいところで、全然(結果が)違うことがわかりました。
私の実力でも波や流れをうまく使いながら少しでも前に泳いでいくノウハウなど、いろいろなことを教わることができました。
目標はメダル獲得。
強い気持ちで、粘って3位以内に
PTS4 宇田秀生
(NTT東日本・NTT西日本/滋賀)
――東京2020出場を決めたときの心境は?
宇田 初めてのパラリンピックなので、代表入りが決まってホッとしたのと、あらためて、『パラリンピックの舞台に立って、楽しんでやるぞ!』という気持ちになりました。
また、僕以上に周りの人たちがすごく喜んでくれて、ビックリしました。
――東京2020本番での目標は?
宇田 目標はズバリ、表彰台に上ることです。
スイムで少し出遅れると思うのですが、そのあとのバイク・ランでしっかりと前の選手を一人ずつ追って、粘って、3番以内に入りたいと思います。同じカテゴリーの選手はたくさんいますが、気持ちでは一番強いと思っています。
――「アスリートとしてのパフォーマンスの高さを見てもらいたい」とコメントされていますが、今回の東京2020で特にトライアスリートやほかのパラスポーツに取り組むパラアスリートに見てもらいたいポイントは?
宇田 バイク・ランは自信があるので、レースでのタイムを見ていただいて、片腕でもこれだけのタイムが出るんだというのを、皆さんに見ていただきたいと思います。
スイムも(練習の)ボリュームを上げてきているので、横浜のときよりは確実にトップの選手に近づいていると思います。
――お台場のコースでのレース経験は?
宇田 お台場でレースをするのは、今回で3回目です。自分としては割と好きなコースなので、良いパフォーマンスが発揮できると思っています。
特にバイクコースがテクニカルで、若干の上りもあるんですが、そういう部分で他の選手とやってきたことの差が出るのではないかと思っています。
――メダル獲得のために、超えていきたいターゲット、目標としている選手は?
宇田 フランスのアンカンコン選手(Alexis Hanquinquant)。
今まで一度も勝ったことがないんですが、スイム、バイク、ラン、どれをとっても素晴らしいパフォーマンスをもっている選手なので、まずはそこを一番の目標にしています。人間性もすごくいい選手なので、できるだけそこに近づきたいと思っています。
ラン勝負に持ち込めれば
「メダル獲得」の勝機あり
PTVI 米岡 聡
(三井住友海上火災保険/東京)
――東京2020出場を決めたときの心境は?
米岡 「よし決まった!」というのと、調子も上がってきていたところだったので、「本番も(この調子で)戦ってやるぞ!」という想いを強くしました。
――東京2020本番での目標は?
米岡 ズバリ目標はメダル! これをずっと目標にしてやってきたので、本番でもブレずにそれを目標にやっていきたいと思っています。
――自身のメダル獲得のためのポイントは?
米岡 僕はランニングが一番得意なので、最後そこで粘り切れるレースができれば、メダル獲得への勝機は絶対あると思っています。
スイム、バイクでしっかり遅れないように、前のほうの選手についていって、ラン勝負にもちこむ――そういう展開を思い描いています。
――高地トレーニングにも取り組んでいたそうですが、どんなところに目標を置いて強化してきましたか?
米岡 これまで高地トレーニングには少し苦手意識もあったんですが、今回は3週間トータルで強化の内容を決めて、強度設定も最初の1週間はゆっくり入り、次の1週間でしっかり上げていき・・・というように管理できて、酸素運搬能力の向上など、目標はしっかりクリアできたかなと感じています。
3種目それぞれ少しずつパフォーマンスは上がってきているのですが、特に高地でのトレーニングでバイクのパフォーマンスが上がってきていると感じています。
――ガイドの椿浩平選手の存在は大きい?
米岡 エリート選手として経験豊富なトライアスリートなので、レースはもちろん、トレーニングや準備の段階から、自分では気づけない部分をいろいろアドバイスしてもらえる点で、彼の存在はすごくプラスになっていると思います。
例えば、スイムに関して、(一緒に泳ぐので)「水をかくピッチをそろえたほうが効率良く進むんじゃないか」といった指摘があり、確かにそこを合わせることでスピードもしっかり上がっていきました。そうした気づきがいろいろあります。
――ブラインドマラソンからトライアスロンに転向してのパラリンピック出場。あらためて米岡選手にとっての「トライアスロンの魅力」とは?
米岡 一つひとつやっていくなかで課題が見つかって、それをつぶしていくとレベルアップしていく。そうした感覚を味わうのがすごく面白いなと思って競技をやってきたのですが、
トライアスロンの場合は、スイム、バイク、ラン、トランジションまで含めて(そうした楽しみが)4倍ある。
その分、考えることが多くて大変なところもあるんですが、それ以上に、やればやっただけしっかり伸びていく、自分の成長が実感できるのが面白いなと思ってやっています。
(※明日8月17日には、土田和歌子、谷真海、木村潤平の3選手によるオンライン記者会見が開催される)
8月28日(土)6:30~11:00
男子 PTS4、女子 PTS2、男子 PTVI、女子 PTVI
8月29日(日) 6:30~11:10
男子 PTWC、女子 PTWC、男子 PTS5、女子 PTS5
★両日とも6:25~NHK BS1で放送予定あり。最新情報はNHKの「東京パラリンピックの放送計画」サイトでチェックを。
秦&宇田両選手が語る、
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