KONA5連覇&通算6勝
最強レジェンドが語る、トレーニングと実戦対策とは?
日本最大のミドル&ロングディスタンス・レース「佐渡国際トライアスロン」の開催に合わせ、アイアンマン40年の歴史の中でも最重要人物のひとりマーク・アレンが来日。日本トライアスロン連合(JTU)とマーク・アレンの長年の親密な関係性により実現した、トレーニング&実戦対策セミナーの模様をお伝えしよう。
Photographs by Jero Honda
マーク・アレン
KONA(アイアンマン世界選手権)で前人未到の5連勝を含む通算6勝(歴代最多タイ)を上げたほか、51.5㎞の第1回ITU世界選手権優勝など、数々の金字塔を打ち立ててきたトライアスロン界のレジェンド。KONAでのラン自己ベスト2時間40分(1989年)は、現在のIRONMAN世界王者パトリック・ランゲが2016年に更新するまで、コースレコードとして長きにわたり破られなかった大記録。「禅マスター」と呼ばれるほど精神性についても追究し続けてきた。引退後は指導者として後進の育成にあたるほか、自身が主宰するオンラインコーチングサービスを通じて世界中のエイジグルーパーを指導している。アメリカ・カリフォルニア州在住、61歳。
トライアスロン・トレーニングの基本的な考え方
マーク・アレン(以下同)
トライアスロンのトレーニングには、大きく分けて、ふたつのタイプの重要なトレーニングがあります。ひとつは「長いトレーニング」。3種目とも1週間に1回程度の長いトレーニングが必要です。そして、もうひとつは「短くて速いトレーニング」です。
スイム(LS)、バイク(LB)、ラン(LR)それぞれにロングのトレーニングを週1回。それとスイム(SS)、バイク(SB)、ラン(SR)それぞれに「短くて速い」トレーニングを週1回。
この6つのトレーニングをキーとします。
大事なことは、これらをいかに分散させるかです。
ここでは一例として、以下の表のように1週間のスケジュールに落とし込んでみました。
ほとんどの人は週末にロングライド、ロングランを行うと思いますので、ここでは仮に土曜日にロングライド(LB)、日曜日にロングラン(LR)を設定します。
ロングライドのあとにランを入れるのは脚などが疲れた状態で走るので、辛くて嫌だという人もいますが、この順番は非常に重要。ミドル~ロングディスタンスのトライアスロン・ランの状態に近いからです。トライアスロンではフレッシュな脚で走ることはなく、いつも疲れた状態の脚で走ることになりますから。
金曜日にロングスイム(LS)を入れてみましょう。スイムは長めに泳いでも比較的短い時間でできるので、ウイークデイでもやりやすいかと思います。
次にスピードトレーニングですが、土曜日にロングバイクをやるので、火曜日にバイクのスピードセッション(SB)を入れます。
ランのスピードトレーニング(SR)は木曜日に。
スイムのスピードトレーニング(SS)はどこに入れてもいいのですが、水曜日に入れてみましょう。
これはあくまでも組み合わせの一例ですが、同じ種目でスピードトレーニング(高負荷セッション)を続けてやることは避けるのがひとつの原則。
ロングランの翌日は休息が必要なので、ここでスピードランを入れるのも避けてください。
バイクでロングライドの前にスピードバイクを入れるといったこともNG。
これが一番中心となる6つのカギとなるトレーニングと、その組み合わせ方の基本です。
時間的な余裕があれば、ここにそれ以外のトレーニングを加えていきます。
例えば月曜日にミドル(中距離)くらいのスイム(MS)を入れたり、木曜日に同じように長くないバイク(ミディアムライド=MB)を入れたり、火曜日にミディアムラン(MR)を入れたり――といった具合です。
長い練習、短い・スピード練習、それぞれの距離は?
では、それぞれのセッションの距離は何kmくらいか?
それはターゲットとするレースによって変わってきます。
51.5㎞(OD)をターゲットにトレーニングしている人なら、その「ロングセッション」はODの距離よりも長いくらい。
例えばラン(LR)なら10㎞以上、20㎞くらいのイメージです。
バイク(LB)なら40㎞以上、80~90㎞くらいまで。
スイム(LS)で2000~3000m。
ミドルディスタンスをターゲットにしている場合も基本的な考え方は同じですが、あんまり長過ぎる必要はありません。
例えばロング・ランなら20~25㎞くらい。もしランをもっと強化したいならば30㎞くらい。同バイクなら70㎞~120㎞くらい。同スイムで3000~4000ⅿくらい。
ロングディスタンスをターゲットにしている場合は、ロング・ランで30㎞~35㎞。同バイクで150㎞~200㎞。同スイムで4000~6000ⅿくらい。
ただし、最初から苦しい練習をする必要はなく、徐々に積み上げていくイメージをもってください。
Q ロングディスタンスをターゲットとする場合も、ロング・ランで(実際のレース距離)42㎞必要ないのは、なぜでしょう?A ランニングは筋線維を壊す(傷めやすい)運動で、40㎞以上ともなるとリカバリーに時間がかかります。ロングランで求めているようなエンデュランス(耐久性)というのは、バイクライドでも得られるものなので、その相乗効果を踏まえています。
勝つための「ブリック・トレーニング」
もうひとつ、特にミドル~ロングをターゲットとする皆さんにぜひ取り入れてもらいたいのは、バイクとランを交互にやる「ブリックトレーニング」です。
トライアスロンのランを走り切るためには、これも非常に重要なトレーニングです。
バイクライドの後に走る――というセットになっていればいいのですが、特にオススメしたいのは、ロングライドの後に走るブリックトレーニングです。
ただし、バイクの後にやるランは(脚への負担が大きいので)20分~1時間。それ以上はやらないこと。
よく「実際のアイアンマンでのランはもっと長いじゃないか!」と言われるのですが、実戦のランを走り切るのに必要な「スタミナ」は、その前に行うロングライドで培うことができているので心配しないでください。
また、ロングライドの翌日にロングランをやるというセットでも、大きなエンデュランス(耐久性)を得られます。
ブリックワークアウトを効果的に行うコツ
大事なポイントは、ロングライドの後、一息ついたり・ゆっくり落ち着かず、そのままシューズをはいてランへ、走り出すこと。
これは、ロングライドが終わった後は「休憩でもランチタイムでもなく、走る時間なんだ」ということを身体に覚え込ませる意味があります。
バイクで使う筋肉と、ランで使う筋肉は違いますが、「バイクで使う筋肉」を稼働させた後、「ランで使う筋肉」を動かせるように慣らすわけです。
バイクの場合は、動きが限られていますが、ランはもっと可動域が大きくなって、身体はよりダイナミックな動きをします。
もしブリックワークアウトをやったことがない場合、まずは短いバイクライドの後に走るということから始めてみて、慣れてきたらロングライド後のランに取り組んでみてください。
私がアイアンマンを始めて6年くらいの間は、スイム、バイクと先行して、ランの中間点くらいまでは良いペースで走れていたのですが、後半・終盤にどうしても失速してしまいがちでした。
7年目のアイアンマンをやる前に、この課題をどう克服すべきか? 考えました。当時の練習日誌を見ても、「やるべきことはすべてやっているのに、何が悪い(足りない)んだ!」とあるくらい悩んでいました。「土曜日には5時間のロングライドをやり、その翌日の日曜日には2~3時間のロングランをやり、すべてやっているのに、何が悪いんだ?」と。
ただ、ブリックランだけはやっていなかったんです。
それまでは、ロングライドの後はシャワーを浴びて、ランチを食べていた。そうすると、KONAでデイブ・スコットと一緒にバイクを降りて、走らなければいけないときに、私の身体は「ランチはどこだ?」という具合に臨戦態勢になっていなかった。それが原因で、私はいつもデイブの後塵を拝することになっていたんです。
そこで、1989年に初めてブリックワークアウトを始めました。最初は2~3週間に1回行い、その後は2週間連続でブリック行って、1週間は(ブリックを)休む。そして、さらにその後に、身体が慣れてきたので、ロングブリックを行うようになりました。
まずはバイク(ロングライド)の後に30分ほど走るブリックランを2週間。その後は40分、50分・・・と走る時間を延ばしていきました。
それがデイブ・スコットに勝つことにつながったのです。
89年のKONAでバイクを終え、デイブとランを走り始めたとき、私の身体は「走る準備ができている」という感じでした。
毎週ブリックトレーニングをする必要はありません。非常に身体に負担がある練習なので、頻度と量を徐々に高めていく。距離も段階的に延ばしていくようにしてください。
適切な「トレーニング強度」を知る
では、あなたにとって、適切な「トレーニング強度」はどうやって把握すべきか? それを算出・把握するための数式を紹介しておきましょう。
心拍数を基準とした以下の基本数式から算出したものに、それぞれのフィットネス状況を加味して算出されるのが「マキシマム・エアロビック・ハートレイト(最大有酸素心拍数)」(以下MAHR)。これがひとつの基準となります。
【180公式】
180-年齢=A(拍/分)
*全くトレーニングをしていない人 A-5拍/分
*週1~2回トレーニングをしている人 A=0拍/分(だいたい同じ)
*週3~4回以上のトレーニングを1年以上続けている人 A=+5拍/分
*55歳以上の人、25歳以下の人=さらに+5拍/分
例)マーク・アレン(61歳)の場合
180-61=A+5+5=129拍/分
大部分は「有酸素トレーニング」が占める
MAHR以下であれば「エアロビック(有酸素)トレーニング」、それ以上の運動が「アネロビック(無酸素)トレーニング」ということになりますが、ほとんどのトレーニングはエアロビックで行われるべきです。
このエアロビックのレベルでトレーニングを行うと、身体が脂肪を燃料とするようになります。ほとんどの人は何も補給しなくても800㎞くらい移動できるだけの脂肪を、身体に持っていると言われています。
無酸素運動をする場合は、炭水化物(糖分)が必要なのですが、身体の中に蓄えられているのは32㎞走れるくらいまでしかありません。
言い換えるなら、エアロビックトレーニングをすることで、脂肪を使える身体をつくることができます。
そして無酸素運動を少し取り入れることによって、糖を使って、より速く走ることができるようになります。
先に例を挙げたようなトレーニング計画の中で、私がロングライド(LB)やロングラン(LR)を行うときは、このエアロビックのレベルで行うようにしています。
そして、短いほうの練習(SS、SB、SR)は無酸素レベルで行っています。
Q ロングセッションで、上り坂でもMAHRを超えないように気を付けるのでしょうか?A 基本的には、狙った範囲内に心拍数を収めるようにします。特にトレーニングをし始めたシーズンインの時期には、心拍数を上げ過ぎないように気を付けます。段々力がついてきて、トレーニングが進んできたら、上りでMAHRを超えても問題ないと思います。
Q ミディアムワークアウトのときの心拍数はどのくらいに設定したらいいですか?A 基本的にはエアロビックレベル(MAHR以下)で行います。距離的にはロングセッションの半分くらいの距離です。
無酸素レベル・高強度練習の入れ方
高い強度のアネロビックトレーニングを行うときに、どのくらいの強度で、どのくらいの時間やるべきかが問題になってきます。
先に挙げたスピードセッション(SS、SB、SR)は、アップからクーリングダウンまで全部含めて1時間以内に終わらせるような練習ですが、本当にスピードを出す高強度メニューの時間は、合計で15分~20分くらいが目安となります。
例えばトラックでこうした高強度練習を行う場合、1000ⅿ✕10本とか15本といったインターバル練習をやろうとする人もいると思うのですが、それは1時間以上の高強度運動をやることになり身体に負担がかかり過ぎる。
このMAHRを超える心拍数(強度)でやるトレーニングで得られる効果は、かなり高い心拍数で運動することで、最大酸素摂取量(VO2MAX)を高めること。つまり、身体が酸素を取り込む能力が高まります。
ですので、この高強度でのトレーニングを長くやろうとしてしまうと、強度が下がってしまって、一番狙いたい「より高い心拍数での練習」ができない。中途半端に高い心拍数でトレーニングしても、「高強度練習」のメリットが得られません。
MAHRを少し超えたくらいの心拍数の運動も、アネロビックには入りますが、トレーニング効果はかなり低いです。
エアロビックでやるトレーニングも、MAHRを超えるほど強度を上げ過ぎてしまうと、本来狙いたい効果が得られません。
エアロビックトレーニングで、少し強度を上げて、ゼェゼェ疲れることで満足感(頑張った感)を得られると思うのですが、もっと強度を上げなければ高強度練習のように酸素を取り込む能力を高めることはできませんし、有酸素運動のように脂肪を使える身体にしていくという効果も得られません。
HIITについて
★参加者からの質問
Q 高強度練習のひとつとして、いわゆる「HIIT」(high-intensity interval training)が注目され、さまざまな研究でもその効果が認められていると聞きますが、それについては?
A それを行うことによって得られるのは、病気になるか、ケガをするか、燃え尽きてしまうか、いずれかの結果だと思います。
非常に早く能力を高めることはできるのですが、すぐに限界がきてしまうので、そのあとに大体クラッシュしてしまうというパターンに陥る。
私が推奨する有酸素トレーニングを主としたアプローチは、時間もかかり、忍耐も必要とされるのですが、やはりトレーニングの80%は有酸素運動でやるべきだと思います。
私もトレーニングをし始めたころは高強度トレーニングをたくさんやってみたのですが、うまくいきませんでした。そのときは、有酸素能力も全く高まらず、その後、すべてのトレーニングの強度を抑えるという方法をとりました。
この有酸素トレーニングを主としたアプローチを続けていくことによって、キーとなる心拍数(MAHR)を保ちながら・出せるスピード自体が速くなっていきました。
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マーク・アレンが教える、「ミドル&ロング攻略」
KONA(アイアンマン世界選手権)で過去最強と謳われたトライアスロン界きってのレジェンドアスリート、マーク・アレンが約10年ぶりに公式来日。日本トライアスロン連合(JTU)との長年の親密な関係性により、日本のロングディスタンス・トライアスロンの聖地 佐渡でのセミナーが実現した。
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ロング&ミドル派トライアスリートのための
アミノバイタル®おすすめ使い分け講座〈前編〉
佐渡でのマーク・アレン来日セミナーでは参加特典として「アミノバイタル® 完走&必勝セット」のプレゼントがあり、セミナー冒頭、トライアスリート向けにオススメの青・赤・金のアミノバイタル® それぞれの特徴やオススメの摂取タイミングなどについてのミニ講座が行われた。
AMINO VITAL
アミノ酸は、トライアスリートの皆さんならよくご存じのとおり身体を構成する重要な栄養素で、食事から摂るのが基本です。
ただ、食事から摂ったタンパク質は、身体の中に入ってからアミノ酸となり吸収されるまでに長い時間がかかってしまいます。
そこで、レースの前や、長丁場のレース中に最初からアミノ酸として摂ることで、身体の中に必要な栄養を素早く吸収していくことができるのです。
最後まで途切れないパフォーマンスのためには、サプリメントもうまく使ってアミノ酸を積極的に摂っていくことをお勧めします。
アミノバイタル® のラインアップの中でも、いろいろと種類があって、それぞれに中身が違い、オススメの摂取タイミングがあります。
特にトライアスリートの皆さんにオススメしているのが、
青いアミノバイタル®(アミノバイタル® プロ® 、アミノバイタル® アミノショット®)と、
赤いアミノバイタル® (「アミノバイタル® アミノショット®」パーフェクトエネルギー®、アミノバイタル® パーフェクトエネルギー®)、金のアミノバイタル® ことアミノバイタル® GOLDです。
まず、青いアミノバイタル®(アミノバイタル® プロ®、アミノバイタル® アミノショット®)は運動の前、運動中に摂っていただくのがオススメ。
これらはエネルギー(カロリー)を摂るためではなく、BCAAを素早く摂るために使っていただければと思います。
運動前にBCAAを摂った人と、摂っていない人とでは、運動中の身体の状態に違いが出るはずです。より良い状態をキープして、レースを最後まで進めたい人には、この青いアミノバイタル® を運動前(競技時間の長いミドル~ロングでは)競技中にも摂っていただくといいと思います。
一方、赤いアミノバイタル® (「アミノバイタル® アミノショット®」パーフェクトエネルギー®、アミノバイタル® パーフェクトエネルギー®)は、エネルギーを摂っていただける商品です。ほかのエネルギー補給食のように糖質を摂れるだけでなく、長時間スポーツの後半でも途切れないためのエネルギー源アミノ酸(アラニン+プロリン)も摂ることができます。
レース中、糖質だけを摂り続けるだけよりも、こうしたアミノ酸を含む赤いアミノバイタル® を摂ることで、よりムラのない良いパフォーマンスが期待できると思います。
最後に、長いレースの後、ダメージからの速やかなリカバーを促すためにオススメなのが、金のアミノバイタル® ことアミノバイタル® GOLDです。
トップアスリートの間でも、運動・競技後のリカバーに良いというフィードバックをもらって製品化された商品なので、皆さんにも、明日のレースの後はもちろん、より良い状態でレースに臨むために、レース前日にも摂ってみていただきたいです。
青・赤・金、それぞれに期待できるメリットが違いますので、ぜひミドル~ロングのレースの際に、その使い分けを試してみていただければと思います。
>>>マーク・アレンが教える、ミドル&ロング対策②《実戦対策編》へつづく
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