効率的・効果的に強くなるブリックトレーニングの理由と方法
トライアスロンは姿勢や動きの異なる種目を続けて行う複合型スポーツだ。種目が変わるたびに、独特の疲労や動きにくさが加わる。
これを軽減するには、複数の種目を連続して行う「ブリックトレーニング」が効果的であり、多くのアスリートが実践している。
そこで20年の選手経験を生かして多くのアスリートに実践的指導を行っている山本淳一さんに、初心者にもできるブリックトレーニングのノウハウを教えてもらった。
>>前回コラム トライアスロン、はじめの一歩〈5〉ODレース対策《オープンウォータースイム(OWS)編》 を読む
デビュー戦からしっかり戦うために
初心者にも「ブリックトレーニング」がオススメ
ブリックトレーニングは「スイム→バイク」、「バイク→ラン」など、複数の種目を続けて行うトレーニングです。朝スイム+夜ランのように、休憩をはさんで1日に複数種目を行う2部練習と違い、異なる種目の練習を続けて行います。
トライアスロンはスイム→バイク→ランと、姿勢や動きが異なる種目を続けて行うスポーツですが、種目が変わるたびに単体種目とは違う独特の疲労、動きにくさを感じます。この種目の切り替えを普段のトレーニングで行うことで、本番での切り替えに慣れ、よりスムーズなレースができるようになるのが、ブリックトレーニングのメリットです。
もうひとつのメリットは、同じ時間でより効率的・効果的なトレーニングができること。たとえば1時間ずつ2日間トレーニングする場合、1日目にバイク1時間、2日目にラン1時間やるより、30分ずつのバイク→ランを2日間やったほうが、姿勢・動きが変わるしんどさが加わる分、中身の濃い練習ができます。
私が見ているかぎりでは、初心者でもデビュー戦から良いレースができる人はブリックトレーニングを実践している人が多いようです。
最初は「バイク15分→ラン15分」など
できる長さ・ペースから始めよう
ブリックトレーニングは1種目ずつの練習よりハードですから、初心者はスローペースでもOK。できるところから始めましょう。時間も最初は短くてもかまいません。たとえばバイク30分→ラン30分が無理ならバイク15分→ラン15分でもいいでしょう。それが無理ならラン3~5分でもOK。ゼロよりはましです。
バイクとランの比率は1:1でなくてもかまいません。バイクの後のランはしんどいですから、バイク4:ラン1くらいのほうがやりやすいでしょう。
バイクの後に走るのが無理なら、最初は歩いてもかまいません。歩いているうちに少しずつ走れる身体ができてきて、ゆっくりでも走れるようになりますから、ランを10分→20分→30分・・・と伸ばしていきましょう。できるところから段階を踏んで慣れていくことが大切です。
スイム→バイクは環境が整っていないと難しいでしょう。泳いだ後に脚を動かすトレーニングとして、スイム→ランも効果がありますが、プールサイドを走るのは危険ですから、その場合はプールのウォーキングエリアを歩いてもいいでしょう。水の抵抗がある分、良いトレーニングになると思います。
得意種目に偏らず、環境に合わせてできることをやることが大切です。
★「バイク→ラン」ブリックトレーニングのイメージ
慣れてきたら
「良い動き」を探っていく
ブリックトレーニングに慣れてきたら、自分の動きを意識しながらトレーニングしましょう。
トライアスロンのランはランニング単体の走りと身体の使い方が違ってきます。理想はランニング単体のフォームですが、スイム・バイクで疲れていますから、同じ動きはできません。その疲れた状態でいかにうまく走るかがトライアスロンの大きなポイントです。
このトライアスロンにおける「良い動き」を確立していくことができるのも、ブリックトレーニングの大きなメリットと言えます。
たとえばバイク→ランの短いブリックトレーニングを繰り返し、バイクの回転、ランのピッチを変えてタイムを計ってみましょう。回転、ピッチを上げたときに、タイムが上がったら、そのほうがトライアスロンに合っているということです。
ランはピッチだけでなく、ストライドや腕振り、脚の上げ方、腰の位置、筋肉の使い方なども意識しましょう。特に身体の前側の筋肉より後ろ側の筋肉を使えているかどうかが重要です。
どんな動きをしたときに、楽に走れてタイムが上がるかを、毎回タイムをとりながらチェックしていきます。フォームをチェックするのは主観的な感覚ですが、タイムを計ることでそれが客観的に合っているか確認することができます。
繰り返しているうちに、自分なりの良いフォームというのがわかってきます。それはランニング単体種目のようにダイナミックでもカッコ良くもないかもしれませんが、スイム・バイクで疲れた状態では、それがトライアスロンにおける良いフォームなのです。
レースとブリックトレーニングを繰り返し
さらにフォームを磨いていく
ブリックトレーニングでフォームをチェックしておくと、本番のレースで疲れて動きが悪くなってきたとき、自分なりに修正することができます。トライアスロンの初心者は、ランで疲れて腰が落ちたり、脚が上がらなくなったりしがちです。
ブリックトレーニングでこれを経験している人は、苦しくなったときに一つひとつのチェックポイントを意識して、ある程度対応することができるでしょう。
もちろん初心者の場合、スイム→ラン、バイク→ランのトレーニングをやっていたとしても、レースの距離でのスイム→バイク→ランは疲れ方がまた違いますから、練習のときより対応は難しいでしょう。
このレースでの経験を踏まえて、さらにブリックトレーニングでチェックと改善を繰り返していくことで、トライアスロンにおける走り方を磨いていくことができます。
レースより高強度で練習すると
種目の切り替えに余裕が生まれる
ブリックトレーニングに慣れてくると、セット数を増やすことができるようになりますし、強度も上げることができるようになります。慣れてきたら、ブリックトレーニングにも変化をつけましょう。
レースまで期間があるなら、まずあまり強度を上げずに1セットを長くし、レースが近くなってきたらレースより高い強度で行うと効果的です。1セットは短くても、レースより高い強度で繰り返すと、レースで余裕をもって種目の切り替えができるようになります。
ブリックトレーニングに慣れるということは、レースに慣れることでもありますから、レースのダメージも少なくなり、レース後の回復も速くなります。
また、ブリックトレーニングにはトランジション(3種目の切り替え)がスムーズに行えるようになるというメリットもあります。ブリックトレーニングを繰り返していくことで、素早い種目切り替えのための動線やグッズの置き方などもわかってきますから、レースで慌てず、ロスの少ないトランジションができるようになります。
>>>トランジション対策についてはアミノバイタル® for Triathlete #25参照
レースのシミュレーションにもなる、ブリックトレーニングでのアミノ酸補給。
ブリックトレーニングではアミノ酸の補給も重要です。トレーニングによるダメージを軽減するためだけでなく、どのタイミングでどうアミノ酸をとるかが、レースのシミュレーションになります。
お勧めしたいのは、レース本番同様、まずブリックトレーニングの前に、運動中に必要なアミノ酸補給ができる青いパッケージのアミノバイタル® プロ® や、アミノバイタル® アミノショット®、またはエネルギー源アミノ酸(アラニン+プロリン)と糖質を含んだ赤いパッケージのアミノバイタル® パーフェクトエネルギー®、「アミノバイタル® アミノショット®」パーフェクトエネルギー®(両方でも可)を摂り、
トレーニング中にはショットタイプのアミノバイタル® アミノショット®、「アミノバイタル® アミノショット®」パーフェクトエネルギー®を摂ること。
さらにトレーニング後にはゴールドパッケージのアミノバイタル® GOLDを飲むとダメージからのリカバーを助け、次のトレーニングにつながるアミノ酸補給ができます。
より実戦に近いブリック練のときこそ、ショットタイプを使いたい
トレーニング中に飲むショットタイプは、レース本番同様バイクに貼る、ウエアに入れる、ゼッケンベルトにつけるなど、色々な携行方法のうちから最適なものを選びましょう。それぞれ摂るときの動作が違いますから、本番を意識して練習しましょう。
問題はブリックトレーニング中にアミノバイタル®を何本、どのタイミングで飲むかです。一般的にビギナーほどレースでアミノ酸は多く摂ったほうがいいでしょうから、バイクに乗りながら飲むのはもちろん、ランでも飲む練習をしておく必要があります。
ブリックトレーニングのバイク・ランそれぞれに、飲む本数とタイミングを色々変えながら飲んでみて、翌日の感覚や指標となる客観的データ(体温、安静時心拍、体重、尿の色など)の違いを意識して確認しましょう。それによって何本、どのタイミングで飲むのが自分に合っているのか、わかってくるはずです。
■プロフィール
山本淳一(やまもと・じゅんいち)
1996年よりナショナルチームへ入り、トライアスリートとして20年近く競技活動に励む。現在は、初心者からトップアスリートまで幅広く指導。都内を中心にトライアスロン愛好者のチームや、東京女子体育大学トライアスロン部のコーチとして活躍しながら、自らもエイジグループ・カテゴリーでレースに出場。この4月に開催された石垣島トライアスロンでは総合優勝を果たしている。
―― 過去のコラムを読む
トライアスロン、はじめの一歩。Supported by アミノバイタル®
>>〈1〉トライアスロン、はじめの一歩。その前に知っておきたいコト
>>〈5〉ODレース対策《オープンウォータースイム(OWS)編》
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