\2025年6月8日(日) 開催決定/
上田藍選手が訊いた
新生IM70.3ジャパン東三河の魅力。
IRONMAN Japanブランド復活レースとして2023年に開催された70.3東三河。
より永く愛されるレースとして2025年6月、再復活を果たすべく準備が進む彼の地へ、
IRONMANの世界で活躍する上田藍選手とともに向かった——。
▶最新情報は「一般財団法人 東三河スポーツ地域振興財団のサイト」で
リソル・稲毛インター所属。日本選手権7勝、3×オリンピアン。現在はIRONMANプロライセンスを獲得し、世界を転戦。9月には自身初・日本人女子プロとしては12年ぶりとなるIM世界選手権(フランス・ニース)出場・完走を果たしている。
写真=小野口健太
Photographs by Kenta Onoguchi
渥美アスリート半島を巡る。
2025年6月の復活開催が発表された「アイアンマン70.3東三河ジャパンin渥美半島」(以下70.3東三河)。1年間の充電期間を経て進化するために検討が進んでいるポイントとは? 上田藍選手とともに開催地を訪ね、その魅力を走って体感した後、実行委員会の皆さんにお話をうかがった。
選手と地元・ボランティアが一緒に楽しめるイベントに
ルミナ編集部(以下L)まずトライアスリートが気になっているのは、1年間の充電期間を経て大会がどう進化しようとしているのかという点です。
石黒実行委員長 前回のアンケート結果で選手からおおむね好評価をいただいた一方、課題として残ったのは地元住民の理解を深めることでした。例えば「ボランティアの充実ぶり」が好評だった一方で、その地元ボランティアの人たちを、もっと深く巻込んでいかなければいけないとも考えています。
特に高校生。かなりの人数が参加してくれましたが、もっと多くの高校生に大会の素晴らしさを見て、楽しんでもらえたら、全体ももっと盛り上がって、選手の満足度アップにもつながるはず。
L 前回大会のボランティアの数は?
石黒 1200人ほどです。そのうち高校生が300人弱ぐらい。ただ前回は周知期間が短かったので、予定が合って参加いただけたのは一部の高校だけだったんです。次回はできるだけ早くスケジュールを公開して、渥美半島中の高校生に声をかけたいですね。
L 上田選手が転戦する海外アイアンマンでは、ボランティアの皆さんも楽しんでいるような印象が強いですか?
上田藍 そうですね。選手だけじゃなくてボランティアも主役になって、イベントの一体感を作っています。アイアンマンでは全選手の名前が書かれたTシャツがありますが、それだけじゃなくて、ボランティアの皆さんの名前が記されたボードが選手受付のところに置かれていたりして、そういうのを見ると、「こんなにたくさんの人がこの大会を支えてくれてるんだ」っていうのを実感します。
L ボランティアの充実度という長所をより良く伸ばしていく意味で、そうした取り組みはありですね。
レースはもちろん応援も楽しめる太い動線を準備
L 競技の面で見直している点は?
石川誠実行副委員長 バイクコースは前回、基本的に高評価。私自身も走って良いコースだと思いました。ただ残念だったのはランコースが、工業地帯や港を走るという、いろいろ制約のある中でのコース取りとなったので、沿道の応援が少なかったんですよね。そこは改善していきたいと思います。
田原エリア(バイク)に関しては比較的魅力をアピールできたんじゃないかと思うんですけど、豊橋に関して言うと「ここが良かった!」と感じてもらえたポイントがなかなかなかったので、次回は豊橋をPRできるようなポイントもいくつか盛り込んでいきたいなと考えています。
仲野哲央事務局次長 前回コースがグルッと渥美半島を周回するような形になっていたので、それでちょっと外から入るのも入りにくいし、地域住民の方も外に出づらい時間が結構長かったという課題はあったので、今回はコースの評価を落とさずに、その課題を解消すべく、改善を進めています。
左右田卓事務局長 具体的な改善策としては例えば前回、前日受付・スタート会場は袋小路のようになってしまっていて選手しかいなかったのですが、今回はコースを変更して、田原や豊橋の街の人たちも会場へ自由に行き来できるようにシャトルバスを出したいと考えています。
キッチンカーももっとたくさん出して、野菜や果物、海の幸など田原の特産品が食べられたり、選手も地元の方も楽しめる会場にしたい。
あとは前回、スタート会場へ来た応援の人たちが、ずっとその場所にしかいられないということがあったので、今回は田原の街の真ん中を走る豊橋鉄道渥美線を活用して、応援の人たちが移動できる動線を用意したい。
渥美線は元々、サイクルトレインを運行しているので、それを使ってもらえたら便利かなと。自転車を持って移動したい人は電車で、持っていない人はバスで、というふうに動線を太くしていきたいなと思います。
あとはやはり一番の絶景ポイント、伊良湖岬の先端(トップ画像)を応援拠点にして、その上のホテルでのランチを楽しんでもらうとか。そういう提案をして田原にも、もっとたくさんの人が訪れるようにしたいですね。
上田 応援の皆さんは、大会以外のことも楽しみにされてる方が多いんですが、そうした情報発信がないと、意外と楽しみ方がわからない。先にそうした情報や動線がわかれば応援プランも話しやすく、家族や応援の仲間も誘いやすいと思います。
石川 「ここで駐車して、ここで応援する」みたいな明確なガイドを用意したいですね。左右田 豊橋にも今回見てもらった「のんほいパーク」とか、気軽に立ち寄れる観光スポットがあるので、そうした応援者目線のガイドを用意したいと考えています。
上田 前回私が見た中では、生花で作ったエムドットのモニュメントが魅力的でしたし、フィニッシャーズロードでの生花のフラワーシャワーも印象的でしたね。
あれは選手の皆さんもめちゃくちゃ喜んでいました。東三河ならではで、選手のSNS投稿に対して「こんなに華やかなフィニッシュがあるんだ!」と、海外トライアスートからも驚きのコメントが挙がってました。
石黒 あれは相当な量、(生花を)用意しましたからね。田原は圧倒的ダントツ日本一の花の産地なので、花を集めようと思ったら農家さんもみんな応援してくれるんです。
上田 生花のモニュメントのそばにも、ちゃんとこれが田原の花で、生産量日本一の土地だという説明が書いてあったのがよかったと思います。知らないと、ただ「キレイだねー」で終わってしまいますが、知っていると、その開催地でレースをした思い出にもつながっていくと思います。
石川 そういうストーリーがわかるといいですよね。
歴史・文化的背景を知ればもっと楽しめる渥美半島へ
L 土地をめぐるストーリーという意味では、渥美半島は長い歴史や文化をもつ土地柄だと聞きます。
石黒 縄文時代には日本で一番人が住んでいたとも言われているのが渥美半島ですから、歴史は古いですね。伊勢をはじめいろいろなところと海の道でつながっていて、例えば鎌倉再建時の東大寺の瓦も渥美半島で作られたものです。
その海の道の名残のひとつが、伊良湖岬から出ているフェリー(鳥羽伊良湖航路)。平安時代には、奥三河で作られた生糸を渥美半島の伊良湖まで運び、機織りして海路で伊勢神宮へ納めていました。
左右田 最近では「塩の道」も注目されています。こちらでつくった塩を長野のほうへ運び、向こうからは山の幸を運んでくるという。さまざまなエリアと歴史的・文化的につながっている、面白い土地柄なんです。
L 聞けば聞くほど奥深いエリアです。今日は、その魅力の一端をうかがい知るにとどまりましたが、また上田選手に来てもらって合宿を開催したり、その魅力を発信したいですね。
上田 ぜひ、宜しくお願いします!