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「レース前の自信 実践編」森下健のメントレ!Vol.8

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ルミナ編集部

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©Kenta Onoguchi

>>トライアスリートのためのメンタルトレーニングVol.08

サニーフィッシュ」の選手をはじめ、多くのトップアスリートやビジネスパーソンを指導するメンタルトレーニングコーチの森下健さんが、心の鍛え方について語る連載コラム。スイムコーチとしての経験ももつ森下さんが、どんなレースも乗り越えることができる「折れない心の作り方」について伝授してくれる。

『Triathlon Lumina#98』に関連記事あり。

>>森下さんから直接トレーニングを受けたい方はコチラから問い合わせを

前回記事を読む。
>>レース前の自信 マインド編

レース前の自信の作り方~実践編~

皆さんこんにちは! メンタルトレーニングコーチの森下です。

あっという間に1年も半分が終わってしまいました。時の流れは早いですね〜。

ちなみにこの記事を書いているまさに今、サッカーW杯の日本戦なのですが、夜中の2時キックオフはキツいですって。でもリアルタイムで感動を共有したいので、頑張って起きております(そしてこの記事を書いています!)

試合が中断した後や終了間際のプレーやPK戦なんかを見ていると、心理面の対策も勝敗に大きく関わっているなとあらためて感じます。僕自身、純粋に試合を楽しみながらも、そんなことばかり考えて見てしまいます。頑張れニッポン!

さて、今回のコラムは前回の記事に続いて「自信の作り方」についてです。前回は「自信は準備から作ると崩れにくくなる」ということをお伝えさせていただきました。

今回のコラムでは崩れにくくなるための自信をどうやって作っていくのかのトレーニング方法(実践編)をご紹介します!

不安を書き出してみる

不安を感じたときには、まず不安を書き出してみてください。「なんとなく不安」という状態では、何を準備すれば良いのかわからなくなってしまいます。書き出す内容を難しく考える必要はないので箇条書きで十分です。

「スイムで焦りそう」「補給がうまくできるか心配」「暑さに耐えられるかな」「後半で脚が止まったらどうしよう」

このような感じで頭の中にある不安を一つひとつ書き出してみましょう。すると、漠然としていた不安が整理されて、「何を準備すればいいのか」が見えてきます。

そして、書き出した不安を、自分でコントロールできることなのか、それともコントロールできないことなのかに分けてみてください。コントロールできることであれば、対策を考えて準備をしていきましょう。補給のタイミングを確認する、暑さ対策をする、苦手な場面を想定して練習するなど、できることはたくさんあります。

一方で、天候や他の選手の走り、といった自分ではコントロールできないことを考えていても、不安は大きくなる一方です。だからこそ、コントロールできないことは割り切り、自分でコントロールできることに意識を向けることが大切です。

前回のコラムでも「準備=自信」とお伝えしましたね。不安を書き出すという作業は、何を準備すればいいのかを明確にするための第一歩です。

©Kenta Onoguchi

ネガティブ思考を使った目標設定

不安や恐怖、焦りといった、一見ネガティブに捉えてしまう感情ですが、実はネガティブな感情は対策や対処法を考える上では必要なものだったりします。使い方次第では「準備の自信」を高めることができるんです。

目標設定をするときは、基本的に「これがやりたい」「こうなれたらいいな」といったポジティブな思考、イメージで目標を立てます。ですが世の中は自分ではコントロールできないものだらけです。目標を立てて予定通り順風満帆に物事が進むことのほうが珍しかったりします。

そこで「こうなったらどうしよう」「もしかしたらこうなるかもしれない」といったネガティブな思考を使って、対策や対処法を準備するんです。

たとえば、「オーバーペースになったらペースダウンしてしまうかもしれない」ということもあるだろうし、思わぬところで言えば「大雨でレースが短縮、コース変更するかも」ということだって考えられます。

そういう”準備”があるからこそ、「ペースダウンを想定して目標に幅をもたせる」とか「コースが変わるかもしれない心構えはしておく」という対策、対処が考えられますね。

こうした考え方を専門的には「メンタルコントラスティング」と言います。(図1)

(図1)

このメンタルコントラスティングを目標設定プログラム化したものが「WOOP」プログラムです(Gabriele Oettingen (2015))。

WOOPは

Wish(願望):「〜したい」「〜になりたい」
Outcome(成果):「〜ができるようになる」「〜な良いことがある」
Obstacle(障害):「〜になってしまうかも」「〜されるかも」
Plan(対策):「〜になった場合は」「〜にならないように」

の頭文字をとって「WOOP(ウープ)」と呼び、この流れに沿って目標を立てていきます。

多くの人の目標設定は「Wish(願望)」と「Outcome(成果)」で終わりにしてしまいます。それに加えて「Obstacle(障害)」を考え、「そうならないためにはどうするか」「もしそうなったときはどうするか」といった「Plan(対策・対処)」を考えておきましょう。

そうすることで、想定外のことを想定内にしておくことができるようになります。想定外のことを想定内にしておくと、想定外のことが起きたときに焦らず冷静(クール)に対応することができますし、自信をもってスタートラインに立つことができます。

目標を立てるとき、レースのプランを考える時には「ポジティブ思考」だけでなく「ネガティブ思考」の両方を使ってみてください。

実際にイメージを作ってみる

イメージを作ることも、不安を減らし自信を高めるために欠かせない準備のひとつです。不安を書き出して対策や対処法を考えたら、実際にそのイメージを作ってみましょう。

人はイメージできないことを行動に移すことはできません。逆に言えば、「できる」「これなら大丈夫」というイメージをもてていれば、それだけ行動しやすい状態になっているということです。

ポジティブなイメージが多ければ、自然とポジティブな行動が増えますし、「失敗したらどうしよう」「うまくいかなかったらどうしよう」というネガティブなイメージが多ければ、消極的な行動や迷いが生まれやすくなります。

「これだけ準備したからもう大丈夫」「あとはもうやり切るだけ」そう思えるくらい対策や対処を考えて「できるイメージ」が湧いてきたら、そのイメージをより鮮明にするためにイメージトレーニングをしていきます。

脳は、現実に経験したことと、リアルにイメージしたことを完全には区別できないと言われています。

たとえば、怖い夢を見て目が覚めたとき、現実では何も起きていないにもかかわらず心臓がバクバクした経験はないでしょうか。夢というイメージに対して、脳が本当に起きたことだと勘違いして身体が反応している証拠です。

また、体操選手を対象にした研究では、実際に演技をしているときと、演技をイメージしているときでは、脳の活性化している部位が非常によく似ていることもわかっています。

つまり、イメージトレーニングを繰り返すことで、脳に「すでに経験したこと」に近い状態を作ることができるわけです。

レースまでにできるだけリアルなイメージトレーニングを何度も行ったとします。すると脳にとっては、「初めて挑戦するレース」ではなく、「何度もシミュレーションしてきたレース」に近い感覚になります。

初めて挑戦することよりも、一度経験したことのほうが落ち着いて取り組めますよね。だからこそ、本番でも余計な不安が減り、自分らしいパフォーマンスを発揮しやすくなるのです。

©Kenta Onoguchi

メンタルリハーサル

より具体的なところまでシミュレーション

このように、レース本番をできるだけリアルにイメージするトレーニングを「メンタルリハーサル」といいます。メンタルリハーサルで大切なのは、「レースだけ」をイメージするのではなく、本番までの流れを一連のストーリーとしてイメージすることです。

前日の夜、どんな気持ちで過ごすのか。当日の朝は何時に起きて、何を食べて、会場に着いてからどのように準備を進めるのか。ウォーミングアップをしてスタートラインに立ち、レースを終えてゴールするまで、一つひとつの場面をできるだけリアルに思い描いていきます。

その際に大切なのが、五感を使ってイメージすること。

たとえば、会場の景色やコースの雰囲気を見る(視覚)。水の冷たさや風、ハンドルを握る感覚、地面を蹴る感覚(触覚・筋運動感覚)。沿道から聞こえる応援や自分の呼吸(聴覚)、エイドステーションで口にするドリンクの味(味覚)、朝の空気や会場の匂い(嗅覚)まで、できるだけ細かくイメージしてみてください。

さらに、「少し緊張しているな」「スタート前はワクワクしている」「苦しいけれど落ち着いて対処できている」「ゴールした瞬間に達成感を味わっている」といった、その場面での感情や心の動きまでイメージすると、より現実に近いメンタルリハーサルになります。

他にも、メンタルリハーサルはリラックスした状態で行うことで効果が高まります。ストレッチ後やお風呂に入っているときなど、深呼吸をして身体の力を抜き、落ち着いた状態で行うことで、より鮮明なイメージを作りやすくなります。

©Kenta Onoguchi

ネガティブな感情も大切に

イメージトレーニングをしているときに、良いイメージだけでなく、「スイムで焦ったらどうしよう」「補給を失敗したらどうしよう」「脚が攣ったらどうしよう」といった、ネガティブなイメージが浮かぶこともあるでしょう。

そんな時は、そのネガティブなイメージを無理になくそうとする必要はありません。まずは「今、ネガティブなイメージが出てきたな」と気づき、一度そのイメージを止めます。そして、不安を書き出したときに考えた対策や対処法を確認してから、再度その対策や対処を実践している場面をイメージしていきましょう。

メンタルリハーサルは、成功場面だけをイメージするトレーニングではありません。トラブルが起きた場面も想定し、それに冷静に対処している自分までイメージすることで、「何が起きても対応できる」という安心感が生まれます。

いかがでしたでしょうか?

レース前に不安やプレッシャーを感じることは決して悪いことではありません。不安になる、プレッシャーを感じるということは、それだけレースに真剣に向き合っている証拠でもありますし、対策や対処法を考えるためには必要なものです。

大切なのは、不安をなくそうとすることではなく、不安を準備に変えることです。

何に不安を感じているのかを書き出し、自分でコントロールできることとできないことを整理する。そして、対策や対処法を考え、メンタルリハーサルで何度もイメージを作ります。

そうすることで「これだけ準備してきたから大丈夫」という自信が高まっていくんです。

皆さんがスタートラインに立ったとき、「これだけやってきたから大丈夫」と思えるような準備を積み重ね、レースを楽しめることを願っています!

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森下 健 Ken Morishita
学生時代は競泳選手として活躍。引退後は水泳指導者として多くの人を指導する中で、自身の「ここぞという試合で勝てない」という経験からメンタルトレーニングに興味をもち、応用スポーツ心理学を学ぶ。2013年、細田雄一選手のサポートをきっかけにトライアスロンに出会い、自身もレースに出場。2020年よりサニーフィッシュで水泳コーチ兼メンタルトレーニングコーチとしてメンタルトレーニングを実施。スポーツの他、企業や学校などさまざまな分野でメンタルトレーニング講演会や心理面のサポートを行う。

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