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松田丈志の佐渡B「自分超え」〈5〉目標達成!のレースを振り返る

投稿日:2019年10月14日 更新日:


ルミナ編集部

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2度目の佐渡Bタイプ、バイクパートを行く松田さん。ミドル~ロングでは必須のスキル、エアロポジションも堂に入ってきた。ⒸJero Honda

「勝ち飯®」アンバサダー 松田丈志の自分超えプロジェクト
★佐渡国際トライアスロン篇 #05 そして、佐渡でいかに闘ったか?

「勝ち飯®」アンバサダー松田丈志さんが佐渡トライアスロンBタイプ(9月1日開催 スイム2km/バイク108㎞/ラン21.1㎞)での自己ベスト更新に挑んだ「自分超え」プロジェクト。

世界水泳取材など多忙を極める夏、7月からの短期間ながら、できる限りの準備をして、現役時代に培った知恵を駆使して、見事「自分超え」を完遂したメダリストスイマーの奮闘を、自身のコメント、河原勇人コーチからのレース後分析も交え、振り返る。

ⒸJero Honda

松田丈志さん
アテネ、北京、ロンドン、リオで4つのメダルを獲得した元競泳日本代表。2016年に引退後は、イベント等での水泳指導のほか、TVなどのメディアでコメンテーターや解説者としても活躍。昨年6月、宮崎シーガイア大会(51.5km)でトライアスロンデビュー。佐渡国際トライアスロンBタイプには昨年に続き今年も挑戦し、6時間14分05秒で完走を果たしている。セガサミーホールディングス所属。1984年、宮崎県延岡市生まれ。

2度目のミドル挑戦で、松田さんが目指したもの

7月に「日和佐うみがめトライアスロン」(※悪天候により51.5kmを変則スプリントに短縮して開催)に出場した後、その結果も踏まえて、河原勇人コーチとともに今回のハードル(目標)を設定することからスタートした松田さんの「自分超え」プロジェクト佐渡B編。

やるからには、超えがいのあるチャレンジングな目標じゃなきゃ、面白くない――というわけで、立てた目標は、昨年の総合タイムより約30分短縮の6時間15分、総合順位100位以内!

今回の〈目標〉その内訳
総合記録
昨年6時間45分30秒(総合186位)
→ 6時間15分(総合100位以内目標!)
▼スイム(2km) 同26分35秒 → 26分(前年比 ±0でキープ)
▼バイク(108km)同3時間46分 → 3時間36分(10分短縮)
▼ラン(21.1km)同2時間32分55秒 → 2時間13分(20分短縮)

佐渡大会前々日の「島祭りParty」で、今回の目標設定をともにした河原勇人コーチと。ⒸJero Honda

現役引退から約3年。TVなどでの活躍ぶりは周知のとおりで、今年も7~8月は世界水泳や、競泳の世界ジュニア選手権など海外取材が続き、まともに練習時間が確保できない多忙さは昨年同様。

しかし、そうした状況も含め9月の佐渡Bで昨年の自分を超えていくために、ルミナでもおなじみの指導者らのアドバイスを生かして、できうる限りの準備を積んだ。

8月半ばには、河原コーチと暑さの中での実戦対策ラン20㎞も敢行! このときに学んだ秘策(?)が、佐渡大会で早速生かされることになる

かくして挑んだ2度目の佐渡B。

昨年に比べ、荒れ模様で全体的にタイムが伸びなかったスイムで今年もラップを獲る(1位)と、T1含めバイクで約17分のタイム短縮に成功!

走り始めは佐渡大会特有の暑さに苦しんだランでも粘って、18分近くタイムを短縮し・・・終わってみれば6時間14分05秒、総合74位でフィニッシュ! 見事目標をクリアした。

総合タイムと順位の目標をクリアして、歓喜のフィニッシュ。ⒸJero Honda

目標と記録の比較
総合記録
昨年6時間45分30秒(総合186位)
→ 6時間14分05秒(総合74位)前年比31分25秒短縮!
▼スイム(2km) 同26分35秒 → 28分03秒 (+1分28秒)
▼バイク(108km)同3時間46分 → 3時間28分40秒 (17分20秒短縮!
▼ラン(21.1km)同2時間32分55秒 → 2時間15分06秒(17分49秒短縮!

と、ここまではTriathlon Lumina11月号でも既報の通り。

ここでは、さらに松田さん自身のレース直後のコメントを基に、この「自分超え」がいかにして、成し遂げられたか? を振り返ってみよう。

そこからは、今回の目標達成が、決して余裕でクリアできた予定調和の「自分超え」ではなかったことがハッキリと見て取れる。

スイム
〈荒れた海でもダントツのラップ1位〉

松田 スイムはタイム的には27分と昨年よりかかりましたが、今年は波が結構ありましたね。往きは向かいの波があって、(前々日までの雨の影響で)水も濁っていたし。泳いでいて、「あ、これ去年よりハード(なコンディション)だな」という感じはありましたね。泳ぎが苦手な人には、結構難しいコンディションだったと思います。

海がやや荒れたコンディションで、日本選手権の選手も含め、ほかの選手が苦しむ中、今年も当然のごとくスイムラップ1位をマークした松田さん ⒸJero Honda

泳いでいる途中も何度かガーミン(マルチスポーツウォッチ)を見たんですけど、「あー、ちょっと目標の26分は出ちゃうなぁ」と思いましたね。

ただ、コンディションがハードだったことを踏まえると、感覚的には、実質一緒(前年と同じくらいで泳げた)かなと。

河原勇人コーチの分析
「さすがのスイムラップ1位!」

珍しく佐渡の海が荒れたスイムでは、さすがのスイムラップ! 同じ距離・コースで同日開催されたロング日本選手権で優勝した日本のホープ、北條巧選手(28分27秒※ただしウエットスーツ非着用)も含めてのスイム1位は素晴らし過ぎです! 機会があれば、私もぜひ一緒に泳ぎたい! 私のほうがスイムの教えを乞いたいです(笑)。

★松田さんが今回のレースで計測したデータ(松田さんご本人提供のGARMIN Connectデータより。以下同)

 

河原勇人コーチ(写真右)
ミドル・ロングトライアスロンを主戦場として活躍した元トッププロ。佐渡Bタイプと同じコースの日本選手権では2005~2007年まで3連覇。プロとしての現役引退後は指導者として活躍しつつ自らもレースに出場。佐渡A・B両タイプで優勝し、前人未踏の【佐渡グランドスラム】を達成している。

バイク
〈昨年よりも「強くなっている!」を実感〉

松田 バイクパート序盤、走っていて「去年より強くなっている!」というのを最初に感じられたんですが、「ここで行き過ぎると最後に(そのツケが)来るな・・・」と思っていたので、行き過ぎない、踏み過ぎない。(エンデュアライフで)教えてもらった上死点からしっかり踏むというペダリングを意識しながら走りました。

速度的には平地で30km/hを超えないくらいをキープして、とにかく踏み過ぎるクセがあることはわかったので、そこに注意して。

(スイムに続き)バイクでも結構(Bタイプ)トップを走れた時間が長かったですね。両津を過ぎて、上り始めたところで、少しずつ抜かされ始めて。上りでは、やっぱり少し腰に(負担が)きましたけど、去年よりも、そのタイミングが遅くて、バイクコースの半分くらいまでは結構余裕をもっていけました。

河原コーチの最初のアドバイスを参考に、タバタ(短時間・高強度インターバル)を結構、回数多くこなせて、走る強度もガーンと上げて練習していたので、レースペースで走るときに余裕があると感じましたね。

佐渡Bタイプのバイク中盤。両津を越えて小木に向かい、アップダウンが出てくるあたり ⒸJero Honda

バイクって、乗る時間は圧倒的に長いじゃないですか? でも、やっぱり3時間乗る機会というのは、なかなかつくれなかったので、その分「実際よりも強度高めの短時間」で何とかカバーしようと意識しました。

実際にはバイクトレーニングは30kmを2回くらいしか乗れなかった。時間にして大体1回1時間くらいですよね。

7~8月は出張も多かったので、ローラー台での練習もあんまりできず、(出張先の)ホテルのジムで、エアロバイクをこぐ程度。

それでも、タバタを意識して取り入れたりして、108㎞、ある程度は対応できたと思うんですけれど、やっぱり途中ピキピキ脚にきたので(苦笑)これは距離を乗れていない弊害だなぁ、と。

(昨年に続き)2回目のコースだったので、走りながら自信になったのは、「去年はもうこの上りあたりでしんどかったはずだよな・・・」と思い出して、上り終えたときに、「あー今回は結構いいんじゃないかな!」と。結果的に、(10分短縮を目標に置いていた)バイクでも17分くらい短縮できたので、ランには余裕をもって入れました。

河原コーチの分析
「良い強度管理ができていた。回転数はもっと上げられそう」

35歳の松田さん、バイクの心拍数(平均心拍数154拍/分、最大心拍数177拍/分)はターゲット通り(180-年齢+10 拍)で良い強度管理ができています。今回は南西からの風が吹いて、小佐渡のほとんどが向かい風となりました。今回80回転/分だった平均ケイデンスを、90回転/分あたりまで向上させることができると、脚への負担も軽くなるだけでなく、バイク後のランニングのリズムも保ちやすくなります。


ラン
〈無理に走らない。戦略的に歩きを入れる〉

松田 ランでは河原コーチと8月の皇居で20㎞走をしたときに、「(レース中)キツくなったら歩いてもいいんですよ」と教えていただいて、「無理して走り続けるより、エイドごとに歩いてでも、しっかり整えていったほうがトータルでは速い」とアドバイスしていただき、それが大きかったですね。

昨年は「歩いちゃダメだ!」という気持ちがあったので、エイドでもバッとドリンクをとって、すぐに走り去っていたので。

今日は各エイドで歩いて(立て直して)身体を冷やす。で、エイド以外でもキツければ、(時計の)タイマーの区切りのいいゼロまで歩くとか、あそこの電信柱まで歩くとか、そういうふうに自分で決めて。トータルで考えるとそれもよかったです。

もうちょっとグッとペースを上げたら脚がつりそうなところまでダメージが蓄積していたので、そのギリギリ手前でキープできたのは、当然、トレーニングした成果もありますし、今、持っている力の範囲内でのマネジメントがしっかりできたかなと。

ギリギリのところで今回は脚がつらずに最後までいけました。最終盤にペースを上げようとして「危ない危ない!(つりそう)」という場面はありましたが(笑)。

ランパートを激走する松田さん。暑さ対策として東京2020テストイベントなどでも話題になった氷を手に持つ方法を実践 ⒸJero Honda

松田 最後、ガーミンのタイム表示的に(6時間)17~18分はかかっちゃうかなーとは思っていたんですが、抜かされる人数も数えていたので(笑)順位的には(目標の)100位以内は走れているかな、と。この順位の目標だけでも達成しようと、あきらめずに走っていたら、最後の商店街(河原田本町商店街)まで来て、「あ、これ意外とフィニッシュが近いぞ!」「ガーミンの表示よりも速く戻ってこられたんじゃないか」と気がついて。

最後は、めっちゃタイム見てました(笑)。いやー、よかったー。途中ホントにタイム目標はダメかとあきらめそうになったので。

やっぱり昨年と違って、今回は具体的な目標があったので、それを達成できた喜びは大きいし、(スイマーとしての)現役を引退して以来、久々に味わう感覚。目標設定、やっぱ大事ですね。ホント(目標達成できて)よかった~。

河原コーチの分析
「平均心拍170で最後まで押し切れたのが、凄まじい!」

昨年は300人に抜かされたというランも、この心拍数(平均170拍/分、最大187拍/分)で最後まで押し切れたのが、凄まじい! 頑張り過ぎて、レース後の身体のリカバリーが大変だったと思います。

欲を言うと、平均149spm(歩/分)のピッチを180spm近くまで早めることと、最初の入りのペースを抑えることで、高心拍で走ることによる負担や、後半の落ち込みを減らせます。

スタート直後から安定してキロ6分ペースを保つことができれば、ランニングタイムも、さらに10分ほど短縮を目指せます!

そして「自分超え」は、次のステージへ?

松田 今回のレースで一番「乗り超える」のがキツかったところは、やっぱりランの最初かなぁ~。すごい暑かったし、最初の5㎞くらいまではスッと行けたと思うんですけど、そこで1回歩いたんですよ。そこからはエイド以外でも5㎞ごとに1分くらい歩きを入れようと、そう考えたんですが、

実際には「5㎞ごと」どころか、もっとこまめに歩きました(苦笑)。「それでもいい、それでもいい。とにかく前に動き続けよう」と自分に言い聞かせながら。

次はAタイプ(ロングディスタンス)? ・・・どうでしょうねぇ。もっと継続的にトレーニングできないとなかなか厳しいかなと。ちゃんと練習してこそ「あ、強くなった!」という喜びがありますから・・・もうちょっと考えさせてください(笑)。

©Jero Honda

かくして、見事なまでの有言実行「自分超え」を成し遂げた松田さん。

次なるチャレンジは、Aタイプか、Bタイプでのさらなる自己ベスト更新か、はたまた!?

いずれにしても、「やるからには、ちゃんと目標設定をして、準備を積んで、それをクリアしていってこそ面白い!」というメダリストスイマーのトライアスロンライフが、永~く、どこまでも続きますように!

「勝ち飯®」アンバサダー松田丈志さんの取り組みは、AJINOMOTO®✕SPORTSサイトでチェック!

<VOL.1>目標設定!!
https://sports.ajinomoto.co.jp/topics/26/post_29.html

<VOL.2>海外滞在中の食事
https://sports.ajinomoto.co.jp/topics/09/_vol2.html

<VOL.3>トレーニング時の補食の摂り方
https://sports.ajinomoto.co.jp/topics/21/_vol3.html

<VOL.4>大会直前! 調整期の食事ポイント
https://sports.ajinomoto.co.jp/topics/30/vol4.html

<VOL.5>レース本番!果たして結果は!?
https://sports.ajinomoto.co.jp/topics/05/post_34.html

<総集編>「勝ち飯®」アンバサダー松田丈志の『自分超えプロジェクト』
2019 佐渡国際トライアスロン大会篇
https://www.ajinomoto.co.jp/sports/kachimeshi/matsudatakeshi-kachimeshi/

 

 

 

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