パリ2024パラリンピック競技
パラトライアスロン日本代表候補選手 記者会見
TOKYOメダリストを含む、4名を選出
9月1日(日)、2日(月)に行われる、パリ2024パラリンピック競技大会のパラトライアスロン日本代表候補選手記者会見が7月11日、東京・千駄ヶ谷の日本オリンピックスクエアで行われた。
選ばれたのは、女子PTS2/秦由加子(キヤノンマーケティングジャパン・マーズフラッグ・ブリヂストン/千葉)、男子PTWC/木村潤平(Challenge Active Foundation/東京)、男子PTS4/宇田秀生(NTT東日本・NTT西日本/滋賀)、男子PTVI/米岡聡(三井住友海上/東京)の4選手。
まずは、日本トライアスロン連合会長の岩城光英氏が、「パリパラリンピックは、タイムや世界最高記録を争うものではなく、スタートラインに立った、同じ障害をもつ選手たちと着順を競い合い、素晴らしい友情を称えられる競技。多くの感動と、勇気を世界中の人々に届けてくれることを確信しています」と挨拶した。
次いで、JTUパラトライアスロンHPTハイパフォーマンスディレクターの富川理充氏が今回の選考経緯について説明した。
「3つの選手選考基準があり、それをクリアした選手のうち、まずは国別枠を獲得した選手を優先的に選出。パラリンピッククオリフィケーションランキング(PQR)男女上位9位までの選手には枠が割り当てられ、女子は秦由加子選手がランキング5位、男子は木村潤平選手がランキング9位に入りました。
代表スロットは120あり、国別枠が104枠、残りの16枠はバイパルタイト(※ランキングでの直接選出枠から外れている選手を対象に与えられる推薦枠のこと)で選出されます。
日本からは宇田秀生選手、米岡聡選手、谷真海選手をバイパルタイト選考へ推薦しました。そのうち、宇田選手と米岡選手が委員会の審査を経まして、招待枠を獲得したということになりました」
宇田、米岡両選手は、それぞれ前回大会でメダルを獲得している。日本チームのパリでの目標はTOKYO2020でのメダル獲得の功績も踏まえて、金メダル1を含む複数メダルの獲得を掲げている。
秦由加子(キヤノンマーケティングジャパン・マーズフラッグ・ブリヂストン/千葉)
力を尽くす姿を見て、何か感じてくれたらうれしい
オンラインで記者会見に臨んだ秦は、リオ、東京に続き、3度目のパラリンピック出場となる。国別枠を獲得し、さらにランキングも5位と文句なしの代表を勝ち取った。
「昨年7月から出場権をかけて、6レース出場し、枠を得ることができました。リオ、東京に続いて3度目のパラの舞台に立てることをうれしく思います。
私はプレ大会に出場していないけれど、石畳が続くコースなので、対策として1点挙げるとすると義足なので、ほんの少しの傾斜でも下半身のベクトルがかわってしまうので、練習のときからあえて不整地で走りにくいところを走って、身体の軸を保ち、身体のバランスを保つようにしています。
不整地を走るのはだいぶ楽しくなってきていて、どんな面でも大丈夫という自信にもつながっているような気がします。
セーヌ川については、水質が問題にはなっているので、普段のプールでも周りがセーヌ川だと思って、少しでも水を飲まないようにしています(笑)。
私は、フランスに入国すること自体が初めてなので、素晴らしい観光地でレースができるというのも、すごく楽しみです。
見てほしいところとしては、トライアスロンのレース自体をパラリンピックをとおして、ひとりでも多くの方にレースを見てもらって、私たちが力を尽くす姿を見て、何か感じてくれたらうれしいです」
木村潤平(Challenge Active Foundation)
1年1年の重みを感じながら勝ち取った切符
競泳を含めると今回が6度目のパラリンピック出場となる木村は、特に東京からの3年は1年の重みを感じたという。オリンピック競技では、2度目となるパラリンピック出場に意欲を見せた。
「かなりギリギリの順位で選ばれることになりました。パリを目標にすると言うよりは、一つひとつのレースをしっかりこなしていくことに重点を置いていました。選ばれてほっとしています。
パラリンピックには、6回目の出場となりますが、3年というスパンで迎えるのは今回が初めて。この1年、1年がとても重かったと思います。この3年で、パラのレベルは上がってきています。自分が世界で取り残されないために、どうすればいいか、もがきながらやっています。
パリでは上しかないと思っていますので、2カ月しっかり練習を積んで、技術というよりも気持ちのこもった、熱いなと思ってもらえるような泳ぎ、走りをみてもらいたいです。
セーヌ川は、流れがあって海のレースとはちょっと違います。トライアスリートの方はうらやましがってくれるので、そこで自分が泳げるのは光栄に思います。
世界にはリスペクトしている選手がたくさんいるので、チャンスがあれば食ってやる、というくらいの気持ちでそこだけはライバルに負けないようにパリに臨みます。
実はこれまで開会式に出たのはアテネの1回だけなので、開会式出てパラリンピックがはじまるぞっていうのをしっかり味わって、楽しんで、そこからレースにつなげられるようにしたいです。レース以外では、開会式が一番楽しみです」
宇田秀生(NTT東日本・NTT西日本)
眠れぬ日々を乗り越えてパリの舞台へ
いつも明るく、チームジャパンのムードメーカー的なイメージの宇田は、今シーズン前半の横浜、アジア選手権大会、モントリオールと体調を崩し、思うような結果が出なかった。そんな中でのパリ獲得に、時折言葉が詰まるような場面もありながら想いを語った。
「半分心が折れかけていたけれど、最後神様が招待状をくれて、出場が叶いました。パリの舞台に立てることをうれしく思いますし、たくさんの人に支えてもらったのでいつも通りパリの舞台で走れればいいと思います。
一緒にやってきた人でもパリに参加できなかった選手もいますので、命を削って走りたいと思っています。
展開的には、スイムから出遅れるという素敵な展開になるかと思うのですが(笑)、最後まであきらめず、1個でも上の順位で上がってこられるようように走っていきたいと思っています。
シーズン前半については、横浜でのレースは体調が悪くて(貧血)、あまり記憶に残っていなんです。アジア選手権は優勝を、と臨んだけれど体調が戻らず良いレースができなかった。それがランキングの順位を落とした要因だったと思います。
アジア選さえ戦えていたら、眠れない日々を過ごすこともなかったかなと思います。
今は体調も戻ってきているし、パリには良い状態で臨んでいければと思っています。心が折れそうなときもあったけれど、コーチスタッフ、仲間が支えてくれて、パリに行けるんだな、と。本当にうれしく思っています。
パラリンピックで海外に行くのは初めてで、違った雰囲気だったり、選手村の雰囲気だったりを感じたいですし、富川リーダーと一緒に行けることがすごくうれしいです。
レースでは全員僕よりランキングが上なわけで、全員がライバル、全員が目標です。
もうすぐしたら、長期の合宿に入って家族と離れることになってしまいますが、家族がパリまで来てくれるというので、そこでどんな再会ができるか楽しみです」
米岡聡(三井住友海上)
チャレンジャーの気持ちで臨みたい
東京で銅メダルを獲得した米岡は、新たにロングでプロとして活躍する寺澤光介をガイドに迎え、2度目の出場を決めた。
「出場できるかどうか分からない気持ちででヤキモキしていたので、ほっとしました。招待枠という形で呼んでもらえたので、チャレンジャーの気持ちでしっかり戦っていきたいと思っています。
東京からの3年はあっという間。この3年で世界のレベルが上がっていく中で、レベルアップというのを粛々とやってきました。
スイムのコンビネーション、ガイドとのコンビネーションの精度を上げることに取り組んできました。
見てほしいポイントは、自分のレーススタイルとして先行逃げ切りです。スイムを先頭集団で上がって、最後どこまで粘れるか。気持ちの問題かなと思うので、気持ちのこもった粘りを皆さんにお見せできればと思っています。
自分自身の成長というところで言えば、年齢が上がるにつれて維持するのが難しいことも多くなり、回復力も落ちてきましたが、そのあたりを加味していろいろな人のアドバイスをもらい、自分の幅が広がったと思います。
レース当日に向けて状態を仕上げていって、9月2日に向けてしっかり整えていく。自分の目標と自分のなりたい姿というのは一緒かなと思っています。
東京は、無観客で家族が応援に来られなかったのですが、パリには両親と兄が来てくれます。家族の前でこれでトライアスロンだよ、というのを見せられるのが楽しみです」
寺澤光介(ガイド/サニーフィッシュ)
ガイドとの連携も見どころのひとつ
2023年にアイアンマンのプロ資格を獲得し、ロングを主戦場に宮古島2連覇などの成績を収めている寺澤は、昨年から米岡のガイドを務める。ガイドの立場から今回の出場についてどんな思いがあるのか訊いた。
「ガイド自体は昨年の8月から行って、最初は一緒に泳いで、一緒にバイクをこいで、一緒に走るっていう単純なことなのかな、と思ったのですがやっぱり詰めていけば詰めていくほどトランジションだったりとかは、ふたりでやるからこそ普通のトライアスロンより難しい部分があると気が付きました。
あとは、選手によってガイドの仕方が違っていて、たとえばランでいうと海外の選手だと選手同士が腰にバンドを巻いて走る選手もいるのですが、米岡選手の場合はパラ陸上やマラソンのような感じで、手でバンドを握って二人三脚の要領で走ります。
そういうガイドとの連携は見どころではあるのですが、米岡選手とピッチを合わせながら、ふたりで息を合わせながら走るのが難しいところでした。
でも、レースを積むにつれて、どんどん慣れてきたりとか、細かい部分もさらに良いところを目指しながら、またパリに向けてもふたりで詰めていきたいと思っているので、よりよい順位を目指していければいいのかなと思っています」
パリ2024パラオリンピック競技大会
パラトライアスロン競技
▼9月1日(日)8:15スタート(日本時間15:15)
男子(PTS2、PTS3、PTS4、PTS5)
女子(PTS2、PTS4(PTS3含む)、PTS5)
▼9月2日(月)8:15スタート(日本時間15:15)
男子(PTVI1~3、PTWC1、2)
女子(PTVI1~3、PTWC1、2)