連載「アイアンマンいどみました。」
「下から目線」でお届けする、アイアンマン初挑戦・完走への道⑧
この4枚の写真が意味するものは?「やったことしかできないのがアイアンマン」
前回の「アイアンマンに挑戦するタイミングって、いつ?」はこちらから
2017年トライアスロンシーズンも終盤戦ですね。わたくしにとっては7シーズン目。話は少し遡るのですが、今年は原点回帰からのスタートでした。
もし「初の失敗レースは?」と聞かれたら、レース中に脚を痛めて散々だった2011年の青梅マラソンがまず思い浮かぶのですが、今年、6年ぶりに、あのアップダウン激しい30kmを走りまして、20分も記録更新しました。リベンジは果たした。
初フルマラソンだった2012年の東京マラソン。今年、5年ぶりに当選して走り、フルの自己ベストを更新しました。3時間56分。
何が自信になったって、30代の自分に40代の自分が勝ったということもありますが、このふたつを2週連続でこなせたということが大きい。あの頃は、絶対にできなかった。それができるくらいまで、ここ7年やってきたんだと万感の思いです。
その青梅マラソン参戦時の話なのですが、アイアンマン・ケアンズで知り合い、レースを共に過ごしたハリ天ご夫妻が、青梅在住ということで前泊させていただきました。ケアンズ最終日に「次回は青梅マラソンで再会するしかない!」と、勝手にひとりで思っていたのが叶いまして、しかも宿泊まで!
素敵なおうちに足を踏み入れると、目に飛び込んできたのは4枚の写真。
トライアスリートならば、何枚かは持っているであろうフィニッシュの写真です。でも、いつ、どこで撮られたかを聞いたら、これがいかに特別なものかが分かります。
時は、すべて2015年。
場所は、宮古島。福江島。皆生。佐渡。
鳥肌が立ったとしたら、トライアスロンを知っている人ですね! その通りです。日本の4大ロングディスタンスを1シーズン中にすべて完走という偉業を達成した写真なんです! 4月、6月、7月、9月にロングを立て続けに完走し、この年、ハリ天さんは、60~64歳のJTUロングディスタンスエイジランキング1位。そして、これも考えれば考えるほどすごいことなのですが、すべて応援の奥様と同伴フィニッシュ。
4回目のコラムで、アイアンマン(ロングディスタンス)は、1年に1~2回が限度、というお話をしました。40代野中にとっては、それはまぎれもない実感ですし、多くの人にとってもそのはず。でも60代ハリ天さんには、まったくあてはまらない。
「やったことしかできないのがトライアスロン」という白戸太朗さんから頂いた金言を、アイアンマンを始めてから思い返す機会が多いです。アイアンマンは、やったことしか絶対にできないよなぁ。ハリ天さんの家には、他にも、見たこともない量のフィニッシャーメダルや数々の入賞メダル、使うのが畏れ多い日本のトライアスロン黎明期のタオルに、第2回宮古島トライアスロンに出場した時の映像等々、ここでは書ききれないほどの「やったこと」を証明するアイテムがありました。ここまでやってきたからこそ、今、できているんだよなぁ。なんて輝いている60代だろう。
アイアンマンの世界には、ちょっと類を見ない驚愕エピソードや、フィクションのような武勇伝の持ち主が多いです。そういう方々とお友達になれるというのは、本当に光栄なことだし、人生において大いなる刺激をもらえます。ハリ天ご夫妻こそが、僕ら野中夫婦にとっての将来の理想像だと、わたくしは直感したのですが、そんな特別中の特別な出会いがアイアンマントリップ中にきっとあるはず。海外にまでアイアンマンやりに行っちゃう人達が集まっているわけですし、彼の地では日本選手団的な連帯感で仲良くなれますから。ぜひ積極的に話しかけてみてください。
これを読んでいる皆さんにも、アイアンマンで素敵な出会いがありますように!
>次回の「下から目線」でお届けする、アイアンマン初挑戦・完走への道⑨「セミロングディスタンストライアスロン?」はこちらから
■著者プロフィール
野中秋世(のなか・あきよ)
2001年オープンの老舗ネットショップ店長。三児の父。20歳から35歳まで無運動状態。2010年にトレーニング開始。2011年に独学でオリンピックディスタンス完走。マラソンやOWSを含めて33レース目でアイアンマン完走。タイムは14時間24分。著作に、運動オンチの素人がトライアスリートになるまでを描いた『トライアスロンはじめました。』と、ミドルディスタンス・海外デビュー編の『トライアスロンはまりました。』(共に誠文堂新光社)がある。