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新世代vsブルンメンフェルトら歴代王者。コナ王座の行方は?

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ルミナ編集部

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イデンとブルンメンフェルトがコナを席巻した2022年の闘いでは、ふたりの間に割って入り2位となったレイドロウ(右)。昨年はノルウェー勢不在のニースで史上最年少の世界王者に

2024年アイアンマン世界選手権コナ
プロ男子プレビュー

勝つのは新世代のスターか
復権狙う歴代王者たちか

アイアンマン世界選手権がコナ&ニースの2拠点開催となって2シーズン目、今年(2024年)は男子のレースが10月26日(土)にハワイ島コナで開催される。

前回大会で史上最年少王者(24歳)となったサム・レイドロウ(フランス)や、3位に入ったマグナス・ディトレフ(デンマーク)ら台頭する新世代のスター選手と、

歴代王者で再び勢いを取り戻してきた感のあるパトリック・ランゲ(ドイツ)、グスタフ・イデン(ノルウェー)、

そしてパリでの五輪連覇チャレンジから再びアイアンマンに戻り、コナでの初勝利(※セントジョージ開催のIM世界選には優勝している)を狙うクリスティアン・ブルンメンフェルト(ノルウェー)。

さまざまな道を通り、聖地コナでの世界一決定戦にたどり着いたトップトライアスリートたちがトップオブトップの座をかけて激突する。

アメリカ在住で、各地のアイアンマンやT100シリーズ戦などでメカニックとしても活躍する山村勇騎さんに、土曜日のレースに向けた注目選手と、優勝者予想を訊いた。

文=山村勇騎
写真=小野口健太

プロ男子
注目選手

Sam Laidlow
サム・レイドロー
(フランス)

昨年ニースで初開催されたアイアンマン(IM)世界選手権で優勝した現世界王者。
2023年のコナで2位になった時に見せたバイクレグの強さは、他に匹敵する選手はいない。

コナ&ニース、いずれの世界選手権でも、バイクから先行してランで逃げ切る戦法を見せた。

ファミリービジネスとして、トライアスロンコーチをしている父親のガイダンス下で、徐々にその強さを顕在化させてきた。

今年は、世界選出場権を確保するべく、IMビクトリアに出場したものの失格。しかし、レースには完走したため、特別に出場許可が下りた。

ビッグレースで、常に予想を裏切るパフォーマンスを見せ、ニース大会優勝以降は、T100ロンドン大会で優勝候補を抑えて驚きの優勝を果たしている。

今回のコナでも必ず同じ戦法をとり、バイクで攻めてくるだろう。問題は苦手とするランでどれだけ走れるか。バイクで十分後方との差を稼げれば、ランで逃げ切り、王者防衛できる可能性は高い。

Gustav Iden
グスタフ・イデン
(ノルウェー)

2022年のコナを制したIM世界王者であり、アイアンマン初出場でコースレコードを更新する偉業を見せた。

しかし、2022年のIM世界選手権優勝以降は故障や母親の死など、メンタルとフィジカル両面でかなりのダメージを受けた。

2023年シーズンは、自身の回復のため早期にシーズンを終えたものの、そこからうまくレース復帰が果たせずにいた。

今シーズンは目立ったパフォーマンスや勝ち星こそ多くないが、その中でも、トレーニングパートナーのブルンメンフェルトとともに徐々にパフォーマンスレベルを戻しつつある。

暑さに強いランを武器に今年のコナでは、これまでの困難を乗り越えた先の、サプライズな結果を見せてくれることに期待したい。

Kristian Blummenfelt
クリスティアン・ブルンメンフェルト
(ノルウェー)

東京五輪金メダリストで、2021年アメリカ・ユタ州セントジョージで開催されたIM世界選手権の王者。今年のパリ五輪では、12位に終わったものの、その2週間後にIMフランクフルトに出場し強豪を抑えて優勝。

シーズンのほとんどはロードバイクで練習し、実際TTバイクには、五輪後に乗り始めたという。

ショート(オリンピック)仕様のスピードを生かし、ロングでも、そのスピード感を失うことなく、常に先頭でレースを繰り広げる。得意とするランでは2時間34分という記録(トイレ休憩含む)をもつ。

世界を席巻してきたノルウェー式科学的トレーニングのもと磨きをかけた自身の高いパフォーマンス能力を、コナでどこまで発揮できるか、注目したい。

Patrick Lange
パトリック・ランゲ
(ドイツ)

2017年と2018年、2度のIM世界王者。ここ数年は、故障や病気などで世界選での成績は振わなかったが、強みとするランは、いままで以上に磨きをかけ、2022年のIMイスラエルでは、2時間30分のランレコードをもつ。

今年は、IMテキサスで2位入賞(優勝者のドーピングで事実上優勝)。IMフランクフルトで2位と順調に成績を積んできた。

弱点とするバイクで先頭との差を縮め、得意とするランで本来の実力を見せることができれば、再度王者に返り咲くことができるだろう。

Magnas Ditrev
マグナス・ディトレフ
(デンマーク)

昨年のニース大会では、3位入賞。言わずと知れたウーバーバイカーであり、62歯数のフロントチェーンリングを使いこなす強脚。今シーズンは、ビッグレースであるT100マイアミ大会とチャレンジロートで優勝。

2022年に初出場したコナでは、スイムの遅れをバイクでカバーし、先頭パックに追いつくも、8位で終わった。今年は課題となるランを強化し、2時間40分切るマラソンタイムで走ることができれば優勝に近づけるだろう。

新人ダークホース

IRONMAN Pro Series公式サイト・プロフィールより

Trevor Forey
トレバー・フォレー
(アメリカ)

今年IMレイクプラシッドでIM初優勝を果たした注目の若手。70.3レースでは、過去に4度優勝。

フロリダ大学出身のランナー上がりで、常にアイアンマンレースでは、ランラップを取る瞬足をもつ。スイムが、最大の弱点であるが、ウーバーバイカーのトッププロであるライオネル・サンダースやサム・ロングと一緒に練習を重ね、バイクをトップレベルまで強化してきた。

今シーズン初めに、バイクで事故で故障に悩まされたが、その数カ月後に復帰し、衰えることないバイクとランの強さを見せた。

ベテランの強豪達を抑え、70.3メーンや70.3ボウルダーで次々に優勝。世界選手権初出場となるコナでは、目を離してはいけない注目の存在となるだろう。

 

IRONMAN Pro Series公式サイト・プロフィールより

Mathew Marquardt
マシュー・マークワート
(アメリカ)

現在オハイオ大学の医学生で、プロトライアスリートとしても活躍する新星。2022年の世界選手権のエイジ王者上がりで、2023年にプロデビュー。

デビュー直後に出場したIMテキサスでの2位入賞で、広くその名が知られるようになってきた。得意とするスイムでは、常に先頭でパックを引く実力があり、昨年のニース大会で、スイムラップを獲っている。

スイムだけではなく、バイクの強さも見逃してはいけない。アグレッシブなライディングで常にバイクトップもとれる速さも併せもつ。

これまでは弱点となるランで常に優勝を逃してきた。コナでは、得意のスイムとバイクで稼いだアドバンテージを生かし、ランでどこまで走れるのかが、優勝へと近づく鍵となるだろう。

2024アイアンマン世界選
男子 優勝予想

1. クリスティアン・ブルンメンフェルト
2. マグナス・ディトレフ
3. サム・レイドロウ

レース展開予想

スイムから、マークワートやレイドローらを含む大きな先頭パックが形成されることが予想される。注目の新人でスイムを弱点とするフォレーは、5分以上遅れてバイクで追いかける展開となるだろう。

バイクレグでは、レイドローがいつも通り後半攻めを始め、他の選手を引き離しにかかるだろう。その動きを始めるまでに、ディトレフやフォレー、ランゲは、先頭に追いつきたい。

ブルンメンフェルトとイデンのノルウェー勢が、うまく協力態勢を築いて、レイドローについていけるのかにも注目。

前回のコナ(2022年)でも昨年のニースでも、バイクから先行してレースの主導権を握ったレイドロウ。2024年のコナではどんな展開が待っているのか

ランに入ると、多くの高速ランナーたちによる「マラソンレース」となる。

ほとんどの注目選手が、2時間30分台で走れるスピードをもっているため、バイクでのポジション取りが、優勝争いの行方を大きく左右する。

さらにコナでは、蒸し暑さ耐性と補給能力も勝敗を分けるもうひとつの大きな要素となる。

このレースで一度も衰えた姿を見せたことない経験値をもつランゲが最後まで踏ん張りを見せるのか。それとも科学的トレーニングでコナ対策を十分してくるノルウェー勢が、再度生き残りの戦いを見せるのか。現王者のレイドローが、また逃げ切るのか。

歴代王者たちからオリンピアンまで層が厚く、予想が難しいレース展開となるだろう。

■著者プロフィール
山村勇騎(やまむら・ゆうき)
アメリカ在住のトライアスリート・ジャーナリスト。アイアンマンやT100シリーズのオフィシャルレースメカニックとして、世界のレースを飛び回りつつ、WEBメディア「TriWorldJapan.com」を創設。英語圏で流通する世界のトライアスロン情報を、日本のトライアスリート向けに発信している。

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