COLUMN HOW TO KONA Challenge

デイブ・スコット熱血指導、トライアスリート必須3大要素の鍛え方。

投稿日:2019年12月20日 更新日:


ルミナ編集部

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2018年に続き2度目の来日講義となった今回は、デイブ・スコット自身の希望により身体を動かしながらの実践指導に(東京・渋谷のMAKES本社にて) ©Kenta Onoguchi

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ASK THE MAN@TOKYO デイブ・スコット来日特別講義

1980年代にKONA(アイアンマン世界選手権)で6勝をあげたレジェンド、デイブ・スコットが2018年に続いて2019年も来日。日本のトライアスリートのために、特別講座を開いてくれた。前回が基本的なトレーニング理論・ノウハウを語る座学形式だったのに対し、今回はコアを効果的に強化するためのエクササイズを実践指導した。

>>>前回(2018年6月)来日セミナー記事を読む

特別ゲスト白戸太朗、デイブ・スコットの偉大さを語る

このセミナーには、1980年代からトップアスリートとして活躍し、現在もアイアンマンに参戦し続けている都議会議員・白戸太朗さんも応援参加。セミナーの冒頭に、デイブ・スコットの偉大さについて語ってくれた。

©Kenta Onoguchi

白戸太朗
私がトライアスロンを始めた1986〜87年は、まだトライアスロンの教科書というものがなく、トライアスリートの先輩たちに教わりながらノウハウを学ぶのが当たり前でした。

そんな中で唯一本として出ていたのが、デイブ・スコットの『トライアスロン・トレーニング』(※現在は絶版)でした。私はこの本の中身をすべて覚えてしまうくらい読み込んだものです。

デイブさんは80年代当時、KONAで6回優勝した最強のチャンピオンでしたが、それに劣らず素晴らしいのは、一度引退してから94年に40歳で再びハワイに出場し、2位になったことです。

また、コーチとしても活躍されてきましたが、私も2シーズンにわたってアメリカのボウルダーで彼の指導を受けました。

デイブさんのすごさは、選手として偉大なチャンピオンであるだけでなく、トライアスロンのノウハウを何もないところから開拓してきたことです。今日はどんなことを教えてくれるのか、私も個人的に楽しみにしています。

皆さんも彼の技術だけでなく、その奥にあるフィロソフィーも学んでください。

トライアスロンにおける〝良い動き〟の大切さ

いよいよここからデイブ・スコットの講座がスタート。今回、通訳と解説を務めたのは、『トライアスロン・ルミナ』誌面でもおなじみの彦井浩孝さん。KONAに11回出場している強豪エイジグルーパーであり、アメリカに留学し、スポーツ生理学のPhD(博士)を取得したドクターでもある。

©Kenta Onoguchi

デイブ・スコット
トライアスロンにとって必要なことは色々あり、年々進化していますが、私も長年それらについて研究し、それぞれノウハウを進化させてきました。

その中で特に重要なのはストレングス(筋力)・モビリティ(動作性)・柔軟性の3つです。

今回はこの3つの強化方法を伝えたいと思います。

ふたりのアイアンマン世界王者に発見した弱点

私はKONAのふたりのチャンピオン、クリッシー・ウェリントンとクレイグ・アレキサンダーのコーチをしていました。

彼らは当時すでに素晴らしい選手でしたが、私は彼らの動きの中にバランスの崩れを発見しました。具体的には、左大殿筋の動作性に問題があったのです。

こうしたバランスの崩れがあると、アイアンマンのレースでバイクの後、ランでパフォーマンスが落ちることになります。

多くのアスリートが同じような動作性の問題を抱えていると思います。

KONAを4度制しているクリッシー・ウェリントン(2007~2009・2011年)もデイブ・スコットが指導したトライアスリートのひとり ©Jero Honda

動きを少し改善するだけで、パフォーマンスに大きな効果が出る

私は1976年にトライアスロンを始めましたが、最初の頃、私はフォームが悪く、特にスイムとランはひどいものでした。それでも私がレースで勝てたのは、フィジカルとメンタル両方が強かったからです。

そこから私はパフォーマンスを向上させるための研究に取り組むようになり、バイオメカニクス(生物の構造や動きを研究する科学分野。生体力学・生物力学)を取り入れ、ストレングス(強さ)だけでなくモビリティや柔軟性を改善していくことの重要性に気づきました。

トレーニングというと、とかくストレングスが意識されがちですが、モビリティと柔軟性もそれに劣らず重要で、このふたつをほんの少し改善するだけで、大きな効果が期待できます。

アイアンマンをチャレンジイベントから競技スポーツに昇華させたデイブ・スコット。選手としての強みは天性のセンスではなくフィジカルとメンタルの強さだったと自己評価する

肩・背中・尻のモビリティを強化する

モビリティとは動作性・可動性、つまり身体の各パーツの筋肉がどれだけ良い動きをすることができるかということです。

モビリティが重要な身体のパーツは、肩・背中・尻の3カ所。「肩」は腕を回すときに使う回旋筋(ローテーターカフ)など肩甲骨まわりの筋肉です。また、ここで言う「背中」とは特に頸椎と腰椎の間にある胸椎のまわりにある筋肉。「尻」は大殿筋です。

肩や胸や背中の筋肉の柔軟性がないと、このエリアの筋肉がうまく使えず、動きに悪い影響を与えます。

特に重要なのはTVA(腹横筋)

特に重要な筋肉のひとつに腹横筋(TVA:transversus abdomimis)があります。これはお腹のベルトのあたりにあることからベルトラインマッスルとも言われます。

TVA(腹横筋)はお腹の深いところを横に走っている筋肉です。6パックに割れる腹直筋のように外から見える筋肉ではありません。それ自体が推進力を生み出すわけではなく、腰椎、体幹を安定させる働きをします。

©Kenta Onoguchi

この体幹の安定が大殿筋をしっかり使って推進力を生み出すために必要なのです。

TVAが鍛えられていないと、体幹が安定せず、トライアスロンのランで疲れてくると大殿筋がうまく使えません。大腿四頭筋(太ももの前側)が疲れている状態で、大殿筋も使えないと、パフォーマンスが落ちます。

クリッシー・ウェリントンもクレイグ・アレキサンダーも、左大殿筋がうまく使えていなかったことには、TVAの弱さが関係していました。そこで左大殿筋だけでなくTVAも含めた改善に取り組んだのです。

KONA3勝(2008・2009・2011年)、IM70.3世界選2勝(2006・2011年)のレジェンド、クレイグ・アレキサンダーもデイブ・スコットのもとTVAの強化を含めたフィジカルの改善に取り組んだという ©Jero Honda

TVAを働かせるには、腹をへこませ、アゴを引き、首を長く

TVA(腹横筋)はゆっくり働く筋肉です。

お腹をへこませてヘソの両側に指をあてると、TVAを確認することができます。TVAを働かせると、脊椎が真っすぐ保たれます。

この筋肉が働いていないと、疲れた老人のようにかがんで走ることになります。

TVAを働きやすくするには、腹をへこませ、アゴを引き、首を長く保つことが大切です。

これはランの基本姿勢です。スイムもこの姿勢が基本です。

★イベントLive動画フルヴァージョンはコチラhttps://youtu.be/ZvYIIqEMIM0)から(Facebook Live動画からの抜粋で高画質動画ではありません)

3種目それぞれに必要なコアを鍛える。

ここからTVAを中心に、体幹を強化するエクササイズを、前半に行ったシンプルなものをいくつか動画とともに紹介しよう。

デイブ・スコットはエクササイズの中で、それがスイム・バイク・ランの動きとどのように関わるのかについても解説している。

DSエクササイズⅠ

※イベントLive動画からの抜粋(高画質動画ではありません)


主な動きとポイント

① 脚を少し開いて、腹をへこませ、TVA(腹横筋)を引き締め、尻を後ろに引く。上体を少し前へ傾け、腕を横に上げる(広げる)。
② 腕を前へ持ってきて、バイクのDHポジションをとり、左右交互にステップを踏む。
③ お腹から脚を引き上げることを意識しよう。

デイブ・スコット
バイクの姿勢で大切なのは肋骨の下側と骨盤の間にスペースを確保することです。

背中は真っすぐ。左右の肩甲骨の間隔を狭くキープ。これで大殿筋をしっかり使うことができます。

背中を丸めるのはNG。肋骨と骨盤の間が狭くなります。

スイムでもTVAを働かせることが大切です。TVAをきかせると肩の回旋筋をうまく使うことができますし、キックの脚を真っすぐ、かすかにクロスするくらいに保つことができます。

TVAが使えていないと脚が開いてキックがバラバラになってしまいます。

バイクで疲れると、ランで尻の片方が落ちて、身体が傾いたり、肩が落ちたりといったアンバランスな状態に陥りがち。

TVAを働かせると姿勢を真っすぐに維持でき、こうした動きの崩れを防ぐことができます。

DSエクササイズⅡ

※イベントLive動画からの抜粋(高画質動画ではありません)。


主な動きとポイント

① 腕立て伏せの姿勢をとる。
② 腰を一度落とし、TVA(腹横筋)を使ってお尻を少し上げる。
③ TVAを締めたまま身体を少し前へ動かし、戻す。

これ(①~③)を繰り返しながら、TVAが働いていることを感じる。

④ 腕を曲げて身体を下ろしてからプッシュアップ。
⑤ (DHポジションのような感じで)ヒジを床について身体を支え、前へ。
⑥ もう一度腕立て伏せの姿勢に戻る。
⑦ 尻を高く上げて戻す。

TVAを使わないと尻が下がり、お腹が落ちるので注意。

⑧ 腕立て伏せの姿勢から尻を高く上げ、腕立て伏せ。
⑨ ヒジを床についた状態で、片脚を曲げる(左右両方行う)。
⑩ 片脚を少し開いて戻す(左右両方行う)。

デイブ・スコット
体幹には全部で29の筋肉があり、身体を安定させる役割をしています。これらの筋肉を鍛えるとトライアスロンで強く、速くなることができます。

バイクのインドアトレーニングを行うときなども、一度背中を丸めて良くない姿勢をとってから背中を真っすぐ保ち、TVAを引き締めた姿勢をとってみて、TVAを意識しながら行うといいでしょう。

DSエクササイズⅢ

※イベントLive動画からの抜粋(高画質動画ではありません)。


① 右足を前に出し、カカトに体重をのせながら左脚を上げ、バランスをとりながら身体を前へ倒す。
② 両腕を横に広げ、鳥のよう羽ばたき。
③ さらに、腕を交互に動かす。
④ 右手を下げて、左手を上げる。
⑤ 左手を下げて、右手を上げる。

バランスをとりながら脊椎を軸に身体を回転させるという、トライアスロンで重要な動きの練習になる。

デイブ・スコット
このエクササイズは家事をしながらでも手軽にできます。ポイントは軸脚と上げた脚を真っすぐ保つこと。

上体を倒していくときに、自然とTVAが働き、大殿筋にも力が入るのがわかると思います。

3kgくらいまでの軽いダンベルを両手に持って行うと、さらに効果的です。

エクササイズⅢの別バリエーション

① このエクササイズのバリエーションとして、左足を前に出して、右脚を引く。
② 手を軽く握り、ヒジを曲げて体側につけ、上体を倒してバランスをとる。
③ 手を下げて引き上げる。
④ 肩甲骨を締めて引き上げる感じで肩を回転させる。
⑤ 次に左右交互に上げ下ろし。

脚を真っすぐに保つのがポイント。

©Kenta Onoguchi

デイブ・スコット
大殿筋が働くのを感じたでしょうか? この交互の上げ下ろしによって背骨を軸に身体が回転します。この回転はランで大事です。

よく身体を固めて回転させず、両腕を鳥のように体側につけて走る人がいますが、これはNG。身体が回転することで、大殿筋がしっかり使えるのです。

DSエクササイズⅣ

※イベントLive動画からの抜粋(高画質動画ではありません)。


主な動きとポイント

① 左側を下にして横に寝る。
② ヒザを曲げ、身体に対して垂直に左手を床に伸ばし、右手を左手に重ねる。
③ 視線で右手を追いながら、右手を上げる。
④ さらに首・上体を回転させ、胸を大きく開くようにして右腕を背後へ倒しながら、右手を目で追っていき、右手が床につくくらいまで倒す。TVAが働くのを感じることができる。

注意すべきポイントは、背中・腰を反らさないことと、脚・ヒザは動かさないこと。僧帽筋が硬いと腕の可動域が狭くなるが、いけるところまででOK。これを繰り返し行う。

デイブ・スコット
バイクに乗っているとき、首や腰が痛くなるのは、脊椎のモビリティが開発されていないために起きる現象です。

このエクササイズでコアを開発し、胸椎の柔軟性を高めると、首や腰に起きる問題が解決されます。

この部分の可動域を大きくするには、胸筋とそれに接続されている腕の筋肉の柔軟性も必要ですが、コンピュータを使っていると、どうしてもこうした部分が硬くなりがちです。

©Kenta Onoguchi

エクササイズはこのあと1時間にわたってさらに続いたが、最後に設けられたQ&Aタイムから、これらのエクササイズのやり方に関する部分を紹介する。

モビリティと柔軟性のエクササイズは毎日でもOK

エクササイズの頻度は、どのくらいがいいでしょうか?

デイブ・スコット
筋力を強化するストレングストレーニング(筋トレ)は、週2〜3回くらいでいいでしょう。1セット8〜12回を2〜3セットくらいが目安です。ただし、やり過ぎないように、ちょうどいい疲労感が残る程度にしましょう。

今日紹介したような柔軟性とモビリティのエクササイズは毎日でもOKです。仕事終わりに疲れているときにもできます。

こうしたエクササイズのやり方は、私のサイトにも紹介されています。また登録無料のニュースレターでも定期的に情報提供しています。

インターネットで指導する会員制のクラブもあり、会員にアドバイスしたり、質問に答えたりしていますから、よかったら参加してください。

世界を回って色々なアスリートを指導していて感じるのは、ストレングスを鍛えている人に比べて、モビリティと柔軟性を強化している人は少ないということです。

このふたつを強化すれば、大きな効果がありますから、ぜひ皆さんも取り組んでみてください。

★イベントLive動画フルヴァージョン(高画質動画ではありません)

プロフィール
Dave Scott
1980年、第3回IRONMAN世界選手権(IMハワイ)で前年までの優勝タイム(11時間台)を大幅に塗り替える9時間台のタイムで制してアイアンマンをチャレンジイベントからスポーツへと昇華させた。以来、1987年までに通算6勝をマーク、1994年には40歳で2位、1996年には42歳で5位に入るなど、約16年間にわたりアイアンマン・シーンを代表するトッププロとして活躍した。1989年、打倒デイブ・スコットの悲願をかけて挑んだマーク・アレンとの激闘「IRONWAR」(※アレンがスイムアップ後から続いた並走勝負を制して初優勝し、その後の5連覇につながる)は、アイアンマン史上最高の名勝負として語り継がれている。1954年生まれ、65歳。

©Kenta Onoguchi

今回のセミナーには約50人の受講者が参加。会場となった東京・渋谷のMAKES本社セミナールームには、デイブ・スコットがアンバサダーを務めるHOKA ONE ONE ®のシューズが数種類用意され、参加者は午後6時の開場から7時の開演まで、スタッフの説明を聞き、試し履き、試走しながら、各アイテムの特徴を確認していた。

©Kenta Onoguchi


HOKA ONE ONE®(ホカ オネオネ)は北米やヨーロッパなどのアイアンマンおよびKONA(アイアンマン世界選手権)の公式シューズ。KONAでは大会公式ブランドとしてランコースのネーミングライツを3年連続で獲得し、2017・2018年とランニングシューズシェアNo1の座を占めている。デイブ・スコットも認める世界イチのシューズブランド。

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