CORE × KONA CHALLENGE
宮古島でメリット実感。深部温度モニタリング《前編》
話題の深部温度モニタリングセンサー「CORE」を宮古島で活用したコナチャレ2期生の鈴木隆之さんら。前編は、そこで見えてきた暑熱順化・深部温度モニタリングのポイントと効果を鈴木さんの話を中心にTKと語る。
取材=原 修二 写真=小野口健太、武智佑真
鈴木隆之
60歳台にエイジが上がった今季、アイアンマン世界選手権への出場を目指すコナチャレメンバー。3種目の中ではバイクが得意。今回の宮古島は8時間39分23秒で年代別9位。
TK 竹谷賢二
MTB競技のオリンピアンにして、8×KONA(アイアンマン世界選手権)フィニッシャー。コナチャレでは1期に続きプロジェクトリーダーを務める。
江尻 海
「CORE」の国内輸入元(株)ニシヤマの担当社員で、自身もアイアンマン出場経験をもつトライアスリート。今回の宮古島にも出場し、7:53:27(総合95位)で完走している。
宮古島大会は、多くの選手がまだ暑さに慣れていない時期に南国で開催されるレースだけに、事前の暑熱順化や、本番での暑さ対策によって、差が出やすい大会と言える。
そこで、「CORE」を活用してトレーニングし、今回のレース当日も深部温度をモニタリングしたコナチャレメンバーの鈴木隆之さんと、CORE輸入元の担当スタッフで、自身もトライアスリートの江尻海さんが、準備期間やレースのデータを基にした振り返りや、感じたことなどをリポート。
昨年からCOREを使っているコナチャレプロジェクトのリーダー竹谷賢二さんも加わり、COREを使って深部温度をモニタリングする意味、メリットについて語り合った。
まずはモニタリングして「自分の特性」を知ろう
竹谷賢二(以下TK)◆ 私は昨年の夏前からCOREを使っています。レースでは昨年の佐渡トライアスロンのAタイプやアイアンマン・アリゾナで使用しました。私の場合、トライアスロンのバイクでは強度を上げないので、体温もあまり上がらないんですが、ランでは顕著に上がります。佐渡では深部温度が40度の手前まで上がってパフォーマンスが大きく低下しました。
その後も冬を通して使いましたが、それでわかったのは、ランでは体温が冬でも意外と上がるということ。37度くらいからスタートして、39度くらいからヒートトレーニングゾーンに入ります。
バイクは空冷効果が顕著で、速度を上げても38度くらいで終わるんですが、ランは運動強度を整えてもどんどん上がります。これはその人の特性にもよるので、自分で深部温度をモニタリングしながらトレーニングやレースをすることで、自分の特性を知ることが大切だと思います。
「攻めの走り」ができる深部温度がわかった
鈴木◆ 深部温度を計測しながら行った宮古島に向けての準備と、レース本番で得られた経験とデータを振り返ると、今の竹谷さんの話はすべて自分にも思い当たるところがあります。
たとえば、ラントレーニングはほぼ同じコースで、10㎞のビルドアップ走をやりながらCOREでデータを取っているのですが、いつも、37度から40度まで上昇して終わり、下がることはありません。
走り出してペースを上げられるのは38度を超えてから。そのあたりでウォーミングアップができて、調子良く走れるようになる。深部温度を測るようになって、37度からどれくらいまで上がったら、攻めても大丈夫なのかわかるようになったのはひとつの収穫です。
宮古島の実例 意外と低かったランの深部温度
鈴木◆ 宮古島のスイムとバイクは、デバイスとの接続がうまくいかず、データを取ることができませんでしたが、ランの出だしのデータを見ると、38.3度くらいからスタートしています(グラフA)。トランジションでゆっくりしてこの体温なので、バイクの終わりの深部温度はもう少し高かったのではと思われます。
それでもバイクに乗っている間はそんなに苦しいと感じませんでした。昨年の佐渡で炎天下の高温にやられてランが全く走れなかったので、今回は極力身体を冷やし、自分の調子が良い38度くらいで深部温度を維持しようとしました。しかし結果を見ると、それよりもずっと低い37度台後半で維持できていました。
データに表れたエイドでの冷却効果
グラフの①②④⑤⑥はエイドステーションです。エイドで止まって氷や氷水で冷やした直後は表面温度が下り、そこから少しタイムラグがあって深部温度も下がっているのがグラフから見てとれます。
これは冷却がうまくいっているのではないかと思われます。キロ6分くらいのペースで走り、後半は暑さにやられましたが、それでも6分半くらいで走れたので、昨年の佐渡よりはまともにレースができたかなという気がしています。
マラソン大会で起きた不可解な深部温度の低下
鈴木◆ 宮古島の前に、3月の板橋シティマラソンでCOREを着けてデータを取ったんですが(グラフB)、データを見ると10 ㎞ごとのペースは30㎞過ぎで落ちています。これは最初に突っ込み過ぎたオーバーペースなどが原因です。
深部温度は15㎞で頭打ちになり、30㎞までは心拍・ピッチ・ペースとも変わらないのに、その間深部温度は落ちてきている。
35㎞以降は、落ちたペース・ピッチをなんとか維持しようともがいて、運動量は上げたつもりだったし、汗も出ているのに、心拍は上がらず、深部温度はさらに下降しています。
ピッチやペースは落ちながらも頑張っている中で、苦しいと感じた原因が心拍なのかなと思ったら心拍ではなかった。となると、自分としてはどうしてこんなに苦しかったのかわかりませんでした。
しかし、後になって、補給が不十分でエネルギーの代謝ができていなかったということなんじゃないかと考えるようになりました。
COREで推測できる低血糖による体温低下
江尻◆ 人体は低血糖になると体温が下がるというデータがあるので、低血糖状態に入り始めたんじゃないかと推測できます。
鈴木◆ 板橋シティマラソンは後半、結構気温が上がって、表面温度も若干上がり基調になったのに、深部温度は下がった。自分としては燃焼しているつもりだったのに、体温が下がり続けたところに違和感を感じたわけです。
江尻◆ おっしゃるように、途中で補給がうまくいかなかったというのが影響している可能性がありますね。
私の場合、同じ現象が今回の宮古島のバイクパートでありました。鈴木さんのようにデータと体感を振り返って検証するというのも、COREの使い方として重要だと思います。
まだ使い始めて日が浅いので、感覚とデータの数字が合ってこない中、全然頑張っていないのに深部温度が上がっていたり、頑張っているつもりでも下がっていたりする。振り返って答え合わせをしていくことで、感覚とデータが合っていくんじゃないでしょうか。
TK◆ 私の場合、ゾーン2といった低強度で走っているときは脂質燃焼の比率が高いので、そんなに深部温度に影響しないけど、有酸素/無酸素の閾値付近とかゾーン4とか高い強度で走っていると変動がすごく大きくなります。
強度とエネルギー源、何をエネルギーにしているかは、深部温度と結構、因果関係があるのではないかと、今の話を聞いていて思いました。
CORE
価格37,400円(税込)
カラダの深部温度がわかるモニタリングセンサー。心拍計のセンサーストラップなどに簡単に付けられて、ガーミンなどのマルチスポーツウォッチに深部温度を表示させて、リアルタイムでモニタリングできる。専用アプリなどを活用して、今回紹介している鈴木さん、江尻さんのグラフのようにデータを抽出することもできる。
プロジェクトリーダーTKと夢のアイアンマン世界選手権出場を目指すチャレンジ企画。2023・2024年の2カ年で目標達成を目指す2期目には20人が参加している