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特別対談:食事+スポーツサプリメントで「免疫力UP!」

投稿日:2020年6月15日 更新日:


ルミナ編集部

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昨年4月の宮古島大会では、3年ぶり3度目の優勝を果たした戸原。今季はアイアンマン戦線での世界挑戦に期待が集まっていたが、コロナ渦の影響でその雄姿もしばらくおあずけに

サプリで免疫力UP!戦略会議

食と栄養面についても今は新しいチャレンジの機会ととらえている戸原開人。コンディショニングの達人に、食事+スポーツサプリメントを活用した「免疫力UP」のポイントを学ぶ!

写真=小野口健太
文=光石達哉

※本記事はTriathlon Lumina7月号(6月3日発売)に掲載されたものをWEBマガジン用に再編集したものです。



桑原弘樹 Hiroki Kuwabara

競技やプロアマの垣根を越えてアスリートのコンディショニング情報の提供を行う桑原塾主宰。食品メーカーで15年以上にわたってスポーツサプリメントを企画・開発してきた経験、100人以上のトップアスリートやモデルなどに行ってきたコンディショニングやボディメイクの指導実績、さらに自らに課している年間300回のワークアウトなどを通じて蓄積されたノウハウを広く還元している。



戸原開人 Kaito Tohara

2017年には日本勢・アジア勢として唯一プロカテゴリーでのKONA(アイアンマン世界選手権)参戦を果たしているトップトライアスリート。アイアンマンへの本格参戦は2016年からで競技年齢もまだ若く、現役ど真ん中、伸びしろたっぷりの31歳。

長期戦となりそうな新型コロナウイルスとの戦いに負けず、日々、高い免疫力をキープしつつ、いつかやってくるレースシーズン再開に向けて、着々とベーストレーニングを積み上げていきたい。そのためには、必要な栄養に関する知恵(基本戦略)から、食事+スポーツサプリメントを活用した「免疫力UP」のポイント(戦術)までを学ぶことが重要だ。

日本ロング界のエース戸原開人が自身の経験などを踏まえ、スポーツサプリを活用したコンディショニングのスペシャリスト桑原弘樹さんに、トライアスリートが知って・実践しておくべき 「免疫力UP」の基本戦略&戦術について訊く。

トライアスリート、
ホントは免疫力が高い!?

「運動している人は病気になりにくい」とは日常的によく聞く話だが、実際のところトライアスロン、アイアンマンのようなハードな競技に取り組む持久系アスリートの免疫力は一般の人より高いのだろうか? そして、しばらくレースがない今の状況ではどのようにコンディションを管理すべきか? まずは、戸原選手の経験から話を紐解いていく。

戸原 自分はあまり風邪をひかないタイプですが、アイアンマンのレースの後は免疫低下のせいか熱が出たり体調を崩すことはありました。ミドルではそんなことはないのですが・・・。

桑原 持久系アスリートは、スポーツをしない人より免疫力は高いです。つまり負荷に対する適応力があるということ。しかし、それもキャパシティーの範囲内の話で、限界を越えた運動の後は身体に拒絶反応が起きます。最低2週間~1カ月ぐらいは内臓がボロボロの状態と言われ、一般の人より免疫力は下がっています。

今はレースもなく、トレーニングも十分にできないと思いますが、アイアンマンレベルのアスリートでは、相当の負荷を与えないと身体が緩んできます。しかし、考えようによっては自分ひとりだけケガや病気になっているわけじゃなく、世界中がほぼ平等に機会を奪われている状況。あまり焦らなくていいタイミングなので、練習から離れて身体をオーバーホールしたり、完全リカバリーに努めるのもいいですね。

戸原 オンシーズンですと週20~30時間トレーニングしていましたが、アイアンマンは肉体的な疲労だけでなく、メンタル面の疲労も大きいんです。今まではトレーニングの計画を立てていましたが、いったんそれをリセットして、朝起きてからこれをやろうかなと練習を楽しむ状態にシフトしています。

桑原 ある程度の練習をやりつつもポジティブレストにあてて、安心が保障されたら完全にリカバリーできた身体で前よりも高い強度でチャレンジしていくのもおもしろいですね。

食事やサプリメントを
見直すチャンス到来

トレーニングに集中できるこの時期は、食事やサプリメントを見直したりといった、レースが続く期間にはできないことにチャレンジするいいチャンスとも言える。戸原選手も新たな試みを始めようとしているという。

戸原 普段は総エネルギーのうち、炭水化物60%、脂質20%、たんぱく質15%強で摂るようにしています。ただ、今はベーストレーニングに切り替えて炭水化物を多めに摂らなくてもいいので、脂質からのエネルギー摂取の割合を増やそうと考えています。

桑原 良い試みだと思います。グルテンフリー、ファットアダプテーションやファットローディング(食事の中で脂質の割合を増やし、脂質の代謝を高める)などはこういう時期じゃないと試せないので、どんどんやってみていい。ただ、その手前のところで栄養のバランスを整えたほうがいいですね。バランスの良い食事とは、エネルギーとなるATPをもっとも作り出しやすい。主要競技の中で一番ATPを使うのはアイアンマンだと思うので、どれだけATPを作り出す能力が高いかが、レースの成績にも大きく影響します。

脂質を増やすのも大賛成。アイアンマンでは、脂質が上手に使える人はパフォーマンスが上がりやすいと思います。例えば朝に中鎖脂肪酸を摂って、軽いジョグをすると、どんどん脂肪の活用度合いが上がってくる。この1~2カ月テーマを決めて取り組むと有益なものが得られる気がします。サプリメントはどうされていますか?

戸原 サプリメントはいろいろ持っていますが、普段はそんなに飲んでいません。食事でたんぱく質が足りないときはプロテインを加えたり、鉄分が少ないかなと思ったらサプリで摂るようにしたり、足りないものを補充するイメージです。

桑原 戸原選手はトップトライアスリートなので、調子が悪いとか、記録が伸びないとかなければ、今のやり方をあまりいじらないほうがいい。今後、スランプにおちいったり、ケガしたり、年齢を重ねてリカバリーが遅くなったときに、BCAA、グルタミンなどのサプリを引き出しのひとつとしてもっておくと、ピンチのときの「伸びしろ」になると思います。

戸原選手によるミドル~ロング派トライアスリートのためのコロナ禍での過ごし方アドバイスは(インドア&ソロトレーニングの秘策)発売中のLumina7月号特集に掲載しています

免疫力UPを狙って活用したい
「4点セット」とは?

トレーニングや食事の見直しに集中できる時期と言っても、健康な身体を維持することが大前提だ。新型コロナ感染症やそれ以外の病気にならないようにするには、どんなサプリメントが役に立つのか。桑原さんが実際に摂っているサプリメントを聞いてみよう。

桑原 手洗い、うがいはウイルスを身体の中に入れない手段ですが、入ってしまったウイルスをやっつけるのが自然免疫です。同じウイルスでも発症する人と症状すら出ない人がいますが、これは自然免疫の差。戸原選手のようなトップアスリートは自然免疫が高いし、スポーツサプリメントの分野にも免疫力を上げるノウハウが詰まっています。

私の中で「免疫4点セット」と呼んでいる栄養素があります。ひとつ目は、グルタミンというアミノ酸で、確実に体内に充足されるようにしています。もうひとつはビタミンC。昔からよく名前が上がる栄養素ですが、ビタミンの中でもアスリートに欠かせない機能をもっています。最近始めたのがビタミンE。ビタミンCとビタミンEは相互に抗酸化しあうので相性がいいんです。還元型コエンザイムQ10も量を増やして飲んでいます。

戸原 桑原さんが4点セットをどれくらい摂取されているか気になります。

桑原 グルタミンは空腹時に摂ると吸収スピードが上がるので、私は朝起きてすぐ6g、自宅でのトレーニング後に6g、夜寝る前に6gの1日合計18gです。一般の人はもう少し少なくてもいいかもしれません。

ビタミンCについては、日米で推奨する摂取量の差が大きい栄養素なんです。日本の厚労省の推奨量は100mg、一方アメリカのFDA(食品医薬品局)の基準は1000mgとその10倍です。これは、体格の差だけじゃなくて、何を求めているかの違い。

日本の厚労省はビタミンCはコラーゲンというたんぱく質を作るときの補酵素として見ています。それであれば1日100mgで足ります。しかし、ビタミンCには免疫を高める役割があり、これは100mgでは足りない。

私はアメリカの基準よりさらに多く、朝1000mg、夜1000mg、日中にも1000mgを2回、計1日4000mg摂っています。レモンで言うと数十個分ですが、生産量も多く、安価で手に入りやすいのでお勧めです。一方、ビタミンEは1日数十mgで充分。錠剤のサプリで朝、夜に1粒ずつでいいでしょう。

還元型コエンザイムQ10は、もともと体内で合成されるものですが、20歳を過ぎると合成能力が落ちるので、アスリートは多めに摂ったほうがいいです。スポーツをしない人は1日100mgで充分。私は59歳なので、年齢、疲労度、運動強度によって増やしていて、朝200mg、夜200mg、一日合計で400mg摂っています。戸原選手の場合はトレーニングがきつくなければ、朝200mg、夜200mgの400mgくらい補充するといいでしょう。

40~50代のトライアスリートは相当量増やして、場合によってはローディングしてもいいと思います。またコエンザイムQ10には酸化型と還元型があり、酸化型を摂っても最終的に体内で還元型に変換されて使われます。ある程度年齢が高い人、若くてもトライアスリートなど追い込む人は、酸化型を還元型に変える負担を軽くするために、還元型を摂ったほうがいいですね。

グルタミン、ビタミンC、コエンザイムQ10は摂り過ぎても副作用の心配がないのもメリットです。ビタミンEは脂溶性のため体内に残るので、害はないですが基準量のみ摂るようにしています。

今は新型コロナ感染予防のため量を増やしていますが、アスリートは常に活動して免疫力が下がるリスクがあるので、収束後もビタミンE以外の3つは多少量を減らしてでも必ず摂ったほうがいいと思います。

トップアスリートの存在意義は競技で感動を与えるだけでなく、健康な身体づくりのノウハウを伝えることにもあると思います。また、スポーツサプリメントは市場こそ小さいけど、究極のノウハウが入っている世界。クルマで言えばF1みたいなもので、コストもかかるし、乗る人も限られるけど、究極の技術が詰まっています。

スポーツサプリメント分野も、トップアスリートがパフォーマンスを上げるために考えられてきたものが、スポーツをしない人でも自然免疫を強くするために活用できる。まだ新型コロナウイルスの特効薬、ワクチンがない今、免疫に関するノウハウを全世界に伝える良いタイミングだと思います。

サプリで免疫力UP!
4つの注目栄養素

桑原さんが本文中で挙げた免疫力を上げる4つの栄養素。スポーツをする人、しない人関係なく人間が本来もつ自然免疫力を上げるもので、新型コロナ感染予防だけでなく、普段から健康な身体を維持するのに必要なものだ。

【グルタミン】

免疫細胞が集まる
小腸のエネルギー源

身体の材料となる20種類のアミノ酸のひとつだが、グルタミンにしかない役割がある。「多くの細胞はブドウ糖をエネルギー源にしていますが、小腸の細胞だけはブドウ糖を消費しないようにグルタミンを使っています。身体の中で大量に作られ、大量に消費されるアミノ酸でもあります。もちろん小腸は栄養の入り口ですが、ウイルスや細菌の入り口でもある。胃酸で殺されなかった菌などが体内に入らないように、小腸には免疫細胞(リンパ球、顆粒球などの白血球)の70%が集まっていて、細菌やウイルスに対して高いバリア性を維持しています。グルタミンをしっかり摂ることで免疫細胞が元気になり、バリア性が高まります」

【ビタミンC】

ウイルスを倒す
NK細胞を活性化

ビタミンCの役割のひとつは、コラーゲンを作る際の補酵素。コラーゲンは、皮膚だけでなく関節や骨の成分でもある。「それ以外にビタミンCは免疫力を維持する機能をもっています。免疫細胞のひとつNK細胞は“NK(ナチュラルキラー=生まれつきの殺し屋)”の名の通り、細菌やウイルスをバンバンやっつける精鋭部隊です。NK細胞はインターフェロンというたんぱく質で活性化されますが、ビタミンCを大量に摂るとインターフェロンが作られやすくなります。ビタミンCのもうひとつの役割が抗酸化。酸化とは、活性酸素によって身体の中の細胞がさびつくようなイメージですが、ビタミンCは細胞の身代わりとなって酸化してくれます」

【ビタミンE】

細胞の中の“抗酸化”を担当

ビタミンEはビタミンCとセットで摂るのが重要だ。「ビタミンCは水溶性なので脂に溶けません。つまり、細胞膜の中に入っていけない。一方、ビタミンEは脂溶性なので、細胞膜の中の抗酸化はビタミンEが担い、細胞と細胞の間の水溶性のところはビタミンCと、役割分担しています。酸化というのは、相手の物質から電子を奪い取ること。ビタミンEは自分がもつ電子を活性酸素に渡すことで相手を無毒化しますが、今度はビタミンEがビタミンEラジカルという物質になって足りなくなった電子が欲しくなり、活性酸素的な悪さを始めます。このビタミンEラジカルを元のビタミンEに戻すのがビタミンCで、お互い相性が良いんです」

【還元型CoQ10】

エネルギーを作る
最後のキーパーソン

アンチエイジングの栄養素として知られる還元型コエンザイムQ10。身体を若々しく保つことは免疫力アップにもつながる。「還元型CoQ10は生物のエネルギーであるATP(アデノシン三リン酸)を作る最大のキーパーソンです。ATPの材料は糖質、脂質、たんぱく質の三大栄養素。これらが代謝と言われる化学変化を繰り返し、最後に目指しているゴールがATP。そのATPになる手前の最後のハードルが還元型CoQ10です。ATPは体内に蓄積できないので、還元型CoQ10が少ないとATPが不足する。しかも体内でこれを合成する能力は年齢とともに落ちていく。だから常に身体の中に充足させておくことが重要なんです」

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