COLUMN GEAR

トライアスリートに愛される「On」が語る、次の10年。〈後編〉

投稿日:2021年4月6日 更新日:


ルミナ編集部

text by:

駒田代表(中央)とともに、日本でのOnブランド展開を支えてきたOnジャパンの前原靖子さん(左)、鎌田和明さん(右)

「楽しさ」に包まれた、
多様性を楽しもう。

写真=小野口健太

2010年に誕生したスイスのパフォーマンスブランド「On」(オン)。最初の10年は、クラウドを中心に展開してきた(>>前編を読む)。

では、すでに始まっている「次の10年」でOnは何をつくり、何を語ろうとしているのか?

前編に続き、駒田博紀さん(Onジャパン代表)に語っていただいた。

Onジャパン代表の駒田博紀さん

2021>>
アイデンティティをつくる旅。

まずグローバルブランドとしての動きについて。これまでの10年はパフォーマンスを追究してきた10 年でしたが、次の10年はその初心につねに立ち戻りながら、より広い世界へ挑戦する――ということになると思います。

最初の10年はパフォーマンスランニング(PR)という限られたマーケットでブランディングを続けてきましたが、その最終盤にライフスタイルというところにブランド自体が枝分かれしてきました。

これによりOnのブランド展開が、PRとパフォーマンスアウトドア(PO)、パフォーマンスオールデイ(PAD)の3本柱になったんです。

我々はこれを「スリーヴァーティカルズ」と呼んでいます。

Onが「走って楽しいシューズ」を10年間作り続けてきた、PRの良さを既存のアウトドアシューズとあわせたのがPO。既存のアウトドアシューズはすごく堅牢で安全性が高くて、安心感がある一方、ときに足が痛くなってしまったりすることも。普段ばきで使うにはゴツすぎるとか、そういう悩みをもつ人も相当数いたと思います。

そこで既存のアウトドアシューズの良さに、OnがPRで培ってきた軽さや快適さ、防水性能など、そういう良さを合わせたものをPOと呼んでいます。これはOnがスイスブランドだということで元から自然にあった考え方ですが、もうひとつの柱、PADは毛色が変わっている。

この柱はクラウドから派生したものです。クラウドはシリアスなランナーやトライアスリートがはいてくれたのと同時に、普段ばきとして使うセレブリティが出てきました。当初はパフォーマンスランニングシューズとして売り出したものの、世間一般の人たちが、そうではない使い方も見出してくれた。

であれば、もっと日々の生活に寄りそうような、「毎日はけるOn」をブランドとして提案していきたいということになったわけです。これまでのOnとは違う拡げ方で、新たなマーケットに入っていくというのも次の10年のチャレンジのひとつです。

グランドスラム(4大大会)で通算20勝、男子プロテニス界に君臨する〈BIG4〉の一角、ロジャー・フェデラー(中央)がOnに参画したのはあまりにも有名な話だが、そのフェデラーが最初にはいたのも「クラウド」だったという

あるいはこの新しい活動によって、一般の方たちに「Onってスニーカーのブランドだったんだ」と思われてしまうかもしれません。でもPADのようなライフスタイル寄りにいくからこそ、このパフォーマンスランニングの部分をより強くしていく、これが僕たちのあるべき姿かなと思っています。

プロダクトの見た目のカッコ良さ(スタイル)だけを追究してしまうと、根っこのパフォーマンスの部分が消えてしまうかもしれませんからね。

ブランドがブランドとして成り立つ道のりは――

①「パフォーマンス」(テクノロジー)
② 「スタイル」(シルエット)
③ 「ブランド」(アイデンティティ・人格)

――という3段階で表せると考えています。

まずは機能性・テクノロジーの部分が立ち上がり、それがスタイルになっていき、最後に人格(アイデンティティ)をもってはじめて「ブランド」として成立する。

Onは今、第2段階。シルエットは得て、ブランドに進みたいけれど、まだ歴史もなければ、スリーヴァーティカルズのようなアイデンティティを確立しきれていないと自覚しています。

次の10年でやろうとしているのは、アイデンティティを確立して、「ブランド」の領域にたどりつくことですね。

アイデンティティをもつと、ブランドが自分の社会的存在意義とか、フィロソフィーを語り出します。

その文脈で考えると100%リサイクル素材を使ったシューズのサブスクリプション「Cyclon(サイクロン)」の取り組みには、すごく意義があると思います。

サステナビリティとか、自然を大事にするとか、Onと言うブランドはそういう性格の人なんだと知ってもらいたいですね。
 

100%再生利用が可能なトウゴマの素材から作られたハイパフォーマンスシューズのサブスクリプション(ひと月3,380円)。ある程度まで使ったら再生利用のため返送し、新しいシューズと交換するシステム。2021年秋のスタートを目標に事前登録を受け付けている

パフォーマンスだけ、スタイルだけだと、人格形成には至らない、つまりブランドにはたどりつけない。人間にたとえると、「足が速い」「見た目がカッコイイ」それだけじゃその人の魅力は十分に伝わらないですよね。

キャラクターとか考え方も見えてはじめて、ひとりの人間として世間に魅力やメッセージが伝えられる。

サイクロン以外でも、Onでは各シューズのリサイクル材使用比率などを明記しはじめています。その透明性、正直さが、Onという人格を形づくるひとつの要素だと僕は思っています。

ただ壁は多く、サイクロンの「所有しない」「循環型社会」といった考え方は、まだまだ理解されていない。日本でもある程度、賛同する方が集まってはじめて循環システムが成り立つので、この社会的実験に賛同いただける方は、ぜひ登録いただければと思います。

「サイクロン」はシューズとしても、サステナビリティとパフォーマンスが両立できるものだということを証明する試みでもあるので、日本でもサイクロンでレースを走るトライアスリートの姿を見てみたいですね。

サイクロンをはくことで、はいているその人のアイデンティティを世間に表明できるんじゃないかと考えています。

トライアスリート的な目線で言えば、ハイパフォーマンスシューズほど「賞味期限」も限られているので、ある程度の距離を走って性能が落ちてしまったとき、再利用しようとしても、普段ばきとしては快適でなかったり……そういう違和感を感じている方は少なからずいるんじゃないでしょうか。

そうした意味でも、環境負荷は少なく、つねに真新しいハイパフォーマンスシューズがはける「サイクロン」は面白いと思うんです。

最近のシューズに関しては、ウェブサイトなどにリサイクル素材使用率などを明記していて、たとえば新しいクラウドスイフトは、アッパーのエンジニアードメッシュに100%再生利用可能なポリエステルを使っています。

そうした試みは少しずつですが確実に始まっていて、ゆくゆくはすべてを再生素材で作るための研究・開発プロジェクトも、Onの中では進んでいます。

Onジャパンとしては、ランナーやトライアスリートのユーザーコミュニティ「On Friends (Onフレンズ)」の仲間たちと一緒に走る楽しさや可能性を伝えてきました。

この考え方はこれからも変わらない部分だと思っています。ここはOnジャパンができた理由のひとつと言ってもいいですし、「ファンを大事にする」という初心はつねに忘れてはいけないと思っていますが、

同時に、このコミュニティに、山が好きな人とか、ファッションが好きな人とか、これまで以上に、いろいろなタイプの人が入ってきて、もっと多様性のあるコミュニティになっていったらいいなと思っています。

2018年の宮古島トライアスロン、EXPO会場でミートアップしたOnフレンズ。Onジャパンは彼ら彼女らとともに「仲間と一緒に走る楽しさや可能性」を伝えてきた

最初はトライアスロンから始まったと言っても過言ではないと思うのですが、トラック&フィールドの人がいたり、マラソンランナーがいたり、ウルトラランナーがアンバサダーとして入ってきたり、多様性を増しきたのがOnのコミュニティですので、次の10年のキーワードのひとつはこの「多様性」かもしれません。

多様性があって、しかもそれが共通の「楽しさ」でつながってくる。僕たちはダイバーシティ&インクルージョン(D&I)と呼んでいますが、これがOnジャパンのキーワードでもあります。

それまでのコアな「Onフレンズ」がさらに多様性をもって広がっていき、それを包括するのはいつも「楽しさ」。そういうブランドでいたいと思っています。

トライアスロンでの取り組みとしては、今年始めようとしている「OTC」(Onトライアスロンクラブ)があります。これはパールイズミと一緒にやってきたトライアスロンコミュニティ「PI TRI」の流れで、そのメンバーでもある大西勇輝さん(パールイズミ)、前田康輔さん(プロスイムコーチ)と雑談している中で、自然発生した取り組み。

ふたりと温泉につかりながら、Onが包括するトライアスロンチームみたいなものをやりたいね、という話になったんです。多様性を増すOn フレンズのコミュニティの中でも、トライアスリートは忘れたくない重要な存在で、僕自身もずっとトライアスロンをやっています。

けれど、最近「トライアスロンチーム」って、つくったことなかったよねと、あらためてそう思い、社内外に声をかけてみたら、やりたいという人が結構多かったんです。

トライアスロンの楽しみ方を発信するパールイズミの「PI TRI」に賛同・参加する中で、楽しみ方を伝える新たなヒントを得た

OTCはあえてエクスクルーシブなメンバーで、Onが考えるトライアスロンの楽しみ方を発信していきたいと考えています。Onフレンズという広く開放されたコミュニティの中に含まれる、限定的なチームコミュニティというイメージですね。

合宿もやりたいし5月の琵琶湖でのミドル、6月のスワコ8ピークスミドルトライアスロンなどにも出場したい。

ウエアをつくる計画もあって、楽しみです。みんなでトライアスロンを盛り上げていきたいですね。

New Cloudswift
もっとサポート、
もっとスピード。

この春、Onの最新ラインアップとしてリリースされた「クラウドスイフト」。トレーニングからレースまで、トライアスリートにも刺さりそうなアップデートモデルとそのスタイリング例。新しいOnで、新しいシーズンを迎えよう。

クラウドスイフト
硬い路面でのシティランニングも快適にしてくれるクラウドスイフト。On独自開発のHelionスーパーフォーム搭載のソール部分と反発性のあるSpeedboardが生み出す推進力に加え、サポート力・安定感の高さもレベルUPしたアップデートモデル(写真のカラーはRock/ Slate)価格17,380円

トップス:Performance-T、ボトムス:Lightweight Shorts(いずれもCerulean/Black)、シューズ:Cloudswift(Denim/Midnight)、キャップ:Lightweight Cap(Black)

ジャケット:Weather Jacket(Black/Navy)、ボトムス:Running Pants(Black)、シューズ:Cloudswift(White/Limelight)

On世界特許技術であるソール形状CloudTecシステムの配置を改良。カカト部分のパーツを大きくしたことで衝撃吸収力が向上している

アッパーには、環境負荷の低いモノづくりを打ち出すOnのフィロソフィーに基づき100%リサイクル素材のハイテクメッシュを使用

はき口はシュータンとアッパーが一体となっているソックス構造。足入れも簡単で、はいている間にシュータンがずれることもない

問:Onジャパン
TEL:050-3196-4189
www.on-running.com

-COLUMN, GEAR

2 interest


コメント

メールアドレスが公開されることはありません。


スパム対策のため、 日本語が含まれない欧文のみのコメントは投稿できません。


関連記事

【記事】サイドバー上

記事用jQuery

cloud flash記事バナー

アイアンマンの世界に挑むアスリートたちを支えたVAAM