水質問題を吹き飛ばす
オリンピックらしい熱戦に
パリオリンピック・トライアスロン競技、女子のレースは7月31日(水)現地時間の午前8時にスタート。パリの中心街、沿道の大観衆が見守る中、一般のオリンピック報道を不本意な形で賑わせてしまったスイムコース(セーヌ川)の水質悪化問題を忘れさせるオリンピックらしいハイレベルな戦いが繰り広げられ、開催国フランスのスター選手、カサンドル・ボーグラン(フランス)が金メダルに輝いた。
日本女子で唯一、この大舞台に立った高橋侑子はトップと7分47秒差の40位で完走、自身のキャリアの集大成と位置付けたパリ五輪を終えている。
明確に「攻め」の姿勢見せたダフィ
56人がスタートラインに立ったパリオリンピック女子は、気温21℃、水温22℃、ウエットスーツ着用不可のレースとなった。
スイム序盤からレースを動かしたのは東京五輪の金メダリスト、フローラ・ダフィ(バミューダ)。セーヌ川のコース特有の流れがある中、ひとり抜け出し、有力選手ベス・ポッター(イギリス)、ジョージア・テイラーブラウン(イギリス)、ボーグランらが続く。日本の高橋は26秒差で1周目をフィニッシュ。
スイム2周目もレースの主導権を握り、攻めの姿勢を鮮明にしたダフィ。ビアンカ・セレーニ(イタリア)、ビットーリア・ロペス(ブラジル)、ポッター、マヤ・キングマ(オランダ)らが食らいつく中、2位以下に9秒差をつけてバイクへ。
メダル争いは9人の先頭集団に
ダフィは雨上がりの濡れた石畳のコースで明確な意思のもと、単独の逃げを打つ。
7周回のバイクコース。有力どころが1分以内の差にひしめく中、ダフィを追うチェイスパックを形成したのはキングマら3~4人。序盤は16~20秒差ほどで推移。次第に10人前後のチェイスパックに集約される。
コーナーごとに落車、クラッシュが続発する中、ダフィが単独で逃げ続けるが、キングマらが先頭を引くチェイスパック9人が徐々に差を詰め、ダフィを吸収。10人の先頭集団として機能し始める。
高橋はテイラー・ニブ(アメリカ)、ケイト・ウォー(イギリス)らが引く第2集団。1分~1分30秒差ほどの位置から、先頭集団を追う。
バイク終盤になっても先頭集団の逃げの勢いは衰えず。ダフィやジュリー・デロン(スイス)がときに積極的に仕掛ける場面を交えつつも、(終盤落車で離脱したラウラ・リンデマンを除く)9人の集団として機能し続け、チェイスパックとの差は1分から縮まらない。
ランの実力でもほかを圧倒する実力者が顔をそろえる先頭パック。
この9人の中でのメダル争いが濃厚となってきた中で、レースは勝負のランへ。
金メダルをつかんだ最後の仕掛け
序盤、ボーグラン、ポッター、デロン、エマ・ロンバルディ(フランス)の4人が抜け出す。
4人の中でメダルをかけたハイスピードなけん制が続く中、最後に仕掛けたのはボーグラン。2位以下を置き去りにすると、余力を感じさせつつウイニングランへ。自国開催のオリンピックで見事、金メダルを獲得した。
銀メダルはペースが落ちなかったデロン。3位にはポッターが入り、最終盤苦しみつつも踏みとどまって銅メダルをつかんでいる。
【Result】
▼金メダル
カサンドル・ボーグラン(フランス)1:54:55
▼銀メダル
ジュリー・デロン(スイス) 1:55:01
▼銅メダル
ベス・ポッター(イギリス) 1:55:10
40位 高橋侑子 2:02:42