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グスタフ・イデンがコース新記録で初勝利 《KONA男子レース速報》

投稿日:2022年10月9日 更新日:


ルミナ編集部

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勝負のラン。逃げるサム・レイドロウを猛追するノルウェー勢(写真左=ブルンメンフェルト、同右=イデン)とIMアジア・パシフィック王者マックス・ニューマン(中央)

2022アイアンマン世界選手権
プロカテゴリー男子

取材/東海林美佳
写真/小野口健太

コナルーキーが表彰台を独占。
イデンはコース&ラン新記録で快勝

10月7日(木)、同9日(土)2日間にわたって開催されたアイアンマン世界選手権。2日目に開催された男子のレースでも初コナ組がレースを席巻した。

ハイレベルな戦いを制し、コナ王者に輝いたのは、グスタフ・イデン(ノルウェー)。これまでは、チームメイトで五輪金メダリスト、クリスティアン・ブルンメンフェルトの影に隠れるような存在だったイデンだが、ロングディスタンスレースの最高峰、アイアンマン・ハワイの舞台で、ついに主役に躍り出た。

コナ3勝のヤン・フロデノがケガで欠場となったこともあり、レース前の注目は、東京五輪金メダリストであり、5月にユタ州セントジョージで行われたアイアンマン世界選手権でも圧倒的な強さで優勝したクリスティアン・ブルンメンフェルトに集まった。

他にはセントジョージで3位のブレイデン・カリー、コナで2度の王座に輝いているパトリック・ランゲ、そしてスイム以降の追い上げで強さを見せるライオネル・サンダース。心臓発作からの復活を果たした42歳ティム・オドネルもスタートリストに名を連ねている。

実力が拮抗しているがゆえ、スイムで大きな差をつけることは難しく、バイク、ランで力をもつ実力者たちが、好位置で続々スイムアップ ©Tom Pennington_Getty Images for IRONMAN

スイムではフロリアン・アンゲルトが先頭を引っ張るも、少人数に絞ることはできず、後半には後方集団も合流して、15秒以内に19人がひしめく大集団となった。ブルンメンフェルト、イデン、カリーらもこの集団に入っている。

レベルが上がり実力が拮抗している近年の男子レースでは、スイムで大集団になる傾向が顕著だ。その後のバイクでは何キロにも及ぶ長い隊列となり、よほどのバイク力がないと後方からの追い上げは困難になる。1分半ほど遅れた第2集団にはランゲ、オドネル。サンダースとセバスチャン・キーンルはさらに後ろ、4分42秒差で同時に上がってきた。

バイク序盤はサム・レイドロウ、マックス・ニューマンがふたりで後続を引き離す展開。

1分ほど後ろには、アンゲルト、ブルンメンフェルト、イデン。折り返し地点となるハヴィに向かう道のりは、アンゲルトら5選手の5分間のペナルティ、カリーの途中棄権など、波乱含みとなった。

グスタフ・イデンはスイム~バイク序盤に形成されたパックにうまく乗り、前後して続くブルンメンフェルトとともに好位置でラン勝負に備える

マグナス・ディトレフが先頭のふたりに合流。そんな中、静かに4位、5位のポジションを保っているのがブルンメンフェルトとイデン。完璧にコントロールされたペースで、やがて始まる戦いへの準備を虎視眈々と進めているかのようだ。

ハヴィの折り返しの地点で先頭集団は5人。レイドロウ、さらにディトレブ、ニューマン、ブルンメンフェルト、イデンが先頭集団を形成する。その中で、23歳のレイドロウがソロでアタックをかけ、後続をどんどん引き離していく。T2にたどり着く頃には、2番手のイデンとブルンメンフェルトとは4分以上の差がついた。

ディトレブは終盤に5分のペナルティを課され、大きく順位を下げてしまう。一方、スイムで遅れたキーンルはバイクで快走し8位まで順位を上げている。

レイドロウはバイクレグを先頭パックで逃げ切った後、早々にノルウェー勢にかわされるかと思われたが、実際の勝負は、ラン最終盤まで持ち越された

ランに入ってもレイドロウがバイクの疲れを感じさせないアグレッシブな走りを見せた。その後をブルンメンフェルトとイデンがふたり並走するようにして追うが、その差はなかなか縮まらない。

そして、エナジーラボの折り返しを過ぎると意外にもブルンメンフェルトが遅れ出した。イデンはひとり、軽快な走りで前をいくレイドロウを追う。35km付近でとうとう先頭に立ち、あとはレイドロウを引き離す形で7時間40分24秒のコース新記録を樹立した。

イデンはランでも2時間36分15秒というコースレコードを樹立。また、レイドロウのバイクタイムは4時間4分36秒で、これもまた新たなバイクコース記録となった。

総合記録でのワールドレコード更新に加え、ランのコース記録も塗り替えたイデン(写真右)。ブルンメンフェルト(同左)も途中からそのペースについていけなくなっていった

今回表彰台に立った3人は、コナ初出場。オリンピックやワールドシリーズで活躍しているブルンメンフェルトやイデンはともかく、23歳レイドロウはまったくの無名ルーキー。コナを知り尽くした強豪ベテラン勢を退けての表彰台独占と新記録の乱立は、アイアンマンの新時代を啓示するものだった。

一方で、心臓発作から立ち直りコナに戻ってきたオドネル、今年が最後のコナと宣言して臨み、バイクとランで追い上げる彼らしいレーススタイルで6位に入ったセバスチャン・キーンルなど、往年のコナスターたちの活躍は胸熱だった。

グスタフ・イデン
「ランではサムに追いつくのが大変でした。4分だった差が5分、6分と広がっていったので。でもきっと彼は失速するはずだと思って走っていました(笑)。

クリスティアンと協力して追い上げて行きたかったけど、途中からクリスティアンのペースが上がらず僕がペースを作る感じになってしまって『もうひとりで行こう』と思ってエナジーラボでペースを上げたんです。

そこからはサムに追いつくことだけを考えて走ってました。今回の勝利をとても誇りに思います」

ラン終盤、 ついに追いつかれ・抜き去っていくイデン(写真右)から言葉をかけられ、それにハンドシェイクで応えるシーンが印象的だったレイドロウ(同左) ©Glenn Murray/KoruptVision for IRONMAN

サム・レイドロウ(=写真左)
「今日は全体的にうまくいった日でした。バイクも調子が良くて、直感的に今日はアグレッシブに行こうと思い、実際そうしたんです。

ランのすれ違いでグスタフが迫ってきているのがわかったけど、あまり気にせず、タイムだけに集中しようと思って走っていました」

クリスティアン・ブルンメンフェルト
「僕らは7時間40分のゴールタイムを想定してレースをしていました。ランでも予定通りのペースで走れていたけど、最後の20kmでグスタフのペースについていけなかった。

彼が前に出るたびになんとか追いつくんだけど、また彼が前に出る。少ない切り札を切って駆け引きをしようと思ったけど、うまくいきませんでした。

これからパリ五輪の準備に入るので来年は無理だけど、コナにはまた戻ってこなきゃいけないですね」

セバスチャン・キーンル
「ここ数年、もう1度コナで勝利することを目標にやってきました。当時は可能だと思えたから。でもトライアスロンはここ2年半で大きく変わりました。レベルがものすごく上がっている。実は今日のタイムは僕のコナタイムの最高記録なんです。それでもトップから15分も遅れている。それがすべてを物語っていると思います」

アイアンマン世界選手権
プロ男子上位リザルト

順位/名前・国/総合タイム(SWIM /BIKE /RUN)

1  グスタフ・イデン (NOR)
7:40:24(S48:23/B4:11:06/R2:36:15)

2  サム・レイドロウ (FRA)
7:42:24(S48:16/B4:04:36/R2:44:40)

3  クリスティアン・ブルンメンフェルト (NOR)
7:43:23(S 48:20/B 4:11:16/R 2:39:21)

4  マックス・ニューマン (AUS)
7:44:44(S48:25/ B4:11:30/R2:40:14)

5  ジョー・スキッパー (GBR)
7:54:05(S52:55/B4:11:11/R2:45:26)

6.セバスチャン・キーンル (GER)
7:55:40(S52:58/B4:09:11/R2:48:45)

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