連載「アイアンマンいどみました。」
「下から目線」でお届けする、アイアンマン初挑戦・完走への道⑥
アイアンマンは、ミドルまでのトライアスロンとは別物。何が違うのか?★レース本番編
さぁ、いよいよ、レース本番におけるミドルまでとアイアンマンの違いの話です。
★寒い朝にスタートし、暑い日中を越えて、寒い夜にフィニッシュする。
レース本番こそが、違いがはっきりしてくるのがアイアンマン。大抵のトライアスロンは、寒い朝にスタートしたとしても暑い日中に終わります。それに対して、アイアンマン初心者のランは、日没後の行い。「寒い、暑い、寒い」と、気温の変化を二度経験するのは、アイアンマンならではで、その対策が重要になってきます。
バイクで疲弊しきっている身体に、42kmの追い打ちをかけるわけですから、低体温症になってしまわないよう、着脱調整可能な防寒具の用意をして、13時間目、14時間目の運動に備えたいです。
でも、実は、しっかり対策さえすれば、暑い時間に走らなくてはならないミドルよりも、アイアンマンのランの方が、涼しくて楽な側面もあると言えるかも。
★補給というより、もはや食事。
51.5だったら、文字通りの補給(不足した分を補う)のみで完走できます。でもアイアンマンは、補給というよりは、しっかりとした食事レベルの摂取をしないと、絶対に完走できません。バイクからランまで、細く長く食事をし続けるイメージです。
摂り過ぎると気持ち悪くなってしまう反面、ランのスタート時に、腹6~7分目程度はおなかに入っていなければならないというバランス感覚が問われ、そういう環境下で自分の胃には何が合うのかを知っておく必要があります。
★排泄が確実にあると覚悟しておく。
ミドルまでなら、トイレに行きたくなっても我慢して終えられるかもしれません。でも、アイアンマンは、我慢できるくらいの時間には終わりません。
★もう限界だ。アイアンマンは、そこからが真のスタート。
これこそが、アイアンマンがミドルまでとは別物と呼ばれる最大の所以とわたくしは思います。ミドルまでは、脚を使い果たした頃、フィニッシュを迎えられる人が多いと思います。自分の限界までを最大限に使う競技。
それに対してアイアンマンは、中盤あたりで自分の限界を超えると思って正解だと思います。そこからが真のスタートです。満身創痍のその肉体で残りどこまでやれるのか? 限界のその先で何ができるのか? そういう戦いになってきます。まさに自分との戦い。
そこで肝に銘じておきたい言葉が、かの「Expect the unexpected. 想定外を想定しておけ」というわけです。
ミドルのレースや、フルマラソンの出場経験がある方にうかがいたいのですが、レース中に起こったことって、大変ではあったけれど、まだまだ想定内ではありませんでしたか? アイアンマンでは、本当に、自分の認識外、許容範囲外のことが起こります。起こらないかもしれませんが、起こると思って臨むべきです。
なんだか、おどかすような話になっていますかね・・・。
え? 逆にワクワクしてきた? こういう文脈でワクワクできるとしたら、紛れもなくアイアンマン気質です。
とは言え、「限界を超えたその先で何ができるか?」そんなものへの挑戦って、一体、何をきっかけにすればいいんだろう? どれだけトレーニングで積み上げればいい?
これはワクワクだけではどうにもならない問題。わたくしも、自問自答し続けてきました。で、思い至ったのが「アイアンマンの、○○に対する○○感がなくなった時が挑戦する時なんだろう」ということ。
・・・ひっぱって恐縮ですが、次回「アイアンマンに挑戦するタイミングって、いつ?」に詳しくお話させてください!
■著者プロフィール
野中秋世(のなか・あきよ)
2001年オープンの老舗ネットショップ店長。三児の父。20歳から35歳まで無運動状態。2010年にトレーニング開始。2011年に独学でオリンピックディスタンス完走。マラソンやOWSを含めて33レース目でアイアンマン完走。タイムは14時間24分。著作に、運動オンチの素人がトライアスリートになるまでを描いた『トライアスロンはじめました。』と、ミドルディスタンス・海外デビュー編の『トライアスロンはまりました。』(共に誠文堂新光社)がある。