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トライアスロンと経営の好循環とは? ♯01 小嶋隆三さん

投稿日:2023年12月28日 更新日:


ルミナ編集部

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File.01_小嶋隆三

〈医療社団法人GRIT 理事長・歯科医師
(株)RMGファウンダー〉

事業経営は世の中に笑顔を増やしていくこと。
「世界一幸せな起業家アスリート」を目指したい。

小嶋隆三さんは静岡市を拠点に、歯科医師・医療法人経営者として活躍しながら、予防医療・介護・歯科医院経営サポートなどの事業を展開する企業のファウンダーとして、多忙な日々を送っている。

またトライアスロンやマラソンに取り組むことで、健康や体力増強はもちろん、仕事の活性化、事業の可能性拡大など、様々な好循環を生み出している。そんな起業家アスリート小嶋さんを訪ね、仕事・トライアスロンへの取り組み方、目標などについて話を訊いた。

取材=原修二
写真=小野口健太

Ryuzo Kojima
1983年静岡市生まれ。大学歯学部卒業後、4年間の歯科医院勤務を経て2013年小嶋デンタルクリニックを開業。同時に(株)Ryuメディカルグループ(現RMG)を起業し、予防ヘルスケア、リハビリに特化した介護サービス、歯科医院の経営サポートなどの事業を展開。2023年クリニックを法人化し、歯科医師兼理事長としてさらなる成長を目指すとともに、(株)RMGのファウンダーとして活動。事業の改革・改善や新規事業の開拓を進めている。

スポーツでは小学校から野球を始め、投手として活躍。社会人になってからも、30歳で歯科医師会の野球大会で優勝投手になっている。2017年にトライアスロンのトレーニングを開始。2019年からオリンピックディスタンス、ミドルの大会を完走。2023年にはアイアンマン70.3世界選手権への出場権を勝ち取っている。2024年にはアイアンマンにも挑戦予定。

世の中が求めていることに、高い品質で応えていく

――まず歯科医師・歯科医院経営者としてのお仕事について聞かせてください。

小嶋 2013年に小嶋デンタルクリニックを開業してから10年になります。単なる治療ではなく、患者さんの生活の質向上や、ていねいなコミュニケーションによる理解・納得を重視し、私たち歯科医師自身が受けたい治療、一人ひとりに合ったオーダーメイド治療の実現に努めてきました。

医療において大切なEBM(Evidence-Based-Medicine)を提供することはもちろん、患者さんへの情緒的な、いわゆるNBM(Narrative-Based-Medicine)も同じように提供するよう意識しています。

おかげさまで地域の皆さんに支持され、歯科医師9名、歯科衛生士・歯科技工士などスタッフを含めて総勢40名以上のクリニックに成長しました。2023年に医療法人を設立し、さらなる発展を目指しています。

経営者であり、現役の歯科医師でもある小嶋さん。現在も日曜日以外は週6日間、診療にあたっている

――デンタルクリニック開業と同時に、予防医療・介護・歯科医院経営サポートなどの事業を展開する(株)Ryuメディカルグループ(現RMG)をスタートさせていますね。

小嶋 私の本業はあくまで歯科医師ですが、診療・治療をしていると、それだけでは解決できない色々な課題が見えてきます。

たとえば、せっかく歯を治療して、ちゃんと食事ができるようになったのに、正しい食事をしないために生活習慣病になり、食事を制限しなければならなくなってしまう患者さんが少なくない。

そういう課題を解決するために、管理栄養士の監修による課題解決型の料理教室を開催するようになりました。これが予防ヘルスケア事業の始まりです。

しかし、正しい料理の作り方を教えるだけでは、食生活や生活習慣の改善にはなかなかつながらない。そこで、もっと簡単に、おいしく食べるだけで健康になれる食品を提供できないかと考え、管理栄養士の協力を得て開発したのが「パワグラ」です。

この「パワグラ」は良質のタンパク質やビタミン・脂質などをバランス良く摂ることができる自然派の栄養食品です。

すでに多くのトライアスリートの皆さんに愛用いただいてますが、あえて噛みごたえのある硬さとしているので、食べることで自然と咀嚼が活発になり、現代人が陥りがちな虫歯や歯周病、消化器系のトラブル改善などにつながります。

トライアスリートにも愛用者の多い高タンパク質の自然派栄養食品「パワグラ」。メープル、ココア、ストロベリー、ソイプロテインの4フレーバー展開。タンパク質はもちろん、アスリートライフに不足しがちな亜鉛や鉄、炭水化物などの栄養素をしっかり摂れる

――事業は医師としての活動から見えてくる課題を解決する手段なんですね。

小嶋 そうです。介護事業はリハビリに特化したデイサービスを提供しているんですが、高齢化が進むこれからの時代、病院だけでなく、ご高齢の方がもっと手軽に、日常的にリハビリできる施設が必要になるということから始めました。

これは私の父が医師で、リハビリ専門の病院を経営しているので、その影響も大きいですね。リハビリのニーズも多様化・高度化しているため、リハビリを指導する理学療法士が父の病院で研修を受けるなどしながら、技能のアップデートを図っています。

――歯科医院の経営サポートは、ご自身の経験から生まれたものですか?

小嶋 近年、歯科医院の経営環境は、機材の値上がり、人材確保の難しさ、クリニック数、融資の受けにくさなど、厳しさを増していて、歯科医院を持続していくには、様々なサポートが必要になってます。そういった状況で歯科医師が必要とする様々なサポートを提供したいと考えたのが、この事業を始めた理由です。

特に若手の歯科医師が開業する場合のハードルはかなり高くなっているんですが、一方で団塊世代の歯科医師が多数引退して、空き家になる歯科クリニックが増加しています。

そこでこうしたクリニックを機材・設備ごと買い取り、私のクリニックで育成した若手歯科医師にそこで開業してもらうという、開業支援事業を始めました。長く通院していた患者さんも継続して通院することができるというメリットもあります。

経営が軌道に乗るまで、しっかりとサポートをしながらインカムを得て、経営が軌道に乗ったら、不動産・機材を含めた施設を買い取ってもらい、そこで利益を得るという、開業支援と投資が融合したビジネスモデルです。

トライアスロンデビュー戦はスイムでリタイア

――トライアスロンを始めたきっかけは何だったんですか?

小嶋 2017年にアクアスロンに出たのが最初ですが、そもそものきっかけはノロウイルスでダウンしたことでした。

デンタルクリニックと事業会社をスタートして4年目で、これからますます頑張らなければと思っていたときです。子どもの頃から野球をやってきて、体力には自信があったんですが、病気で診療を休まなければならなくなったことで、「体力強化のために何か始めなければ」と考えたんです。

そこで試しに熱海で開催されているスイム750m・ラン5kmの短いアクアスロンに参加したというわけです。

まったく準備しなかったので、結果はビリのほうでしたが、なんとか完走して自信がつき、次にびわ湖トライアスロンin近江八幡に出た。これはオリンピック・ディスタンス(OD)です。しかし、結果はスイムでリタイア。考えてみれば、全く練習せずに1500m泳ぐのは無茶ですよね(笑)。

しかしリタイアした後に、他の選手たちを見ていて同じ条件でこのスタートラインに立っていたのに、準備不足の差でここまで違うのか、自分がどんなに甘かったのかを痛感しました。

そこからは日々の生活を見直し、スポーツクラブに入って練習を始め、2018年は大会に出ずにトレーニングに専念しました。

(写真=小嶋さんご提供)

挫折からのリベンジでトライアスロンにハマる

小嶋 2019年には6月にレイクハマナ・トライアスロンに出て、初めてODを完走。そこからそのシーズン中に長良川や大井川など6レースに出ました。最後は九十九里でミドル完走。レースごとにタイムが上がっていくのが楽しくて、すっかりトライアスロンにはまりました。この年はほかに静岡マラソンを4時間50分くらいで完走しています。

2020・2021年はコロナ下で大会がほぼなくて、出場は2021年の九十九里だけ。レースに出られないことで、出たいという気持ちがさらに高まりました。

2022年から大会が再開されて、レースに出られるようになったときはうれしかったですね。2023年はトライアスロン10レースに出て、ホヌ(ハワイ島)のアイアンマン70.3も経験しました。フルマラソンは4レースに出場し、秋の青島太平洋マラソンで3時間20分切り。2024年のトライアスロンはアイアンマン・ケアンズなどロングをメインに出場し、フルマラソンではサブスリーを目指します。

――体力増強で運動を始めようと考えたとき、トライアスロンを選んだのは、なぜですか?

小嶋 サイバーエージェントの藤田晋さんの『起業家』という本に、上司だった宇野康秀さんの話があったんですね。その男気がカッコいいと感じ、宇野さんを個人的に調べると、トライアスロンをやっていることがわかったのです。そこからなんとなく「イケてる実業家・ビジネスパーソンはトライアスロンをやっている」というイメージを抱くようになり、「じゃ私もトライしてみよう!」と。

仕事/家庭生活/トレーニング
小嶋さんの「ある1週間」スケジュール例

トライアスロンとの相乗効果で生まれた事業プラン

――忙しくても仕事とトライアスロンの両方を頑張っていくメリットというのはありますか?

小嶋 まず体力がついて、仕事が前より楽になりました。トレーニングやレースで時間を取られて大変なはずなのに、逆に仕事がはかどる。

私は経営者がトライアスロンにハマる理由は3つあると思うんです。

ひとつ目はタイムマネジメント・自己管理の能力が向上すること。
トライアスロンは3種目ありますし、これに仕事と家庭を合わせると5種目くらいやっていく感じなんですが、それによってマネジメント能力が上がり、経営の生産性向上につながる。

ふたつ目は小さな成功体験が得やすいこと。
経営というのは、四半期や年度というスパンで結果を出していくため、成功体験を励みにモチベーションを高めていくのが難しいですし、思い通りにいかないことも多々あります。

その点、トライアスロンは日々のトレーニングやレースで小さな成功体験を積み重ねながら続けていける。やっていれば結果が出るという自信がついて、そのポジティブな気持ちが仕事や事業にも生きてきます。

3つ目は良い仲間と出会えること。
本当にみんなカッコいいんです。トライアスリートは仕事も含めて生きることを楽しんでいるし、人のために何かやろうという姿勢がある人も多くて、人として魅力的です。ハードにトレーニングしてレースもレース後も最後まで諦めない。トライアスロンを通じて人生において大切なことを毎回気づかされることが多いです。また、トライアスロンという共通点があるだけで、日本でも海外でも自然と話が弾んで友達になれる。

仕事で成功している人も多く、自然と色々な経営者から刺激を受けますし、学ぶこともたくさんある。そういう仲間が広がっていく中で、事業でも一緒に何かやれるのではという可能性が生まれつつあります。

静岡市に事業の拠点を置く小嶋さん。富士山を望む日本平周辺などトレーニングコースには事欠かない

――そこから新しく生まれてきた事業プランはありますか?

小嶋 歯科医師・医療法人として、活動を世界に広げていこうというのがあります。

トライアスロンのレースに出るようになって感じたのは、ボーダーレスな世界が広がっているということです。それはスポーツだけでなく、事業にも言える。

日本は人口が減少していくけど、海外に目を向ければ人口が増えている国々がたくさんあります。日本の歯科医療は技術的にハイレベルですから、海外で勝負することは十分可能です。今、その準備段階として、コロンビア大学や台北医科大学などに行き研鑽しながら、世界に人脈を広げたりしているところです。

ここ数年は海外で歯科医療を様々な角度で学んでいきます。

基本的に虫歯や歯周病の発生機序であったり治療方法は世界共通です。全世界の人に対応できる資格である歯科医師の仕事を視座を上げて進めていきたいという目標があります。

「健康経営」の取り組みが生産性向上につながる

――クリニックや事業の経営に何か変化はありましたか?

小嶋 従業員の健康や仕事の環境に配慮するようになりました。

具体的にはクリニックの診療時間や診療日数を短縮し、リフレッシュタイムを増やして、従業員のストレスや疲労の軽減を図っています。また、近くのスポーツジムの法人会員になって、希望者がスポーツでリフレッシュしたり、健康・体力を増進したりできるようにしました。

その結果、診療時間や診療日数が短くなったのに、売り上げは上がっているので、生産効率が向上したことを実感しています。

現代社会では、健康に何らかの問題を抱えながら仕事をしている人が全体の8割くらいいて、それが生産性の低下につながり、企業経営に損失をもたらしていると言われます。

勤務体系や福利厚生を改善することで従業員が健康になり、生産性の低下を防ぐことになるとしたら、従業員と企業双方にとって大きなメリットがある。従業員に余裕が生まれ、その分患者さん・お客様に接するときの笑顔が増えれば、それは患者さん・お客様にとってもいいことですし、それがひいては業績の向上につながっていくということだと思います。

権限委譲がもたらす好循環

小嶋 これは開業・創業当時から取り組んでいることですが、もうひとつ私が大切にしていることに従業員への権限委譲があります。

ゴールは明確に設定するけれども、それを実現するプロセスは従業員に任せる。そうすることで、従業員は与えられた仕事をこなすという姿勢ではなく、目標達成のために何が必要か自分で考えながら、主体的に取り組むようになります。

もちろん任せっ放しではなく、四半期ごとに面談で目標を設定し、各自がプロセスに落とし込んで日々取り組み、それを月ごとに評価していきます。従業員は、自分の取り組みの良かったことや課題を理解し、次の取り組みにつなげていくことができます。これによって従業員と経営者は対立ではなく、同じ目標に向かって進む仲間になることができるんです。

目標とは何かというと、私はシンプルに「患者さん・お客様の笑顔・幸せ、満足度」と表現しています。もちろんもっと具体的に言えば、色々なことを目標に設定できますが、結局は「お客様の笑顔・幸せ、満足度」ということに集約されると思うんです。特に従業員へは、できるだけ抽象的な表現を心掛けています。

クリニックなら患者さんが帰られるときに笑顔になっているか。プロセスで迷うことがあったら、その本質的な目標を思い出し、「これで患者さん・お客様は笑顔になれるか?」と考えれば、判断を大きく誤ることはありません。

――最後に起業家アスリートとしての最終目標を教えてください。

小嶋 私の人生のテーマとして、「世界一幸せな起業家アスリート」というのがあるんです。

「幸せ」とは何かというと、たとえば妻や子どもと色々なところに行って様々な体験をしたり、子どもの話を聞いたり相談できること、患者さん・お客様をはじめ様々な人と関わり、笑顔や感動を提供できること、トライアスリートとしてレースに向き合うことなどたくさんあります。

トライアスロンだけで突出した結果を出すより、歯科医・起業家・アスリート・家庭人など様々な要素を連動・融合させ、その精度を上げながらうまく回していき、トータルの幸せを最大化していきたい。

そこに終着点はありませんが、「自分は世界一幸せな起業家アスリートだ」と言えるようになる自信はあります。

2023年10月に開催されたアイアンマン70.3台湾のフィニッシュシーン。この大会で2024年ニュージーランドで開催される世界選手権への出場権を獲得した

 

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  1. コメントありがとうございます。
    小嶋さんも同じ静岡のビジネスパーソン・トライアスリートのリアクション、嬉しいと思いますので、メッセージ転送しておきます!

    トライアスロン×ビジネスライフの記事は、小嶋さんも登場する「TRIBizeez」サイトにも関連記事&情報がありますので、よろしければこちらもチェックしてみてください!

    ▼TRIBizeez
    「トライアスロン×仕事」で相乗効果を生み出そう。
    https://pawagura-sports.jp/tribizeez/


  1. 私も2018年にトライアスロンをデビューして以来、仕事もプライベートも充実するようになりました。小島さんと同じく静岡でトライアスロンに取り組んでいるので、刺激を受けながら頑張っていきます。

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