連載「アイアンマンいどみました。」
「下から目線」でお届けする、アイアンマン初挑戦・完走への道⑦
「アイアンマンの、○○に対する○○感がなくなった時」が挑戦する時。
前回のコラム(アイアンマンは、ミドルまでとは別物。何が違う?★レース本番編)でお話したとおり、アイアンマンとは、限界を超えたその先で何ができるかが問われるもの。どの程度トレーニングで積み上げれば、そんなものへ挑戦すればいいんだろうか? いつがそのタイミングなの? 思い返すと、わたくしはずっとそのことを考えていました。
これはあくまで、野中の結論付けなのですが、アイアンマンに挑戦する時というのは、「アイアンマンの、距離に対する違和感がなくなった時」ではないかと思います。
51.5への挑戦を決意したあの頃、アイアンマンは3.8km泳ぐという事実を知っては腰を抜かし、自転車180kmて、車でもしんどい!・・・そのあとフルマラソン? 頭が真っ白でした。
それが、コツコツと長い時間、長い距離のトレーニングをこなし続けていると、3.8kmが、180kmが、42kmが、いつも頭の片隅にあって非常識な数値とは感じなくなります。文字通り違和感がなくなってくる。あぁ、自分がやろうとしているものは、そういうものなんだろうと。そう思えた時こそが、アイアンマンへの挑戦を決める時なんです。覚悟が決まる、もっとかっこよく言うと、悟るという感覚ですね。
もちろん、レース本番の緊張感の中、3つを連続でやるとなると、トレーニングで拭い去った違和感が再び襲ってくるかもしれません。いや、襲ってきます。あの時の悟りはなんだったの? 完走できるかどうかなんて分かりません。でも、完走できるかどうか分からないからこそ、挑戦なんですよね。
アイアンマンには、やってみて初めて課題が分かるという側面がありますし、アイアンマンほど失敗が次に活きるスポーツはありません。もしそれで完走できたら最高ですし、完走できなくても、間違いなく次への糧となります。
出ると決めたら、最初にする意外なコトって?
覚悟を決めたら最初にやること。それは、ちょっと意外かもしれませんが、スポーツ医学やスポーツ救急医学の本を精読すること。そして、健康診断や人間ドックで全身をチェックすることです。もし心臓や脳など、少しでも不安を感じる部位がある場合、それに特化したメディカルチェックを受けましょう。それでいよいよ挑戦です。トライアスロンってそういうものですし、限界を超えたその先で何ができるかが問われるのがアイアンマンだとしたら、自分を守れるのは、最終的には自分だけなんですから。
アイアンマンのレース会場は、気持ちいいほどにリラックスな雰囲気です。そして、みんな自信に満ち溢れている面持ち。それにのまれることなく加わり、共に心から楽しむためには、トレーニングやコンディショニングをした上で臨むのはもちろんのこと、スポーツ医学の知識も携えるべきと思います。JTUの「メディカル・アンチドーピング委員会からのご案内」も、定期的にチェックしましょう。
「アイアンマンに出るの? へぇ~スゴイねぇ。心電図まったく問題なし。楽しんでらっしゃい」これは、地元の循環器内科の先生に、レース直前に言ってもらえたセリフ。みなさんの地元の先生も、同じように頼もしい声かけをしてくれる人だといいですね。
>次回の「やったことしかできないのがアイアンマン。」はこちらから
■著者プロフィール
野中秋世(のなか・あきよ)
2001年オープンの老舗ネットショップ店長。三児の父。20歳から35歳まで無運動状態。2010年にトレーニング開始。2011年に独学でオリンピックディスタンス完走。マラソンやOWSを含めて33レース目でアイアンマン完走。タイムは14時間24分。著作に、運動オンチの素人がトライアスリートになるまでを描いた『トライアスロンはじめました。』と、ミドルディスタンス・海外デビュー編の『トライアスロンはまりました。』(共に誠文堂新光社)がある。