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96年以来となるアメリカ人女王が誕生 《KONA女子レース速報》

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ルミナ編集部

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2020年のアイアンマン世界選手権を制したチェルシー・ソダーロ。33歳、一児の母が、初出場のコナで素晴らしい結果を残した

2022アイアンマン世界選手権
プロカテゴリー女子

取材/東海林美佳
写真/小野口健太

3年ぶりの聖地開催。輝いたのは
コナ初出場チェルシー・ソダーロ

3年の静寂を破り、聖地コナに熱狂が戻ってきた。コロナ禍以来初のコナ開催となったアイアンマン世界選手権。皆が待ち望んだこの日に一番の輝きを放ったのは、一児の母、33歳コナデビュタントのアメリカ人アスリート、チェルシー・ソダーロだった。

今年は女子と男子でレース日を分けるという初の試みのもと、女子のレースが男子に先駆けて行われた。3年ぶりのコナ開催とあって、アイアンマン女王に5度輝いているダニエラ・リフ、コナ準優勝3回、4度目の正直を目指すルーシー・チャールズバークレー、前回2019年女王のアンネ・ハウグ、現アイアンマン世界記録保持者のローラ・フィリップなど、アイアンマン界のオールスターキャストとも言える面々が勢揃いした。

得意のスイムを単独トップで上がったルーシー・チャールズバークレー ©Tom Pennington / Getty Images for IRONMAN

スイムは例年通りチャールズのワンマンショー。50分57秒でスイムアップしたチャールズに1分以内の差で続いたのが今年のチャレンジロートでハウグに次ぐ2位のフェネラ・ラングリッチら4名。

さらに第3集団にはロンドン五輪銀メダリストのリサ・ノルデン、2019年コナ3位のサラ・クロウリーら実力者がいるものの、通常なら第2集団で上がってくるリフがなかなか上がってこない。

結局リフはハウグ、フィリップらとともにトップから7分近い遅れでのバイクスタートとなった。

バイク序盤はスイムで作ったアドバンテージを死守すべく攻めるチャールズに、後方からフェネラ・ラングリッチが追いつき、ふたりで先頭を引き合いながらリードを保つ。

スイムで得たアドバンテージを生かし、リフら後続の脅威との間にセーフティリードを築こうと試みるチャールズ

一方で気になるのはバイクを14位からスタートしたリフ。ハウグやフィリップらとともに前を追うも、その差はなかなか縮まらない。

さらに、チャールズらの先頭集団とリフらの間で良い走りを見せたのがチェルシー・ソダーロとスカイ・モンチのコナ・デビュー組だった。

同じくKONAルーキーのスカイ・モンチ(写真手前)らとともに好位置でパックを形成し、チャールズらを射程圏内にとらえつつレースを運んだソダーロ

リフの反撃が始まったのは100km手前、ハヴィの折り返しを過ぎてから。ジリジリとペースを上げて前の選手を次々に抜き去り、150km地点で3位に。そして終盤170km付近でとうとうトップに立った。

バイクで猛チャージをかけ、最終盤、逃げるチャールズらをとらえることに成功したディフェンディングチャンピオン、リフだったが、その後、精彩を欠き表彰台圏外へ沈んだ

そのままチャールズとラングリッチを置き去りにするか・・・と思いきや、チャールズが粘り強く食らいつき逃さず、数秒差でT2へ。

チャールズはランの序盤でも驚くべきファイティングスピリットを見せた。パラニの急坂で前を走るリフを抜き去り先頭に立ったのだ。

コナ表彰台常連ふたりの一騎打ちかと思われたが、リフのペースがまったく上がらない。それを後ろから追ってきたのが、バイクを5位でフィニッシュしたソダーロ。今年がコナデビューの33歳、1児の母でもある。

元全米トップクラスのランナーだったソダーロはリフを抜き、チャールズも抜き去って12km過ぎにトップに立つと、軽やかな走りで後方との差を広げていく。終盤までペースを落とすことなく2位との差を広げ、2時間51分45秒というランタイム(ミリンダ・カーフレー、アンネ・ハウグに次ぐ歴代3位)で初出場初優勝を果たした。

粘るチャールズ(写真右奥)をかわして12㎞地点でトップに立ったソダーロ(同・左手前)

アメリカ人のコナ優勝は1996年のポーラ・ニュービー・フレイザー以来とあって、フィニッシュゲートは大きな盛り上りを見せた。

一方終始粘りの走りで2位を守り切ったのがチャールズ。ハウグは後方から順位を上げ、チャールズに迫るも届かず3位。4位には後方からのごぼう抜きを見せたフィリップ、そしてリサ・ノルデンが5位でゴールした。リフは終盤大きく失速し8位でのゴールとなった。

2022KONAのテーマを象徴するかのような新女王

今回はコナ・デビュタントが鮮烈な印象を残した。バイクとランで高い実力を見せ、コナ歴代2番目の記録を出した新女王のソダーロ、そしてバイクで先頭を走り最終的に6位でフィニッシュしたラングリッチだ。

また、大腿頚部骨折という負傷から短期間で復活を果たしコナに臨み、首位は譲ったものの2位を守ったチャールズの闘志は見るものの胸を熱くした。今回の男女別スタートには、ジェンダー平等により踏み込み、女子レースへの注目度を上げるという意図もあったという。1歳半の娘をもつ母でもあるソダーロの勝利は、女性アスリートへの大きなエールとなったはずだ。

1歳半の愛娘とともにレース後のセレモニーに臨んだ新女王チェルシー・ソダーロ ©Ezra Shaw Getty Images for IRONMAN

チェルシー・ソダーロ
「妊娠、出産を経てここまでやってこれたのは家族、そしてコーチをはじめとするチームのおかげ。女性アスリートが競技か子どもかで悩むようなことがなくなることが理想。今回の優勝が、そういう世の中をつくるための後押しに少しでもなれたらうれしい」

写真左からルーシー・チャールズバークレー(2位)、チェルシー・ソダーロ(優勝)、アンネ・ハウグ(3位)

ルーシー・チャールズバークレー(=写真左)
「今年初めに発覚した骨折からの復帰レースでここまでやれたのは、期待以上でした。

3年ぶり開催ということで、どうしてもコナに戻ってきたかった。今日の2位は、今までの2位の中で一番価値がある2位です」

前回2019年のコナに続き二度目の優勝を狙ったベテラン、ハウグは3位に。ラン終盤は2位チャールズに肉迫したが、とらえきれなかった

アンネ・ハウグ
「バイクでダニエラ(リフ)に置いていかれてからはひとり旅だったので脚を使ってしまい苦しいランになりました。その中で全力は尽くしたけど届かなかった。ルーシーはいつまでも30秒先にいて全然追いつかなくて(笑)。あれは辛かったです」

アイアンマン世界選手権
プロ女子上位リザルト

順位/名前・国/総合タイム(SWIM /BIKE /RUN)

1  チェルシー・ソダーロ (USA)
8:33:46(S54:47/B4:42:06/R2:51:45)

2  ルーシー・チャールズバークレー (GBR)
8:41:37(S50:57/B4:43:10/R3:02:49)

3  アンネ・ハウグ(GER)
8:42:22(S 57:58/B 4:41:48/R 2:57:57)

4  ローラ・フィリップ (GER)
8:50:31(S57:54/ B4:45:26/R3:01:33)

5  リサ・ノルデン(SWE)
8:54:43(S54:42/B4:42:24/R3:12:41)

 

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