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トライアスロン旅にも「スケッチブックと色鉛筆」を。

投稿日:2017年3月6日 更新日:


謝孝浩

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謝さん愛用のスケッチブックと色鉛筆。IM70.3ベトナム(手前)、エクステラ・マルタの大会遠征の時に記したもの。旅のスケッチブックは同じF0サイズのものが40冊近くある

 

連載「達人たちの持ち物リスト」

file.03 「旅烏」こと謝 孝浩さん


「スケッチブックと色鉛筆」
旅を反芻する濃密な時間。

トライアスロンと旅は、親和性がある。

思えば大会開催がきっかけで訪れる機会に恵まれた土地が数多くある。日常から離れて旅に出ると、なぜか五感が研ぎ澄まされるから不思議だ。目に入ってくる風景やその土地ならではの空気感、出会った人との触れ合い……。

普段ならば見過ごしてしまうようなちっぽけなことでも、ダイレクトに心に沁み入ってくる。でも、悲しいかな、すぐに忘れてしまうのである。

その対策は、記録に残すこと。旅に出るときにはスケッチブックと色鉛筆を持っていくようにしている。facebookやInstagramが今時なのだろうが、敢えてアナログにこだわっている。

特に独りで旅に出るときなどは、スケッチブックが旅の相棒という感じになる。食事の時も独り飯が多くなり、料理を待っている時など手持ち無沙汰。そんな時、その日の出来事を記したり、描いた絵に彩色しながら、スケッチブックと自然に対話しているのである(笑)。

アジアを旅していた時、屋台で飯を食いながら、旅日記を書いていると、隣に座っていた人に、日本の文字がおもしろいと話しかけられた。スケッチブックが新たなる出会いのきっかけともなるのである。

冒頭のスケッチブックにも描かれているマルタ島で ©Sho Fujimaki

ライブで記録。見直して旅を仕上げる

愛用しているスケッチブックは横18㎝縦14cmのFO号サイズ。すぐ失くしてしまいそうなメモ帳より大きく、かさ張るほどでもないコンパクトサイズ。表紙の厚紙が手持ちでも机がわりになって書きやすく、罫線とかがないので白いキャンバスの空間をその時の気分で自由に使えるのがスケッチブックの利点。

水彩色鉛筆は12色。水筆ペンと鉛筆削りとともに、コンパクトな軽いプラスチックケースに入っている。色鉛筆で塗った上から水筆でなぞると、まるで水彩画のようなタッチになる。限られた12色で多様な色をどう表現するかも楽しみのひとつだ。

とはいっても、その場でゆっくり時間をかけて彩色までに至ることは少ない。トライアスロンの大会遠征ともなると、旅先でも大会の準備でいろいろと忙しい。まして大会レポートの取材旅行ともなると、現地でやることが山積みだ。

そんな時でも、スケッチブックに走り書きでもいいから記録を残すことにしている。合間の時間に書き殴った文字や間違えて黒塗りした文字が、その時の焦りや緊張感を伝えてくれる。そのライブな感触というものは、その瞬間にしか残すことはできない。

レース後や旅から戻って、時間的にも精神的にも余裕ができた時、その旅の記録をあらためて見直し、旅日誌を完成させる。ここが肝心。このひと手間こそが、旅を反芻する濃密な時間にしてくれるのだ。LM

©Sho Fujimaki

■著者プロフィール
謝 孝浩 (しゃ・たかひろ)
1962年長野県生まれ。上智大学文学部新聞学科卒。 在学中には探検部に所属しパキスタン、スリランカ、 ネパールなどに遠征する。卒業後は秘境専門の旅行会社に就職し、添乗員としてアジア、アフリカ、南米など世界各地を巡る。2年で退職し、5カ月間ヒマラヤ 周辺を放浪。帰国後はPR誌、旅行雑誌、自然派雑誌などに寄稿するようになる。現在は、トライアスロン雑誌での大会実走ルポなどを通じて日本にも目を向けるようになり、各地を行脚している。著書にルポ『スピティの谷へ』(新潮社)、小説『藍の空、雪の島』(スイッチ・パブリッシング)など。http://www.t3.rim.or.jp/~sha/

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コメント

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  1. 児玉 修司 児玉 修司 Master

    一部で話題の「謝さんのスケッチブック」。謝さんの人柄がでて、ほんとうに味わい深いんです!


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