リフ、自身のコース記録更新し、史上2人目の4連覇を達成
取材・文=東海林美佳
写真=小野口健太
アイアンマン世界選手権(以下、KONA)は、女子も男子のレースと同様、サラ・トゥルー、アンネ・ハウグらITUの実力者の初参戦が今年の特徴だ。
特にトゥルーは欧州選手権として実力者が集まるフランクフルトでIMデビューを果たし2位という実績。また、昨年デビューしていきなり2位に輝いた新鋭ルーシー・チャールズが今年どこまでダニエラ・リフの牙城に迫れるかにも注目が集まった。
女子のスイムは昨年同様チャールズの独壇場。後続に4分近い大差をつける48:43の新記録でスイムアップ。2位集団はトゥルー、リズ・ブラッチフォードら4人。リフはクラゲに刺されダメージを負い、チャールズから9分12秒遅れでアップ。1年の産休を経て復帰したミリンダ・カーフレー、そして実力者のヘザー・ジャクソンはリフの少し後ろ、13位&14位でスイムアップ。
バイクレグではチャールズが序盤から飛ばし逃げを図る。4分だった2位との差が30kmで7分半、50kmでは8分半近くまで広がる。リフはクラゲに刺された痛みもあり、序盤はなかなかペースが上がらなかったが、それでもジリジリと順位を上げていく。昨年3位のサラ・クロウリーも上位へ上がり、67km地点のチェックポイントでは2位に浮上。
前半はリフとクロウリーがふたりでチャールズを追いかける展開に。しかしなかなか差が縮まらない。ハヴィの折り返し後からリフがさらにスピードアップ。クロウリーを置き去りにして、追撃モードに入る。
1分、また1分とチャールズとの差を縮めていったリフは、160km過ぎにとうとう追いつき追い越し、バイクレグが終わるまでには1分半の差をつけてフィニッシュ。
後方ではジャクソンが10位、カーフレーが13位でバイクフィニッシュ。トップ、2位はともかく、ランの出来次第ではふたりとも表彰台を狙える位置にいる。
すでに前には誰もいない状態で走り出したコナ三冠女王リフ。距離をすすめるごとにチャールズをジリジリと引き離していく。チャールズも失速せず走り続けるが、リフに近づくことはできず、ふたりとも単独走のままゴールへ。リフは自身の持つコース記録を更新して史上2人目の4連覇を達成。ゴールランプにたどり着いたリフが、かつてないほど喜びを爆発させていたのが印象的だった。
一方、10分以上の差をつけられ、昨年と同じ2位でゴールしたチャールズだが、ゴールの表情は笑顔。リフと抱き合い、なぜかずっとおしゃべりしていたのが印象的だった。
後方では表彰台の最後の一席を争う戦いが激化していた。4位でスタートしたクロウリーは一度は3位まで上がるも15km以降徐々に後退。17kmでITU出身のトゥルーが、20km過ぎで同じく元ITU選手のハウグがクロウリーを抜いていく。また、カーフレーの脚は健在で、35km付近で5位まで浮上する。
ITUデビュー組対決となった3位の座は、終盤まで快調な走りを保ったハウグに軍配。デビュー戦で表彰台を獲得し、ポテンシャルを見せつけた。
トゥルーは4位でゴール。フィニッシュラインでは倒れこみそうなほど疲労困憊。そしてカーフレーは5位でゴール。表彰台争いには絡めなかったものの、産休明けでもなお、その強さを証明した。
ダニエラ・リフ
コースレコードを出せたのはルーシーのおかげ。
「なんという1日! 今でも信じられません。自分でも驚いています。スイムでは序盤でクラゲに両腕を刺されてその痛みと戦いながらの3.8kmでした。もうレースを放棄しようかとも思ったけれど、4連覇がかかっているレースを簡単に諦める自分を後で許せなくなるだろうと思って続けました。最初は悪くても、続ければきっと良くなると信じて。アイアンマンレースってそういう側面がもともとありますよね。とにかく言葉になりません。コースレコードはルーシー(チャールズ)のおかげ。彼女を必死に追いかけたから出たんです。彼女にも感謝。そして彼女のレースぶりも素晴らしかった」
プロ女子上位
順位/総合タイム/名前
1 8:26:16 Daniela Ryf
2 8:36:32 Lucy Charles
3 8:41:57 Anne Haug
4 8:43:42 Sarah True
5 8:50:44 Miranda Carfrae
6 8:52:29 Sarah Crowley
7 8:54:26 Kaisa Sali
8 8:57:34 Angela Naeth
9 8:57:54 Corinne Abraham
10 8:58:57 Linsey Corbin