Tokyo2020パラリンピック
日本代表記者会見〈2日目〉
8月28・29日に開催される「東京2020パラリンピック」トライアスロン競技のチームJAPAN(日本代表)オンライン記者会見、
2日目の8月17日には、冬季・夏季あわせて9回目のパラリンピック出場にして、2競技(トライアスロン、マラソン)出場の偉業に挑む土田和歌子、
東京2020招致の立役者で、パラリンピック日本選手団の旗手を務める谷真海、
トライアスロン競技でもリオに続く2回目の出場で、悲願のメダル獲得を狙うPTWCの木村潤平、
3選手がいよいよ間近に迫ったパラリンピック本番に向けた決意を語った。
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2競技での出場は
可能性を広げるチャンス
PTWC 土田和歌子
(八千代工業/東京)
――東京2020パラリンピック出場を決めたときの心境は?
土田 トライアスロンでは初参加となります。世界の舞台で新しい挑戦ができることに、今は興奮と緊張感で一杯です。
選考されたときは、本当に「驚き」のほうが大きかったですが、今は挑戦心のほうが勝っています。
――東京2020本番での目標は?
土田 レースでは(同じクラス内での障がいのカテゴリーの兼ね合いで)一番最後からのスタートとなるので、前を行く他の選手をいかにして追い上げられるかが重要になってくるんですが、これまで取り組んできたことをすべて発揮して、コーチ、ハンドラー、関係スタッフの方々とともにベストを尽くしたいと思っています。
――トライアスロンに出た1週間後にマラソンと、2競技での出場ですが、これまでにも同様の連戦経験は?
土田 実は東京大会を見据えて、2019年と2020年には、マラソンとトライアスロンをかけ合わせたスケジュールを組んでいたのですが、コロナ禍の影響で大会が中止になり、実際(2競技の連戦は)試せておりません。
今回は本当に初めてずくしで、「挑戦」という一言に尽きるのですが、自分のこれまでの8回のパラリンピック出場で培ってきた調整やコンディショニングに関しての経験を生かして、取り組んでいきたいと思います。
現在は合宿地で、トライアスロンでの3種目の動作確認や、マラソンの42.195㎞を乗り切るための持久力を養う練習、ふたつをかけあわせたトレーニングをしています。
正直難しいところもありますし、本番でどう結果が出るかわかりませんが、両方の競技でベストを尽くしたい思っています。
――トライアスロンとマラソン、両競技出場の「二刀流」は当初から考えていましたか?
土田 2018年にトライアスロンを始めたときは、マラソンからの「転向」でした。
運動誘発性のぜんそくを発症したことで水泳を始めて、それがトライアスロンへの道につながったのですが、
その後、ぜんそくの症状がまったくなくなって、マラソンへの再チャレンジができる身体状況になり、2019年には、両競技でのチャレンジを始めていました。
3種目トータルで25.75㎞(スプリントディスタンス)のパラトライアスロンと、42.195㎞のマラソン、距離だけで比べると大分異なりますが、トライアスロンの3種目でスプリント能力をつけることは、マラソンのほう(のパフォーマンスUP)にも結び付けられるのではないかと。
トライアスロンに取り組んだことで、柔軟性や体質改善など、自分の身体能力の可能性が広がったと思っています。
トライアスロンや、2競技でのパラリンピック出場という、新しいことに取り組む挑戦は、今までの価値観や考え方を変えて、見直すチャンスにもなります。
この挑戦が自分の可能性を広げるものと確信していますし、これが前例となって、今後の選手の挑戦と活躍の場を広げるきっかけになればと願っています。
出られるだけでご褒美。
笑顔で堂々といきたい
PTS5 谷真海
(サントリー/東京)
――東京2020出場を決めたときの心境は?
谷 2018年に自分のカテゴリーであるPTS4のクラスが開催されないということが決まって、その後のルール改正でPTS5のほうでパラリンピックにチャレンジできるようになったのですが、
すごく葛藤がありながらも、少しでも可能性があるならば・・・と思い出場を目指してやってきました。その結果、ランキング9位でギリギリ出場が決まって、本当に途中であきらめなくてよかったなと感じました。
(パラリンピックとしては)4回目の出場ですが、トライアスロンでは初めての出場となるので、フレッシュな気持ちでチャレンジできるかなと思っています。
こういう状況ですので、私の場合は、自分自身の力を出し切って、笑顔でゴールできたらいいなと。
――息子さんやご主人の反応は?
谷 とにかくみんで良かったと喜び合っていました。これまで、本当に家族みんなで歩んだ道だったので、みんなでゴールする気持ちでいます。
息子はずっと出るという風に信じていたので、オリンピックも毎日のように観て興奮していて、次のパラリンピックに母が出るということがわかっているので、「頑張ってね! メダルとってね!」と応援してくれます。
私が「自分自身のクラスじゃないから、ちょっと厳しいんだよね~」と話すと、「やる前からあきらめちゃダメだよ!」というふうに逆に言われたりしています(笑)
――PTS4のクラスの実施がなくなった際に、比較的障がいの軽いPTS5のクラスにハンデなしで出場できるよう、ご自身でも国際連合にレターを書いて、ルール改正を提案されたと聞きました。
谷 本来パラリンピックは障がいカテゴリーごとに分けられたクラスでの出場となりますが、自分自身で選べないクラス分けによって、開催2年前に(出場への)道を閉ざされてしまうというのはやはり理不尽で、あってはならないことだと感じました。
トライアスロンはパラリンピックの中では歴史が浅く、これからどんどん成長していく競技だと思いますが、また同じようなことが起こって、道半ばで最後までチャレンジできないという選手が出てくるのではないかと。
私が元々やっていた陸上では、ニーズが少ないクラスを開催する場合は、ほかのクラスとコンバインして、世界記録に係数をかけて順位を競うといった仕組みもあります。
そういう意味では、トライアスロンもまだ検討の余地があるんじゃないかと感じました。
自分自身でレターを書いて、World Triathlonのマリソル・カサド会長に提案し、最終的にはそれが受け入れられました。
――今回はパラリンピック日本選手団の旗手の大役も務められますが、その感想は?
谷 今回は出場だけでもご褒美のような感じなのに、さらに旗手という大役をいただいて、本当に光栄ですし、一生忘れられない経験になると思います。
自分自身も、これまではメダル候補が旗手や主将を務めるイメージがあったのですが、今回は(東京2020)招致に関わったことに加え、母としての挑戦、被災地復興(※谷選手は宮城県気仙沼市出身)などさまざまなプラスαの要素もあって、選んでいただいたとのことで、受けさせていただきました。
(開会式では)国旗を持って日本選手団の先頭を歩かせていただくことになりますが、ここまできたので笑顔で堂々と入場していきたいなと思います。
メダルを狙える位置で
スタートラインに立てる
PTWC 木村潤平
(社会福祉法人ひまわり福祉会/東京)
――東京2020出場を決めたときの心境は?
木村 まずホッとしたのですが、私としては前回のリオ大会以降、東京パラリンピックに出場して、そこで結果を残すことだけを目指してきたので、そういう意味では(出場決定は)通過点としてとらえていました。
ただ、今回はこのように難しい社会情勢の中で、パラリンピックに出場させていただけるということに関しては、本当に光栄です。
だからこそ、今まで私がリオ大会以降目標にしていたとおり、東京で皆さんに良い結果をご報告できるように頑張っていきたいと思っています。
――東京2020本番での目標は?
木村 やっぱり表彰台に上るというのが、大きな目標になると思っています。
リオ大会では「まったく戦えなかった」というのが、すごく悔しい思い出として残っているので、東京では戦える選手で、本当にメダルを狙える選手にならなければ、恥ずかしくて出ることはできないなと思っていました。
そういう意味では、本当に表彰台を狙える位置まで到達できたと思っていますので、しっかり(メダルを)つかみ取れるように、最後まで力を出し切っていきたいです。
――リオ以降の5年間で、一番、強くなった部分は?
木村 リオの時点では(競泳出身で)スイムしか取り柄のなかった選手だったのですが、リオではそのスイムでさえ、オープンウォーターでは戦えていませんでした。
東京に向けては、3種目すべてにおいて強化できたと思っています。
トライアスロンの中では一番比率の高いバイクもしっかり強化してきましたし、ランも今までは一番の苦手種目だったのですが、車いすレーサー(ハンドサイクル)のポジションをすごく追及しました。
スイムやバイクで有酸素能力やパワーはしっかり高められたと思っているので、どうやったらその力をランで発揮することができるか、自分の中でしっくりくるような戦えるポジションになったのではないかと思っています。
フィジカル面については、ウエイトトレーニングもしっかり行い、かなり強化してきたと思っています。コロナ禍でスイムなどの練習環境が確保できない中、イチからフィジカルをつくり直せる良いチャンスじゃないかと考えて、
(レースが再開した4月の)アジア選手権のときは、それ以前より筋力も筋量も増やして10㎏くらい体重が増えていました。その後、筋量は落とさずに身体を10㎏絞りました。
今は、アジア選のときより身体は少し小さくなっているくらいかもしれませんがパワーは落ちていないはず。そうした工夫の結果が、どの種目でも現れてくると思っています。
メダル複数個獲得が目標富川理充
(JTUパラリンピック対策チームリーダー)
今大会、チームJAPAN全体の目標は出場選手全員入賞と、複数個のメダルを獲得することです。
リオでは「メダル獲得」という目標は、口では言っていたものの、選手をパラリンピックの場に送り出すということに満足してしまっていたところがあったかなと。
その後の強化では、男女、PTS、PTVIクラスと、PTWCのクラスをわけて効率的に強化を進めていくことになり、それがこの2年くらいでようやく機能してきたと思っています。
新型コロナウイルス感染症拡大の当初は、全く活動できなくなった選手もいたのですが、トレーニングできていない状態から再開するタイミングでは、体力をしっかりチェックし、あまり負荷をかけ過ぎないように選手・スタッフで気を付けながらやってきました。
その後も、頻繁にフィットネスレベルを測る体力測定をして、選手の状況を把握しながら準備を進めてこられたかと思います。
大会本番での対策としては、数年前から情報戦略医科学委員のスタッフに撮影してもらったコース映像などをもとにコーナーの多いバイクコースをシミュレーションしてきました。
あとは暑熱対策、順化の面で、これまで取り組んできたことが、うまくいくかどうかがキーになると思います。
今のチームJAPANを言い表すとしたら「頼もしい」の一言。当日は、レースに臨む選手たち全員に「ありがとう」と言って送り出したいですね。
パラリンピック・トライアスロン競技日程&TV放送予定
8月28日(土)6:30~11:00
男子 PTS4、女子 PTS2、男子 PTVI、女子 PTVI
8月29日(日) 6:30~11:10
男子 PTWC、女子 PTWC、男子 PTS5、女子 PTS5
★両日とも6:25~NHK BS1で放送予定あり。最新情報はNHKの「東京パラリンピックの放送計画」サイトでチェックを。
秦&宇田両選手が語る
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好評発売中のLumina最新号(9月号)では、日本代表の秦由加子&宇田秀生両選手が語る、トライアスリートのための『パラリンピック観戦ガイド』掲載しています。