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トライアスロン適性十分。サーヴェロ最新作ソロイストの魅力

投稿日:2022年10月2日 更新日:


大塚修孝

text by:

S5より軽く、R5よりエアロ
待望のミドルレンジを試乗分析

サーヴェロ待望の「ミドルレンジ」ロードバイク『Soloist(ソロイスト)』がリリースされた。

サーヴェロの概念から考えると、エアロロードではなく、その要素を兼ね備えたバイク=「速いバイク」ということになる。

2カ月前に発表された新型S5は、クラス最高峰のエアロダイナミクスをもつ「速いバイク」として申し分のない仕上がりだが、さらに、その下位グレードのリリースが期待されていた。

S5の下位グレードモデルとして以前存在した「S3」は、トライアスロンでも多く使用されていただけに、それと同クラスのモデルの開発が急がれていた。

トップチューブにさりげなく落とし込まれた「SOLOIST/EST1995」の表記。サーヴェロにとって意味をもつ名前が、このモデルでふたたび復活した

「SOLOIST」というネーミングが秘めた意味とは?

ソロイストは、2000年前半に元々使われていたネーミングで、その名を冠するモデルは、サーヴェロのコンセプトを象徴するバイクだった。

「コストはいくらかけても良い、理想のバイクを作りたい」当時そんなコメントがあったことを覚えている。道楽とも思えるが、そこに注力してきたサーヴェロだからこそ、他社の追随を許さない魅力がある。

ソロイストは今で言うエアロロードだが、当時、その概念はなかった。創業当初から「エアロダイナミクス」を命題としてきたサーヴェロが作った当時の理想のバイクが、結果として(後の)エアロロードにカテゴライズされたに過ぎない。

今回、そんなこだわりのネーミングをあえてミドルレンジのバイクに使っていることは驚いたが、やはり、そこにはこだわりのコンセプトが存在していた。

写真はR8170 ULTEGRA Di2 完成車(1,188,000円・税込=以下同)のGold Dustカラー。高級感のある、ややマットなゴールドがトライアスロンシーンにもマッチしそうだ

新型概要>>
「軽く、速く、レーシーにバランス良く仕上げられた専用設計」

今回のソロイストは、サーヴェロが、さらなる新カテゴリーに位置付けているモデルのように感じる。

エアロダイナミクスを得意としたS5、軽くクライミングを得意としたR5、幅広くコースを選ばないカレドニア、それぞれの良さを融合させ、リーズナブルな適正価格で作り上げられた。

軽く、速く、レーシーにバランス良く仕上げられ、その設計には他モデルからの流用がなく、専用設計で全く新しいものとして誕生している。

気になる外観の面では、否応無しにS5との比較となるが、やはりエアロ形状のボリュームダウン感は否めない。

ただ、写真と実車では、そのイメージが大きく変わり、実際は十分な「エアロロード」と言える形状で、S5からはボリュームダウンとなるシート周りも、R5と比べると明確にシャープなエアロロードとなっている。

写真奥のR5と比べると、明らかにエアロロードらしくシャープなフォルム

また、ホリゾンタルに近いトップチューブも、よりレーシーさをアピールするものとなっている。

フロントフォークのノーズはシャープになり、シートポストはD型でなく明確なエアロポストとしているのだ。

フレームは、S5より250gの軽量化とし、R5よりは12ワット速くなっているという。ハンドリングはR5同様のクイックさをもち、反応性の良いレーシーな仕上がりだ。

フィット性を左右するハンドル周りが気になるが、従来通りのベーシックな収まりながら、ベアリングキャップやケーブルクリップなどで、綺麗なフィニッシュとなっている。

ハンドルが汎用の髙い仕様になっているため、DHバーの固定クランプなども、S5のように専用品に縛られることもなく、重要な「DHポジション」のセッティングもしやすい。

シートポストは新Di2バッテリーに対応し、オフセットは0mmと15mmが用意されている。サドルのチョイスと合わせれば前乗りへの調整も、ややアップライトになるロードのDHポジションとしては十分可能だろう。

また、BBは、「T47 BB Right」を採用しているが、これは圧入式ではなく、ネジ込みとなる。このあたりもユーザビリティの良さが出ている。

テストライド>>
「レーシーでありながら、安定性も十分。楽しく乗れるバイク」

先日リリースされた新型S5のイメージが残る中で、今回の「ソロイスト」を試乗することになった。
もちろん、総合点においては上位のS5に分があるが、まずは、軽量性が功を奏し、出だしの軽さを感じさせてくれた。

上りでのレスポンスも良かった。S5が重いわけではないが、フレームとホイールの軽量化が表れていた。ホイールはやはりリザーブがセットされているが、フロント40mm、リア44mmとなり、S5よりはエアロを落とした設定となっていることも関係しているだろう。

また、エアロダイナミクスはR5より高い。

実際に感じることはなかったが、加速後の惰性での巡航性は悪くなかった。より速く、より長く走れば、さらにその差を感じることができたのではないかと思う。

そして、ハンドリングは、反応性が高いが、安定性とのバランスも良く、テクニカルコースにも対応しやすいと感じた。レーシーでありながら楽しく乗れるバイクというところだろうか。

DHバーを付けた状態での走行は叶わなかったが、ドロップに前腕を置いて走ってみた。やはり、S5よりは挙動がクイックと感じる。ハンドル落差もマイポジション以上にあったため、良いフィーリングではなかったが、問題はない。

ロードバイクの本来の前後輪への荷重バランスを考慮しつつ、前輪荷重過多にならないDHポジションのセッティングにすれば、恐らくちょうど良いフィーリングが得られるだろう。

トライアスロン適性も十分。
ミドルまでのテクニカルコースに◎

トライアスロンで使用するロードバイク談義も度々となるが、このソロイストの「トライアスロン適性」も十分だと感じている。

やはり、こだわりの設計はS5とR5の高次元な融合とも言えるソロイストは絶妙なバランスで、オールラウンド性の高いバイクであると言うことに尽きるだろう。

その点ではトライアスロンでの使用も大きく期待ができ、「S3の後継」ではないのだが、その抜けた穴を埋めるバイクとして、重宝される一台となるだろう。

ズバリ対象レースとしては、セッティングの個人差もあるが、ミドルまでに向き、テクニカルコースにも対応力が高いバイクと考えている。

DHポジションについては、テストライドの項でも述べたが、サドルとアームレストの落差がつき過ぎないようにするほか、サドルとの距離調整はステムではなく、DHバーのアジャストにより調整する等、ポイントを押さえれば十分ポジション出しできるだろう。

サーヴェロらしい「ライダーファースト」を感じる一台

2016年のサーヴェロの「P5X」デビューはセンセーショナルなものだった。

その時、行われたユーザーへのリサーチは、エリートトライアスリート対象ではなく、一般エイジ選手を対象とするなど、ライダーファーストなものだったが、今回も、異なる次元ではあるものの、同じライダーファーストを感じる一台と言えるのではないだろうか。

Soloist
ソロイスト

■完成車(※スペック詳細はリンク先参照)
▼R8170 ULTEGRA Di2(2色展開) 1,188,000円=冒頭写真
▼Force eTap AXS (2色展開) 1,188,000円=写真
▼R7170 105 Di2 (2色展開) 858,000円
▼Rival eTap AXS (2色展開) 880,000円
▼R8020 ULTEGRA (2色展開) 748,000円
▼R7020 105 (3色展開)594,000円

■フレームセット(3色展開/Alpenglow ・ Embers ・ Gold Dust)484,000円



■著者プロフィール
大塚修孝(おおつか・のぶたか)
トライアスロン「モノ」ジャーナリスト。96年から四半世紀にわたり取材を続けているKONA(アイアンマン世界選手権)をはじめ、内外のレースで出場者のバイク全台を自ら撮影して調査する「GERONIMO COUNT」など圧倒的なデータ収集・分析には定評がある。

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