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【今こそ「うちトレ」を考える】インドアトレーニングの有効性とニューモデルに見る新たな可能性<後編>

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大塚修孝

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© Triathlon GERONIMO

>>>前編インドアトレーニングの有効性とニューモデルに見る新たな可能性<後編>を読む

文=大塚修孝(Triathlon GEROINMO/トライアスロンMONOジャーナリスト/プロフィールは最下段)

次世代型トレーナーの提案(SARIS H3/MP1)

こういう時代、そして現状を考えるとインドアトレーナーの選択も重要になってくる。SARISは、米国ウィスコンシン州に本拠地を置く、スマートトレーナーとサイクルキャリアのメーカーで、このトレーナーは前身のCycleOpsから数えて20余年の実績をもっている。

今回、SARISは新型のスマートトレーナーとともに、可動するプラットフォームをリリースしている。昨今主流となりつつあるスマートトレーナーなど「固定式」のローラー台は、多くのメリットをもつが、不自然な固定がデメリットとなる。その課題に対し、画期的とも言える提案をしている。

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H3 Direct Drive Smart Trainer

まず、静粛性については、前世代モデルと比較して5倍となっていて、32km走行で59dbに留めている。感覚的に言えば、チェーンの駆動音程度となるため、極めて高い静粛性と言える。また、不快な音は回転による部材からの音の他に、回転させることで発生する振動音がある。これは、本体内部の回転体である「フライホイール」に起因している。そのため方法は異なるが、自動車のホイールなどにも施す「バランス加工」をすることで、振れのない円運動となり、振動も抑えている。

(株)ワイ・インターナショナル

また、スマートトレーナーの重要な機能でもあるパワーメーターの計測精度は±2%、最大出力2000w、最大勾配20%となり、同価格帯モデルとしても上位に匹敵する高性能モデルと言えるだろう。

そして、特筆すべき点としては他社と比較しても最大級となる「9kgフライホイール」だ。フライホイールは、慣性モーメントで「回転力を滑らか」に伝える効果を狙っている。そのため、極端に言えばより重いものが良いことになるが、重過ぎるとライダーの動きの変化があったときにタイムラグが発生してしまうことになる。したがって9kg程度が理想とされ、より自然で滑らかなフィーリングを得ることを狙って、SARIS H3の特長と言える重量フライホイールを採用している。

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MP1 Nfinity Trainer Platform

このプラットフォームこそが、今注目のアイテムだ。トレーナーに動きをもたせる発想自体は理想であり、今に始まったものではないが、完成度の高い製品がついにリリースされた。

バイク運動は、そもそも「不安定」な状態が普通だ。スタンドのように固定してしまうのが、スマートトレーナーも含めた「固定ローラー台」の特徴だが、この固定が不自然な状態を作ってしまっている。これは、前述のとおり多くのメリットがあるが、その一方で「固定状態」にあることがリアルライドからかけ離れしまうというデメリットもある。

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その固定から解放してくれるのがMP1となる。大きなボードの下には、前後に241mm、左右に6度のトラベルをもつ構造になっている。これまでも左右の動きをもつスマートトレーナーはあったが、前後の動きは初めての試みだ。ボードは高級感のあるバーチウッドにノンスリップの加工が施され、ボード下のフレームは丈夫なスチールを使用している。また、重量は28kgのため安定性も十分だろう。

そして、注目すべき点は、やはり前後の動きだ。バイクライドの理想を言えば、前後左右に振れず静止状態と同じように走れれば、路面抵抗は最大に抑えられ、重心移動によるネガティブなパワーも発生しない。しかし実際は、人力で片脚ずつ出力するためどうしても身体は動いてしまうが、それが自然な状態だ。その状態を作り出せるのが、このプラットフォームの優れた点だ。

試しに、DHポジション、シッティング、ダンシング、各走行の自然な動きと、タテ方向とヨコ方向を静止状態から強制的に揺さぶってみた。すると圧倒的な可動範囲を確認することができた。

Impression

実際に体感してみた。MP1に乗りかかるとボードが大きく傾き、差し詰めスケートボードか何かに乗ったようなイメージを受ける。「こんなに動くのか」という驚きと、それによる期待が高まってくる。

H3とMP1にセットされたバイクにまたがってみると、いきなり左右に振れることはなく、センターに安定するようになっていた。意識して左右に振ると大きくゆったりと動く。スマートトレーナーによる低重心のためだろう。さらに小刻みかつ素早く動かしてみると、もたつくことはなく、実車と同じように動かせる。そこには、良い意味での適度な「不安定感」がある。バイク走行時には、まず「バランス」を取ることになるからこの「適度な不安定感」が重要だ。極端に言えば、もっと不安定でもいいかもしれない。固定ローラーの絶対的な固定感は、リアルライドの観点からはマイナスだからだ。

そして、ペダリングし走行状態に入ると、見事に固定から解き放たれてリアルライドに近づいた走行フィーリングが得られた。DHポジション、ダンシング、シッティングなど大きな変化をさせると前後に動きが見られるが、ひとつのフォームで安定状態に入ると、前後はほぼ動かず、左右にわずかに振れる程度だった。

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次に、H3に組み込まれた9kgの重量フライホイールだが、オンラインアプリに接続せず、単体の負荷曲線でそのフィーリングを確認してみた。やはり、慣性モーメントの大きさによる滑らかな走行感でイメージ通りの良い走りができた。静粛性については、チェーンとスプロケットの摩擦音、高回転、高負荷時の本体内部からの回転音、そして、本体自体が周辺に振動として伝える音があるが、通常の生活音の環境では意識しない限りまず気になることはないだろう。実際に計測もしてみたが、ほぼデータ通りの数値を示していた。ただし、ペダリングを途中で止めてしまうとフリーのラチェット音が少し気になるかもしれない。

さらに興味をもったのは、固定を解放したMP1の効果により、力を逃がしてくれるため「超高回転」(150rpm以上)が可能となることだ。一般の固定ローラーでは、せいぜい120rpmもさせるとローラー台が「ガタガタ」と音を立て、フレームへのダメージなども気になってしまう。実際に160rmpで回転させてみたが、静粛性、バイクへの負担感がなく、安心して走ることができた。

© Triathlon GERONIMO

そして、もうひとつ。MP1の前後動は「重心」を意識させてくれた。ポジション変更時やペダリングのパワーやスキルにより重心移動の発生が関係している。ある程度は仕方ないが、実走でも特にポジション変更時は動きやすい。特に上りでダンシング、シッティングの切り替えのタイミングとスキルによっては、「ネガティブパワー」が発生してしまう。こういった実走では気が付きにくいところにも気が付かせてくれる。

さらに、トライアスロンバイクはDHポジションで走りを安定させる設計のため、ダンシングやシッティングのハンドルポジションではハンドル高が低いため前傾が強く、フロントホイールへの荷重バランスが高くなり、「ふらつき」を起しやすくなる。そのこともMP1ではリアルに再現することができる。

そもそもトライアスロンバイクは、ハンドルが低くシートアングルが立っているため上りには向いていない。それでも、マイナス面を上回るフラットコースでのメリットが大きい。したがって苦手な上り対策をシミュレーションしておくことが重要であり、MP1ならばそれが可能ということなのだ。

インドアの基本的なメリットに加えて、特異なトライアスロンバイクの「攻略法」として、何度も反復し、トレーニングできることが大きいと感じた。

「トライアスリートにこそ使ってほしいですね」とは、取材協力してくれたワイズロードお茶の水 エアロロード・トライアスロン館 桂川店長 © Triathlon GERONIMO

■取材協力
ワイズロードお茶の水 エアロロード・トライアスロン館
http://ysroad.co.jp/ochanomizu/

【メーカーサイト】
https://www.saris.jp/

【日本正規輸入総代理店・発売元】
株式会社ワイ・インターナショナル

■Specification
【H3 Direct Drive Smart Trainer】
128,000円(税抜)
•展開時寸法 L * H * W: 787.4 * 469.9 * 495.3 mm
•収納時寸法 L * H * W: 215.9 * 469.9 * 495.3 mm
•重量: 21.3 kg
•騒音レベル:59 デジベル (32km/h時)
•パワー測定精度: +/- 2% ・最大パワーアウトプット: 2000ワット (32km/h時)
•最大20%の勾配再現 ・反応性に優れた電磁抵抗 ・スピード、ケイデンス、パワーを外部センサーなしで測定
•約9kgのバランス加工済みフライホイール
•ANT+ FE-C , Bluetooth FTMS 基準対応
•フロントホイールブロック内臓
•一体化されたキャリーハンドル内臓
•シマノ8~11速対応 ・XD/XDR 対応フリーハブ別売り
•142 mm または 148 mmエンド幅のリアスルーアクスル対応
•130 mm または 135 mmエンド幅のリアクイックリリース対応
•Rouvy, Zwift, TrainerRoadその他多くのインドアサイクリングアプリに対応
•ヘッドレスモード (電源ON, アプリに接続しない状態) ではFluid2の抵抗カーブを再現
•LED インジケータ―がコネクト状況やその他情報を表示
•ダイレクトドライブ構造がバイクと抵抗器をダイレクトに接合、タイヤの摩耗を避ける
•Internal Cooling テクノロジーがハードなワークアウトでも高精度のデータを提供
•市場のダイレクトドライブトレーナーで最もワイドになる折り畳み可能な脚は安定性と収納性を両立
•重心バランスの良い位置に備えられたキャリーハンドルが簡単でスムースな移動を提供
•最大対応重量 (ライダーとバイクの合計): 300ポンド (136kg)
•カセットスプロケット別売

【MP1 Nfinity Trainer Platform】
158,000円(税抜)
•寸法L * H * W:152 * 1600 * 902 mm
•重量:28kg
•テクノロジー:Saris Nfinity
•最大前後トラベル:241mm •最大左右傾斜角:6°
•自転車トレーナーの主要ブランドおよびモデルと互換性があります
•素材:スチール、アルミニウム、バーチウッド
•組立必要なし
•乗り降り時の滑りを軽減するために配置されたグリップテープ
•159kgの合計重量(ライダー、自転車、トレーナー)でテスト済み
•ロードバイク及びMTB用フロントホイールブロックが組付け済

■著者プロフィール
大塚修孝(おおつか・のぶたか)
本誌連載などでおなじみのトライ アスロン「モノ」ジャーナリスト。トライアスロンに関わり28 年。特に、アイアンマン世界選手権は、96年から取材を続けて2020年で25年目となる。レース出場者のバイク全台を自ら撮影して調査する「GERONIMO COUNT」など圧倒的なデータ収集力と緻密なデータ分析には定評がある。 Triathlon GERONIMO www.triathlon-geronimo.com

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