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フェルト最速TRIバイクIA2.0待望の国内リリース

投稿日:2023年7月30日 更新日:


大塚修孝

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2021年、ダニエラ・リフ、ブレーデン・カリーらによってメジャーレースデビューを果たして注目を集め、以来、一般市場での発売が待ち望まれていたIA2.0。ついに国内でもデリバリー時期と価格詳細が発表された

ついに国内本格リリース
IA2.0のポテンシャルとは?

IA 2.0 Ultimate Dura-Ace Di2
(=上の写真 ※ただし実物とはパーツの仕様等が一部異なる)
価格 2,200,000円(税込)
カラー:ナイトシフト
サイズ:48、51、54、56T
※2024年初旬入荷予定

フェルト(FELT)ブランドと新型IA

1991年創業のフェルト。現在ドイツブランドとされているが、元はアメリカ人でもあるジム・フェルトがイーストン、アンサーを経て立ち上げたアメリカンブランドだ。90年代前半には、アメリカンブランド時代のアルミフレームで、コナ(アイアンマン世界選手権)8勝のポーラ・ニュービー・フレイザーやショートの世界選手権、ロングのコナで優勝しているグレッグウェルチにより一気にメジャーブランドとなっている。当時のアルミフレームとしては破格の30万円近い最高級フレームだったが、仕上げも超逸品。

現在もコナでは常にトップ5に入る人気のフェルト。特にSub10の強豪エイジ選手での使用率が高い、選ばれしバイク。また、コナでは女子6勝のフェルト、そして、ダニエラ・リフのアイアンマン世界選手権5勝目を飾ったのが、この新型IAだった。

IA 2.0 Ultimate フレーム
(※写真は組立参考例。製品はフレーム、フォークのみ)
価格1,064,800円
カラー:シルバーグリッター/ホワイトフェード
サイズ:48、51、54、56

一般市場リリースまで
最も時間を要した「最後の大物」

国内でも満を持して本格的にリリースされた「IA2.0」。お披露目からリリースまで、最も時間のかかったトライアスロン・バイクかもしれない。

2021年メジャーデビューを果たしたコリンズカップ。その前にも各国のレースで実戦投入されていたが、ダニエラ・リフ、ブレーデン・カリーの使用によって、話題のバイクとなった。

当時(コロナ下)の世界情勢からリリースが遅れたメーカーも少なくなかったが、「最後の大物」となったのが、このIA2.0だった。

早くからIA2.0を実戦投入しているNZのエース、ブレーデン・カリー。直近では6月のIMケアンズでもIA2.0を駆ってコースレコードで優勝している ©Korupt Vision/IRONMAN

フェルトは前述の通り、長い歴史をもっているが、初代IAがデビューしたのは2013年コナでミリンダ・カーフレーが使用。それまでのトライアスロンモデルとは、一線を画す、スペシャルバイクのイメージを感じさせた。

フレームの断面形状が「カムテール」系が増えつつある中で、極めてボリューミーなデザインはセンセーショナルそのものだった。理屈抜きにその姿に魅力を感じた人は多かったことだろう。

そして、課題であり、宿題でもあったかもしれないが、統合されたフューエルシステム(フレーム内蔵型の給水システム)が配備された。

すでに他社では、古くはキャットのCheetahなどあるが、近年では2011年第2世代のスペシャライズドSHIV以降、「統合度」の差はあるが、フューエルに注力するメーカーが増えてきた。

IA2.0での導入は、今となっては「後発」ということになってしまうが、後発なりに完成度を高めている。補給が大事なことは言うまでもないが、エアロダイナミクス(空力性能)やユーザビリティー(使い勝手の良さ)が重要だ。

■今回のモデルチェンジ概要

トップチューブが盛り上がり、後方に向けて大きくスローピングしている極めて特徴的な形状――この外観が最大の変化と言えるだろう。誰が見ても、今までにない斬新なデザインが目に飛び込んでくる。

トップチューブにはストレージとフューエルを備え、かつエアロダイナミクスと両立させると言うことがこのモデルの設計において大きなテーマとなっている。

また、シマノ、スラムなど、各ドライブトレインのマッチングも考慮され、作業性も高い。ワンバイ(フロントシングル)対応のフロントディレーラープレートなど、繊細なエアロダイナミクスの追求と、見た目の仕上げの良さも十分だ。

昨年のコナ、3年ぶりの世界選手権開催に合わせて、現地でグローバルローンチが開催された(写真はフェルト契約アスリート、ブレーデン・カリー)©Kenta Onoguchi

Frame Grade
最上位グレードFRDのみのリリース

今回リリースされたのは「FRD」=フェルトの最上位グレードのみとなっている。

FRDとは、「FELT RACING DEVELOPMENT」の略称で、フェルトのテクノロジーを「全部載せ」した限られたモデルに命名されたものだ。カーボン素材のグレードは当然最上位の「UHC Ultimate + Textreme」を使用し、製法にも特徴がある。より均一化されたカーボン成型により、無駄な材料を削ぎ落とし、軽量化につながる型を使用。また、カーボンを成型する上で重要となるカーボンピースは下位グレードの倍以上、400個以上も使用することで、より緻密なライドフィールのコントロールを実現している。

Aerodynamics
ほぼ前面からの空力性能4%UPの意味

フェルト史上最速のバイクに仕上がっているIA2.0。前作でつけられたIAの名は「Integrated Aero」の頭文字を取ったもので、エアロダイナミクスの高さを併せもつことを意味してのIAだけに、空力性能へのこだわりは強い。

フェルトの結論は、初代に対し、ヨー角±12.5度でのエアロダイナミクス4%向上。つまり、ほぼ前面からのエアロダイナミクスを高くしている点。この範囲の空気抵抗が実際の走行の90%にあたるものとして、その有効性の高さを主張している。

Comfort
フェルトTRIバイク史上最高の快適性

ロングライド(長距離のバイクパート)が主戦場となるトライアスロンバイクには、「競技性の中の快適性」が求められる。

一方でエアロダイナミクスを究めるべく翼断面率が高くなれば、剛性は高くなる。上位モデルとなれば反応性を高めるためにやはり剛性は上がる。

快適性と剛性、この相反する特性のバランスをとるために、カーボンピース数とレイアップにより、振動を軽減、調整している。

その結果、これまでのフェルトのトライアスロンバイク史上、最高の快適性を実現している。

200mlと大容量なトップチューブのストレージ

Storage & Fuel
考え抜かれたフューエルシステム

ストレージ(予備チューブや携行工具等の収納スペース)やフューエル(給水)システムは、今や「トライアスロンバイク」の定義上、必須の仕様であることは言うまでもない。

このモデルのストレージは、トップチューブ内とシートチューブ内の2カ所、ボトルマウントが2カ所。トップチューブのストレージは200mlあり、上部の切り込みにより、サプリメントなどの出し入れがしやすくなっている。

シートチューブ内に設えられたストレージは、携行ツールなどの収納スペースに最適

また、シートチューブ内はツールスペースに。ソフトバッグが付属し、その中にコンパクトツール、チューブ、タイヤレバー、CO2ボンベやそのアダプターなどを入れ、フレーム内に収納する。

フレームのストレージにはシートピラーが干渉する可能性があるため、サドル高決定後、確認・調整が必要になる。

写真はブレーデン・カリーが2022年コナで実戦使用したバイクのもの。トップチューブ前方から給水のためのチューブが出ている ©Kenta Onoguchi

そして、IAとしては待望のフューエルシステムを搭載。2013年の初代IAリリース直前まで検討されていたフレーム内蔵型のフューエルが新しいカタチとなって装備された。

フレームと統合されたフューエルについては、構想の早かったフェルトだが、満を持してのリリースとなった。

トップチューブの下にタンクが配置され、容量は900mlの大容量。後付けの汎用型は一般的に700~800ml程度なので、十分でありながら、フレーム統合のため、ボトルが大き過ぎるという問題もない。

水分を補充する口=フィルポートが設けられ、クイックに補充できることもレースシーンにおいて極めて重要なポイント。ストレスフリーかつ安全性が高い。

Fit & Usability
エイジにもメリット大の調整幅の大きさ

IA2.0はDHバーの調整自由度も高い。

まずは、オリジナルの調整範囲だが、幅、角度、長さなどが調整可能であり、他の市販品と併せて使える、汎用性も高い。アイアンマン世界選手権5勝のダニエラ・リフやブレーデン・カリーなどもオリジナルをアッセンブルしている。

さらに、特筆すべきは、ベースバーのグリップ高調整ができることだ。

一般的な一体型や、ベースの角度が可変できるものなどはあったが、このベースバーは、グリップ部のみ高くすることができる。これは極めて画期的であり、昔から誰もが感じていた使いづらさを解消している。

フラットコースでのDHポジションはより低く、ベースバーなどをもつ上りでは、より高くが理想だ。特にエアロダイナミクスの理論だけでは、エイジ選手は楽に走れない。体重を後輪にしっかりと載せるためにも、よりアップライトポジションが必要になる。そこへの意識を高めてくれた「提案」とも言えるだろう。

Geometry
手脚の長さとの相性は要チェック・ポイント

一般的な日本人体型の場合、ここは要チェックの重要なポイントだ。IA2.0は51cmサイズでスタンディングオーバーハイト(地面からトップチューブ上面の高さ)が755m、シートアングル79度でトップチューブレングスは486mmとなっており、これは手脚の長さが大きく関わると言うことを示している。

この傾向はフェルトに限ったことではないのだが、特にこのフレーム特有の形状のため、自分に合ったフィッティングが可能かどうか、慎重にチェックしたい。

下位グレードの展開にも期待

今後に向けて、まず期待されるのは、より買いやすい価格帯、下位グレードの展開だろう。同形状の下位展開は十分予想される。

一方で根強い人気の初代IAもアップデートされ、継続モデルとして同時に発表されているため、先にはなると思うが、期待がかかるところだろう。

いずれにしても、今後、アイアンマン世界選手権(コナ&ニース)におけるSub10選手の間での使用率が高まることが予想される。

■継続モデルとして同時にリリースされた
初代IAのアップデート版

なお、IA2.0と同時に継続モデルとしての展開が発表された初代IAは改良を加えて「IAx」となる。

実は、IAがディスクブレーキ化される前に存在していた仕様で、変更点はヘッドまわり。

後付けのカウル型ではなく、フォークと一体化させることで、固定ネジの傷みなどによる不具合を防止し、メンテナンス性を高めている。外観上は、ほぼ同様と言って良いだろう。


IAx Advanced Ultegra Di2

価格1,265,000円(税込、以下同)
カラー:ターコイズ
サイズ:48、51、54、56


IA Advanced 105 Di2

価格990,000円
カラー:グロスアストラル/カーボン
サイズ:48、51、54、56


IA Advanced 105

価格660,000円
カラー:グロスキウイ/カーボン
サイズ:48、51、54、56

※いずれも2024年初旬入荷予定

▶IAシリーズ公式サイト

■著者プロフィール
大塚修孝(おおつか・のぶたか)
トライアスロン「モノ」ジャーナリスト。96年から四半世紀にわたり取材を続けているKONA(アイアンマン世界選手権)をはじめ、内外のレースで出場者のバイク全台を自ら撮影して調査する「GERONIMO COUNT」など圧倒的なデータ収集・分析には定評がある。

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