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松田丈志の佐渡B「自分超え」#03 走りの概念を変えて苦手のラン克服

投稿日:2019年8月22日 更新日:


ルミナ編集部

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圧倒的に優位なスイム、パワーを生かせるバイクに比べ、体格の良さがデメリットにもなるランは課題。というわけでラン指導のスペシャリストSPORTS SCIENCE LABへ ⒸMasaru Furuya

「勝ち飯®」アンバサダー 松田丈志の自分超えプロジェクト
★佐渡国際トライアスロン篇 #03 最大の課題「ラン」を克服しよう。

「勝ち飯Ⓡ」アンバサダー松田丈志さんが佐渡トライアスロンBタイプ(9月1日開催)での自己ベスト更新に挑む「自分超え」プロジェクト、3回目のテーマは、長年「水の中で生きてきた」松田さんのトライアスロン挑戦で一番の課題にして、「伸びしろ」であるランニング。

佐渡Bタイプのラン21.1㎞で「20分タイム短縮!」という目標をクリアするべく、多くのランナー、トライアスリートを指導するスポーツサイエンスラボの代表・三田裕介さんに、より楽に速く走るための極意を教わった。

>>>前回の記事を読む

取材・撮影協力= SPORTS SCIENCE LAB

今回の講師
三田裕介さん(写真左)
愛知県立豊川工業高校時代に国体3000m優勝(高1歴代最高記録)。2008年世界ジュニア10002m日本代表。2010年早稲田大学競走部メンバーとして大学駅伝三冠(出雲・全日本・箱根)。卒業後、実業団(JR東日本、NTN)で活躍。2017年スポーツサイエンスラボを設立し、代表に就任。プロランニングコーチ、トップスポーツサイエンストレーナー、トップスポーツ低酸素トレーナー。

ⒸMasaru Furuya

松田丈志さん(写真右)
アテネ、北京、ロンドン、リオで4つのメダルを獲得した元競泳日本代表。2016年に引退後は、イベント等での水泳指導のほか、TVなどのメディアでコメンテーターや解説者としても活躍。昨年6月、宮崎シーガイア大会(51.5km)でトライアスロンデビュー、9月の佐渡国際トライアスロンBタイプを完走、今年も挑戦する。セガサミーホールディングス所属。1984年、宮崎県延岡市生まれ。

★今回の挑戦の日々の進捗報告は、松田さんのtwitterやinstagramアカウントでも随時掲載中!
詳しくは公式サイトで http://matsudatakeshi.com/

カウンセリングで見えた「ランナー松田丈志」の可能性

三田さんのコーチングは、まずカウンセリングその人のランニング歴や特性を把握するところから始まる。ヒアリングを通じて、現役時代あまり走る機会がなかったこと、引退後は練習量のわりに好タイムでマラソンを完走していることなどが見えてきた。

三田 松田さん、ランニングは好きですか、嫌いですか?

松田 どちらかと言えば嫌いですね。子どもの頃はわりと好きだったんですが、水泳に特化するようになってからは、身体が大きく重くなったこともあり、走るのが苦手になりました。

三田 水泳の選手は走らなくなるようですね。

松田 中学までは温水プールではなかったので、水が冷たいですから、身体を温めるためによく走っていたんです。高校になって温水プールで泳ぐようになって、走る機会は減りました。現役中はアップで10〜15分走るくらいでしたね。

三田 現役引退後はどうですか?

松田 マラソンを2回完走しています。引退した年の12月にホノルルマラソンに出て、タイムは4時間55分でした。暑さとアップダウンがきつかったですね。2度目は今年の東京マラソンで、4時間22分。寒くてアップダウンもほとんどなく、ホノルルよりは走りやすかったです。

ⒸMasaru Furuya

三田 練習はどのくらいしましたか?

松田 東京マラソンの場合は、1カ月半前から突貫工事的に20㎞、15㎞、10㎞、そのあいまに5㎞走を入れた程度です。練習量はホノルルのときのほうが多かったと思います。トレーニングは大会の2カ月くらい前からちょこちょこ走る程度です。

三田 走り込みをやらずにこのタイムはすごいですね。

松田 ほかに去年の7月に宮崎のトライアスロン(オリンピックディスタンス)と9月に佐渡国際トライアスロンのBタイプに出て、今年は7月にひわさうみがめトライアスロン(天候の影響で距離短縮。スイム750m/バイク18km/ラン10km)に出ています。

>>>各大会のタイムなどは連載1回目を参照

マラソンで感じた痛みから見える課題

三田 マラソンを走ったとき、特に痛みを感じたところはありましたか?

松田 ホノルルのときは脚がつりかけました。場所としてはふくらはぎから太腿の内側、ハムストリングスです。東京マラソンはホノルルよりダメージは少なかった気がします。ただ、後で走ってる映像を見ると、身体が左右にゆれているんですよね。どこか痛くて、それをかばう走りになっていたのかもしれません。

三田 記録から見て、体力のベースはかなりあると思いますが、水中と違ってランニングは重力がかかりますから、水泳と違う筋肉の使い方が必要です。

ⒸMasaru Furuya

松田 体重は今85kgくらいですが、上半身に筋肉がついているので脚に負担がかかっているのを感じます。筋肉の使い方としては、ふくらはぎに力が入りがちです。もっとお尻の筋肉を使う動きができるといいんですが。

三田 トライアスロンのランニングはバイクの後に走るので、マラソンとはまた違いますが、力を使わずにより速く走るための効率の良い走りは伝えられると思います。

トレッドミルで走りをチェック。
着地でブレーキがかかっている

次はトレッドミルで松田さんの走りをチェック。最初はジョグから入り、身体が動くようになってきたところでスピードを上げた。この走りを動画に撮り、再生しながらチェックを行う。

ⒸMasaru Furuya

三田 着地するとき、踏み込んで大腿部で体重を支えているのがわかりますか? 一度踏み込んで体重を支え、それから重心を前に移動させています。つまり2ステップの動きになっている。そのため着地して体重を支える動きがブレーキになって、重い感じの走りになっています。これを1ステップにしたいんです。つまり着地の瞬間に重心が乗っている動きです。松田さんも気づいているようですが、そのためには大腿部ではなく、臀部の筋肉で荷重を支えたい。

松田 動画で見ると、確かに動きが重いですね。

三田 もうひとつ、身体が垂直に立っているのがわかりますか? これをもう少し前傾させたいですね。今の走りだと、脚の力で推進力を生んでいますが、前傾すると脚の力を使わなくても自然と重心が前に移動するので、それに合わせて自然と脚が前に出ます。

実際に走って「走りの概念」を変える

次に外で三田さんがお手本を見せ、松田さんに走ってもらう。まず身体を前傾させる姿勢の基本から、身体が自然に前へ移動していくのを確認。

三田 まず身体を1本の棒にして、少し前傾させ、脚を後ろに残します。着地は足底全体で。すると頑張って前に進もうとしなくても、自然と身体が前に移動していきます。この重心移動の感覚をつかんだら、そこからランニングに移っていきましょう。たぶんこの動きは松田さんが思っているランニングとかなり違うと思います。

真っすぐに直立した状態から、身体を少し前に傾ける。最初から脚を踏み出さない ⒸMasaru Furuya

脚で蹴るのではなく、前に倒れそうになる身体を支えるような格好で脚を前に。着地は足底全体で ⒸMasaru Furuya

身体を前傾させて重心移動していく動きをつかんだところで、今度は短い距離を走ってみる。最初は前傾不足でスムーズに体重移動できないが、もう少し前傾させると動きがスムーズになる。さらに前傾の角度を深くしてみると、速度が上がるが、後ろに脚が跳ね上がる動きになる。

この松田さんの走りを三田さん自ら動画で撮影し、スタジオに戻ってモニターで再生しながらチェックする。

三田 身体を前傾させることで、着地の瞬間に体重が足に乗っている走りになっているのがわかりますか? 今までの走りと大きくちがうと思います。速度を上げると脚が後ろに跳ね上がりますが、これはちょっと空振りというか、推進力が後ろに逃げています。楽に推進力が生まれるちょうどいい前傾の角度を探っていきましょう。

さらに2回、外で走っては動画で走りをチェック。だんだん動きがスムーズになってきた。

重心移動で前に進む感覚を覚えた後、実際に外を走って・動画でチェック。これをくり返すうちに、松田さんの走りが身体の沈み込みが少ないスムーズな動きになる瞬間が増えてきた ⒸMasaru Furuya

三田 この脚力を使わず、重心移動で前へ進む走り方は、陸上選手でもトライアスリートでもより速く走るためにとても重要です。この走り方を続けていると、脚の筋肉ではなく、身体がバネになって走っている感じがわかってくると思います。

松田 脚の負担が小さくなったのは感覚的にわかります。

ここで三田さんは早稲田大学の後輩でマラソンの日本記録保持者、大迫傑選手の走りを動画で見せながら、動きを解説。

三田 着地したとき、すでに上体が足より前にあるのがわかりますか? 足を前に出しているという感覚ではなく、上体が前にあるので自然と足が前に出るんです。

ⒸMasaru Furuya

大腿部ではなく臀部を使って走る

重心移動で前へ進む動きがわかってきたところで、今度は大腿部ではなく臀部の筋肉を使うことを意識して走ってみることに。着地の瞬間に大腿部で支えるとブレーキがかかってしまうが、臀部で支えると、それが前に進む力になる。

まず、壁に手をついて片脚を上げ、床に足を着いた側の臀部に力が入っているかをチェック(写真下)。最初は臀部に力が入らず、大腿部で身体を支えていたが、意識して臀部に力を入れてみる。

ⒸMasaru Furuya

松田 臀筋に力が入っていないというのはこういう感覚なんですね。意識しないと腿で支えてしまう。

三田 でも、意識してすぐ力を入れられるということは、ある程度臀部で支えるすり込みができているということです。

松田 走るときに臀部を使えるようになるには、どうしたらいいでしょうか?

三田 臀部に刺激を入れるドリルがありますから、これをやってから走るといいでしょう。

臀部に刺激を入れるドリル。
刺激を入れた後、すぐに走る

まずウエイト(今回は重さ1~3㎏のボール)を両手で持ち、片脚を台に乗せ、
もう片ほうの脚をゆっくり上げて台の上に立ち、3秒キープ。

ウエイト(今回は重さ1~3㎏のボール)を両手で持ち、片脚を台に乗せる ⒸMasaru Furuya

台に乗せたほうのヒザが、足先より前に出さないように注意しつつ・・・ ⒸMasaru Furuya

台に乗せていないほうの脚をゆっくり上げて台の上に立ち、3秒キープ ⒸMasaru Furuya

正しく行えば、自然と臀部に力が入るはず ⒸMasaru Furuya

三田 台に乗せたほうのヒザを前に出さないようにするのがポイント。臀筋に自然と力が入ります。

松田 このドリル、キツいですね・・・現役時代に戻ったみたいです。

三田 普通の人は最初力が逃げてしまい、臀部に刺激が入らないんですが、松田さんはここに入れようとすると、ちゃんと入る。さすがです。

このドリルを左右10回ずつ繰り返してから走る。

さらに、ドリル→ランをもう一度繰り返すと、松田さんの走りの動きが良くなってきた。

三田 まだ着地の瞬間に腰が落ちて身体が沈み込みますが、臀筋を使ってさらに腰を高く保てるようになれば解決します。この身体の沈み込みはさっき練習した脚の動きとは別の問題です。

最初どこかひとつの筋肉に負担がかかり、それをかばっているうちに別のところを傷めるといった連鎖が起き、長く走るとケガにつながりますから、意識的に直していきましょう。

松田 沈み込みを防ぐにはどうしたらいいでしょうか?

三田 ドリルとランのトレーニングで腰高の動きをつくっていくことです。この課題を克服すれば、トレーニングの量を増やさなくても(佐渡Bのラン21.1㎞で)20分は短縮できますよ。

トレッドミルのタバタ式ラントレに傾斜を加えると効果的

三田 お忙しい中で、最近はどんなトレーニングをしていますか?

松田 世界水泳の解説で韓国に滞在していたんですが、トレッドミルでタバタ式トレーニング(※20秒間の高強度運動と、10秒間のレストまたは軽い運動を1ラウンドとして、それを8ラウンド繰り返す)をしていました。

ウォーミングアップとして10㎞/hで10分間ジョグしてから、18㎞/hで10〜20秒を10セット(レスト各10秒)。これを何回かやりました。スイムもバイクもメインはタバタ式です。

8月10日〜20日はジュニアの世界選手権(競泳)の取材でハンガリーに滞在しますから、出張中は、またホテルのジムでトレッドミルを使ったトレーニングをやることになりそうです。

三田 トレッドミルを使う場合、お勧めは7%くらい傾斜をつけることです。これで自然と臀筋を使う走りができます。高強度トレーニングは別にタバタ式でやるとして、この傾斜トレーニングの強度は中程度でOKです。

ⒸMasaru Furuya

さっきやったようなボールを使った臀筋ドリルも続け、走るときに身体を意識的に少し前傾させていれば、走りは良くなると思います。

佐渡大会の前、最後の1週間は傾斜トレーニングをやめて調整したほうがいいでしょう。臀部ドリルはやってもいいですが。

動画でチェックしながら走りを改善

三田 今日は「効率的な走り」とはどういうものか、発見があったと思いますが、まだ感覚的にしっくりこないかもしれませんね。

松田 前傾も傾き過ぎてはいけないということはわかりましたが、良い姿勢で走れるようになるには、まだ前傾を探っていく必要がありそうです。

三田 後ろの蹴りが大きくなるのは傾き過ぎです。動画を撮ってもらい、チェックしながら角度を探っていくと効果的だと思います。

ⒸMasaru Furuya

あと、トレーニングの動きをレースでやるのはキツいですから、タバタ式で速い動ができるようにしていくといいでしょう。

追い込むためのタバタ式トレーニングはバイクでやって、ランのタバタ式は速い動きの練習のためにやるという使い分けをする。本数は10本ではなく2〜3本で十分です。

これも動画を撮って、速くて・良い動きができているかチェックしましょう。松田さんは動きの再現能力が高いので、一般の人より早く動きを身につけられると思います。

それから、臀部の筋肉を使うクセをつけると、バイクにも効果があるとおっしゃるトライアスリートの方もいます。可能ならバイクトレーニングの後、臀部ドリルで刺激を入れてランニングをすると、より実戦的な良い動きができるようになると思います。

臀部に刺激を入れるドリルの別バリエーションもお教えしますので、ぜひ実践してみてください。

ⒸMasaru Furuya

臀部刺激ドリルの別バージョン

その1【臀部に刺激を入れて脚の入れ替え】

▼ウエイトボールを持ち上げ
▼上体を右に傾けて
▼右脚を上げ
▼上げている脚をすばやく左→右→左と入れ替える

ⒸMasaru Furuya

これを左右交互に行う。上体を傾けて脚を上げることで、臀部に力を入れないと立っていられない状態をつくり、左右交互に脚を上げることで、臀部を使うランの動きが再現できる。

その2【台を使わず臀部に刺激入れ】

▼バスケットボールを両手で持ち
▼片ほうの脚を一度上げてから

ⒸMasaru Furuya

▼上げたほうの脚を、めいっぱい後ろに引き

ⒸMasaru Furuya

▼腰をしっかり沈めて上体を前傾

ⒸMasaru Furuya

▼前に残した軸脚のヒザが前に出ないよう気をつけながら、後ろに引いた脚をゆっくり前へ移動し
元の位置(最初の写真の状態)まで脚を上げる

これも左右交互に行う。軸脚側の臀部の筋肉に力が入ることを確認しながら行おう。

>>>♯04「セッティング✕努力でタイムを稼ぐ「バイク」対策」へつづく

近日公開!
次回以降の予告
♯04 セッティング✕努力でタイムを稼ぐ「バイク」対策
ポジションの見直し・調整、ペダリング技術の改善で、短期的にバイクパートでのタイム短縮を狙うべく、トライアスリートへのバイクフィッテイングからトレーニング指導までを展開する「Endurelife(エンデュアライフ)」へ。

講師:松田航介さん(バイクフィッター/自身もインカレなどで活躍したトライアスリートで、現在はバイク機材フィッティングからパーソナルコーチングまでを手がける)

♯05 そして、佐渡でいかに闘ったか?
9月1日 佐渡国際トライアスロン(新潟)参戦リポート。松田さんがリアルに挑んだ「自分超え」プロジェクト、その結末やいかに?

「勝ち飯®」アンバサダー松田丈志さんの取り組みは、AJINOMOTO®✕SPORTSサイトでチェック!

<VOL.1>目標設定!!
https://sports.ajinomoto.co.jp/topics/26/post_29.html

<VOL.2>海外滞在中の食事
https://sports.ajinomoto.co.jp/topics/09/_vol2.html

<VOL.3>トレーニング時の補食の摂り方
https://sports.ajinomoto.co.jp/topics/21/_vol3.html

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