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山本光宏さんに訊く! ミドル&ロングでの「実戦対策&トレーニング」 《チームVAAMシーズン4》

投稿日:2019年6月7日 更新日:


ルミナ編集部

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チームVAAM、レジェンド山本光宏さんに学ぶ。〈後編〉

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チームVAAMのメンバーたちが、日本トライアスロン界のレジェンド山本光宏さんに訊く、ミドル&ロングをめぐるQ&Aコラム。後半は実戦でのトラブル対策や、ミドル以上を意識したトレーニングについて。

チームVAAMからのQ
「バイク後半の足つりを防ぐには?」

■バイクの後半でよく内転筋や大腿四頭筋をつるのですが、パワーをかけすぎなのか、ペダリングが下手なのか、電解質が足りないのか、どういった原因が考えられるでしょうか? 何か改善方法はありますか?レースでは電解質は多めに取るように心がけてるつもりです。(筒井貴之・3期生)

3期生の「つっつー」こと筒井貴之さん。トライアスロン歴8年ほど。トライアスロンに憧れていた原体験が山本光宏さんのエピソードが登場する漫画『10月の満月に一番近い土曜日』だったとか。今年のGW10連休にはアイアンマン・オーストラリアに出場し、完走を果たしている

山本 これももちろん個人差があって、例えば「練習量」によっても全然違って、自転車に乗っている量が少なければ、レースペースで長い距離を走ったら筋肉のトラブルもおこりやすい。

ただ、自分のようにレース前、月間1500㎞くらい乗っていたとしても、レースではやはり痙攣するときは痙攣しているんです。レースでは集中して、かなり高いパフォーマンスを発揮しているので、そうした普段の練習ではおこらないこともおこりがち。ひとつではなく、複数の要因が関係しているかもしれません。

そこをカバーするものとしては、おっしゃるとおり、汗で失われるナトリウムなど電解質の補給も重要ですし、ヒートクランプ(熱痙攣)、つまり筋肉の温度が上がってくると痙攣しやすくなるということもありますので、そういうときにしっかり筋肉を冷やすというのも重要です。エイドで水をかけたり、氷で冷やしたり。また、酸欠やエネルギー源の枯渇でも痙攣の原因につながることがあります。心拍数や呼吸数を無理に上げすぎないこと、補給に意識をおくこともポイントです。

それでも痙攣がおこってしまったときには、トルクをかけるのではなく、回転系のペダリングで切り抜けられるよう練習しておきましょう。

どうしても内側広筋や内転筋あたりはペダリングではよく使いますので、そこがつったときにも、負荷をかけずに回転である程度カバーできるようにしておく。

トライアスリートを指導していると、一般的にトルク系のペダリングの方が多くて、キレイな回転で100~110回転/分くらいの高回転を維持できるような練習をしていない人が多い。

「アウターしばり」(重いギヤでグイグイペダルを踏みトルクをかけ続ける)というと聞こえはいいですが、高回転を維持できないからトルクでカバーする、というのではダメ。むしろ「インナーしばり」で高回転を維持しながら走り続けるほうが難しい。

ミドル~ロングのトライアスリートこそ「補強練習」は大事。

あとは補強で、自分の弱いところを強くしておくというのも大事。一般的に、ウエイトトレーニングなどの補強も、継続的に取り組める方が少ないように感じますが、それぞれの育ってきた環境や、やってきた競技などのバックグラウンド次第で、強いところもあれば、弱いところもあるので、3種目以外で、こうした補強練習をするのはすごく大事だと考えています。

それでもレース中、痙攣してしまったら、急激にストレッチしたり無理に筋肉を伸ばそうとするのではなく、つった個所を軽く手で押さえてあげる。一時的に過緊張しているので、なんとか緩めるようにするといいですね。

また、暑いレースでは、エイドステーションで氷をもらってバイクショーツのポケットや腰あたりに入れておくこともあります。冷たい水がジワジワ下りてくるので、筋温を下げることができて、パフォーマンスには良い影響があると思います。

チームVAAMからのQ
「故障からのレース復帰で気を付けるポイントは?」

■昨年末に鎖骨を折って、まだ十分なトレーニングができていません。ケガからの復帰でこれは大事だった、有効だったというリハビリ内容は?(尾崎 惠子さん・1期生)

1期生の尾崎惠子さんは昨年末に転んで鎖骨を骨折してしまい、それ以来5カ月ほど腕を思い切り使えていない。久しぶりのVAAMチャレンジ参加を励みに、レース復帰を目指す

山本 自分の場合は(プロフィールにもあるとおり)首の骨を折ってしまったことがあります。10月のアイアンマン・ハワイを2カ月後に控えた8月のことで、前年にKONAで17位という自己ベストリザルトを出して、その年はレースナンバー17番、最前列からスタートできたのが、すべて逃げていってしまったので、相当ショックでした。

またゼロからやり直さなければいけなかったんですが、「またレースに出る!」という目標に向けて、きっちり積み上げていくしかなかった。(尾崎さんの場合)またここで鎖骨骨折されたことは残念なことではあるんですが、何かを考えるチャンスだととらえたいですね。

3種目のトレーニング以外にもやることは一杯ある。

もちろん骨折によって動かせなかった個所の可動域を出していくための、リハビリもあると思いますが、セントレアでにレース復帰を目指すのであれば、リハビリでお世話になるトレーナーさんからもいろいろな情報を得て、補強などにも取り組めたらいいですね。あくまでも「安全第一」ですが。

まずは肩の可動域が出ないとレースは厳しいですよね。片手では泳げないので。

いずれにしても、リハビリは気を抜かずに、しっかりやり切ることが大事。中途半端にやってしまうと、また全体のバランスを崩すことにもなりかねないので。

あとは「セントレアに復帰する!」とか、華々しい自分に戻る、といった良いイメージをもつこと。チームVAAM1期生としての誇りを励みに、頑張ってください!

チームVAAMからのQ
「ロング対策として、高強度トレーニングは必要?」

■ロングを目標としているとき、インターバルトレーニング的な高強度練習ってどのくらい必要なのでしょうか? バイクも、ランも、キツいからつい避けてしまいがちなのですが。(今井さん)

山本 トレーニングはトップ選手でも、それぞれに考え方・アプローチが違います。

例えば、私と同じ世代の選手でも、藤原裕司さんという選手がいたのですが、彼はすごく練習量が多い。同じピークを目指すにしても、彼は月にバイク2000㎞、ランで700㎞走ったとか、練習量で自信をつけていくタイプだったんですが、自分はどちらかというと練習量はあんまり多くなかったけれど、その分、質を大事にしました。

パワーを基準に負荷をかけたり、心肺的な負荷を上げていく「ATトレーニング」的なことも大事ですし、絶対的なパワーを高めていくための筋力トレーニングも大事。立法センチメートルあたりの出力(体重割のパワー)というのは、老若男女一緒ですから、それを伸ばしていくというイメージです。

うちの陸上部(TOTO女子陸上競技部)でも体幹を中心とした筋力トレーニングに取り組んでいますが、筋肉自体の出力もそうですし、「力の出し方・タイミング」というのも、その筋トレの中で覚える。

特にロングのバイクでは、ハムストリングスとかヒップなど、力の出し方がわかっていないと、どれだけ良いポジションでも、出力を出し続けることはできないですから。そうしたトレーニングは重要ですよね。

また中殿筋や内転筋群も、着地したときに身体を支えるときに使われる筋肉なんですが、大体皆さんそういうところが弱かったりする。

例えば、ふたり同時に走っていたとして、こうしたところが弱くて身体の押さえがきかず、一歩で100分の1秒の差が出たとします。一歩では0.01秒の差だったとしても、1000ⅿで換算したら、大体ストライドがひとり1ⅿ20~30㎝として、1㎞で700歩とか800歩くらい違う。それだけで7秒くらい差がついちゃうわけですよね。

腰まわりの中殿筋で押さえがきかないというだけで、ロングディスタンスでは、それだけの差がつくわけです。みんな3種目のトレーニングにばかり気がいってしまいがちですが、そうした筋力トレーニングとか補強で筋力自体を強くし、筋肉の使い方を磨いていくというのは、すごく大事だと思っています。

チームVAAMからのQ
■ランニングのスピード強化方法は?(大村実巨さん・4期生)

山本 これも人それぞれレベルやバックグラウンドによって全然違うんですが、フォームの問題は絶対にありますよね。同じ「走る」という動作でも何も考えずにただ走るのではなく、着地動作や重心移動などをしっかり意識しながら無理なく走れているか? ランニングエコノミーを高めていくことは絶対重要。

トレーニングということに関して言えば、自分も現役時代はひとりで練習することも多かったので、取り組みやすくて、よくやっていたのが、毎日ジョグだけじゃなく、例えば往復コースの場合、往きはジョグでも、帰りはペースを上げる。

10㎞走るんだったら、後半5㎞でペースを上げるとか、初め3㎞でウォーミングアップして、中5㎞飛ばして、最後2㎞ダウンでもいい。

さらに、「動きの筋トレ」として、たまには100ⅿ~200ⅿの流し走(気持ちよく飛ばせるスピードで走る)を数本、間に2~3分しっかりレストを入れてやってみるとか。

練習でできないことはレースでは絶対できないので、レースで走る以上のペースでの練習はしておかないといけない。ランニングは動作のくり返しですから、レースペースの動作を続けることに慣れていないとできない。

例えばうちの陸上部でやっているのは、トラック競技で1㎞3分20秒ペースで走らなければいけない場合、100ⅿに換算すると20秒ペースですから、そのスピードでの動きが維持できないといけない。ですから100ⅿ17秒~18秒くらいでいけるようなスピード走るとか、200ⅿを35~36秒くらいで走るような練習をして、その速さでの動きに慣らしていく。

何かを持ち上げるというのも筋トレですが、そういう速い動きをする、というのも筋トレのようなものなのです。

星川浩さん(4期生)はトライアスロンデビューが2016年の横浜大会。今回のセントレアが初ミドルとなる。「今回の話を踏まえ、ガス欠の状態でランに行くようなことがないよう、最後は笑顔でフィニッシュできるよう頑張りたいと思います」

チームVAAMからのQ
■家や職場でもできるスイムの練習メニューがあれば教えていただきたいです。 (新美太祐さん・4期生)

山本 (水の中で練習できないとき)家などでできることとして、イメージトレーニングというのは大きいと思います。スイムのストロークは、ただ腕でがむしゃらに水をかいているだけでなく、しっかりローリングし(身体をひねり)ながら水をとらえて進むわけですから、そうしたタイミングを鏡を見ながらやってみるというのは大事ですよね。

こうした地道な動きづくりとか補強は、気がついたとき、思い立ったときだけやるのではなく、定期的に行うことが大事です。こういうのは単調なことなので、なかなか言うは易しで続けるのが難しい。

でも「1日★回必ずやる!」とか決めて、継続すると、確実に違いが出てきます。

チームVAAMからのQ
■ブリック練習(※バイク・ラン、スイム・ランなど2種目以上の複合練習)というのはどうでしょうか? 自分はときどき思いついたように20㎞バイクに乗ったあと5~3㎞ランを入れて、限界に近いスピードまで上げるとか、やることはあるのですが。1回やると疲れてしまって、しばらくやる気にならないのですが。(前田さん)

山本 当然それは意味があると思いますし、やるべきだと思います。
限界まではペースを上げなくていいと思いますが、今回のセントレアで言えば、バイク90㎞の後、ラン21㎞くらいですから、そういうバイク練習の後にジョグを20~30分入れるだけでもいいんです。

日常的に練習の中に入れておくべきだと思いますが、お仕事の都合などで、そんなにしょっちゅうできない場合は、一日2種目、スイム✕ラン、バイク✕ラン、といった組み合わせができるときにやってみるといい。スイム練習が平日できるのだったら、週末ロングライド+ランがオススメです。

自分は現役時代、ローラー台で1時間半、アベレージ40㎞/hでこごうと、決めたら集中してやっていましたね。実戦と同じような気持ちでやる。
ブリックトレーニングをすると、気持ちもレースに向いていくじゃないですか。
「これだけ準備したんだ!」という自信にもなる。

理想どおりいかないのが当たり前。
一番大事なのは「笑顔でフィニッシュ!」

山本 それぞれにお仕事や生活環境も異なるので、今回私がお話しした内容は理想論で、なかなかレース当日にピークコンディションをもってくるのは難しいとは思うのですが、一番大事なのは、笑顔でフィニッシュすることです。

自分も十数年のプロ選手時代に、パーフェクトなベストコンディションでレースに出られてことなんて、数回しかない。逆にそういうベストコンディションのときは、言い訳できないので、逆に焦って、いつもより緊張しました(笑)。それが宮古島大会で優勝したときなんですが。

どこか故障してたり、仕事などの都合で、急に出張が入ったりして、思ったように練習ができなかったとしても、ネガティブにとらえ、言い訳をするのではなく、あきらめずに、そのときなりの自分のベストパフォーマンスを出して、笑顔でフィニッシュ!

調子が良いときは比較的簡単にこれができるんですが、調子が悪いとき、万全じゃないときにも、「それなりにまとまったレースができたじゃないか」と笑ってフィニッシュできるようにしたいですね。

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