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盟友・平野司が語る田山寛豪、引退レースでの11勝目〈日本選手権ルポ・前編〉

投稿日:2017年10月26日 更新日:


平野司

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10月15日、東京・台場で開催された日本選手権を制して、華々しく現役引退を遂げた田山寛豪

レース前日から、引退レースでの勝利を感じさせた田山選手

写真/播本明彦 文/平野司

今年はトライアスロン界において、たくさんのニュースが飛び交った一年となった。

うれしいニュースもあったが悲しいニュース、辛いニュースもあった。直前にはお台場における水質調査の結果、大腸菌が検出される時期があったとの報道があり、一時「お台場」(日本トライアスロン選手権=10月15日)は開催されるのかと選手間で心配の声も上がっていたほどだった。

そんな中、レース直前に私にとっても衝撃的な情報が耳に入った。ジュニア時代から日本のトップを牽引してきた田山寛豪選手の引退宣言。いずれどんな選手にも訪れることではあるものの、偉大な存在がいなくなると思うと、とても寂しい気持ちになった人は多かったのではないだろうか。

前日の競技説明会で田山選手に会い、「今回のレースは田山選手が優勝する」と感じた。

長年一緒にレースをしてきたからか、レースをしなくても話しているだけで、大体はお互いの調子は読めるようになってくる。表情や落ち着き具合ですでに勝ちそうな空気感を放っていた。何よりも、見るからに絞れていたし、仕上がっていた。

レース前日の記者会見に臨む田山寛豪、上田藍の両選手。今回の日本選手権での現役引退を表明した田山は、体重を3㎏絞ってこの一戦に照準を合わせてきたこともあり、有終の美を飾る11勝目を予感させた

 

楽しみなのは、その田山選手を相手に若手選手がどこまで闘えるか、というところだった。「東京オリンピックで闘うのは俺だ!!」という勢いや存在感をどこまで見せられるか。田山選手自身もそれは思っていたに違いない。

もちろん田山選手のことなので、そんな勢いもものともせず勝って引退しようと思っていただろう。レース後のインタビューでも(今回の日本選手権に向けて)体重を3㎏落として挑んだと言っていたほどだ。

レースでは、予想外に大きな第1パック、さらに大きな第2パックが形成された。若手選手のアタックあり、ランでも頑張っている選手ありだったものの、やはり(ランでトップに立ち、突出した)田山選手の圧巻のレースとなり「素晴らしい」の一言。日本選手権11回目の優勝で現役最後を最高の形で締めくくった。

(>>>本文後編2020東京に向け層の厚さを見せた日本女子へつづく)

スイムを2位で上がった田山、スイムトップの小田倉真、同4位の古谷純平(いすれも写真右端)らとともにバイクで先頭集団を形成する

 

オリンピック経験者のベテラン、田山や細田雄一らと、世代交代を明確にせんとする小田倉(先頭)、古谷(中央)ら若手を含むリードパックは大集団のままバイク終盤へ

 

大集団となった先頭パックから抜け出し、アタックを試みた山本康貴(写真前)と渡部晃大朗(同・後ろ)。ランでトップ5にはかわされたものの総合順位でも渡部6位、山本9位と健闘

 

バイクでは先頭パック内で慎重にポジションをキープし、T2を10番手で通過した田山。ときに笑みさえ浮かべつつの「ラストラン」で、前をゆく9人を次々にキャッチしていく

 

最後は2020東京への道を託す後進、小田倉や細田、北條巧らを抜き去る。終わってみればランラップを獲る快走を見せた田山

 

前人未踏の日本選手権11勝という大記録を打ち立てて、まさに「有終の美」を飾った田山。その後塵を拝した後輩たちに背中で何を語ったか? との問いには、「それは彼ら自身がどう感じたかで、僕が言うことじゃない」とコメント

★男子レースダイジェストMOVIE


公益社団法人日本トライアスロン連合(JTU) 公式WEBサイトより


第23回日本トライアスロン選手権

2017年10月15日(東京・台場)

男子上位
順位/氏名/所属/総合記録
1 田山寛豪(NTT東日本・NTT西日本/流通経済大学職員)1:51:34
2 細田雄一(博慈会)1:51:51
3 小田倉真(三井住友海上)1:51:57
4 北條巧(日本体育大学)1:52:20
5 古谷純平(三井住友海上)1:53:12
6 渡部晃大朗(博慈会)1:53:13
7 佐藤錬(神奈川大学)1:53:31
8 石塚祥吾(日本食研)1:53:35
9 山本康貴(AS京都)1:53:35
10 安松青葉(日本体育大学)1:53:47

★全リザルトは公益社団法人日本トライアスロン連合(JTU) 公式WEBサイト

 

優勝した田山(とその子どもたち=写真中央)、2位の細田(同左)、3位の小田倉(同右)

■著者プロフィール
平野 司(ひらの・つかさ)
スポーツクラブNASトライアスロンスクールのヘッドコーチ。現役時代は世界レベルの泳力を武器にITUサーキットを転戦した元トッププロで、2005年には日本選手権で優勝、日本代表としてアジア選手権、世界選手権を始めとする世界大会でも活躍した。

優勝者コメント

取材/孫崎虹奈(Lumina)

「自分だけの力で、日本選手権11勝はなし得なかった」

田山寛豪

「最後だからこそしっかり仕上げて準備をして勝ちたかった」と涙を浮かべながら話す田山。今回のレースのために体重を3kg減らし万全の状態で挑んだ。バイクでは、落車に気を付け、攻めるレースはできず、寒さで足がつるなどアクシデントもあったが、感謝の気持ちをもって、51.5kmを走り切った。

「11回目の優勝は自分だけでなく環境が整ったゆえの結果。自分だけの力で、この結果は出せなかった」。今後は、指導者として世界に通用する選手の育成に専念する。「人間的に競技だけでなく私生活から『こいつすごいな』という日本人魂をもった選手を育てていきたい」。晴れ晴れとした表情で、今後の願望をそう語った。

 

TV放送情報
NHK BS1 「第23回日本トライアスロン選手権(2017/東京・台場)」

10月30日(月) 19:00~20:50
女子 19:00~19:50/男子 20:00~20:50
*19:50-20:00 中断BSニュース

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