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【オフシーズンのモチベーションコントロール】森下健のメントレ!#002後編

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ルミナ編集部

text by:

©Kenta Onoguchi

>>トライアスリートのためのメンタルトレーニングVol.02 後編

サニーフィッシュ」の選手をはじめ、多くのトップアスリートやビジネスパーソンを指導するメンタルトレーニングコーチの森下健さんが、心の鍛え方について語る連載コラム。スイムコーチとしての経験ももつ森下さんが、どんなレースも乗り越えることができる「折れない心の作り方」について伝授してくれる。

『Triathlon Lumina#98』に関連記事あり。

>>前編はコチラ

モチベーションの質を高めるためのトレーニング

前編は、モチベーションの種類とそれによるメリットとデメリットについてお伝えさせていただきました。

結果や評価という外発的モチベーションで取り組んでいくよりも、競技自体を楽しむこと、成長するための努力やチャレンジ(プロセス)を楽しむ内発的モチベーションで取り組むことが、良いパフォーマンスを引き出し、競技を継続していくことにつながっていきます。

では、後編は内発的モチベーションを高めるためにどんなトレーニングをすれば良いのかをご紹介します。

答えはズバリ「目標設定」です。皆さんもトライアスロンだけでなく、仕事や日常のさまざまな場面で目標を立てていると思います。ですが、なんとなく立ててしまったり、立てて満足してそのままになってしまったりはしていませんか?

目標設定はモチベーションの質を高めるための心理的スキルです。“スキル”ですので継続してトレーニングしていく必要があります。逆を言えばトレーニングを続けることによってスキルは高まり、モチベーションをコントロールできるようになるということです。

まずは、こちらの【迷路1】を見てみてください。

【迷路1】

スタートを現在の自分、ゴールを目指したい夢や目標と置き換えたとして、スタートからゴールまでたどり着けるでしょうか。試しに制限時間1分間でゴールまでたどり着けるかどうかチャレンジしてみてください。

迷路に入ると、進んでいく途中で行き止まりになり、戻ってきて違う道に行ったものの、また行き止まりになり……、中には途中でもう辞めたと諦めてしまった方もいるのではないでしょうか。

では、次に【迷路2】をやってみてください。【迷路1】と全く同じ迷路ですが、ご覧の通りゴールまでに向かう道のりに”小さな矢印”が入っています。

【迷路2】

当然、【迷路1】よりも【迷路2】のほうが迷わず、スピーディーにゴールまで辿りつけましたよね。他にも、スタートしてから1つ目の矢印、2つ目の矢印と辿っていくうちに「これならゴールまでいけるかもしれない」という気持ちが出てきたかと思います。

この「できるかもしれない」という気持ちが、内発的モチベーションが高まった証拠です。

そして、皆さんすでにお気づきかと思いますが、この小さな矢印こそが「目標設定」です。たとえば「コナ(アイアンマン世界選手権)に出場したい」という長期的な目標(ゴール)をもっていたとします。

「コナに出場する」というゴールから逆算をして、そのためには何が必要で、どうすればいいのか、という小さな矢印を埋めていくことで、「目の前の目標を達成し続ければコナに出場できるぞ!」と思えるようになっていきます。

仮に目標設定(小さな矢印)をしたときに、「できそうだ!」「早くやってみたい!」と思えなければその目標設定は失敗です。

「できそうだ!」と思えるようにやり直し、もっと細分化して落とし込むことや情報を集めること、ときには下方修正することで、達成できるイメージを作っていくことが大切です。

実際にはこのようなシートを使って目標設定をしていきます。

【目標設定シート①】

結果目標というのは「オリンピックで金メダル」「コナ出場」「アイアンマンでサブ10」というような結果に対しての目標です。

「プロセス目標」は結果目標を達成するためには何をすれば良いのか、具体的な方法やプランになります。

たとえば結果目標が「コナ出場」であれば、プロセス目標は「スイムで◯分で泳げるように、◯◯を練習する」といった形で、それを達成すれば、おのずと結果も達成できるという関係性を意識して立てていくことが大切です。

さて、まずは「夢のような目標」の結果目標を埋めて、それを何年後に達成したいのかを考えてみてください。

次に「夢のような目標」を達成するためには何年後にどうなっていたら良いのかを考え、その下の「◯年後の目標」を埋めていきます。それと同じ要領で今日の目標まで落とし込んでいきましょう。

すべて埋まったら、次に夢のようなプロセス目標に取り掛かります。同様に、上から順に落とし込んでいきます。

最初はスムーズに書けない方もいらっしゃるはずです。もしくは全く書けない方もいるかもしれません。最初はそれでも問題ありません。

「自分のことなのに書けない」ということに気づけただけでも大きな一歩です。目標設定はトレーニングなので、何回も書いて、確認していくうちに次第にスラスラと書けるようになっていきます。

そして、スラスラと書けるようになった頃には、常に「今すべきことは何か」が頭に入っている状態になるので、目標達成に必要な思考と行動をしやすくなるのです。

心理面のサポートをしているサニーフィッシュの選手たちにはこちらの目標設定シートの他にも、さらに具体化した目標設定シートを書いてもらっています。

【目標設定シート②】

こちらのシートを毎日記入してもらい、今日の目標を明確にすることでトレーニングの質の向上につながります。練習後は目標の達成度や、その日の練習のgood(良かったこと)、more(もっとできたこと)、next(次にどうするか)を振り返っています。

朝起きることが大変だったり、練習がキツかったりして楽なほうへ流されてしまいたくなるようなときもあると思いますが、そんなときこそ目標設定シートを書いて振り返ってみてください。

「これを頑張れば目標に近づける! 自分ならできる!」と思えれば、モチベーションや集中力がグンと高まります。

毎日書くことは面倒かもしれませんが、練習の質は大きく向上しますのでだまされたと思ってぜひやってみてください!

>>月1回程度不定期連載


森下 健 Ken Morishita
学生時代は競泳選手として活躍。引退後は水泳指導者として多くの人を指導する中で、自身の「ここぞという試合で勝てない」という経験からメンタルトレーニングに興味をもち、応用スポーツ心理学を学ぶ。2013年、細田雄一選手のサポートをきっかけにトライアスロンに出会い、自身もレースに出場。2020年よりサニーフィッシュで水泳コーチ兼メンタルトレーニングコーチとしてメンタルトレーニングを実施。スポーツの他、企業や学校などさまざまな分野でメンタルトレーニング講演会や心理面のサポートを行う。

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