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今週末コナで決着 2025アイアンマン世界選手権女子優勝予想

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山村 勇騎

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©Pablo Blazquez Dominguez

世界女王は誰だ? レース優勝予想

今週末、ハワイ・コナで開催されるアイアンマン世界選手権の女子レースに向けて、注目選手たちの最新コンディションと戦力を整理しよう。

昨年のニース大会を制した現女王ローラ・フィリップをはじめ、コナでの優勝経験があるルーシー・チャールズバークレーやチェルシー・ソダーロ、そして今年のプロシリーズランキング1位に輝いたキャット・マシューズ。さらに、T100シリーズ王者として勢いに乗る若きテイラー・ニブも加わり、例年以上にハイレベルな戦いが予想される。

誰が女王の座を手にするのか——。アメリカ在住で、各地のアイアンマンやT100シリーズ戦などでメカニックとしても活躍する山村勇騎さんに、土曜日のレースに向けた注目選手と、優勝者予想を訊いた。

文=山村勇騎

IRONMAN世界選(KONA)
注目選手
プロ女子

©Bartlomiej Zborowski

Laura Phillip
ローラ・フィリップ
出身:ドイツ
年齢:38歳
プロシリーズランキング:23位
キャリア:2024年世界王者(ニース大会)

2024年アイアンマン世界選手権ニース大会で優勝した現世界王者。フィリップはトライアスロンとは無縁のゼロからスタートし、頭角を現し成長を遂げた選手だ。

トライアスロンを始めるきっかけとなった、長年連れ添っている夫のフィリップ・セプがコーチを務めている。昨年のニース大会ではスイムの遅れを取り戻し、バイクで先頭まで追いつき2時間44分という高速ランを見せ、堂々の優勝を飾った。

弱点のスイムでの遅れを取り戻せるバイクとランが彼女の強みだ。これまでバイクレグを得意とし、多くのレースでバイクラップをとってきたが、ランでも著しいレベルアップを遂げている。今年のアイアンマン・ハンブルクでは、2時間38分というランタイムをたたき出した。

今年はケガもなく、順調なシーズンを送ってきている。スイムでの遅れを最小限にし、昨年のニース同様にバイクとランを高速で駆け抜けトップに躍り出るパフォーマンスを見せることができれば世界タイトルを防衛も見えてくる。

©Kenta Onoguchi

Lucy Charles-Barkley
ルーシー・チャールズバークレー
出身:イギリス
年齢:32歳
プロシリーズランキング:45位
キャリア:2023年コナ大会世界王者

世界選デビューから何度もトップ3入りを果たし、ようやく2023年のコナで優勝したバークレー。2023年の世界選には足の疲労骨折というケガを抱えての参戦となったが、スイムとバイクで2位以下に大幅な差をつけた。ランでのリタイアも考えたが、リスクを背負ってそのままフィニッシュラインまで走り続け、念願の優勝を果たした。

2024年はそのケガを引きずり、ニース大会欠場などリカバリーに専念した1年となった。昨年までワールドトライアスロンシリーズで活躍するエリート選手たちも名を連ねる高速レースT100シリーズレースで優勝を逃してきたが、今年はT100ロンドンやスペイン大会で、磨き上げられた素晴らしい走りを見せて優勝を飾っている。

得意のスイムでは、今年もトップで上がることが勝利への必須条件となる。

さらに、コナでのレース経験を生かし、前回のようにスイムとバイクでリードをとり、ランで逃げ切るスタイルが予想される。ランで2時間40分台で走れるスピードもつけてきたので、それを十分に発揮して優勝することができれば、コースレコードも必ず更新してくるだろう。

©Bartlomiej Zborowski

Chelsea Sodaro
チェルシー・ソダーロ
出身:アメリカ
年齢:36歳
プロシリーズランキング:49位
キャリア:2022年世界王者、2024年世界3位

2022年のコナでの世界選では、産後1年でダークホースとして初出場し、多くの強豪を抑えて優勝したことで注目の的となった。

学生時代は、ランナーとして活躍し、2017年からトライアスロンに転向した。ここ数年は、ケガや病気で思うようなパフォーマンスを出せずにいたが、昨年の世界選ニース大会では3位に入賞。2022年以降は、バイクポジションに悩み思うようなタイムが出せずにいたが、今年からバイクスポンサーをVentumにチェンジし、バイクタイムも向上してきた。

また、世界王者へと導いたコーチのダン・プリューから離れ、新しいコーチにニール・アンダーソンを迎え、さらに科学的なトレーニング方法で順調にパフォーマンスを上げてきている。一番の弱点であるスイムでのタイムロスを最小限に抑えて、バイクでも2022年のようなパフォーマンスを見せてランでの勝負に持ち込めれば、優勝に近づくことができるだろう。

©Bartlomiej Zborowski

Kat Mathews
キャット・マシューズ
出身:イギリス
年齢:34歳
プロシリーズランキング:1位
キャリア:2025年アイアンマン・テキサス優勝、2024年世界ニース大会2位

昨年の世界選ニース大会で、王者のフィリップと熱い勝負を繰り広げ、2位入賞。2022年の世界選手権出場1カ月前に、テキサスでコナに向けてトレーニング中、バイクで命に関わる事故に遭う。

その半年後には、急速なリカバリーを遂げ、アイアンマン・テキサスで優勝。その後もパフォーマンスを大きく向上させ、アイアンマン・テキサスでは3連覇し、昨年のアイアンマン70.3世界選手権では、ラン(ハーフマラソン)を1時間15分というタイムで2位に入賞し、アイアンマンプロシリーズ王者となる。

スイムが弱点だが、バイクとランでは誰にも負けないスピードがある。同じようなレーススタイルのフィリップと協力体制で先頭でレースをし、ランでの勝負でどこまで持ちこたえられるかが、優勝の行方を左右するだろう。

©Kenta Onoguchi

Taylor Knibb
テイラー・ニブ
出身:アメリカ
年齢:27歳
プロシリーズランキング:30位
キャリア:2024年T100シリーズ王者、2023年世界4位、五輪出場(パリ、東京)

2023年のアイアンマン世界選手権(コナ)がロングのデビュー戦だったが、初戦で4位に入賞。ミドルディスタンスでは、負けなしの強さを見せアイアンマン70.3を3連覇中、またT100シリーズレースで優勝を重ねシリーズ王者となっている。

パリ五輪ではトライアスリートとしてだけではなく、サイクリストとしての実力を見せ、タイムトライアルにも出場。

また、昨年からスイムコーチに元プロのジュリー・ディべンズ(元世界戦バイクラップ保持者)を迎え強化を図り、今年のアイアンマン・テキサスでは、スイムをトップで上がるパフォーマンスを発揮した。一番の強みであるバイクは、今回のコナでは誰も敵う選手はいないと言っても過言ではない。

天気とコンディション次第では、ダニエラ・リフのもつコースレコード(4時間26分)を更新することも可能だろう。前回のコナ大会同様に、スイムとバイクで大きく引き離した後、苦手とするランをどう乗り越えることができるかが、優勝の鍵となる。

2025アイアンマン世界選手権
プロ女子 優勝予想

1. テイラー・ニブ
2. ルーシー・チャールズ
3. ローラ・フィリップ

©Kenta Onoguchi

■著者プロフィール
山村勇騎(やまむら・ゆうき)

アメリカ在住のトライアスリート・ジャーナリスト。アイアンマンやT100シリーズのオフィシャルレースメカニックとして、世界のレースを飛び回りつつ、WEBメディア「TriWorldJapan.com」を創設。英語圏で流通する世界のトライアスロン情報を、日本のトライアスリート向けに発信している。

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